ガーナ初のファッション・ライフスタイルグッズ特化型オンラインショッピングサイトを立ち上げた起業家女性。金融のスペシャリストだった彼女が、なぜ、まったくの異業種へ転身し、縁もゆかりもなかったガーナという国でショッピングサイトを立ち上げるに至ったのか…。オンラインショッピングストア『VIVIA.com.gh』の共同創始者・大山知春さんに、ガーナでの起業に至った経緯とガーナでのビジネスについて詳しく聞いた。
プロフィール
① 時間通りにミーティングが始まることはまずない
② 電話をとらない会社もあり、会って初めて物事が進むことも少なくない
③ ガーナの携帯電話普及率は成人で100%
④ JICA隊員の活動もあり「日本人は良いことしかしない」と言われるほど良い印象を持たれている
-大山さんの経歴を教えてください。
女性が自立して生活できる「食いっぱぐれない」仕事として、まず、“金融”の道に入ったんですよ。私の母は、子供のために離婚せずに、何個もパートを掛け持ちしながら、自分のためには一切お金を使わない人でした。そんな母の姿を見て育ったことが大きかったと思います。 ファイナンシャル・コンサルタントとして小さな会社で自己完結型の仕事をして、20代後半で自分が目標としていた年収を稼げるようになりました。
仕事は好きだったんですが、リーマンショックの頃、大きなロスを抱える投資家を目の当たりにして、「もっとコンサルタントとして賢明な判断、アドバイスを行えるようになりたい」と思う気持ちが強くなったんです。同時に“金融”という”実業”とは離れた仕事に少し“空しさ”を感じていました。学ぶ機会の少ない環境に閉塞感を感じて「知見を広めたい!」と考えるようになって、次の目標に目が行くようになって…。 そんな時にビジネススクールの存在を知りました。ビジネススクールで何を勉強できるかなんて全然知らずに、直感で「これだ!」と思い、飛び込こんでしまったんです(笑)
そして、オランダのNyenrode Business Universityに留学しました。ここを選んだのは…一目惚れです。 「ビジネス界との結びつきが強いな」ってすごく感じたのもありますね。
1年間、世界19カ国から集まった39名の学生たちと、同じキャンパス内の寮で家族のように暮らしました。そんな中で、 特にアフリカ出身者の同僚たちとは気が合って、自然と仲良くなっていきました。時おり「自己中心的だな」と感じる個人主義の欧米人と比べると、周囲との協調や調和を大事に考えるアジア人と通じるところがあったように思います。みんな、教養が高くて、自国の歴史や文化に精通していて、それでいて気張ったところもなく、オープンで…これまで関心がなかったアフリカに好感を持つきっかけになりましたね。
-そこから起業するのにガーナを選んだ理由はあるんですか?
ガーナは近年、商業用オイル生産が始まったこともあり、経済成長が特に目覚ましい国だったんです。それなのに色々なビジネスの話をしている中で、ガーナにはまだ(当時)、オンラインショッピングサイトがないと知ったんです。 その頃の日本ではオンラインショッピングの急成長モデルがありました。それを目の当たりにしていた私には「ガーナは大きなビジネスチャンスの場だ!」って映ったんですよね。
そして、クラスの中でも極めて優秀だったガーナ人(現在の同僚)と共に起業を目指し、プランニングを始めました。2013年はじめのことです。 2013年7月に卒業論文を兼ね、現地で1ヶ月以上マーケットリサーチを行って好感触が得られたので、その最中に会社登記を行いました。まだ、資本金の目処などは全くついてなかったんですけどね。
そんな私の様子をブログに書いていると、前職でお世話になっていた日本人投資家の方が「アフリカでやりたいことがあるならばやってみたら良いよ」と、シードファンドを投資して下さると申し出てくれたんです。大きな責任を感じると共に、「これは流れが向いている!」と感じて、その瞬間、迷わず私もガーナに行って働くことを決断しました。
-ガーナで働く時に抑えておくべきルール・文化について、日本と異なる価値観やビジネスルールはありますか?
一言で言えば「日本の真逆」といったところですね。時間通りにミーティングが始まることはまずありません。2、3時間ずれるのは良い方で、ミーティング日が変更になることもよくあるんです。1週間前にミーティング約束なんてしようものなら、必ず忘れられるので、前日のリマインダーは必須ですよ。納期も同じ。Emailを送って、返信があるという方が稀かもしれませんね。電話ですら取らない会社もあって、“会って初めて物事が進む”っていうスローな国なんです。 その代わり、アポなしで飛び込んでいっても、大抵、嫌な顔をせずに会ってもらえます。フレンドリーな人が多くて、突然の訪問にも迷惑がられることはありませんね。
文化として覚えておきたいのは、「物の受け渡し、握手は、右手で行う」というのが“礼儀”ということです。“身だしなみ”も重要です。ガーナ人はピシッと身体にフィットするものを好み、フォーマルにドレスアップします。靴の汚れを気にするビジネスマンも多いですよ。
一方で、日本と似ているところもあります。多くの会社は封建的ですし、上司・年配者が絶対です。日本人のように、ガーナ人も「No」と言えない方が多いです。
ただし、日本人のように謙遜することはなく、悪気はないのですが(まあ、だから厄介なのですが)、楽観的すぎて自分のキャパシティー判断を誤り、「できる」と約束したことができないということが往々にしてあります。これはマネージメントをする上で、頭を抱えるところですね。
つまり、日本そのままのビジネス習慣を持ち込むと、何もできず、大きなストレスになります。 幸い、私の場合、ビジネススクールでの異文化交流が良い下準備となり、助けてくれましたが、それでも閉口することは多くありましたね。
-ガーナにフリーランスの方はいるんでしょうか?
ガーナのビジネスを一口でまとめて語ることは難しいです。まずは“フォーマルセクター”、“インフォーマルセクター”と分けて考える必要があるんです。 だいだい銀行口座を持つ人は、人口の3割と言われていて、この層が“フォーマルセクター”に属する会社員になります。つまり会社員という職種は、人口全体で見れば少ないんです。
では、その他の“インフォーマルセクター”とはどういう人たちなのかというと、 大工、電気工、車の修理工などの職人、農家、漁師、小さなコンテナなどで売店を営む人、頭に物を乗せて、路上で売る行商人など、専門的で個人的な商売をしている人たちです。 ガーナは渋滞が酷いのですが、渋滞で止まっている間に、色々な物売りがやってきて、つま楊枝、ティッシュペーパーなどの日用品から、子供のおもちゃ、果物、軽食、飲み物、新聞まで買うことができるんですよ。それが“インフォーマルセクター”の人たちの仕事なんです。
-なるほど。ある意味、フリーランスの町でもあるんですね。
-支払いの経路はどうなっているんですか?
会社員の給料は、銀行振込が一般的ですね。オフィスワーカーの生活は、あまり日本と変わりませんよ。
-ネット回線の速度とコストについてはどうですか?
フリーWi-Fiなどはありません。アフリカではまだ、通信はお金を払って買うものなんです。携帯電話はSIMフリーですから、好きな携帯電話を購入して、好きな通信会社のSIMを入れるだけです。ロックがかかっているのは、むしろ日本ぐらいですね(2014年11月現在)。料金は後払いも可能ですが、プリペイドで利用する人が多く、町角の至るところでスクラッチカード式のクレジッドが売られています。1枚1セディから20セディ、日本円で言うと35円ぐらいから700円ぐらいのカードが選べます。 ガーナの携帯電話の普及率は、成人で100%と言われ、どんな田舎で暮らす人も携帯電話を持っています。
一般家庭でブロードバンドを引いているところは、ほとんどありません。また、住んでいる地域によっては、回線がまだ引けないところも多くあります。オフィス以外では、インターネットは携帯電話からテザリングして使用するのが一般的なんです。
TechLoy によると、2012年3月時点で、ガーナのブロードバンドのスピードは5.14Mbpsと、アフリカで一番早いというデータがあります。 弊社では、敷地内にWi-Fiが入るようにVodafoneのブロードバンドを導入していますが、導入コストを除くと、毎月、60ドルぐらいの出費ですね。去年は不都合は感じなかったのですが、ネットワークを使う人が急速に増えているため、負荷がかかりすぎて、ここ最近は、よくダウンするようになったんです。そのため最近では他のバックアップも持っています。
-物価・給与水準はどうなんでしょうか?
アフリカというと、物価が安いと想像される方が多いのですが、大きな間違いなんです。ガーナでは二次産業が発達していないため、「物」は海外から輸入されてきます。関税も高いので、物の値段は高くなります。例えば、スーパーで売られているレタスは、鮮度も悪く、葉先が茶色くなっていても、一玉2000円近くするんです。一方で、現地で取れるものは安くはなりますが、首都アクラでは、それでもアボガドが約80円、パイナップル1個約65円、輸送費や仲介する人が多いので、それほど現地の農産物も安くはないですね。マクドナルドは進出していないのですが、ケンタッキーフライドチキンがあり、セットでだいたい600円弱ぐらいでしょうか。他国とあまり変わりませんね。
家賃になると物価差が激しいんです。外国人駐在員用の住宅は、需給が追いついていないために、とても高く、首都中心部では2000ドル以下では見つからず、3LDKで5000ドル以上する物件がざらにあります。インターナショナル企業の会社員として働く、高収入のエリート会社員のガーナ人はひと月2、300ドルのところに住んでいるような感じでしょうか。一般のガーナ人は、もちろん、うんと安い家賃になりますよ。給料水準も同様ですね。うちのパートナーは、とある外資運送会社のCEOのポジションを打診されていましたが、年収1千万。業績給が年収分ぐらいつくという条件でした。一方で庭師 などは、1日の仕事で1000円弱。鉄道はアクラから港町テマを繋ぐ(東京、横浜間のようなイメージです)列車が1日に朝、夕一回ずつ走るだけなので、乗り合いバンのトロトロが庶民の足になります。タクシーはメーター制でないので難しいところですが、ちょっとした短距離でも150円以上はかかるので、バンコクのタクシーよりずっと高いですよ。
-日本からの問合せはどうすればよいですか? またメッセージなどあればお願いします。
MindNET Technologies Ltd.は、ガーナ初のファッションとライフスタイルグッズに特化したオンラインショッピングサイトVIVIA.com.gh をソフトラウンチしました。
ガーナに進出していないインターナショナル・ブランドと、発掘されていないクールなガーナブランド、厳選した商品を扱い、ディスカウントモデルはとらず、ガーナ市場では難しい、Affordable but high qualityなファッションウェブサイトとして定着させたいと考えています。マーケットでは偽物が横行し、限られたショッピングモールではあまり選択肢がない、ガーナ在住者の「良いホンモノの洋服を買う場所がない」という悩みのソリューションとなるよう、しいては、ガーナのQuality of lifeの向上、頭脳流出問題の受け口になるよう、技術者の雇用創出ができる会社へと成長させていくことが目標です。
まだまだ人材、資本が必要な駆け出しの会社ですが、ガーナで自分のスキルを活かして、 ゼロから作り上げる過程に参加したい方、また、弊社への投資に関心がある方は、chi@mindnetgh.comまでご連絡下さい。
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