下請法とは?フリーランス保護新法との違いや対象となる個人事業主を解説

下請法は、労働基準法で保護されないフリーランスを守る法律です。「報酬が支払われなかったらどうしたらいい?」「違う業務まで任されるようになってしまった…」という悩みを解決してくれます。

しかし、問題点もあり、フリーランス保護新法が施行される運びとなりました。自分が対象になりそうかをあらかじめ知っておくべきです。

そこで、下請法とフリーランス保護新法の違いや対象者、いつから施行されるかなどをまとめて解説します。

目次

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下請法とフリーランスの関係|対象や禁止行為

下請法はフリーランスを含む下請事業者の利益を守り、適正な取引を行うための法律です。労働基準法が適用されないフリーランスにとっては、業務上のトラブルなどで立場を守ってくれる法律といえます。

フリーランスの仕事は基本的に下請法の保護対象ですが、例外もあります。自分の仕事が保護されるか、クライアントのどんな行為が禁止されているのか、下請法の詳細を確認していきましょう。

下請法の保護内容と保護対象

下請法は、発注者に義務項目と禁止事項を定めています。たとえば、フリーランスへの報酬の支払遅延や不当な減額などを行わないといった内容です。違反すると、立入検査や勧告、最高50万円の罰金などが課されます。

保護対象は個人で事業を営む個人事業主です。ただし、全ての個人事業主の取引が保護の対象になるわけではありません。下請法の対象になる取引は以下の4つです。

製造委託の「物品」は動産のため、土地や家屋は含まれません。情報成果物は、プログラムや音楽、ブログの記事などが該当します。クライアントが資本金1,000万円超の法人でなければ下請法が適用されないため、小規模事業者との取引には注意しましょう。

下請法・独占禁止法で守ってもらえる具体的なシーン

下請法や独占禁止法では不正取引からフリーランスを守るため、発注者の特定の行為を禁止しています。具体的には、報酬の支払遅延や一方的な報酬の減額、一方的な契約変更などが禁止行為です。

引用元 : フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|公正取引委員会


フリーランスとして活動するうえで金銭関係のトラブルは多いため、フリーランス側も禁止事項は一通り確認しておきましょう。独占禁止法と下請法上、問題となる行為類型は以下のとおりです。

  • 報酬の支払遅延
  • 報酬の減額
  • 著しく低い報酬の一方的な決定
  • やり直しの要請
  • 一方的な発注取消し
  • 役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
  • 役務の成果物の受領拒否
  • 役務の成果物の返品
  • 不要な商品又は役務の購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
  • その他取引条件の一方的な設定、変更、実施

クライアントから不当な要求をされても、まずは独占禁止法や下請法に違反しているかどうかチェックするのが重要です。

クライアントの遵守義務4つ

下請法では、クライアント側に次の4つの義務が定められています。フリーランスとして契約を結ぶ際にチェックできるよう、一度目を通しておきましょう。

義務項目 義務内容
発注時に発注書面を交付する義務 具体的な契約内容を記載した注文書や契約書などの書面を交付する
発注時に支払期日を定める義務 成果物の受領後60日以内かつできる限り短い期間になるよう支払期日を定める
取引記録の書類を作成、保存する義務 給付内容や下請代金の金額などの記録を書類として作成し、2年間保存する
支払いが遅れたら遅延利息を支払う義務 支払期日までに報酬を支払わなかった場合、未払金に対し年率14.6%の遅延利息を支払う


口頭での発注によるトラブル防止のため、クライアントは契約内容を記載した書面を作成し、2年間保管しなければいけません。また、支払遅延を防ぐために期日を定め、支払いが遅れた場合は年率14.6%の遅延利息を支払う義務もあります。

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下請法に守ってもらえるとわかった際の相談先

一般的にフリーランスはクライアントよりも弱い立場なため、トラブルが発生する可能性はあります。たとえば、報酬や契約関係のトラブルは発生しがちなトラブルといえるでしょう。下請法で守ってもらえる内容かどうか、フリーランス自身で判断する必要があります。

クライアントが下請法に違反していると思ったら、まずはフリーランスから下請法について説明しましょう。クライアントが下請法に違反していると認めなかった場合は、公正取引委員会や中小企業庁などの相談窓口へ連絡してください。

下請法に関する相談窓口|公正取引委員会
フリーランス・トラブル110番

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独占禁止法・労働法と下請法の違い

フリーランスを保護する法律は下請法以外にも存在します。事業者とフリーランス全般の取引には独占禁止法が、勤務実態が「労働者」と認められる取引では労働法が適用されます。

独占禁止法は公正で自由な取引の競争を促進するため、私的独占を禁止したり事業者団体の規制をしたりする法律です。独占禁止法の「不公正な取引方法の禁止」の中に下請法が含まれています。

労働法は雇用されている人を守る法律で、フリーランスは誰にも雇用されていないので原則適用されません。ただし、実質的に労働者とみなされた場合は労働法の適用となります。

現行の下請法が適用されない取引がある

現行の下請法は、クライアントが資本金1,000万円超の法人でなければ適用されません。小規模事業者などとの取引では下請法が適用されず、トラブル時の保護が薄くなっていると問題視されています。

令和3年経済センサスによると、資本金1,000万円未満の企業は全体の59.3%で、半数以上を占めています。実際にフリーランスをしていると、資本金1000万円以下の法人と関わる可能性は高いでしょう。

下請法で保護されない以上、トラブル時のリスクは大きく、発注自体をキャンセルされる可能性も出てきます。対処方法を事前に調べておく必要があります。フリーランスが案件をキャンセルされた際の対処方法について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
案件が突然キャンセルに!フリーランスは何をすれば良いか

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実質労働者とみなされ労働基準法で守られる場合もある

原則、フリーランスは労働関係法令の適用外ですが、勤務実態が労働者と認められれば適用される場合もあります。たとえば、個々の業務の実態や契約上の縛りが多い場合などです。

フリーランスガイドラインによると、労働基準法における「労働者性」の判断基準は次のとおりです。指揮監督下の労働であり、使用従属性が認められる場合には労働基準法上の「労働者」にあたると判断されます。

ある特定の企業に縛られて業務を行っている場合は、フリーランスであっても労働者とみなされるケースがあります。ただし、各判断基準に該当する場合であっても、直ちに労働者性が認められるわけではないため注意してください。

なお、派遣とフリーランスを混同すると危険です。違いが明確でないなら、以下の記事をご覧ください。
フリーランスと派遣の違いは?メリット・デメリットや掛け持ち可能なのか

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2024年秋には施行される「フリーランス保護新法」

フリーランス保護新法は、フリーランスが安定的に働ける環境を整備するための法令です。フリーランスと企業との取引が正しく行われるよう、発注側に様々な行為が義務付けられています。

今までフリーランスを保護していた下請法に比べ、より多くのフリーランスが保護対象となる法令です。フリーランスとして活動するなら、禁止項目や対象範囲、自分の業務に関係するかを理解しておくべきでしょう。

そこで、フリーランス保護新法の概要や具体的な保護対象、施行時期などを解説していきます。

フリーランス保護新法の概要

フリーランス保護新法では、フリーランスと取引を行うクライアント側に以下の7つの義務を課しています。クライアントによってフリーランスへの義務内容は異なるため、案件ごとにどんな行為が対象か確認しておきましょう。

義務の項目 義務の内容 対象の発注事業者
①書面による取引条件の明示 業務内容や報酬額などを書面で明示する すべての発注事業者
②報酬支払期日の設定・期日内の支払 納品日から60日以内で支払期日を決め、期日内に報酬を支払う 従業員を雇用している場合
③禁止事項 納品物を受け取らない、報酬を減額する、
納品後に納品物を返品することなどを行ってはならない
従業員を雇用しており、継続的業務委託をする場合
④募集情報の的確表示 募集情報に虚偽や誤解を与える表示をしてはならない/
募集情報は最新に保つ
従業員を雇用している場合
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮 フリーランスが育児や介護と業務を両立できるように申出に応じて配慮する 従業員を雇用しており、継続的業務委託をする場合
⑥ハラスメント対策に係る体制整備 フリーランスへのハラスメント行為に関係する相談対応の体制を整備する 従業員を雇用している場合
⑦中途解除等の事前予告 継続的業務委託を中途解除する際は原則として30日前までに予告する 従業員を雇用しており、継続的業務委託をする場合


なお、業務委託を一定以上の期間行うことを継続的業務委託と呼びます。

フリーランス保護新法が制定された背景

フリーランス保護新法は下請法の適用外となる取引でもフリーランスを保護するために制定されました。働き方改革やテレワークの推進などの影響でフリーランス人口は年々増加しており、フリーランス関係のトラブルも増えています。

具体的には、買いたたきや支払の遅延など、フリーランスの立場の弱さが原因のトラブルが増加傾向にあります。対策としてフリーランスガイドラインの策定を行い、当初は下請法の資本金の制限を撤廃する予定でした。

しかし、下請法ではハラスメント対策やライフステージの変化への配慮が難しかったのが実情でした。下請法の保護対象外のフリーランスを守るだけでなく、近年増えている問題についても対策するのがフリーランス保護新法といえます。

【いつから?】フリーランス保護新法の施行日

フリーランス保護新法は2023年4月28日に成立、2023年5月12日に交付されました。法案の施行期日は公布日から1年6カ月以内なので、遅くとも2024年秋ごろまでには施行される予定です。

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フリーランス保護新法と下請法の違い

下請法とフリーランス保護新法はどちらもフリーランスを保護する法令ですが、大きな違いはクライアントの資本金の制限です。下請法はクライアントが資本金1,000万円を超える法人でなければ適用されませんが、フリーランス保護新法には制限がありません。

また、フリーランス保護新法の方がより規制項目が多いため、下請法よりも保護が手厚いといえるでしょう。たとえば就業環境の整備やハラスメント対策などは新法特有の規制です。

違反時の申告と措置は同様なので、フリーランス保護新法に違反していると思ったら下請法と同じように対処しましょう。

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フリーランス保護新法がフリーランスに与える影響

フリーランス保護新法の施行により、今後はフリーランスの保護が加速すると考えられます。フリーランス保護新法は、よりクライアント側への影響が大きいです。今まで下請法の適用外だった小規模事業者の場合、発注控えが起こる可能性があります。

口頭だけの契約や報酬の支払期日を曖昧にするなどの行為はできず、新法でクライアントの負担が増える可能性もあるわけです。多少の事務作業やコストがかかっても業務を発注したいと思ってもらえるフリーランスであれば影響は少ないでしょう。

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フリーランスの下請法に関するよくある質問

フリーランスの下請法に関するよくある質問をまとめました。フリーランスを保護してくれる下請法についての疑問を解消し、安心して業務が行えるようにしてください。

Q. フリーランスは下請法の保護対象ですか?

取引内容が製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託のどれかで、発注者の資本金が1,000万円超なら対象です。

Q. 下請法で禁止されている行為を教えてください

報酬の減額や支払遅延、不当な返品など多岐にわたります。買いたたきや成果物の受取拒否、追加費用なしでのやり直し依頼なども禁止されています。

Q. 下請法とフリーランス保護新法との違いは?

下請法は発注者の資本金が1,000万円超の場合に適用されますが、フリーランス保護新法には資本金の制限がありません。フリーランス保護新法には、下請法にないハラスメント対策や就業環境の整備なども含まれています。

Q. フリーランス保護新法でのフリーランスとは?

簡単にいうと、業務委託で働く事業者で、従業員を使用しない個人か一人社長です(2024年2月時点)。詳しくは、総務省運営の行政サービスe-Govの該当ページ(第二条第一項と第二項)を確認してください。

Q. フリーランス保護新法はいつから施行されますか?

明確な施行時期は決まっていませんが、遅くとも2024(令和6)年秋ごろまでには施行されます。

※本記事は2024年2月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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