ITを活用し、地域活性を目指す「別海町の歌って踊れるスーパー仲買人」/株式会社大隅商店・大隅啓年さん

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事業家・大隅啓年 さん

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水産加工業を継いだ大隅さんは、北海道の尾岱沼(おだいとう)の美しい自然を愛しながら、サケやシマエビなどの水産加工販売を行い、海の幸を出す居酒屋も運営。「名産品のアピールをして欲しい」という地元の期待に立ち上がった大隅さんが、スター大隅として活躍する基盤となっているものとは!?地域活性の可能性を聞いた。

プロフィール

お名前
大隅 啓年さん
現在の滞在国
北海道野付郡別海町(日本)
業種
水産加工業・飲食業・タレント業
経歴
1969年生まれ。学校卒業後、札幌で2年料理人として修行ののち、家業である『大隅商店』、居酒屋『酔楽まる太』を継ぐ。2010年家業の傍らに「尾岱沼の歌って踊れるスーパー仲買人:スター大隅」としてテレビ出演。その後、日本各地のイベントやテレビに出演し、野付半島の海の幸をアピールする活動を行っている。

1分間でわかる、道東で働くということ

① 分業化されているビジネスが少ないためフリーランスのような働き方をしている人が多い

② 「指示待ち」では仕事が無い。自分のアイデアで仕事を作り出す

③ 公共の交通インフラが整っていないので、車は必需品。寒さも強敵

-始めに、大隅さんの経歴と、タレント業を始めたきっかけを教えてください。

学校を卒業後、札幌で2年ほど料理人の修行をし、その後、家業の水産加工を営む大隅商店を継いたんです。私の地元である尾岱沼(おだいとう)・野付半島は世界的にも珍しい堆積した砂でできた砂嘴(さし)で、ラムサール条約にも登録されている穏やかで栄養豊かな湿地があるんです。この豊富な栄養を元に育つ北海シマエビや、毎年西別川を遡上する別海町産西別鮭は、江戸時代から貴重で美味な『野付産』の高級品として広く知られています。私の実家もそうした海産物の加工販売を行なっていたんです。
だから、家業を継いだとき、当然のこととしてサケやシマエビなどの加工販売や、それらを調理して提供する居酒屋を営むようになりました。

代々続いてきた家業なのでお得意様も多く、安定はしているのですが、正直なところあまり刺激的なことはなかったんです。でも、10年ほど前から北海道各地で「地元の名産品をもっとアピールしていこう」という活動が始まって、別海町では若手の私に役が回ってきました。それから生活に変化が起きてきたんです。

名産品の中で特別にアピールしたいのは『野付産』の高級品。味には絶対の自信があります。でも、サケやエビが漁獲できるのは北海道だけではありません。海外でも安くて、そこそこにうまいものはたくさんありますから、”うまい”というだけでは、お客さんは振り向いてくれません。
また、名産品のアピールと言っても初めての経験です。やり方を教えてくれる人が誰もいない中で、「困ったな」というのが正直なところでした。

どうしたものかと迷っている時、昔から好きだったロックを聞いていて、ふと思ったんです。
「ロックスターが使うものはかっこいい。ロックスターが飲んだり食べたりするものもかっこいい。ロックスターはみんなが振り向く。だったらロックスターがおすすめするサケやエビもかっこいい。自分がスターになっておすすめすれば、振り向いてくれるかもしれない」と。
これが“スター大隅”の誕生の理由なんですよ(笑)。

-すごい発想ですね。でも、スターになっても、名産品のアピールの手法を学べるわけではないですよね?

そうなんです。そこからさらに試行錯誤することが多くなり、やることがとても増えました。
先ほども触れましたが、海外産の海産物とも競い合う必要がありますし、北海道自体が食の宝庫なので、野付半島に限らず、美味しいものは全道にあるんですよ。そんな中でいかに埋没せず、お客様に『野付産』の品を選んでもらい、食べていただくか、というのが目標になりました。
いくらスター大隅が舞台に出ても、実際に『野付産』の品を購入してもらうところまでいかなければ意味がないですからね(笑)。そこで普通の会社でいうマーケティングが重要だと思ったんです。

別海町もそうなのですが、日本の漁獲関係者は、それぞれの地域の漁協に参加し、販売などを委託することが多いんですよ。都市に比べると人が少ないので、宣伝から商品の購入までマーケティングの専門知識を持つ人材が乏しいのが現状です。民間のネットショッピングを提供する会社は数多くあり、安価で店舗のページを作れます。でも実際にページを広く知ってもらうためにはマーケティング費用が思った以上にかかるので、地元の商店が負担することは難しいのが現状ですね。

また、そういうものって画一的に宣伝商材として商品を扱うか、『北海道』という括りでまとめてしまうことが多くて、私の伝えていきたい『野付産』の高級品の魅力が伝わり辛いんです。もちろん多額の費用をかければ大々的な宣伝をすることはできますけど、広告は新規事業として投資対効果などシビアに見ていかなければなりませんし、経営者としてのセンスが求められますよね。

そこで家業を続けながら、私の考えに共感してくれる仲間を探すことにしたんです。
幸いにも、地元出身で札幌でIT会社を経営している友人(このあと登場される松舘さん)が、私に協力してくれることになって、二人三脚で進み始めることができました。

-支援者であり、ご友人でもあるミントワークス代表の松舘高雄さんにもお伺いします。ITを活用した地域活性について工夫した点や、大隅さんと働く上で意識していることなどはありますでしょうか。

ITの活用支援に関して、スター大隅に限らず、ITを活用して地域情報を発信している方は数多くいると思います。私自身、十数年前に東京からUターンで北海道に戻ってきて、最初に取り組んだのが地元食材の通販サイトでした。今と違ってブロードバンドもスマホもなく、決済サービスもほとんどありませんでしたね。今が羨ましいです(笑)

私の事業のひとつに『農業系のクラウドサービスの提供』があります。そのため、日頃農家の方々とお話する機会が多いのですが、そういった方々もPCやスマートフォン、タブレットを使って、通販サイトやSNSで情報を発信しています。 どなたも「自分たちのやっていることを知って欲しい」、「作ったものを買って欲しい」と思って始めますが、道半ばでやめる方が多いのも事実ですね。
やめる理由として多いのが「情報更新が面倒になった」ということと、「情報発信しても反応がない」、「思った通りに注文が来ない」など、期待通りの成果が出ないことなんです。

今回スター大隅の活動を情報発信するに当たっては、「運用のしやすさ」などを念頭に置いてITの活用を二人で検討しました。
情報更新は原則iPadを使って、直感的にアップデートできること。通販サイトは当初、楽天市場やYahooなどへの出店も考えましたが、経済的な理由と、まずは“スター大隅”の活動を知ってもらう事を第一に考えたので、EC機能をもつBASEを利用することにしました。BASEなら売れた分だけ手数料を払うだけなので経済的な負担はかなり抑えられます。また、iPadで情報更新がしやすいのも利用する決め手となりました。IT活用することでスター大隅の負担が増えてしまっては本末転倒ですからね。

但し、BASEに載せれる情報は限られているので、その分をFacebookで補っています。
「パシャッと写真をとり」、「ササッとコメント書いて」、「ポチッとアップロード」が実現出来たので、結果的には良かったと思います。あまり難しい事から始めると長く続かないので、身の丈にあったやり方で良いと思うんですよね。

また、スター大隅というキャラクターが先にあって、彼が様々なメデイアに掲載される機会が多いので、ITはそれを補完する位置付けと割り切って利用しています。

-松舘さん、ありがとうございました。
大隅さん、お話の続きに戻りますが、別海町で働く際におさえておくべきルールや文化の違いってあるんでしょうか?

田舎はどこでもそうだと思いますが、漁業関係者はほとんどが自営業で一人一人が社長みたいなものです。『社長 対 社長』のつき合いなので、お互いをリスペクトすることがなによりも重要なんです。
また、別海町は小さな町ですので「私の仕事はこれだけ」という態度ではコミュニティが成立しません。自分以外のことにも関わりあい、助け合うことが必要になってきます。“田舎暮らしは楽園”というイメージを持つかもしれませんが、意外とぬるくないんですよ(笑)。

近年、スマートフォンが普及したおかげで、私の周辺でもほとんどの人がスマートフォンを使ってインターネットを楽しんでいます。インターネットを使った通信販売も日常的に使用されていて、東京や札幌などの都市に比べて“何かが無くて不便”ということは、実はほぼないんですよ。
情報や流行の時間差もまったく感じませんね。昨日、私の居酒屋でPTAの親睦会があったのですが、カラオケで歌われる曲は最新人気ソングですし、Yahooニュースの話題で盛り上がったりしていましたよ。

ただし、公共交通機関がほとんどありませんので、自家用車は必須です。車で40分程度走ると中標津空港があり、札幌へは日帰りもできます。余談ですが、世界遺産の知床半島までは車で約1時間程度です。

寒さ対策も重要です。北海道の東側はオホーツク海沿いですので、冬でも比較的暖かい方ですが、冷えるときは-15℃以下になもりますので、こちらにいらっしゃるときは防寒対策をしっかりして、暖かくしておこし下さいね。

-先ほどスマートフォンのお話がありましたが、ネット回線についてもう少し詳しく教えていただけますか?

別海町も含め、北海道のほとんどの地域はブロードバンド回線を引くことができますのでネット環境はコストも含め札幌、東京などの都市とまったく変わりません。
自宅をWifiにして、スマートフォンやタブレットを使う人もいます。携帯電話はLTEを使うことができます。こちらも都市と比べて差は全くありませんよ。

ビジネスをする時には、何かしらのネットサービス(ASP・SaaSなど)を使うことが一般的です。会社の中にサーバを設置することはほとんどないですね。管理が面倒ですし、データセンターなどの設備が整った建物もほとんどないのが現状なんです。
最近はクラウドストレージの容量が大きいので、必要なデータはほとんど収まってしまいます。私はこの辺も松舘さんと相談しながらやっています。

-家賃や交通費の相場、野菜や魚の値段など、物価水準はどんな感じなのですか?

札幌・東京などの都市部と比べるとかなり安いですよ。家賃は1Kのアパートで4万円ほど。食費も地元の食材であればかなり安く手に入れることができます。魚については、私は仲買人でもっぱら市場で買いますので、みなさんの参考にはならないのですが…(笑)
冬場の暖房燃料代、ガソリン代が少し高めになりますが、全体的には札幌や東京と比べてかなり生活コストは低いですね。

-北海道でのビジネスに興味のある方にメッセージがあればお願いします。

「別海町の歌って踊れるスーパー仲買人」こと、スター大隅です!野付半島の海の幸をみなさんに紹介する活動をしています。
北海シマエビ、別海ジャンボホタテ、別海町産西別鮭、いくらなどのおいしい食材は日本全国に発送可能です。また別海町、野付半島では新・ご当地グルメグランプリ北海道で3連覇を達成した別海ジャンボホタテバーガー、北海シマエビ天丼、別海ジャンボホッキステーキ丼などのおいしいB級グルメを楽しむこともできます。みなさま是非おこし下さい!
【大隅商店 インターネットショップ】
http://www.shop-oosumi.com/
【居酒屋 酔楽まる太】
北海道 野付郡別海町 尾岱沼港町 175
tel: 0153-86-2006
http://tabelog.com/hokkaido/A0112/A011204/1022544/
【Facebook “スター大隅”のお店 大隅商店ネットショップ部&酔楽まる太】
https://www.facebook.com/shopoosumi

起きてから、寝るまでの暮らしぶりを教えてください。

ある1日のタイムスケジュールです。

7:00
起床(昨晩の仕事によりかなり変動)
8:00
地元PTAの活動として、スケートリンク場の清掃
(地元のメンバーとしての活動)
12:00
昼食
13:00
野付漁協にて仕入れ(仲買人としての活動)
14:00
本日の居酒屋の宴会で使う魚の仕込み
(居酒屋料理人としての活動)
15:00
ちょっと一息。お気に入りのiPad miniでメールやSNSをチェック、松舘さんとSkypeで今後の進め方について打ち合わせなど。
16:00
居酒屋にて本日の宴会の調理開始。本日のメインはかれいのお刺身で勝負!
・・・のかたわらでテレビ局からの電話取材に対応。取材スケジュールの調整など(スター大隅としての活動)
18:00
お客様来店。宴会その1スタート!
宴会以外のお客様も来店。調理が続きます!
20:00
宴会その1終了。急いで後片付け・・・とばたばたしているうちに次の宴会のお客様来店。宴会その2スタート!
23:00
宴会その2終了。マスターとしてカウンターのお客様の相手をしながら片付け
25:00
閉店。なまら疲れました~
26:00
就寝
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