請負、準委任、派遣の違いを理解していますか?
フリーランスで失敗したくない!エンジニアが知っておきたい業務委託契約の知識

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フリーランスとは、クライアントと案件ごとに業務委託契約を結び、自らのスキルを提供することで報酬を得る働き方をいいます。

この業務委託契約は、その契約内容から「民法」という法律に規定する「請負契約」と「準委任契約」に区分され、発生する法的な効果も異なります。フリーランスとして締結しようとしている業務委託契約の内容とその効果をきちんと理解しておかなければ、思いがけないトラブルに進展することがあります。

本記事では、フリーランスにご興味を持つエンジニアの方へ 、業務委託契約の持つ法的な意味について解説します。 

 



本記事の執筆者
「なかむら いちろう」 情報学博士、ITコンサルタント、テクニカルライター
ITと法律分野の多彩な知識を生かし、情報学の博士号を取得し、また企業や自治体でのコンサルティングや各方面での執筆をこなす。著書に『「俺の酒が飲めねーか」は犯罪です』(講談社)、『あなたの知らない「ヘン」な法律』(三笠書房)がある。
 

フリーランスの働き方について話を聞く

 

0. 目次

1. 業務委託契約とは?
2. 請負契約のポイント
3. 準委任契約のポイント
4. 疑問点は事前に確認と合意を
5. 客先常駐の準委任と派遣との違い
6. まとめ

 

1. 業務委託契約とは?

フリーランスとして活動をするために、クライアントの間で「業務委託契約」を締結した場合、契約当事者である「 フリーランスである自分」と「クライアント」との間でどのような法的な効果が発生するのかご存じでしょうか?

業務委託契約は、使用者の指揮命令の下で働くことを内容とする「労働契約」ではありませんので、労働基準法などの労働法は適用されません。

そこで、業務委託契約には契約関係を一般的に規定する法律である「民法」が適用されますが、契約内容に応じて「請負(うけおい)契約」あるいは「準委任契約」に区分されます。

そして「請負契約」と「準委任契約」とでは、法的な効果が大きく異なります。業務委託契約がいずれに属するのかを判断し、どのような効果が発生するのかを事前に理解しておかないと、思わぬトラブルにつながりかねません。

本記事では、請負契約と準委任契約について判断の基準と重要な法的な効果について説明し、混同することの多い「客先常駐の準委任と派遣との違い」についても指摘することにしましょう。

 

フリーランスの働き方について話を聞く

 

2. 請負契約のポイント

民法は「請負契約」について、仕事の完成と報酬の支払いを約束することで成立する契約としています(632条)。業務委託契約の目的が、成果物としての「プログラムの納入」といった「仕事の完成」を目的としている場合には、その契約は請負契約ということになります。

請負契約の当事者は「注文者」と「請負人」といいますが、クライアントのために業務を行う「請負人」であるフリーランスに関する法的な効果は、この「仕事の完成」から説明することができます。

以下より、詳細に見てみましょう。
 

契約の解除

「仕事の完成」が請負契約の目的であることから、完成前の契約の「解除」は原則としてできません(641条参考)。これは、原則としていつでも双方が自由に契約の解除ができる「準委任契約」と対比される点です(651条1項)。
 

下請自由

原則として、請負人は自由に下請(したうけ)を使用することができます。したがって、注文者であるクライアントが下請の使用を「禁止したい」場合には、事前にその旨の特約を設けることが必要となります。これも、請負契約の目的が「仕事の完成」にあることによるものです。
 

瑕疵担保責任

「仕事の完成」が契約の目的であることから、その仕事に「瑕疵(かし)」がないことも求められます(瑕疵担保責任)。「瑕疵」とは、契約が要求する品質や性能が欠如している状態をいいますが、成果物がアプリケーションである場合は、致命的なバグなどが瑕疵に相当します。

そして、仕事に瑕疵がある場合は、注文者は目的物の引き渡しから1年以内であれば、瑕疵修補や損害賠償の請求、契約の解除ができるとしています(634条、635条、637条)。

したがって、請負契約として業務委託契約を締結した場合には、納入後1年間は成果物に対する責任に対処できる状態にしておく必要があります。
 

報酬

請負人が「仕事の完成」をした後に、注文者に対し「報酬」を請求する権利が発生します。また、民法は「報酬の支払いは仕事の目的物の引き渡しと同時に行う」としていますので(633条)、成果物がアプリケーションの場合には、当該アプリケーションの納入と報酬の支払いは同時に行うことが必要となります。

よって「クライアントが報酬を支払う意思がないことが明確である」といった事情があるときには、請負人は作成したアプリケーションの納入を拒むことができます。

 

3. 準委任契約のポイント

続けて、「準委任契約」について見てみましょう。
準委任契約とは、「期間を定めて何かを依頼し、その期間に作業をすること」を約束することで成立する契約をいいます(643条、656条)。

業務委託契約の目的が、請負契約のように「仕事の完成」ではなく、「システム開発」といったエンジニアとして期間を定めて一定の事務処理を行うことを内容としている場合には、準委任契約になります。また、IT業界において多用されている契約に「SES契約」がありますが、この契約形態も準委任契約になります。

準委任契約の当事者は「委任者」と「受任者」といいますが、クライアントのために業務を行う「受任者」であるフリーランスに関する法的な効果も、請負契約と同様に、相互の信頼関係に基づく「一定の事務処理」という契約の目的から説明することができます。

 

任意解除権

前述したように、請負契約とは異なり、準委任契約の「委任者」「受任者」のいずれもが、原則としていつでも契約を解除することができます(任意解除権, 651条)。

これは、相互の信頼関係に基づく委任契約において、信頼関係が無くなったときには契約関係を維持することが困難であることによるものです。

 

再委任の禁止

請負契約では、「下請自由」が原則とされていますが、準委任契約は相互の信頼関係に基づくものであるため、原則として再委任することはできません。

したがって、請負契約とは反対に、受任者が第三者に再委任を「予定している」ときには、事前にその旨の特約を設けることが必要となります。

 

善管注意義務

準委任契約では「仕事の完成」を目的とする請負契約とは異なり、仕事についての「瑕疵担保責任」は要求されません。

しかし、事務を処理するにあたっては「善良な管理者の注意」をもって事務を処理することが求められます(善管注意義務, 644条)。

例えば、システム開発に関する準委任契約において、クライアントから解決を求められていた問題をエンジニアが放置してしまった場合は、善管注意義務に違反したと評価されます。その場合、委任者であるクライアントは、受任者に対し、損害賠償の請求や契約の解除ができます(415条、541条など)。

 

報酬

報酬についても、請負契約とは異なり、準委任契約では当初の想定した「仕事の完成」がなくとも、「一定の事務処理」が適切に実施されれば報酬を請求することができます(648条2項・624条2項)。

 

4. 疑問点は事前に確認と合意を

請負契約と準委任契約はこれらの相違点があるのですが、いずれも特約により一定範囲において修正をすることができます。また、契約内容を確認したとしても、請負契約と準委任契約のいずれかであるのか判断が困難であることも少なくありません。

契約形態が明確ではない場合には、思いがけないトラブルに進展することがありますので、疑問点がある場合には、契約締結前にクライアントと確認し、合意を取ることを怠らないようにしましょう。

また、業務委託契約の内容が「システム開発」の場合は、経済産業省が発表している「契約モデル」が参考となります。

図. フェーズの分類と契約類型…準委任/請負 

※経済産業省・商務情報政策局・情報処理振興課・情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会「~情報システム・モデル取引・契約書~(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第一版>について」7頁
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/keiyaku/model_keiyakusyo_gaiyou.pdf

 

5. 客先常駐の準委任と派遣との違い

システム開発などのように、クライアントが管理する環境を使用した開発が必要な場合、SES契約などの「準委任契約」を締結した上で、クライアント企業に常駐(客先常駐)し業務を行うことがあります。

この場合、「受任者」は、クライアント企業の従業員とは異なる立場でありながら、当該企業に常駐し業務をこなすことから、「派遣労働者」と極めて近い立場に置かれることになります。

そこで、客先常駐の準委任と派遣との違いについて確認しておきましょう。

まず、労働者派遣について見てみましょう。
労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)は、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること(後略)」としています(2条1号)。

この条文から、派遣労働者は、派遣先企業の指揮命令を受けることを前提にしていることが分かります。

では、準委任ではどうでしょうか。
準委任の場合は、「委任者」であるクライアントに「受任者」に業務に関する指揮命令を行う権限はありません。

つまり、客先常駐の業務であっても、契約内容が「準委任」である以上、受任者は、クライアントによる指揮命令を受けず、自己の裁量で業務を行うことになります。

また、クライアントがSES契約などの準委任契約に基づき、受任者に業務に関する命令を発することは違法行為とされています。
 
具体的には、このような行為は「偽装請負」として、労働者派遣法や職業安定法に反する行為と評価されます(偽装請負には、準委任契約に偽装することも含まれます)。

 

6. まとめ

特定の組織に属さずフリーランスで働くということは、自己の判断で業務に関わるすべての責任を負うことと同義です。そのような重責に耐えつつ、フリーランスという働き方を継続するには、いかにして自分とクライアントの双方が納得し、かつ双方に利益をもたらす「ウィン・ウィン関係」を築くことができるのかがカギとなります。

そのためには、働き方に関する合意が記載された「契約」の内容を十分に理解しておくことが不可欠です。本記事が、フリーランスの方の活躍にとって一助となれば幸いです。

 

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