“ITの力で地域を元気に。”災害のどん底を乗り越え、大分県竹田市でWeb、ドローン動画製作の会社を経営する工藤 英幸さん

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IT/情報通信サービス・工藤英幸 さん

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大分県の南西部、熊本県との境に位置する竹田市は、情緒ある城下町と温泉、豊かな自然が共存するのどかな地方都市。しかし高齢化が進み、過去には高齢化率で日本一になったこともあるという。そんな竹田市で、Webサイト製作、ドローン空撮サービスをはじめとするIT関連ビジネスを手がける(株)情報開発研究所の代表 工藤英幸さんは、Uターン組の1人だ。

東京の企業でITエンジニアとして経験を積んだ後、故郷へと戻り、会社を立ち上げたという工藤さん。今回はその経緯をはじめ、工藤さん自身も被災したという2012年の九州北部豪雨、そして熊本地震に関する取り組みなどについて、話を伺った。

プロフィール

お名前
工藤英幸(くどう ひでゆき)さん
現在の滞在地
大分県竹田市
業種
IT/情報通信サービス
経歴
大分県竹田市生まれ。大学進学で上京し、卒業後は都内の報道機関でプログラマー、フリーランスエンジニア、早稲田塾の情報部門責任者、ヤフーバリューインサイトでプロジェクトマネージャーを経験。その後、竹田市に戻り、2011年に株式会社 情報開発研究所を立ち上げ。Webサイト製作やドローンを使った動画の製作、講演活動、講習会など、竹田市の企業・団体ほか幅広い対象に向けて、IT活用を支援している。

1分で分かる「大分県竹田市で働く」ということ

①高齢化率で日本1位になった竹田市では、人やお金、情報も不足。ITを活用し、課題を解決できる可能性がある

②いっぽう閉鎖的な部分もあり、ITビジネスへの理解が進まず、なかなか上手くいかないことも

③登記のために定款を作成しようとしたら、IT企業の定款を作成した経験を持つ行政書士がいなかった

④竹田市はたびたび豪雨災害に見舞われてきたが、都度、復興を遂げてきた

ヤフー、早稲田塾など、東京で築いたキャリアを捨て、故郷・竹田市へ戻った理由

─工藤さんは東京の大学を卒業後、都内の企業でITエンジニアとして第一線で活躍されていたわけですが、なぜ故郷に戻ろうと?

大学進学のために上京して以来、気付けば15年ほど東京に住んでいました。大分の方言はなまりが比較的強くないからか、上京してわりとすぐに道を聞かれたりして、よく周囲から東京生まれに間違われていました。でもその度に違和感を覚えて、「自分は大分県の人間や」という気持ちが湧き上がっていました。

また、かつて結婚を考えた相手が生まれも育ちも東京で、東京でしか生活したくないというタイプの人でした。そして当時、故郷には私が東京でしていたようなITを駆使する仕事の口がまだ無かったので、「このまま東京に永住することになるんだろうな…」と思った途端、なぜかどうしても故郷に戻って暮らしたいという思いが芽生えたんですよね。

─その後、2010年1月に竹田市へUターンされてから2011年4月の会社設立まで、1年ほどタイムラグがあります。その間は、フリーランスとして活動されていたのですか?

はい。ちょうど竹田で道の駅などを運営する社団法人「農村商社わかば」が立ち上がる頃で、フリーでその手伝いをさせてもらっていました。その後、地元の企業様、団体様と交流を持つようになり、以降、ホームページや動画の製作、ブログの講習会開催など、ITに関して自分ができることを、いろいろと請け負ってきました。

─独立にあたり、不安はありませんでしたか? 

ありませんでしたね。しかし、故郷には決死の覚悟で戻りました。大げさに聞こえるかもしれないですが、私にとってある意味それぐらいの心構えがないと、東京でのいろいろな可能性をあきらめてUターンすることはできませんでした。

また、故郷が極度に衰退していることは知っていたので、どこかに就職するだけでなく、フリーランスになることも重要な選択肢の一つでした。周囲からは、都会で起業しても厳しい場合が多いのに、さらに厳しい環境にある竹田で起業するなんて、尋常ではないと思われていたことでしょう。でも、私は一個人として挑戦してみたいと考えたんです。

同時に、自分が東京で培ってきたスキルやアプローチを故郷で実践したら、どうなるんだろうという興味も強くありました。

─工藤さんはUターン後の2011年2月に、内閣府のプロジェクト「農村六起」で、ふるさと起業家として認定されたんですよね?

「農村六起」は、農村の6次産業向け企業人材を育成しようというプロジェクトです。きっかけは、「地域が抱えるさまざまな経済的・社会的な課題を、民間の一市民の目線から実態をとらえたうえで向き合っていけるような事業を手がけたい」、そして「そうした課題を都会に住む人々にも知ってもらいたい」と思ったことです。

竹田市はかつて、高齢化率で日本一になりました。原因の一つは、若者のうち9割が高校を卒業すると市外へ出ていったまま戻ってこられないためで、背景には、竹田市と周辺に大学と就職先になる企業が少ないという事情があります。プロジェクトでは、そんな窮状を何とかしたいという思いで起業プランを練り、二度の書類選考を経て、ようやく東京で開かれたプレゼン大会に出場しました。

その最後で「私の故郷では、みんなが戻ろうとしても戻れないんだ!」と訴えかけところ、元アナウンサーでNPO法人ふるさと回帰支援センターの見城美枝子理事長から、「あなたのやる気が伝わってきたわ。やっとこのふるさと回帰の流れを体現する人物が表れたんだと思う」と評価いただいたほか、同センターの高橋公専務理事から、「起業家はタフじゃなきゃダメだぞ、あきらめるな」などと、温かいお言葉をいただきました。

同プロジェクトは貴重な経験になりましたし、ふるさと起業家として認定を受けたことは、法人化への大きなステップになりました。

※平成23年度で事業は終了

資金が尽きた頃に襲ってきた九州北部豪雨。訪れた奇跡の転機

─その後、2011年4月には法人化されています。故郷・竹田市でIT関連ビジネスを手がける会社を設立されたわけですが、ご苦労はありませんでしたか?

まず、設立登記のために定款(ていかん)を作成しようとしたところ、当時IT企業が無かった竹田には、IT企業の定款を作成した経験を持つ行政書士がいませんでした。そのため自力でいろいろ調べて、こちらで元になるものを作ったうえで、行政書士に作成を依頼しました。

私は経営学部出身なのですが、大学で得た知識が思ってもみない形で役立ちました。それから定款の電子認証を行いましたが、大分県の県南豊肥地区では初だったそうです。他にも、閉鎖的な田舎で起業をするとITビジネスへの理解がなかなか得られなくて、上手く運ばないことも本当にたくさんありました。

※会社の組織活動を定めた根本規則、またはそれを記した書面のこと

─九州北部豪雨が発生した2012年7月は、起業から1年あまりのタイミングですね。当時、ご自身も被災されたとか。

実はちょうど自己資金が底をつき、いわゆる起業後の死の谷にいる状態でした。そこに追い打ちをかけるかのように、九州北部豪雨が襲いました。竹田市には大きな被害が出て、案件が次々キャンセルに。被災後、自宅の近くまで押し寄せた土砂や流木を片付けながら、「もう廃業するしかない」と絶望的な気持ちになったことを覚えています。

そんななか偶然、知り合いの県庁職員の方がボランティアセンターで復旧活動を推進する様子を伝えたFacebookの投稿を見たんですよね。すると、「もしかしたら自分にも何かできることがあるかも知れない」という考えがとっさに浮かびました。

九州北部豪雨による被災直後の竹田市の様子

もともと竹田市は豪雨による水害が多い地域で、私自身、九州北部豪雨の前にも昭和57年と平成2年に、2度被災した経験がありました。人智を超えた災害を前に、毎回為す術もないことが悔しくて、「どうせやめるなら、最後に良いこと、やりたいことをやってみよう」と覚悟を決め、すぐボランティアセンターへ連絡しました。

─具体的にどんな協力をされたんですか?

ボランティア派遣を支援する災害復旧システムです。システムに被災状況と被災者がボランティアに求める内容を入力すると、関係者の間で情報共有ができる仕組みでした。当時、全国から駆けつけた災害ボランティアは3,000名を超え、混乱した現場でその情報を紙で管理することは、困難を極めていました。

そこで、幾度もの竹田市での被災経験を生かしてシステムの仕様を簡潔にまとめ、通常は3ヶ月から半年かかる開発を1週間で完了し、運用を開始。すると、現場に一定の秩序が生まれたほか、関係者からは迅速な対応を喜んでいただき、「情報が整理しやすくなった」「操作が直感的で使いやすい」などとお褒めの言葉もいただきました。

熊本地震後、地域を元気づけたいと『岡城』の独自メディアサイトを立ち上げ

─今回の熊本地震では竹田市の被害は軽微だったそうですが、震災後、取り組んでいらっしゃることはありますか?

地震の発生直後に情報が錯綜するなか、弊社のサイト内に「熊本県熊本地方を震源とする地震関連情報」のページを立ち上げ、熊本・大分の災害に関する情報をWeb上で集めて配信したところ、アクセスが通常の20倍から30倍になりました。

また、農村商社の立ち上げを共にした元・道の駅店長が、甚大な被害を被った震源地、熊本県益城町の出身でした。その方からの依頼で、現地で必要な支援物資やその受け入れ場所ほかについての情報を発信し、他県などからの支援物資が現地の方々へとなるべく速やかに届くようにお手伝いしました。

さらに、地震発生後から観光客が激減して苦しむ地元・竹田を元気づけるために、天空の城として知られる豊後竹田の「岡城」に関するサイト、『岡城.com』を立ち上げました。実は地震発生の直後から、「岡城は大丈夫?」「石垣はどうなった?」と度々聞かれることがあったため、そのニーズと大切さに気づくことができました。

ドローンによる岡城の空撮動画などを公開すると、多くのアクセスがあり、「ほとんど被害の無い様子を見てほっとした」などと、安心の声が寄せられました。

岡城.com http://okajou.com/

─なるほど。今回はシステムではなく、自ら立ち上げたサイトで映像や情報を発信し、地元に貢献されているんですね。ちなみに、御社では災害時以外にもドローンによる撮影サービスを提供されています。そのきっかけを伺えますか?

私は普段から、スタッフそれぞれの長所を生かすように心がけて、指導、業務の割り振りを行っています。その一環として、ロボコンの県大会で優勝した経験を持つスタッフの工学知識とラジコン操縦の腕前を活かして、検証を行ったことが始まりです。

最近では、建設会社をはじめ、大規模施設を運営される企業様・団体様が、その把握のためにドローンによる空撮を発注されるケースが増えています。

※ロボットを製作し創造性や操縦技術を競う大会

また弊社では、地域で暮らす人々に共通の有意義な場所、建物については、発注が無くても社会貢献として空撮していきたいと考えています。例えば、2015年末に竹田市文化会館という大型施設が解体される時には、自主的にドローンでその様子を撮影しました。ネットで映像を公開すると、大規模な解体工事を空撮した動画自体が珍しいようで、アメリカをはじめ海外からも多くの反響をいただいています。

・ありがとう 文化会館 大規模解体工事現場ドローン空撮実験 Part.1 (株)情報開発研究所
https://www.youtube.com/watch?v=xc0YQ1qAKWo

─Webサイト製作では、他にどんなものを手がけられていますか?

弊社のお客様は、ほとんどが民間の企業、団体様となります。最近では、大分県内で屈指の養蚕農家だった方が、爬虫類などのペットの餌になるシルクワーム(蚕[かいこ]の幼虫)のビジネスを展開されていて、それを全国の卸・仕入れ業者様に認知していただくためのサイトを製作しました。

動画で、シルクワームそのものや育て方を紹介するコンテンツを掲載し、関連する事柄を深く掘り下げています。珍しい事例だけに難しい面もありましたが、現在は全国から商談の問い合わせをいただいています。

・シルクワームのサンライズ
http://silkworm.jp/

他にも、竹田市菅生(すごう)地区の農家10名で組織された、トウモロコシとその加工品を販売する「とうきびの郷すごう」の動画を毎年、製作・公開しています。それが、日本テレビのバラエティー番組「ザ!鉄腕!DASH!!」の目にとまり、トウモロコシの「すごあまコーン」が番組内で取り上げられると、放送直後から数秒おきに発注があり、驚異的な売上を記録しました。

・とうきびの郷すごうからのメッセージビデオ 2013
https://www.youtube.com/watch?v=RO93ud8Jt2U

そうして地元の企業様、団体様のビジネスチャンス創出や売上アップに貢献できたときの達成感は何にも代えがたいですし、成果が出た喜びを顧客の皆様と共有できると、やはりとても嬉しくなりますね。

学生から社会人まで、幅広い対象を相手にセミナー・講演会を開催

─いっぽうで、工藤さんは学生から社会人まで県内の幅広い方を対象に、ITに関するセミナー・講演会を実施され、普及に務められているんですよね?

はい。これまでブログ講習会から人材育成としてのICT活用、市議会のICT活用研修まで、さまざまなセミナー・講演会を開催してきました。

大学が経営学部出身なので、ITの技術的なことは、基本的に独学と業務の中で身に付けてきました。だからこそ、ITを専門的に学んでいたようなエンジニアの方と比べ、一般の方がITを活用しようとするときには何につまずき、何がわからないのか、より近い視点で理解できます。そのことが、登壇や指導時に役立っています。

2015年10月、「おおいたITフェア」ではドローンについての講演を行い、動員数で1位になりました。大分市内にある大規模ホールが舞台でしたが、場内は満席で、入りきれないほど多くの方が会場に足を運んでくださいました。

弊社では、数々のドローンに関する事件が起こる前から、すでに実験を始めていました。ですから講演会では、未知の部分が多いドローン活用の可能性について、体系的かつ実用的にまとめた貴重な情報を提供できたと感じています。

─大分県主催の「高校生アイディア・ハッカソン」にも、企画から携わられたとか。ハッカソンというと、エンジニアなどが集まり、短期間でサービスやソフトウェアを開発するイベントですよね。その高校生版ということでしょうか?

そうですね。前回は2015年9月に3日間に渡り、「高校生活を楽しくするために(困りごとを解決するために)、あったらいいなと思うもの」というテーマで開催されました。Googleベンチャーズ発祥のスプリント(短時間で製品を改良する手法)をベースに、高校生がアイディアを出してプロトタイプを開発。プレゼン資料を作成して、発表するという内容でした。

参加した33名の高校生たちは6つのチームに分かれ、分担して作業を進めていきました。各フェーズは短い時間で区切られ、高校生たちはその中でタスクをこなし、アウトプットを求められます。ですから迷っている暇はありません。そうした進め方は、通常業務ならデスマーチになりかねませんが、イベントでは参加者の創造性を引き出す役割もあり、効果的でした。

また、プログラマーやデザイナーなど、高校生にはそれぞれ役が割り振られるので、将来やってみたい仕事を擬似体験できるメリットもありました。イベント後、生徒から「楽しかった」という意見が多く飛び出したのが、印象的でした。イベントを通して、参加した生徒がITに強くなったり、社会に出るきっかけのようなものを掴める場を、提供できたかと思います。

─今後のビジネス展開について教えてください。

弊社では、『岡城.com』を初め同じ竹田市内の観光スポット、長湯温泉(長湯温泉Japan)や久住高原(久住高原Japan)、熊本の阿蘇(阿蘇熊本 Japan)に関するエリアサイトも開設しています。微力ながら、そちらを充実させて竹田や近隣の風評被害を払拭し、地元経済を活気づけるお手伝いができればと考えています。

久住高原Japan http://kuju-kogen.jp/

長湯温泉Japan http://nagayu-onsen.jp/

阿蘇熊本Japan http://aso-kumamoto.jp/

『岡城.com』については、ドローン空撮動画や360度映像などの先端技術を駆使した新時代のホームページ製作を体現するメディアとして、また長湯温泉Japanと久住高原Japan、阿蘇熊本Japanについては、大自然の素晴らしさにアクセスできるメディアとして、好評をいただいています。長湯温泉、久住高原、阿蘇熊本の各エリアサイトでも、ドローン空撮動画をお楽しみいただけます。ぜひご覧ください。

─最後にPRをどうぞ。

弊社では熊本地震後も変わらず、Webサイト製作・保守管理等のIT関連業務を推進しています。これからも、厳しい経済環境下で磨かれたIT企業としてのノウハウ・スキルを活かし、社会とお客様にとって必要なこと、役に立つことを行い、成長を遂げていきます。

弊社の事業にご興味を持たれた方は、下記までお問い合わせください。
http://jouhou-kaihatsu.jp/mail/

その他、大分県竹田市での生活について伺いました。

竹田市の物価水準について、教えてください。
一概には言えないですが、土地は安いですね。でもそれ以外の例えば都会の量販店で大量に安く売っているような商品は、こちらでは高いことがよくあります。
人口が多い都会では、商品の単価を下げても客が多いため利益が出やすく、値下げしやすいのですが、竹田のように人口が少ない場合、商品単価を下げると総売上が減る可能性が高く、値下げしにくい事情があります。
また、こちらでは小規模の農家が作る野菜は、市場の動きに左右されにくい傾向があり、大規模農家で作られた野菜が都会で値上がりするような時にも、価格が安定して抑えられていたりします。
私自身、知り合いの農家の方からたまに野菜をおすそ分けしていただくので、そういうご厚意を考慮すると、物価もまた違ってきますね。
竹田市の食文化について教えてください。
大分県はからあげの消費量が多く、からあげの聖地と言われるほど。なかでも丸福様など竹田市の店舗の多くでは、基本的に鶏ももを一本まるごと揚げたものをからあげとして販売しています。サイズで言えば、鶏肉の天ぷら「とり天」が他の地域のからあげに近い感じですね。
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