【2024年11月1日施行】フリーランス保護新法とは?内容や下請法との違いをわかりやすく解説

2024年11月1日に施行されるフリーランス保護新法。フリーランスと企業との取引を適正化し、フリーランスがより働きやすい環境を整備するための法律です。

本記事では、フリーランス保護新法の内容をわかりやすく解説します。下請法との違いなども紹介しますので、ぜひご覧ください。

■この記事の監修

小池 澪奈

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レバテック ITソリューション事業部 部長

2017年にレバレジーズに新卒入社。入社後は子会社のレバテックに配属され、法人向けコンサルティング業務に従事。2年目にリーダー、3年目にグループリーダーとして 法人営業とキャリアコンサルタントの所属する営業グループを統括。5年目にはグループマネージャーに就任し、2022年5月より現職。現在は、ITフリーランス支援機構の理事も務める。

目次

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フリーランス保護新法の概要

フリーランス保護新法とは、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、令和5年5月12日に公布されました。

フリーランス保護新法の目的は、フリーランス・発注事業者間の取引の適正化、及びフリーランスの就業環境の整備です。法の施行により、フリーランスと企業との取引におけるトラブルを未然に防ぐだけでなく、フリーランスが働く環境がより整備されることが期待されています。

フリーランス保護新法の概要に関しては、内閣官房のサイトもご覧ください。
参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)について|内閣官房

フリーランス保護新法の施行日

フリーランス保護新法は、令和5年4月28日に可決され、5月12日に公布されました。同法は、2024年11月1日に施行されます

フリーランス保護新法の対象者とは

フリーランス保護新法の対象者は以下です。

  • 従業員を雇わないフリーランス
  • 従業員を雇わない法人の代表者(一人社長)
  • 副業として業務委託で働くフリーランス

フリーランス保護新法では、フリーランスを「特定受託事業者」と呼び、従業員を雇用せず個人で事業を請け負う者を対象としています。個人事業主のほか、従業員を雇わない法人の代表者、いわゆる一人社長も対象です。さらに、副業でフリーランスとして働く人も対象になります。

また、フリーランス保護新法の対象となる取引は、従業員を雇用している事業者が、フリーランスに業務を委託した場合のみです。よって、フリーランスからフリーランスへの委託や、一般消費者からフリーランスへの委託は対象外になります。

フリーランス保護新法と下請法の違いは?

 
  フリーランス保護新法 下請法
対象者 従業員を雇わないフリーランス/従業員を雇わない法人の代表者(一人社長)/副業として業務委託で働くフリーランス 資本金が1,000万円以上の発注者から受託したフリーランス
取引条件の明示義務
60日以内の報酬支払義務
不当な報酬設定や減額の禁止
正確な募集情報の表示義務
中途解除の事前予告義務 ×
妊娠、出産・育児介護への配慮 ×
ハラスメントの防止 ×


下請法とは、発注者としての立場や資本力で優位にある事業者による、資本力が小さい事業者への優越的地位の濫用行為を防止するための法です。対象にはフリーランスも含まれますが、フリーランスへ業務を委託するクライアントが資本金1,000万円以上の場合にのみ適用されます。よって、資本金1,000万円に満たない小規模事業者からの委託を受ける場合は、フリーランスは下請法の適用外になるのです。

一方、フリーランス保護新法は下請法のようなクライアントの資本金に対する制限がありません。そのため、下請法との違いとして、より多くのフリーランスが対象になったと考えると良いでしょう。

また、後述で紹介しますが、「中途解除の事前予告義務」、「妊娠、出産、育児介護への配慮」や「ハラスメントの防止」に関しては、下請法にはなく、フリーランス保護新法で新たに追加された項目です。

参考:下請法|公正取引委員会

下請法に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
下請法とは?改正予想やフリーランス保護のための新たな法律も解説

フリーランス保護新法の内容を解説

フリーランス保護新法の中身を解説します。ここでは、対象であるフリーランスへの影響と、フリーランスに業務を委託する事業者側の影響の、2つの側面からみていきましょう。

①契約条件を書面で明示する(3条)

3条の概要

フリーランスに業務を委託する事業者は、契約の際に、以下の内容を書面または電子メール等で明示しなければなりません。つまり、口頭での発注は違法になります。

  • 発注事業者とフリーランスを識別できるもの(商号、氏名、名称、事業者別に付された番号など)
  • 業務委託をした日
  • 給付(提供される役務)の内容
  • 給付を受ける期日等
  • 給付を受ける場所
  • 給付の検査を完了する期日(内容の検査をする場合)
  • 報酬の額
  • 支払期日
  • 現金以外の方法で報酬を支払う場合の明示事項

また、電子メール等で明示した場合でも、フリーランスから書面での交付を求められた場合は、委託事業者は対応する必要があります。

フリーランスのポイント

フリーランスは、案件を受注し契約を結ぶ際に、上記で示した内容が明示されているか確認する必要があります。何度か受注を受けているクライアントであっても、口約束だけの契約はせず、しっかりと書面を交わすようにしましょう

委託事業者のポイント

フリーランスに業務を委託する事業者は、顔なじみのフリーランスであっても、口頭のみでの発注は禁止です。委託事業者側が契約書を作成する場合は、上記内容を加えた契約書を交付するための環境づくりを行いましょう。

②60日以内に報酬の支払いを行う(4条)

4条の概要

フリーランスに業務を委託する事業者は、納品があってから原則60日以内に報酬の支払いを行わなければなりません。月末締め翌々月支払いなどの場合は、注意が必要です。

また、他の企業(元委託者)→委託事業者→フリーランスと、再委託が行われる場合には、元委託者の支払期日から30日以内にフリーランスに報酬を支払う義務があります。

フリーランスのポイント

フリーランスは、報酬の支払いが納品日から60日以内(または30日以内)に行われているか注意しましょう。法に基づく期日が守られていない場合には、申出が可能です

委託事業者のポイント

委託事業者は、フリーランスへの報酬支払日を納期から60日以内に設定しなければなりません。また、フリーランスへ再委託する場合は、元委託事業者からの支払期日より30日以内にフリーランスへの報酬支払日を定めることが求められます。

支払いが納品から60日以上(再委託の場合は30日以上)を経過してしまう場合は、支払いサイトを短くするなどの対応が必要です。改めて支払いサイトが適切か確認しましょう。

③発注事業者の禁止事項(5条)

5条の概要

フリーランス保護新法では、1ヶ月以上の期間継続して業務を行うフリーランスへの不当な報酬設定や減額の禁止など、以下の事項が禁止されています。

  • 理由なくフリーランスの納品を拒絶すること
  • 理由なくフリーランスの報酬を減額すること
  • 理由なくフリーランスの納品物を返品すること
  • 相場に比べ著しく低い報酬額を定めること
  • 理由なく指定した物の購入を強制すること
  • 金銭や役務など経済上の利益を提供させること
  • 理由なく納品物の内容を変更させたりやり直させること
フリーランスのポイント

1ヶ月以上の期間継続して業務を行うフリーランスは、クライアントから上記のような扱いを受けた場合には申出ができます

特に、相場より低い報酬額を提示されることや、理由なく納品物の内容変更・やり直しをさせられることなどは、起こりうるケースとして考えられるため、禁止事項であることを知っておきましょう。

委託事業者のポイント

委託事業者は、上記内容が守られているか確認しましょう。フリーランスに業務を委託する際の禁止事項をまとめたチェックリストなどを用意すると、漏れなく管理しやすくなるかもしれません。

④案件の募集情報を正確に表示する(12条)

12条の概要

委託事業者がフリーランスの募集を行う際には、虚偽の情報や誤解を生むような情報の表示をすることは禁止されます。意図的に高い報酬額を記載したり、案件の募集が終了しているにも関わらず表示し続けたりすることは違法です。案件の募集情報は、正確かつ最新の情報である必要があります。

フリーランスのポイント

広告等に掲載された募集情報と、実際の取引条件に差異があった場合は申出を行うことができます。当事者間の合意に基づき取引条件を調整することは認められていますが、明らかに虚偽の表示や誤解を生じさせる表示が含まれている場合には注意する必要があります。

委託事業者のポイント

広告や案件サイトに案件募集を掲載する場合は、常に最新の正確な情報を載せる必要があります。

報酬額や募集企業名などに関して意図的に虚偽の掲載を行うことや、報酬額が一例であるにも関わらず確約されているように記載するなど、誤解を生じさせる表示を行うことは禁じられるため、注意が必要です

⑤妊娠、出産、育児介護への配慮(13条)

13条の概要

フリーランスが育児や介護等と両立しながら、能力を発揮しつつ業務を継続できる環境を整備することを目的とした規定です。

6ヶ月以上の期間継続して業務を行うフリーランスから申出があった場合には、両立可能な作業日数や作業時間の調整に努める必要があります。定期検診を受けるための時間の確保や、子育てや介護を理由とする作業時間・場所の調整が当てはまります。

フリーランスのポイント

育児や介護等の事情がある場合、クライアントに対し、作業日数や作業時間の調整を相談することができます。自身の家庭事情やライフイベントにより業務継続を断念することなく、より働き続けやすい環境が整備されることが期待されます。

フリーランスの出産・育児の支援制度に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
フリーランスは産休・育休を取れる?出産・育児の支援制度を紹介!

委託事業者のポイント

6ヶ月以上の期間継続して業務を委託するフリーランスから育児や介護等の事情による作業時間・場所などの相談があった場合に、柔軟に応じることが求められます

⑥ハラスメントの防止(14条)

14条の概要

フリーランスに業務を委託する事業者は、フリーランスに対するハラスメント行為を防止するための対応を行わなければなりません。(努力義務)

また、フリーランスからハラスメントに関する相談があったことを理由に、契約解除などの不当な取り扱いをすることも禁止です。

フリーランスのポイント

今回の法により、ハラスメントに関する相談に対して適切な対応を行うための体制整備を行うこと、迅速で適切な対応を行うことが義務付けられました。ハラスメントが疑われる場合には、定められた相談窓口への相談をおすすめします

クライアントの相談窓口に直接相談しづらい場合は、関係省庁(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁)と連携して、フリーランスの方が弁護士にワンストップで相談できる窓口「フリーランス・トラブル110番」があります。相談は無料で匿名でも可能なため、気軽に利用できるでしょう。

参考:フリーランス・トラブル110番|厚生労働省

委託事業者のポイント

対応すべき具体的な内容は、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化・周知、相談窓口の設置、被害が出た場合の事実関係の把握や迅速な配慮措置などとされています。労働関係法令(男女雇用機会均等法等)に基づき講じることとされている従業員のハラスメント対策と同様の内容でもあるため、すでに整備されている社内の相談体制やツール等の活用なども考えられるでしょう。

⑦契約解除、更新しない場合は30日前までに予告する(第16条)

16条の概要

委託事業者が6ヶ月以上の期間継続して業務を行うフリーランスとの契約を解除する場合や、更新を行わない場合は、少なくとも30日前までにその予告をする必要があります

また、契約解除の理由をフリーランスから求められた場合、委託事業者は開示しなければなりません。

フリーランスのポイント

6ヶ月以上の期間継続して業務を行うフリーランスは、災害ややむを得ない理由以外で、予告なく契約解除や不更新を言い渡された場合は、申し出ることができます

予告が不要である例外事由は、以下の通りです。

  • 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
  • 特定受託事業者に再委託をした場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
  • 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
  • 基本契約を締結している場合で、特定受託事業者の事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合
  • 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がある場合
委託事業者のポイント

6ヶ月以上の期間継続して業務を委託するフリーランスとの契約を解除したい場合や、更新をしない場合は、30日前までにフリーランスに伝えることが必要です。原則として理由なく、一方的に突然解除することはできません

また、契約解除の理由を求められた場合は、適切な理由を迅速に開示する必要があります。

フリーランス保護新法に違反するとどうなる?

委託事業者がフリーランス保護新法に違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣により、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令が行われます

命令違反や、検査に対する拒否があった場合は、50万円以下の罰金に処されるリスクもあります。フリーランスに業務を委託している、または委託する予定のある事業者は、フリーランス保護新法への理解を深め、施行日までに法に適応する環境を整える必要があるでしょう。

また、フリーランスは違反があったと感じる場合は、関係省庁(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁)と連携して、フリーランスの方が弁護士にワンストップで相談できる窓口「フリーランス・トラブル110番」を経由するなどして、行政機関に申告をすることが可能です。不当な扱いを受けたと感じる場合は、泣き寝入りすることなく速やかに相談しましょう。

レバテックITソリューション事業部 部長 小池澪奈より

レバテックフリーランスはフリーランスの挑戦を応援します。

レバテックフリーランスは、18年にわたってITフリーランスの挑戦をサポートしてきました。これは、日本に「フリーランス」という働き方を浸透させ雇用の流動性を高めていくことが、日本の労働生産性を高め、日本の明るい未来をつくっていくための鍵になると信じているからです。

しかしながら、「フリーランス」という働き方を選択することには、課題が多く存在することも事実です。キャリアの一つの選択肢としてフリーランスに挑戦することができる人が増えるよう、レバテックフリーランスは、フリーランスの方が抱える課題に向き合い解決していきたいと考えています。

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フリーランス保護新法に関してよくある質問

フリーランス保護新法に関して、よくある質問に答えていきます。

Q. フリーランス保護新法はいつから始まりますか?

フリーランス保護新法は、2024年11月1日より施行されます。

Q.フリーランス保護新法と下請法の違いは何ですか?

下請法は、フリーランスへ業務を委託するクライアントが資本金1,000万円以上の場合にのみ適用されます。一方、フリーランス保護新法はクライアントの資本金に対する制限がありません。そのため、フリーランス保護新法では、より多くのフリーランスが保護対象になります。

Q. 全てのフリーランスがフリーランス保護新法の対象ですか?

フリーランス保護新法では、従業員を雇用せず個人で事業を請け負う者を保護対象としています。個人事業主のほか、従業員を雇わない法人の代表者、いわゆる一人社長も対象です。さらに、副業でフリーランスとして働く人も対象になります。

※本記事は2024年9月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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