都内で広報の仕事をしていた森さんは、出産後も働ける子育てに理解のある会社に勤めていた。しかし東日本大震災を機に、子どもとの距離や暮らし方を考えるようになり、思い切って沖縄本島へ移住を決断。そんな森さんが沖縄で感じた仕事・生活・子育て環境…。
ネット社会だからこそ実現できる新しいフリーランスの生き方と、ビジネス特区のお話など沖縄本島の最新事情をフリーライター/森菜津子さんに聴いた!
プロフィール
① とにかく子供が多い。島全体で子育てしている雰囲気がある
② 共働きが基本!専門職は強い
③ 相手に何か依頼する場合は、納期は前倒した上でゆるく考えた方がうまくいく
④ 様々なイベントが旧暦で行われるため、家には旧暦のカレンダーが一つはある
⑤ 湿気が大敵!電化製品などが壊れてしまうため、とにかく対策が必要
-始めに、なぜ沖縄で働こうと思われたのかを教えてください。
沖縄へ移住する前は、東京で国際理解の促進等を行う財団法人の広報をしていました。職場は子育てへの理解もあって、とても恵まれている環境でした。でも出産後に育休を取得して、来月復帰する…というタイミングで東日本大震災が起きたんです。
それ以降、“暮らす”ということについて色々と考えるようになりました。たとえば、今まで遠いと思わなかった1時間の通勤時間も、「何かあった時にすぐに子どもをお迎えに行けない距離だな」と気づいて、このままでいいのかなと考えるようになったんです。
それと、もともと寒いのが苦手なので、いつかは暖かい場所で暮らしてみたいなと思っていました。
そういう色々な思いがあって、かねてから興味のあった“沖縄”はどうだろう、と思うように。紆余曲折はありましたが、家族で移住することになりました。
実際に住んでみると子育てしやすい環境に驚きました。とにかく子供が多いんですよ。沖縄では子供が1家族に3人いて当たり前という感じなんです。島全体で子育てしている雰囲気があって、大人も子供もオジイもオバアも、みんな子供が大好き。
赤ちゃんを連れていると、知らないオバアが「抱っこしようかね~」と声をかけてくれたりするんです。子連れへのまなざしが東京と全く違いますね。
今はそんな温かい雰囲気の中で子育てしながら自分のペースで働けることが、一番の魅力だと感じています。次女の子育てが一段落したら、沖縄への移住を考えている方に役立つ情報や、超ローカルな人気スポットなんかを紹介するサイトを作りたいですね。
-沖縄で働く時に抑えておくべきルールや特別な文化はありますか?
仕事についてお話すると、『共働きが基本!』『専門職は強し』って感じですかね。これは沖縄に限ったことではないと思いますが、地方で働くならやはり医療や介護に関する専門職や美容師など、“手に職がある方”は強いですよね。
移住してすぐの頃、事務の仕事をしていたのですが、”広報のスキルを活かす”というような仕事はなかなか見つからなかったんです。もちろん選ばなければ仕事はありますよ。でも、給料は全国的にみると低いので、沖縄では共働きの世帯が圧倒的に多いのが実情ですね。
そういう点を考慮すると、フリーランスは効率的な働き方だと思います。県内の仕事は単価こそ低いですが、地元の方とつながるチャンスですし、本土からの仕事を織り交ぜれば、収入とのバランスは取りやすくなるんです。
私の場合は、電話で取材させて頂くことが多いのですが、スカイプなどを活用すれば、相手の方と距離が離れていても仕事は出来ると思います。
環境については、『人とのつながりを大切にすること』がポイントになります。
沖縄では家族や親せき、同級生といった横のつながりを大切にします。子供の1歳のお祝いやお盆に、親戚が何十人も集まるのがごく当たり前です。小さな島ですので、週末にちょっと買い物へ行くだけでも必ずと言っていいほど知り合いに会います。
そういう背景がありますので、“みんなと仲良く協力しあって暮らす”という姿勢が大切だと思います。その仲間の輪に入れてもらえれば、みなさんとても親切にしてくれますし、こちらが困っている時にも手を差し伸べてくれるんです。
こちらに来て、特に感じたのは、『ゆるく大らかな気持ちで』というメンタル面のこと。
「ロジカルに話をまとめ、合理性を追求する」ということが当然だった所から沖縄へ来ると、沖縄の人のゆったりとした対応やほんわかとした雰囲気に驚くかもしれません。
相手に何か依頼する場合は、納期は前倒した上で、ゆるく考えた方がうまくいきます。
逆に言えば、“お互い様”という部分もあるのかもしれません。例えばこちらがうっかりしていたり、何かしら失敗した場合にも、許してもらえることが多い気がします(笑)。
もうひとつ、ルールというか、沖縄に暮らすなら知っておいて欲しいのは『台風だけじゃない!湿気も大敵』だということ。
毎年、台風の通り道になる沖縄では台風対策を欠かせないんですけど、忘れずに注意したいのは湿気なんです。
沖縄へ来てから電化製品の故障が続いていて…。ノートPCも壊れましたし、エアコンの不具合、洗濯機の故障など色々あります。沖縄の梅雨や台風の時の湿気は、本土では体験したことがないレベルなんですよ。
家電量販店ではエアコンの室外機にはサビを防ぐ加工をすることを勧められますし、車にもサビ止め加工が必須です。革のブーツなんてカビだらけ…ということで、クローゼットに除湿機を全開にしてかけるなど、とにかく湿気対策が必要です。
-フリーランス自体は多いのですか?
そうですね。Webのデザイナーや制作ディレクター、フォトグラファー、インターネット広告業、服飾デザイナー、農業等、移住者でフリーランスや自営業で働いている方は結構いらっしゃると思います。
-ネット回線の速度やコスト面は都心、たとえば東京と比べて違いを感じますか?
ネット環境は、光回線もLTE環境も整っています。コストも東京とほとんど変わりませんね。わが家の場合、家賃に光回線の料金が含まれているんです。そういった賃貸物件も増えていますよ。
-物価水準はだいたいどのくらいなんですか? 家賃や生活費、教育費などわかる範囲で教えて下さい。
家賃は築年数にもよりますが、那覇の場合、大体2DKで4~5万円くらい。3LDKで6~7万円程度です。ただし首都圏のようなリビングが広い間取りの物件が少なく、あっても10万円以上したり割高に感じます。多くの場合、駐車場はついていますよ。
那覇は、家賃以外の生活必需品や野菜の値段は東京と大して変わらないと思います。地元の野菜がスーパーの一角に並んでますが、それは若干安めになっていて、“うりずん”や“はんだま”といった本土では見かけない野菜も手ごろな価格で買うことが出来ます。
保育料は、所得水準により金額が異なるのですが(認可保育園の場合)、税金と同様に移住直後は高くなりがちなので、必要経費として考慮しておいた方がいいと思います。
また、都内だと中学生まで医療費が助成されタダという所もありますけど、那覇市の場合、4歳以上は医療費の補助はないんです。自治体ごとに医療費補助制度が異なるので、お子さんがいらっしゃる場合は調べておくといいかもしれません。
-読者の方やお仕事の依頼を考えている方にメッセージをお願いします。
昨年、二人目の子供が生まれて以来、子供が寝た隙に仕事をしています。現在はライティングが中心ですが、インタビュー取材からWebサイトのディレクション、コンテンツの選定まで対応しています。法律関係、商品やショップ紹介、子育てネタ等、幅広い分野を取扱っています。nnnnatsuko(at)gmail.com(※ (at) は@ に置き換えて下さい。)までお気軽にお声がけ下さい。
【ある1日の流れ】
関連記事
エンジニアさんに読んでもらいたい
ニュースをつぶやいています。