請負とは?準委任、SESとの違いも解説

この記事でわかること
  • 請負とは何か
  • 請請負のメリット・デメリットについて
  • 請負契約書締結時の注意点の紹介

請負とは、受託した仕事を完成させて初めて報酬が支払われる契約の類型を指します。フリーランスが仕事を請け負うにあたって、クライアントと「業務委託契約を結ぶ」ということはご存じの方も多いのではないでしょうか。この「業務委託」という呼称は実務上の用語であり、法律的には「請負」か「準委任」に該当します。

この記事では、請負の概要やほかの契約形態との違いについて解説します。フリーランスを目指している方や副業で個人事業主になろうと思っている人はぜひ参考にしてください。

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請負とは?わかりやすく解説

請負とは、受託した仕事の完成義務を負う、つまり仕事を完成させて初めて(通常は固定の)報酬が支払われる契約の類型です(民法632条)。請負の特徴を詳しく見ていきましょう。

請負では仕事の完成が求められる

請負契約の実務では、発注者による検収(仕事の完成を確認すること)が完了することが報酬支払の条件となります。特約により前金や中間金が支払われることもありますが、完成に至らなければ、受け取った報酬は基本的に返還しなければなりません。

なお、2020年4月に施行された改正民法では、発注者側の都合で完成できなくなった場合や完成前に契約が解除された場合は、発注者が受ける利益の割合に応じて部分的に報酬を得られるように変更されています。

成果に対する契約不適合責任を負う

先述の通り請負契約では、仕事の完成に対して報酬が支払われることになります。そのため、引き渡し後に不具合や欠陥が見つかった場合、受注者は「瑕疵(かし)担保責任」を負うことになり、トラブルへと発展することも珍しくありませんでした。

現在は「瑕疵担保責任」が廃止され、「契約不適合責任」という、成果物が契約内容に適していないことへの責任を負うものに変更されています。成果物が契約内容に不適合であった場合、発注者側は損害賠償請求をしたり、不十分な箇所を直すよう求めたりすることができます。

損害を被るリスクを避けるためにも、請負契約を受ける前に契約内容をよく確認しておくようにしましょう。

フリーランスエンジニアにとっての請負

請負の例としては、Webサイトやアプリケーションを開発して納品する、といった案件が該当します。クラウドソーシングで多く見られる小規模の制作案件も、おおむね請負と考えられます。

このように、請負はフリーランスエンジニアの身近にあるものですが、確実に報酬支払を受けられる保証がないこと、長期間の担保責任を負うことから、負担は重いといえるでしょう。

もっとも、このような重い負担を伴う分、相対的に高い報酬を期待できます。また、業務遂行のコストを削減して、報酬から得られる取り分を大きくする余地も。その意味で、請負はリスクがある反面で、自らのスキル次第で大きな利益を上げるチャンスのある契約類型といえるでしょう。

なお、請求のやりとりについてはこちらの記事で詳しく解説していますので興味のある方は参考にしてみてください。
何を記載すれば良い?請求書の書き方と注意すべき点

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請負契約と準委任・委任・派遣・業務委託との違い

ここでは、請負契約と準委任・委任・派遣・業務委託それぞれの違いを解説します。

請負契約と準委任の違い

準委任は、完成義務なしに一定の業務を行うという契約の類型です(民法643条、656条)。業務により生み出される成果ではなく、業務の遂行自体に対して(多くは期間ごとの)報酬が支払われます。

準委任では、原則として成果の出来・不出来は問われず、完成義務のほか契約不適合責任も負いませんが、代わりに善管注意義務を負います。これは取引上一般に要求される注意義務であるため、プロのエンジニアの業務遂行として欠けるところがあれば、契約の解除や損害賠償請求を受ける可能性があるのです。

実際の契約では、「請負」と「準委任」のいずれであるかが明確でないケースも見受けられますが、両者で法律上の扱いは大きく異なります。以下におおまかな違いを示しました。

  請負契約 準委任契約
特徴 ・仕事の完成義務を負う
・契約不適合責任を負う
・善管注意義務を負う
報酬 ・仕事の完成をもって報酬が支払われる
・通常は固定の報酬(例外あり)
・業務の遂行自体に(多くは期間ごと)
報酬が支払われる
作業の例 ・Webサイトやアプリケーションなどを制作して納品 ・コンサルティングや管理業務
・企業に常駐して業務の遂行


簡単な事例で、請負と準委任を比較してみます。対象業務が完了しないまま、契約で予定された期間が経過した場合にどうなるかです。

請負の場合は納期遅延にほかならず、報酬を請求することができません。さらに債務不履行であるとして、契約の解除や損害賠償請求を受ける可能性もあります。

これに対し、準委任であれば単に契約期間が満了しただけのことです。報酬は全額請求できますし、発注者がなお完成を望むのであれば、新たに契約期間を延長し、その分の報酬を受け取ることができます。

まとめると、請負は発注者側に有利で、準委任は受注者側に有利であることがわかります。

請負契約と委任の違い

委任契約では準委任と同様に、成果物ではなく「業務の遂行」に対する報酬が支払われます。準委任との違いは、法律行為をともなう事務処理を委託するかどうか。例えば、弁護士に訴訟代理を依頼したり、不動産業者に土地の売買を依頼するケースが挙げられます。

請負契約と準委任・委任契約は報酬発生の条件が異なること、準委任契約と委任契約では法律行為をともなうかがポイントになることを覚えておきましょう。

請負契約と派遣の違い

派遣の場合、派遣会社と労働者の間に雇用契約が結ばれます。そのため、請負契約とは違って他者からの指揮命令を受けることになります。指揮命令権があるのは、契約先となる派遣元先の企業です。

したがって、業務上の問題やトラブルがあった場合、クライアントは労働者ではなく契約先の派遣会社とやりとりをすることになります。また、派遣契約も「業務の遂行」が目的であるため、成果物の完成や成功したかを問わず報酬が支払われます。

請負契約と業務委託の違い

業務委託とは、自社の外部の企業や個人に業務を委託することを指しており、請負契約・委任契約・準委任契約を包括した言葉です。業務委託契約という言葉は法律で定義されているものではないため、業務委託契約を結ぶときは具体的にどの契約形態なのかを確認するようにしましょう。

SESとはフリーランスエンジニアにとっての準委任契約を指す

準委任の例としては、コンサルティングや管理業務を行う、企業やプロジェクトの現場に常駐して業務を遂行する、といった案件が該当します。後者は、IT業界ではSES(System Engineering Service)と呼ばれるもので、フリーランスエンジニアにとっても重要な種類の案件と言えます。

準委任は、プロとしての仕事が求められることは当然ですが、厳しい結果責任を負わないこと、報酬に関するリスクが小さいことから、請負に比べると堅実な契約類型であるといえるでしょう。ただ、発注者側は案件の性質や内容によらず自らに有利な請負を希望することも多く、受注者側に一定の実績や交渉力がないと準委任での案件獲得は難しいという現実はあります。

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請負のメリット・デメリット

ここでは、請負のメリットとデメリットをチェックしましょう。

請負のメリット

発注者側(企業)と受注者側(フリーランス・個人事業主)、それぞれの視点から見たメリットを解説していきます。

発注者側(企業)のメリット

発注者側のメリットは、成果物の完成までを受注者に責任として持たせられることです。時間をかけたものの完成させられませんでした、というケースを避けられる点は請負契約のメリットといえます。

また、請負契約した労働者に対して管理を行う必要がないため、管理業務にかかる工数も削減可能。発注者にとっては依頼さえしてしまえば、期日までに成果物が納品されるという点で請負契約のメリットは大きいといえるでしょう。

受注者側(フリーランス・個人事業主)のメリット

請負契約では完成までにかかる工程についての指示が出されないため、作業を行う時間が自由です。勤務時間に縛られることがない点が委託側のメリットとして挙げられるでしょう。どのように作業をするかの指示もないため、作業に集中しやすく、自分のやりやすい方法で作業を進められます。

請負のデメリット

委託側(企業)と受託側(フリーランス・個人事業主)、それぞれの視点から見たデメリットを紹介していきます。

発注者側(企業)のデメリット

請負契約の場合、業務の遂行に関する指示ができず、どのような方法で実施しているかを把握することができません。そのため、社内の知見を蓄積しにくい点がデメリットの1つだといえるでしょう。また、完成した成果物の質は依頼先によって変わるほか、進捗を把握しにくく、期日に間に合うかどうかわからずに不安になるという恐れがあります。

受注者側(フリーランス・個人事業主)のデメリット

受託側のデメリットとしては、完成までの工程は報酬の対象にならず、成果物がすべてであるという点が挙げられます。したがって、成果物に不備があった場合には報酬が支払われなかったり、場合によっては損害賠償請求をされたりする恐れがあります。

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請負契約書締結時の注意点

請負契約書締結時は、4つの点に注意しましょう。それぞれ詳しく解説します。

仕事の内容を具体的に確認する

請負では仕事の完成が求められるため、完成の基準がある程度具体的に特定されていることが前提になります。しかし、現実には、「〇〇一式」といった不明確な仕事が請負として契約されることが少なくありません。

このような場合、いつまでも検収がもらえず、発注者が満足するまで延々と作業を強いられるということも。こうしたケースでは、そもそも請負で契約するべきではないといえます。

フリーランスエンジニアが手掛ける開発系の案件では、開発だけと考えて受注したところ、後になって大量の旧データの移行までが含まれることが分かり、作業工数が何倍にも膨れ上がってしまったという事例もあります。

一見して有利な条件の案件であるほど、関連作業はどこまでが含まれるのか、作業に必要な環境や情報はどれだけ整っているのか、といった確認が必要です。

営業秘密に注意する

自らのスキル向上が欠かせないフリーランスエンジニアにとって、実務経験は大変に重要です。実務での経験値は、次に同種の業務を行う際の大きな強みになります。ただ、具体的な成果物や営業秘密の取扱いについては、注意が必要です。

営業秘密については、一層の注意が必要です。秘密保持契約があればもちろんですが、そうでなくとも一定の有用な情報は不正競争防止法で使用や開示が禁じられます。

場合によっては、コンプライアンス意識の低い発注者から具体的な他社事例等を求められることもありますが、安易に情報を提供することは危険です。

成果物の権利を事前に明確にしておく

請負であればほとんどの場合、具体的な成果物が作成されます。こうした成果物の多くは著作物であり、作成者に著作権が発生しますが、発注者に権利譲渡される契約となっていることが通常です。

このような場合、後に他社向けにこの著作物を再利用すると、著作権侵害となってしまいます。契約に権利譲渡の規定がなければ、著作権は作成者の元に残るのが原則ですが、発注者は一切の権利を取得したと考えていることが多く、トラブルの元になるため事前に確認しておきましょう。

契約解除を可能とする条件を事前に明確にしておく

契約解除を可能とする条件を委託側と請負側の双方で事前に話し合い、明確にしたうえで、契約書に明記するようにしましょう。契約解除を行うのは一般的に、契約違反や背信行為といった、信頼関係が崩れるような問題が起きたときなどに設定することが多いようです。

また、契約を解除する事由が起こった際の、勧告の有無についても記載しておくとよいでしょう。「業務委託契約書の雛形と書き方|収入印紙や注意点について解説」では業務委託契約書を作成するポイントについてご紹介していますので、契約書の作成に不安のある方はぜひこちらも参考にしてみてください。

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偽装請負にならないよう注意が必要

偽装請負とは、請負契約を締結しているにも関わらず、「労働者派遣」に該当する仕事を行うことです。責任の所在があいまいになることで、労働者の労働条件が確保されにくくなるのを防ぐ目的から違法行為とされています。

偽装請負は意図せず行ってしまっていた場合でも、法を免れる行為とみなされ、違法となるため注意が必要です。罰則は、発注者側・受注者側どちらにも課せられます。

偽装請負に該当するかどうかの判断は、厚生労働省による「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」をもとにされます。具体的には、下記のようなことを行っている場合、偽装請負と判断される可能性が高いといえるでしょう。

  • 委託側(企業)が受託側に対して、作業方法の指示を出している
  • 委託側(企業)が受託側に対して、出退勤など勤務時間の管理を行っている
  • 委託側(企業)が受託側に対して、始業・就業時間、休憩時間の指定をしている

請負契約では委託側に指揮命令権はありません。そのため、委託側が受託側に直接指示・指導を行ったり、時間の管理を行うことは違法です。

偽装請負とならないための対策として、以下のポイントに注意しておくとよいでしょう。

  • 請負契約を結ぶ際の内容は可能な限り詳しく記載する
  • あらかじめ仕様書などを用意し、業務内容を明確しておく
  • 契約で交わした作業内容に変更が生じる可能性がある際は変更の可能性がある旨を記載する
  • 委託側と受託側の従業員が混在しないよう就業場所を分ける
  • 受注者が自らスケジュール管理をできるようにする

個人事業主が業務委託契約を結ぶ際の注意点」でも、業務委託契約の偽装請負にならないためのポイントについて紹介しています。契約について不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

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請負に関するよくある質問

ここでは、請負に関するよくある質問に答えていきます。

Q. 準委任契約と請負契約の違いは何ですか?

準委任契約では、成果物に基づく報酬ではなく業務の遂行に対して報酬が支払われます。一方、請負契約では、特定の成果物の完成に基づいて報酬が支払われます。

Q. 業務委託契約には、どのような契約形態が含まれますか?

業務委託契約には、請負契約、委任契約、準委任契約が含まれます。

Q. 請負契約をする際に注意すべきポイントはありますか?

請負契約をする際に注意すべきポイントは、報酬の支払いタイミングや支払い方法を確認すること、仕様変更やトラブル発生時の対応方法を明確にすること、成果物の権利を事前に明確にしておくことです。

Q. 偽装請負に関する罰則には、どのようなものがありますか?

偽装請負に該当する場合、罰金の支払い、行政指導、改善命令、企業名公表などの処分が課せられる場合があります。

Q. フリーランスエンジニアにとって請負のメリットとデメリットは何ですか?

フリーランスエンジニアにとって請負のメリットは、作業を行う時間や場所の自由なことです。デメリットは、成果物に不備があった場合には、何度も修正しなければならない場合や、報酬が支払われない場合もあることです。

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まとめ

フリーランスエンジニアにとって、請負は自らのスキルを発揮できる機会となる反面、個人としては厳しい責任を負わなければならない契約類型です。単に業務委託といわれた場合、それが請負なのか準委任なのか、しっかりと確認したうえで進めたいものです。

※本記事は2022年11月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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