「オフィスは東京、家庭は山口」異色の働き方を選んだエンジニアのキャリア論
元野良エンジニア・七島偉之氏の主張「フリーランスかどうかは形式上の問題」

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フリーランス時代に“野良エンジニア”を自ら名乗り、受託開発以外にもプログラミングスクールの講師を務めたり著書出版をこなすなど、幅広い活動をしてきた七島偉之氏。現在はモバイルアプリ向けアナリティクスツールを提供する「Repro」へ入社し、月の20日を東京で働き、残りを山口で過ごすという異色の働き方で、仕事と家庭とのバランスを両立させているといいます。
 
そこで今回は、そんな多彩な経歴を持つ七島氏に、これまでの経歴とともにキャリア論についてお話を伺いました。「会社員か、フリーランスか」。エンジニアにとって悩ましいこのテーマを、七島氏はどのように考えているのでしょうか?

 



七島偉之(ななしま ひでゆき)氏
業務Webシステムの開発に5年携わった後、モバイル系の技術に萌えすぎて 2013年に“野良エンジニア”として独立。 アプリ開発の傍ら、アプリ開発スクールである「RainbowApps」などでIT教育にも従事。 2015年からは、モバイルアプリ向けアナリティクスツール「Repro」の開発チームにジョイン。
 


 

フリーランスの働き方について話を聞く

家族のことと今後のキャリアを考えてフリーランスへ

―七島さんが最初にお勤めになった会社について教えてください。

 
2008年に新卒として入社した会社は、企業の課題に対してのコンサルティングと、それを解決するためのシステム開発までを一体で行っているところでした。主な例でいうと、製造業の生産管理関連のシステムや、金融系のエンタープライズシステムなどを手がけていました。
 

―入社するまでに、プログラミングの経験はあったのでしょうか?

 
プログラミングは一切経験したことがなかったです。入社当時はタイピングをするのにも、両手の人差し指でポチポチと押すようなレベルで(笑)。Wordで文書作成する際も、インデントを揃えるのにすら苦労するレベルでした。
 


元は化学系の院生で、入社するまで技術的なことはからっきしだったという
 

―その状態からどのようにしてプログラミングの技術を身につけられたのでしょうか?

 
研修を受けて、開発の現場を体験していくことで、技術を学んでいきました。最初に配属された現場が組み込み系の開発だったことから、その後も開発寄りの現場ばかりだったんです。自分でも必死でスキルを身につけるように努力しました。
 
会社はコンサルティングとシステム開発の両方を行っていましたが、私はシステム開発寄りでSE的な仕事ばかりでしたね。約5年の在職期間の内、後半の3年半くらいは、SI業界の下請けとして孫請け企業のマネジメントを行っていました。
 

―なぜフリーランスとして独立したのでしょうか?

 
子どもが生まれたことで、家族と過ごす時間を作りたかったのが一番の理由です。当時は子どもに会いたいのに、業務が忙しすぎてなかなか会えなくて。また、妻の育児を手伝おうと育休を取ろうと会社にお願いしたんですが認められなかったんです。
 
さらに、きっかけは子どもの誕生ですが、独立を考えた下地には将来のキャリアの悩みがありました。
 
もともと学生・院生時代はバックパッカーとして、いろいろな国をふらふら回るのが好きという人間でしたので、自分の生き方を自分の意志で選びたいという思いもありまして。そのため、下請け企業のマネジメントといった、組織に依存するところが大きい働き方ではなく、自分の技術ひとつで生きていける働き方をしたいということも要因でした。
 
そういったいきさつから、2013年にフリーランスとして独立しました。
 


他にも大手SIのプロパーとの待遇の差なども、独立の要因だったと語る 

フリーランスの働き方について話を聞く

つてが何もない状態から“野良エンジニア”として独立

―フリーランスとして独立するにあたり、どういった準備をしていましたか?

 
会社を辞めるまでの1年くらい前から、クラウドソーシングで小さい案件をいくつか受けて“案件があるかどうか”や“うまく回せていけそうか”などを検討をしていました。
 
また、同じころに、iPhoneアプリ開発の勉強もしていて、毎日1~2時間は自習する時間を確保するようにしていました。世間でiPhoneがメジャーになってきていたので、アプリ開発ができれば食っていけるのではないかと思っていたんです。そのうちだんだんと物足りなくなっていき、スマートフォンアプリ開発のスクール「RainbowApps」が開催する全10回のiPhoneアプリ開発講座を受けたりもしました。講座が終わってからも、個人的にもiPhoneが気に入っていましたので、ずっと手を動かしていましたね。
 

―フリーランス時代はどのような案件を引き受けていたのでしょうか?

 
iPhoneアプリ開発や前職での経験のあるJavaのシステム開発などの案件がメインでした。家族との時間が欲しくて独立したので、受けていたのは在宅案件ばかり。最初は、つても何もない状態でしたので、クラウドソーシングを利用していました。
 
単価の高い案件はあまり引き受けなかったです。というのも、案件の単価が上がるほど、求められる責任が上がる傾向がありまして。私は自分のリズムでやっていけることを重視していましたので、あまり責任で縛られるようになるのは嫌だったんですよ。
 
なにせ、フリーランスとして独立した際の屋号が“野良エンジニア”でしたからね。たまに企業の方から、長期常駐や社員のお誘いを受けることもありましたが、「すいません、自分は野良エンジニアなんで」とお断りしていました(笑)。
 


“野良エンジニア”時代の名刺。イラストは奥様が描かれたとのこと
 
また、単価については、将来につながるのであれば単価は低くてもいいとすら思っていました。実際、フリーランス時代は稼働のうちの3分の1ほどしか、費用をいただく作業をやっていなかったんです。残りは勉強会に出たり、自主的なお手伝いとして費用をいただかずに“ただ”で作業をしていました。
 

―なぜ、費用をもらわずに作業を引き受けたのでしょうか?

 
腕が頼りのエンジニアにとって、経験はとても大切です。“ただ”でお手伝いをするのは私が面白そうと思った案件でしたので、そこで得られる経験は将来への投資として価値あるものだったからです。副次的に人とのつながりも広がり、そこから案件を獲得することもしばしばありました。
 

―「RainbowApps」の講師を務めたこともあると聞いていますが、それも人とのつながりからでしょうか?

 
はい。フリーランスになったことを通っていたスクールの講師に伝えたところ、講師をやってみないかとお話をいただきまして。トライアルで1回やらせていただいたところ、次から普通にやってほしいと言われ、そのまま3ヶ月ほど講師を務めました。
 
フリーランスとして開発案件も受けつつ、週一で講師も務めるというのはいいサイクルでした。基本的に自宅で作業を行うので、外の世界に出て、生徒さんと触れあうというのは、いい気分転換になりました。
 
また、講師として教えることは、自分の技術の向上にも一役買いました。自分で開発するときは、“動けばいいや”くらいのなんとなくの理解でやってしまうこともあるのですが、他の人に物事を教えるとなるとそうもいきません。わからない生徒さんに教えるとなると、自分がしっかり理解している必要があるわけでして。これはエンジニアとして非常に良い経験になりました。
 


「RainbowApps」講師の縁で、iPhoneアプリ開発の書籍執筆にも関わったという
 
 

月20日は東京で働き、残りは山口で過ごすというスタイル

―現在、七島さんはフリーランスではなく、正社員として働かれているとお聞きしました。その経緯を教えてください。

 
独立して1年ほど経ったころ、フリーランスとして活動することに慣れと限界を感じてきました。個人でできる在宅案件ばかり引き受けていたため、規模や質も小さくまとまった案件しかありませんでした。また、メンターのように私の成長をサポートしてくれる存在も当然いないため、エンジニアとしての限界が見えていました。反対に、なんとかやっていけているということで「エンジニアとしてそれなりのレベルになったな」とも思っていて、慢心していたフシもありました。
 
そんな中、2014年4月ごろ、とあるイベントでReproのCTO・三木と出会ったことが転機となったんです。エンジニア同士で話をする中で「よかったら遊びに来てよ」と誘われまして。詳しく話を聞いてみると、Reproがやっているモバイルアプリ向けアナリティクスツール「Repro」は、とても面白そうなサービス内容に思えました。そのため、最初は遊びに行くという形で、お金をもらわずに参加していたんです。
 
実際にReproの現場で作業をしてみると、社員の方たちは若いにも関わらず、レベルが非常に高く刺激を受けました。スキル、行動力、情熱など、どれをとっても魅力的でした。
 
一方の私は、それまでの「なんとかやっていけていた」だけではまずいと、焦りを感じるようになりました。そこで「この人たちと一緒に仕事をして、自分のレベルを上げたい!」と考え、一緒に働きたいと思うようになったんです。
 
そして、正式メンバーとして働きたいと申し出て、同じ年の12月にトライアルとして1ヶ月働いたんですが、そのときはレベル不足だと断られたんです。ですが「もう一ヶ月だけ時間をください」と申し出て、ようやく認められて正式にジョインできました。
 

―そんなにもReproに惹かれたんですね。そこで七島さんはどういったお仕事をしているのでしょうか?

 
以前は「Repro」のSDK(ライブラリ)を開発していました。現在はカスタマーサポート、Facebookやブログを通しての広報、「Repro」を知ってもらうためのセミナーやデモアプリ開発など、いろいろとやっています。
 

―フリーランス時代は在宅案件ばかりを受けていたということですが、Reproに入社してから働き方はどのように変化したのでしょうか?

 
今は1ヶ月のうちの約20日をまとめて東京で、残りを家族のいる山口で過ごしています。山口にいる間も完全なオフというわけではなく、リモートで仕事をしています。
 
Reproに関わるようになった当初は、茅ヶ崎の自宅から上野にあるオフィスへ通っていたのですが、距離が遠く通勤時間が非常にもったいなかったんです。そのため、家に帰る頻度を下げて仕事に集中することで、通勤にかかる時間を削りました。すると、仕事の時間と家族と過ごす時間をまとまって取れるようになったんですね。そうして、それぞれの塊がだんだんと大きくなっていきました。
 
ちょうどそのころは、2人目の子どもが生まれた直後でもありました。それにも関わらず、私はReproの仕事にのめり込んでしまい、家族と接する時間が激減していたんです。
 
フリーランスになった動機として、家族と過ごす時間を作るという目的があったのに、Reproに関わるようになってからは、いつの間にか子育てを妻にまかせきりになっていました。これはまずいということになり、妻の両親の力を借りるべく、妻の実家である山口へ引っ越し、今の働き方に落ち着きました。
 


Reproは完全フレックスのため、このような働き方も問題ないとのこと

会社員とフリーランスの違いは形式上の違いでしかない

―七島さんには、この先フリーランスに戻るという選択肢はあるのでしょうか?

 
「Repro」がサービスとして成功するまでがんばったら、またフリーランスに戻ることもあるかもしれませんね。ただ「会社員か、フリーランスか」というのは単なる形式上の違いでしかなく、手段であって目的ではありません。仮にフリーランスであったとしても、客先常駐案件でしたら働く場所や時間については会社員に近い形になりますしね。自分の生き方や実現したいことに適したやり方を選択する、というのが私の判断する基準になっています。

―なるほど。それではエンジニアの方が会社員orフリーランスを検討する際は、どういった点を考慮すればいいと思われますか?

 
それまで会社勤めしか経験したことがなく、自分の人生に主体性がないと感じるのならば、1回はフリーランスを経験するのもありではないでしょうか。フリーランスを経験した後は、会社員に戻る、戻らないは大きな問題ではないはずです。
 
というのも、フリーランスでやっていくためには、自分で案件を獲得する必要があるからで。さらに“どんな案件を受けるか”から“契約を全うする”ところまでも、自分の裁量と責任で進めなければなりません。自分で物事を全うする経験を得られたら、会社員に戻ったとしても自分らしい人生を歩めるはずです。


“他人任せ”では会社員もフリーランスも成功しないと述べる七島氏
 

―フリーランスとして独立することに対して、リスクを考えてなかなか踏み切れない人もいるのではないでしょうか?

 
私からすると、そういった方々はリスクを過剰に恐れているのだと思います。
 
たとえば、「自分がフリーランスとしてやっていけるレベルなのか」と不安に思う人がいたとします。ですが、世の中には企業は山ほどあり、エンジニアに求めているレベルも案件によって様々。「自分のウリになるところを見つける」ことができれば、どこかで需要はきっと見つかるはずです。いろいろな人と出会い視野を広げていけば、案件のタネはいくらでも転がっていますよ。
 

―最後に、フリーランスの方はどういったことを心がければいいか、アドバイスをいただけますでしょうか?

 
プライベートとビジネスの区別が付かないような時間を増やすと、いいのではないでしょうか。私の場合、「ほぼ遊びだけど、ビジネスに関係がないこともない」というような活動を結構しています。
 
たとえば、iPhoneアプリ開発の勉強は遊びでやっていた部分も大きかった。ですが、それが案件につながり、スキルアップやさらなる案件獲得にもなりました。そうやって、ビジネスに関連しながらも楽しいと思えることをやっていくと、営業活動、スキルアップ、プライベートの好循環につながっていくはずです。

フリーランスの働き方について話を聞く

 

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