北海道でヒグマを追いかけるカメラマン兼ライター。働き方を自在に使い分け最高の瞬間を狙う二神慎之介さん

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カメラマン/ライター・二神慎之介 さん

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北海道・知床でヒグマを中心とした野生動物を撮影しながら、ライターとしても活動する二神慎之介(ふたがみしんのすけ)さん。もともとは東京にある情報誌の広告記事やアウトドア商品などのパンフレットを制作する企業の会社員だった。カメラマンに写真を依頼する立場から、自らカメラを手に取り大自然に飛び出すようになった経緯とは?北海道の大地で活躍するフリーランスカメラマン・ライターならではのお話を伺った。

プロフィール

お名前
二神慎之介(ふたがみしんのすけ)さん
現在の滞在国
日本・北海道(主に知床半島)
業種
カメラマン・ライター
経歴
1977年生まれ。独立前は東京で広告・カタログを制作する会社に勤務。
仕事そのものは好きだったが、放浪癖があり、会社を辞めたり呼び戻されたりを繰り返していた。あるとき映画会社から舞い込んだ写真撮影の仕事をきっかけに、趣味の写真撮影を仕事にし、プロのカメラマンとして始動する。現在は野生動物を被写体とするフリーランスのカメラマン兼ライターとして活躍中。

1分で分かる「北海道で働く」ということ

① 北海道での撮影ではスノーシューやアイゼンが欠かせない

② 登山道具なども全て揃えなければいけないため費用がかさむ

③ カメラメーカーのサービスセンターが近くにないため、温度差による結露などにはより注意が必要

④ 写真ブログなどで取り組みをシェアすることで人との繋がりが増える

━会社員時代はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

情報誌の広告記事やアウトドア商品などのパンフレットを制作していました。実際の業務はクライアント・営業との打ち合わせからコンセプトワーク、取材、ライティングまで。仕事では自ら写真を撮影することはなく、カメラマンに依頼する側でした。

どっぷり仕事に浸かる生活は嫌いではありませんでしたが、あまり会社勤めが性に合っていなかったのか、会社を辞めたり、呼び戻されたりしてフラフラしていました。今思えば、周りの方に迷惑をかける不良会社員でしたね。

━写真を撮るようになったのはいつからですか。

昔から旅が好きで、趣味で写真を撮っていました。10代の頃にはひとりでテントを担いで森や山を歩くのにはまっていました。学校を1年休学して東南アジアや南米を旅したり、授業をサボっては離島のお祭りの準備を手伝いに行ったり。そんなときには夢中でシャッターを切っていました。思えばこの放浪癖が、会社員よりはフリーランスに「向いている」僕の性格をよく表していたような気がします。

━写真を仕事にしたきっかけはなんだったのでしょう。

転機になったのは、映画の制作会社から舞い込んできた1つの仕事でした。趣味で続けていた写真ブログを見た関係者の方から「劇中に小道具として登場する写真集(100ページ)を丸々作るから、その撮影を担当して欲しい」と依頼をいただきました。

ロケ地はパキスタンの山岳地帯、フンザ。俳優や監督を含めた映画制作陣が国内でロケをしている間に、一人でフンザに赴き、現地のガイドの助けを借りながら必要なシーンを撮影するというものでした。様々な困難とプレッシャーがあったような気がしますが、実はあまり覚えていません。とにかく夢中だったのでそれを感じている余裕すら無かったのかもしれませんね。

帰国後、映画は公開され、写真集は好評をいただきました。映画のエンドロールには自分の撮った写真が何枚もスクリーンいっぱいに映され、さらに劇場で販売されたパンフレットでは1ページを割いてご紹介いただきました。これは一スタッフとしては異例のことだったのかもしれません。

さらに、映画を見たお客様からその写真集を買いたい、出版はしていないのか?という問い合わせもあったそうです。残念ながら実現はしませんでしたが、日本の映画業界の真ん中にいる方々とお仕事をさせていただけたことは本当に貴重な経験であり、自信にもつながりました。それが、写真を撮影することでまとまったお金をいただいた最初の仕事だったと思います。

それから、会社員時代にライター経験があったこともあり、「取材(ライティング)兼撮影」の仕事の依頼をチラホラいただくようになりました。たとえば沖縄の離島に行って、漁師さんのお話を聞いて撮影をして、それを記事にするというようなものです。

依頼者側には制作のコストを抑えたいという事情もあるでしょうし、カメラマンとライター、それぞれに分散して仕事を依頼するよりもスピーディーです。一人二役を務める自分は好都合な存在なのかもしれません。

━北海道で仕事をされるようになった経緯を伺えますか。

北海道に移住したのは、仕事がきっかけではありません。今のカメラマン兼ライターという仕事のスタイルのまま、自分がやりたいことをより深く追求するために選びました。やりたいことというのは、野生動物を被写体に撮影活動をするということ。主な被写体はヒグマです。

季節を問わず被写体と向き合うには、そこに住むべきだという結論に、最初に賛成してくれたのは妻でした。幸いにも、彼女の仕事も北海道にニーズがあり、期間限定ではありますが、夫婦で暮らすことにしました。

東京にいたころより仕事の量は減りましたが、僕のやりたいことをご理解いただいているクライアントから、メールマガジンの執筆や、電話取材でできるライティングの案件などのお仕事をいただきながら、動物を追いかける生活を続けています。

もちろん、北海道に住んでいることによるメリットもあります。釣り具のカタログ・Webサイト用の写真で「シチュエーションとして北海道の方が絵になるから、竿を送るので現地で撮ってほしい」というような依頼がありました。

他にも、「写真が撮れて、テント泊を続けるタフさがあり、クマの応対に慣れている人」という条件で、「アラスカ釣行取材」という仕事をいただきました。新発売の釣竿とカヤックをアラスカに運び、キャンプをしながら魚を釣り、それを動画・写真に収めるという内容です。

それはまさに、北海道に住んで、ヒグマを追いかけているカメラマンだからこそ、声をかけていただくことができたというもの。カヤックを漕ぎながら一ヶ月弱アラスカをテント泊で旅する、楽しいお仕事でした。

━フリーランスとして働くにあたって、心掛けていることについてお聞かせください。

大きくまとめると、「人とのつながりを大切にすること」✕「発信を続けること」です。
人とのつながりの良いところも悪いところも、フリーランスになると、それこそ何倍もの重みをもって受け止めるようになります。

フリーランスとは、大げさに言えば、丸腰で戦いに挑むようなものです。自分が苦労して撮ったもの、書いたものをダイレクトに評価されるので、作品や原稿を見せて断られたりスルーされたりすると、会社員のときの100倍も悔しいです。そんなときに大切なのが、腐らないこと。いただいた仕事はどんなものであっても感謝をすること。そして仕事をくれた人にその気持ちを素直に述べることを心掛けています。

また、森に入るにしても、自然を撮るにしても、たくさんの方の話を聞いて、視野を広げていくことが重要です。知り合いが増えると、例えばクマを追うときも、迷惑をかけられない、故に事故は絶対に起こせない、ということで、自ずと安全対策にも気が回るようになります。

独自のスタイルで動物を追っているので、現地の人にも面白いと思っていただくことができたのか、研究者や漁師の知り合いも増え、彼らの撮影をする機会にも恵まれました。これはまとまって発表する機会が、そう遠くない将来あると思います。

━「発信を続けること」についてはどのようにお考えですか。

アウトプットするものについては、主題から自分で選んで作った、自分自身のそのものですから、他の人に見てもらうときにはとても怖いです。でも、他人に見てもらわないと仕事に繋がることはありません。ですから「見せる」ことを、より大切に考えるようになりました。

当たり前ですが、ポートフォリオは見栄えのいいようにきちんとプリントしてファイルに入れる。文章は読みやすいように、ワードファイルで文字の大きさや行間を考えて設定し、メリハリをつける…などです。

さらに、フリーランスはどんなささいなことでも発信を続けることが大切だと思います。映画の仕事の依頼のきっかけは、ずっと続けていた写真ブログでしたし、研究者と知り合いになれたのも、自分が取り組んでいることをブログやSNSでシェアしていたからです。

もちろん、ネット以外でも、いつチャンスがあるかわかりません。きちんとしたポートフォリオを作っておくこと、タブレットでさっと写真を見せられるようにしておくことを、心がけています。

━東京の会社員から、北海道のフリーランスになって、変化したことはなんでしょうか。

まず変わったのは時間の使い方です。「効率」と「非効率」を使い分けるようになりました。
会社員のときの仕事は効率を追い求めるものが多かった気がしますが、フリーランスとして人とは違うものに挑んでいく以上、効率を度外視した仕事のやり方を徹底することも必要だと思います。

たとえば自身の作品撮りでは、効率的な手段に走ると、必然的に皆と同じ場所で、皆と同じような写真を撮ることになってしまうかもしれません。同じシチュエーションで誰よりも綺麗に撮る、というやり方もあるでしょうが、僕はそれをする力は無いし、また自分が目指す撮影スタイルでもありません。ここで守りに入って中途半端に効率を追い求めると、どっちつかず、ということにもなりかねない。
もちろん、自身の作品撮りではなく、直接的にお金をいただく仕事では、効率を求め、それをお返ししていくように心掛けています。

また、「非効率」である自身の作品撮りには〆切はありません。故にダラダラとしようと思えばいくらでもできるので、そうならないよう、時間の使い方には気を付けています。森の中で動物を待つときは7時間も8時間もじっとしています。それを何週間も繰り返すこともある。そういうときには、撮れない時間が続いて焦りが出ますが、グッと我慢します。焦って動いてしまっては、そこまでにやって来たことが無駄になるからです。

反対に、〆切のある仕事は、家にいる間に前倒しでやって、相手のレスポンスがあってから撮影に出かけるのが理想ですね。

━仕事の取り組み方については、どのように変わりましたか。

体力的には、会社員の頃より圧倒的にタフさが要求される仕事なので、休まないといけないときには思いっきり休みます。重い荷物を担いで歩くのもタフですが、もっとつらいのは、森の中で待ちの態勢に入ったときです。

たとえばブラインドテントの中で6時間も7時間も待ち、夜は車中泊で狭い思いをしながら寝る。それを4、5日繰り返して、週末は家で過ごし、月曜日から再び同じことを繰り返す…。おかげで体を壊したことがありました。年末に突然立ち上がれなくなり、嘔吐したのですが、医者に行くと、体の片側が異常に固まっていたそうです。もう若くもないですし、それ以降は、焦りを抑えて休むときはじっくり休むことにしました。

簡単にいうと、会社員のときは「仕事→休み→仕事」でしたが、フリーの現在は、「効率→非効率→休み→非効率→効率」という流れです。単純に仕事の種類が増えたともいえますね。

同時に、仕事を選ぶようにもなりました。まだまだ仕事を選べる身分ではないのですが、あまりにギャラの安い仕事はお断りしています。それはお金が欲しいからではありません。自分がアウトプットしたものの対価をしっかり考えていかないと、どんどん色々な意味で「安い」仕事に流されていきそうだと思うからです。

ただし、なにかに繋がる、自分のためにプラスになる、と感じた仕事はギャラが安くてもやらせていただくこともあります。クライアントの知名度や、仕事の規模の大きさは関係ありません。どんな人に出会えるかで、判断しています。

あとは直観。これは、経験や次のチャンスを捕まえるための、いわば先行投資ですね。機材などに関してもそうですが、人との出会いに関しても、フリーとして生きていく場合には、先行投資を惜しんではいけないと思います。

ちなみに会社員のときは、何も考えず、仕事は全て受けていました。どんな状態でも忙しいとは言わない。これはこれで、自分では良いスタンスだったと思っています。

━撮影環境として、北海道はいかがですか。

環境に関していうと、設備投資にお金がかかりますね。撮影機材やソフト、プリンタに加えて、アウトドアギアが必要です。トレッキングブーツ、キャンプ用具などの一般的な登山用品に加え、北海道ではスノーシューやアイゼンは欠かせません。

毎日のように森に入るので、会社員時代に比べて登山道具の傷みかたも激しいです。当然のことかもしれませんが、フリーランスはなんでも一人でそろえるので費用がかさみます…。

撮影機材に関しては、トラブルがあると死活問題なので、保険をかけています。道東にはカメラメーカーのサービスセンターがありません。郵送で修理・メンテナンスをお願いすると、その間その機材が使えなくなってしまうので、極力それは避けたい。だから埃や冬の外と社内(室内)の温度差による結露など、機材のメンテが必要になる要素は可能な限り避けるようにしています。

たとえば氷点下20℃にもなる冬場では、撮影が終わるとカメラをバッグの中に入れて密封してから車に積み、家に着くと玄関先などの家の中でも暖房があまり効いていないところに何時間か置いておきます。それからカメラを入れたバッグを部屋の中に移動し、そこからさらに時間をおいて初めてカメラをようやく取り出すほどです。

フィールドでは酷使するので、どうしてもカメラの扱い方は乱暴になってしまうのですが、メンテナンス等に関しては随分と大切にするようになりました。

━周囲の方たちとの関係についてはいかがですか。

会社員時代と大きく変わったのは、通い続けた撮影地(主に知床半島)で出会った人々が撮影の大きな力になっているということです。とはいっても、どこに行って、何を撮ればいいか?という直接的な情報を求めるのではありません。

人々の自然の中での生活や、僕が見たことのない昔のことや、季節の出来事を話に聞くことで、僕自身の目に入る風景に深みが出て、写真を撮るうえで、大きく役立っていると感じています。

あとは、研究者や保護に携わる方々と知り合えたことも大きいですね。何年にもわたって野生動物と関わってきた彼等からは、個人では知りえない動物の生態を聞くことができます。状況が厳しくて、どうしても動物が撮れないときは、撮影をきっぱり諦めて知人の家を訪ねて何時間もクマの話をして、家に帰ることもありました。

━二神さんのお仕事に興味を持たれた方に向けて、PRをどうぞ。

お仕事の依頼、お待ちしております!
●Sinh's site.(二神慎之介 公式サイト)
http://sinh11.com/
●実績:釣竿の販売サイト(アラスカ・北海道で撮影した写真)
http://jetslow4wear.com/products/detail107.html

そのほか、北海道でのフリーランス活動について、気になることを質問してみました!

撮影地でのネット回線はどのように確保していましたか。
自分にとってネットは家でするものでしたが、ノートPCとテザリングサービスを入手してからは、出先では常にWi-Fiの有無を確認して移動の計画を立てています。以前は道東の知り合いの家やお店でWi-Fiをお借りすることも多々ありました。パキスタンのロケのときは山間部で制作会社と連絡を取る必要があり、かなり苦労しました。
基本的には大都市に移動したらすぐに繋いで連絡事項を済ませるといった具合です。あとはメールよりもFacebookなどのSNSの方がやりとりが確実で早い場合もありますね。
休日の過ごし方について教えて下さい。
休日という概念はあまり持っておらず、デスクワークをするためにフィールドに出ることができないときが休みといえます。そういうときには、息抜きに近所の公園にリスや小鳥を撮りに出かけます。これも貴重なストックフォトになります。
美味しい、印象に残っている食べ物はなんですか?
漁船に同船して撮影したあと、帰りにもらったイカが最高に美味かったです。 あと、滞在中にいただいた羅臼町(らうすちょう)の新鮮なウニや、獲ったばかりの鴨や、とっておきのエゾシカのステーキも。
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