「誰もが境遇に左右されず、主体的に未来を選べる世界をつくりたい」バングラデシュに渡り、教育IT企業を設立した上田 代里子さん

バングラデシュ

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教育IT事業・上田代里子 さん

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新卒でB2B企業向けダイレクトマーケティング事業を展開するリクルートグループ(株)ネクスウェイに入社、2013年に退社した後、バングラデシュへと渡った上田代里子さん。世界平和に貢献したいという思いを胸に移住したものの、当初は日本との文化や価値観の違いに戸惑いや苛立ちを感じることが多くあったという。前職での経験をはじめ、バングラデシュで最初に企画したイベントのこと、2015年より設立した教育IT企業「Venturas Ltd」の事業内容についてまで、幅広くお話を伺った。

プロフィール

お名前
上田 代里子(うえだ よりこ)さん
現在の滞在地
バングラデシュ ダッカ
業種
教育IT事業
経歴
大阪大学外国語学部卒業後、2006年にリクルートグループ(株)ネクスウェイ入社。マーケティングソリューション推進部でSEM・ネット広告を活用したB2B企業向けウェブマーケティングプロモーションの提供や、新規事業立ち上げの責任者としてリードナーチャリングサービスの事業化推進を行う。2013年にネクスウェイを退社し、バングラデシュへ渡る。2014年に国際サイクリングイベント「Bangladesh Discovery Ride2014」を企画運営する為に事務局をダッカに立上げ、イベント全体の指揮実行を担当。2015年よりREAPRAグループに参画し、教育IT事業を提供する「Venturas Ltd」を設立した。現在は現地中高生向けにモバイルを活用した学習サービスアプリ「Janoki?」を提供している。

1分で分かる「バングラデシュで働く」ということ

①貧富の差が激しく、腕の良いプログラマーは市場価値が高い

②「ショモシャナイ(ノープロブレム)」の文化があり、約束を破っても気にしない

③ 保守的かつコネ社会なので、信頼を得るにはしかるべきコネが必要。親族や友人による口コミの影響力も強い

④徐々に日本のスタートアップ企業の設立が増えてきてはいるが、外部環境が非常にタフだということもあり、事業を行うにあたって競合はまだ少ない。

―大学時代はどのようなことを学ばれていたのでしょうか。

中南米の地域文化と言語の勉強をしていました。途上国開発に興味があったので、南米の貧困エリアの持続可能なコミュニティ開発をテーマに研究していました。フィールドワークのために大学3回生の時に1年休学し、エクアドルの首都・キトに滞在したこともあります。そのときは所属していたNGOの活動の一環である、スラムエリアの開発プロジェクトに参画していました。

―学生時代から積極的に海外に足を運ばれていたのですか。

はい、ずっとバックパッカーでした。途上国を中心に旅を続け、大学在学中だけでも30ヶ国近く旅をしたと思います。中南米や東南アジア、南アジアが多かったですね。

熱帯ジャングルや塩の砂漠など、世界の果てに思えるような地域でも、必ず人が暮らしています。そこで働き、生活をしている人々に触れることがとても好きでした。なので、学生時代は旅の旅費やエクアドルでの滞在費を稼ぐために、とにかく働いていましたね。アルバイトを3~4つ掛け持ちして、お金が溜まったら旅に出る、といった具合です。大学に在学していた5年間のうち、4分の1くらいは世界中を旅していたと思いますね。

―大学卒業後はB2B企業向けに情報通信を手段としたダイレクトマーケティングの支援を行う(株)ネクスウェイに入社されます。入社の決め手と、仕事内容について教えてください。

私には昔から、将来は世界平和に貢献したいという思いがありました。しかし、エクアドルのスラムエリア開発プロジェクトに参画したとき、NGOという非営利組織における資金面の問題や、自分の当時の能力や経験のなさに限界を感じました。そこで、まずは民間企業でビジネススキルや問題解決能力を磨きたいと思ったんです。

私が入社した2006年当時、ネクスウェイはリクルートから分社化した直後で、業界を横断し、様々な業種の企業を顧客に持ちながらスピード感のある事業展開を行っていました。ここで働けば、私も短期間で圧倒的なビジネススキルを身に付けられると思い、入社を決めました

ネクスウェイでは、BtoB企業に向けたダイレクトマーケティングのソリューション提案や、社内の新規事業立ち上げの責任者を担当していました。新規事業立ち上げでは、当時の世の中にはまだなかった、リードナーチャリング(見込み客育成)という新しいコンセプトのサービスをゼロから作り出しました。商談化しない見込み客に対して、Webやメール、テレマーケティングなどを組み合わせた「仕組み」全体でフォローし、生産性を高く保ちながら商談成果を上げていきましょう、という考え方です。

今でこそCRMやSFAといったツールの導入が一般的になっていますが、当時はまだほとんどの企業で浸透しておらず、まさに自社のサービスを売りながら市場そのものを創りあげていく、といったフェーズにありました。

サービスをゼロから創るというのは非常に力のいることです。しかし、リードナーチャリングの考え方に共感していただき、調査に協力してくださったお客さまの商談成果が、施策実行後2倍に改善されたときは本当にうれしかったですね。私たちのやっていることが世の中で正しいと判断され、お客様にも成果で返すことができたとき、大きなやりがいを感じました。

―2013年にネクスウェイを退社後、貧困改善を目的にバングラデシュに渡ったと伺っています。なぜ、行き先にバングラデシュを選ばれたのでしょうか。

ムハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞を受賞したことで、「マイクロファイナンス×バングラデシュ」というアイデアを知ったことと、2011年に1ヶ月ほど会社から休みをもらってバングラデシュを訪れたとき、非常に面白い国だと思ったからです。そのときは、ダッカにある大学の外国人向け短期集中コースで、マイクロファイナンス(小規模金融)を学びました。民間セクターが貧困層にはほとんどサービスを届けていないからこそ、貧困層に小口の融資や貯金などのサービスを提供するマイクロファイナンスのようなモデルが、BOPビジネス、すなわち貧困層を対象としたビジネスとして社会的影響を与えることができると知りました。

また、当時通っていたコースはBRACという、世界一規模が大きいと言われるNGO団体が提供していたのですが、この団体はバングラデシュ全土で様々なビジネスを展開し、数十万人の雇用を生んでいます。NGOがここまで国民に強い影響を与える国というのも聞いたことがなく、非常にユニークな国だと思い興味を持ちました。

―バングラデシュに渡った後、どのような活動に取り組まれたのでしょうか。

大学時代の友人が四国で毎年企画していた国際サイクリングイベントのアイデアを知る機会があり、友人もそのコンセプトを世界に展開したいという意志があったので、そのイベントのバングラデシュ版を開催することに決めました。

当時の私にとって、何をするかはさほど重要ではありませんでした。ただ、誰かが始めたものではなく、自分でゼロから始めた事業をやりきる必要があると考えていたんです。というのも、私の目的である途上国の貧困改善につながるビジネスを展開するには、以下の3つの必要性を感じたからです。

・特定の途上国に身を置いて、そこで生活する人々が抱える問題や社会問題を知ること
・途上国で何かをゼロから立ち上げることがどれほど大変なのかを経験し、自分に何ができるのか、何が足りないのかを知ること
・何をするにも人との繋がりが必要であるため、現地で人間関係を形成していくこと

これらのことを達成するために、私は国際サイクリングイベント「Bangladesh Discovery Ride2014」を立ち上げました。具体的には、バングラデシュから50人、世界中から50人のサイクリストを呼び、計100人で4泊5日間かけて200kmの道のりを自転車で旅する、というイベントです。私は発起人として、イベントの企画運営とすべての指揮実行を担当し、現地の様々な人を巻込みながら準備を進めていきました。

―実際にイベントは成功させることができたのでしょうか?

世界15か国と国内あわせて約90名のサイクリストが参加し、イベントは大成功でした。参加者の達成感も大きかったようで、本当に良かったです。

最初は現地に3人くらいしか知り合いがいなかったのですが、そこから半年かけて約300人に会い、その中から10社の企業スポンサー、10社の企業・団体サポーター、30人以上の現地人ボランティアを得て、現地の環境庁や日本政府の支援まで頂くことが出来ました。

また、イベントのテーマとして「女性のエンパワメント」「環境美化」「国際交流」の3点を設定していたのですが、女性サイクリストが全体の4割近くいたことは「女性のエンパワメント」に貢献できたと思っています。

ムスリム国のバングラデシュでは女性のタブーが多く、自転車に乗るという権利もほとんどない社会です。そんな中、参加してくれたムスリム女性サイクリストたちの変化にはすばらしいものがありました。

「女性だから自転車に乗ってはいけない」というメンタリティが、200km完走できたことにより大きな自信となり「もっと大きなことにチャレンジしたい。女性であることが何かにチャレンジすることのハードルになるわけではない」と思えるようになっていました。

パキスタンやアフガニスタンから参加したムスリム女性サイクリストもいて、彼女たちの国でもポジティブなニュースとして取り上げられたようです。

―その一方で、大変だったことも多かったのでは?

正直に言って、人生でこんなに苦しい経験をしたことはないくらい大変でした(笑)。

ほとんどコネなく初めて飛び込んだ国で、何もかも日本とビジネスルールの違う環境で、現地のパートナーを見つけ、ボランティアを募り、スポンサー提案営業をし、参加者向けのプロモーション活動を行い、警察や政府の許可を取り、バックアップを獲得し、あらゆる準備の指揮をし、5日間無事故・無事件でイベントを開催しなければならないのは至難の業でした。準備から後処理などを含めて、約8ヶ月の期間を要しました。

―2015年より、シンガポールに拠点を置き、東南アジアで産業の創造を図るREAPRAグループに参画し、教育IT事業を提供する「Venturas Ltd」を設立されたそうですね。会社の事業内容について教えてください。

バングラデシュの現地中高生向けにモバイルを活用した学習サービスアプリ「Janoki?」を提供しています。

「Venturas Ltd」のミッションは「すべての人が、境遇に関わらず未来を主体的に選択できる社会を作る」ことです。バングラデシュは学生人口が3000万人に上るにもかかわらず、公教育のシステムが充実していません。質の高い授業を受けるために子供たちはお金を払い、塾に通っています。

この学校外支出額の割合は高く、所得に関わらず家庭所得全体の約20~40%を占めており、国民の家計を圧迫しています。また、授業費の高い塾ほど先生の質も高く、たくさんお金をかければかけるほど質の良い教育を受けられ、良い学校に進学でき、高い収入が得られるようになる、という社会システムになってしまっています。

私たちは「質の良い教育を民主化すること」をスローガンに掲げ、全ての子どもたちが低価格で良い授業をうけ、所得に関わらず自由に未来を選べるようになることを支援したいと思っています。

そのためにはテクノロジーの活用が欠かせないと信じており、今や一気に普及が進んでいるモバイルをプラットフォームとし、その中で教育コンテンツを提供しています。バングラデシュは貧困のイメージが強いかもしれませんが、携帯電話の普及率は2016年時点で国民全体の約8割にまで伸びています。インターネットの常時接続率は3割程度ですが、2018年までに普及率8割を目指すことが、国の政策として掲げられています。

2016年にパイロット版のAndroid Appsをリリースしましたが、リリース後約2か月で6000人以上の学生ユーザーを獲得しました。中高生向けの学習アプリとしてはバングラデシュ史上最速のユーザー獲得スピードだということで、国内のメディアにも何度も取り上げられています。

今後、プロダクトを磨くとともに、より広く・早く、質の高いコンテンツを届けるためのモデルを磨いていこうとしているところです。

今後3年で、バングラデシュにおけるe-learningのデファクトスタンダードになることを目標にしています。

―良い教育を受けるにはたくさんのお金が必要、とのことですが、バングラデシュは貧富の差は激しいのでしょうか?給与水準についても教えてください。

貧富の差は激しいですね。

給与で言うと、普通の新卒のオフィスワーカーで平均約1.5万タカ(約2.05万円)※ですが、低所得者が就く清掃員やメイド、土木建設員、リキシャ(人力車のドライバー)などだと、日払いで数百タカ、月給約1万タカ(約1.45万円)です。
※2016年5月5日 バングラデシュタカ/円 1.3668の為替レートで計算。以下、すべて同じ。

その一方で、腕のいいプログラマーは市場価値が高く、新卒3年目で5~6万タカ(約6.8~8.2万円)もらっている人もいます。プロジェクトマネージャーレベルになると、20万タカ(約27.3万)以上稼ぐ人材もいますね。

―バングラデシュで働く上で理解しておくべき、ビジネスルールや価値観はありますか?

いくつかありますが、例えば「ショモシャナイ(ノープロブレム)」の文化があります。バングラデシュ人は日本人のように「言質をとる」という概念が無いので、こっちが約束したと思っていても、彼らからすれば約束してない=守る必要が無い、という考えなので、破ったとしても全く気にしません。

そのため、約束の時間に来ない、やると言った仕事をやらない、送ると言った書類を送ってこない、なのに「ノープロブレム」で済まそうとすることが非常に多いです。そもそも今日社員が出社するかもわからない、といった状況にもなりかねないので、ここは企業としての生産性を保つために、きっちりとコントロールしなければならず、とても大変です。

現地の社員で「熱が103度でた」「靴が盗まれて外出できなかった」というありえない理由で無断欠勤する人がいたり、「何人親族が死ぬんだ!」というくらい「親族の葬儀」で休もうとする人がいたり…。契約書を取り交わし、サービスを提供した後に、「代金は支払わない」と取引先の大手企業の社長に駄々をこねられたこともあり、日本では考えられないことが次々と起こります。

また、バングラデシュは保守的かつコネ社会なので、しかるべきコネのない人は信用されにくいです。口コミ文化も強く、意思決定には親族や友人、近所の人たちといった周囲からの情報が大きく影響します。そのため、口コミに入ってこない商品やサービスはコミュニティで信頼を得るのに時間がかかります。それを理解した上で正しいマーケティングプランを練る必要があります。

―日本の価値観は一切通用しない環境ですね…。
日本人がバングラデシュで生活しようと思ったら、相当な覚悟が必要になりそうです。

生活環境と労働環境がタフすぎるので、強靭な神経と身体がなければもたないかもしれません。インフラもまだ整備されていないので街中砂ぼこりだらけですし、雨季には道路に水があふれて主要道路が通行止めになり、企業活動が止まるんじゃないかと思うくらいダメージを受けます。

さらに、年中を通じて道路渋滞がひどいです。今オフィスを出たら、何時間後に戻って来られるかわからないときも度々あります。

これらに加えて、文化や価値観の違いがありすぎて、戸惑ったり苛立ったりすることは星の数ほどありますね(笑)。

―バングラデシュでは、上田さんのように会社を設立したり、フリーランスで働いたりしている日本人は少ないのでしょうか。

フリーランスはあまり聞かないですが、日本のスタートアップ企業の設立は少しずつ出てきてはいます。多いのはITのアウトソーシング企業ですね。

また、もともとバングラデシュのGDPを支えている縫製業界の駐在員の方や、それに関連する品質管理や商社、会計事務所の方もいらっしゃいますね。

―上田さんの考える、バングラデシュで働くことのメリット・デメリットは何ですか?

メリットは人口が多く、国全体は長期的に見て成長していくところですね。また、競合も少ないです。デメリットは投資期間が他国と比べて相対的に長くなる可能性が高いことですね。あと、生きるのが大変、というところです(苦笑)

―バングラデシュの物価や住環境などについて教えてください。

外国人が健康的な暮らしをしようと思ったら、そんなに安くないです。収入格差が大きく、それぞれの所得層向けにサービスプロバイダーがいるため、水準を下げれば安く暮らすことはできますが、日本人にはなかなか厳しいかもしれません。

外国人居住区では土地の物価が高く、物件にもよりますが家賃は6~10万タカ(約8.2~13.6万円)くらいかかります。一人暮らしするには高すぎるので、私はほかの外国人と3人でフラットシェアして家賃や光熱費を折半しています。

駐在員の方は一人暮らしが多いですが、ダッカには国際機関NGOで働く外国人も多く、そういう人たちの中ではフラットシェアをすることは一般的だと思います。

-ネット回線の速度やコストについて教えてください。また、Wi-Fi環境は整っていますか?

ネット回線のスピードは日本に比べると遅く、停電も頻繁に起こり、そのたびに開発が止まります。個人用のインターネットだと、一般的には月間2GBで1500タカ(約2,050円)です。Wi-Fiはオフィスをはじめ、街のお洒落なカフェでは整い始めています。

-バングラデシュで流行っているサービスがあれば教えてください。

都市部の渋滞が半端なく酷いので、デリバリーサービスが流行っています。レストランのメニューをデリバリしてもらえる「foodpanda」や、日用品を届けてもらえる「chaldal.com」というサービスが伸びていますね。私の家でも、これらのサービスを使うようになってからライフスタイルが変わりました。

ありがとうございました。それでは最後に、「Venturas Ltd」の事業に興味を持たれた方へのメッセージがあれば、お願いします。

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uedayoriko@venturas-bd.com

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