個人事業主は家族への給与を経費にできる?必要な条件や手続きを紹介

「家族に事業を手伝ってもらっているけど、給料は経費にできる?」と疑問に思っている個人事業主の方もいるのではないでしょうか。結論から言うと、原則家族への給与は経費にできませんが、青色事業専従者給与の制度を活用すれば、家族への給与を経費として計上できる可能性があります。

この記事では、個人事業主が家族への給与を経費にするための方法についてわかりやすく説明します。経費にする際の条件やおすすめの節税対策についても説明するため、ぜひ参考にしてみてください。

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記事の監修者

柴田 充輝

社会保険労務士 ファイナンシャルプランナー

保険業界・厚生労働省での勤務経験があり、社会保険関連の確かな知識を持つ。

また、金融・不動産全般にも精通。WEBライターとして、金融制度・資産運用・住宅ローン・相続対策など金融系を中心に累計1,200本以上の記事を執筆・監修。

エビデンスに基づくコラム記事の執筆経験も多く、難解な社会保険の制度も読者が理解しやすいように、わかりやすく伝えることを得意とする。

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原則として家族への給与は経費にできない

個人事業主は、原則として生計を一にする家族への給与を経費にすることはできません。

個人事業主の場合においては、家族に支払うお金が、労働への対価なのか、事業とは関係ない生活費なのかを、明確に区別することが難しいためです。

また、家族に給与を払ったことにして、不正に税金を減らすことを防ぐ目的もあります。

参考:親族が事業から受ける対価の取り扱いについての一考察|国税庁

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青色事業専従者給与を使えば家族への給与を経費にできる

青色申告者の場合、青色事業専従者給与の制度を活用すれば、青色事業専従者と認められた家族の給与を経費にすることができます

青色事業専従者として認められるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 事業者と一緒に生活をしている配偶者や親族であること
  • その年の12月31日時点で、年齢が15歳以上であること
  • その年の1月1日から12月31日までの間に、6ヶ月以上事業を手伝っていること(年の途中で事業を始めた場合は、事業を行っている期間の半分以上)

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

白色申告者が使える事業専従者控除との違い

白色申告者の場合、事業専従者控除を活用することで、税務上の優遇措置を受けることができます。

青色事業専従者給与と事業専従者控除の違いは下記のとおりです。

項目 青色事業専従者給与 事業専従者控除
概要 家族への給与を全額経費として計上できる 一定金額の控除を受けられる
メリット 家族への給与を全額経費にできるため、節税効果が高い 手続きが比較的簡単である
デメリット 複式簿記で記帳する必要があるため、手間がかかる 控除額に上限がある(※)ため、節税効果が低い
対象となる所得 不動産所得・山林所得・事業所得 全ての所得
税務署への届出 必要 不要
帳簿への記帳方法 複式簿記 単式簿記

(※)控除額は、下記のいずれか低い金額です。
1.事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
2.所得金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

柴田 充輝

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社会保険労務士ファイナンシャルプランナー

青色申告と白色申告の専従者制度のどちらを利用すべきかは、「家族にどれだけ給与(または控除)を支払っているのか」「帳簿付けにどこまで手間をかけられるか」で選択が分かれます。

まず、家族が実際にフルタイムに近い形で事業を手伝っているフリーランスで、給与として年間100万円以上を支払う見込みがある場合は、ほぼ確実に青色申告(青色事業専従者給与)を選ぶべきです。給与を全額経費化でき、節税効果が大きいからです。ただし、複式簿記による帳簿付けや届出が必須となるため、経理事務の負担は増えます。

一方で、家族の手伝いが短時間・不定期、また給与として大きな金額を支払う予定がない個人事業主は、白色申告の事業専従者控除のほうが向いています。単式簿記で良く、税務署への届出も不要なため、事務負担を最小限にできます。


青色申告と白色申告について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
青色申告と白色申告の違いを解説

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個人事業主が青色事業専従者の給与額を決める際の基準

青色事業専従者への給与は、労働に見合った妥当な金額である必要があります。給与があまりにも高額であった場合、税務調査で指摘され、経費として認められなくなる可能性があるので注意しましょう。

青色事業専従者の給与額は、以下の点を考慮して決めることが一般的です。

  • 仕事内容の専門性
  • 勤務時間
  • 同業者が支払っている給料の相場
  • 事業の規模や収益

また、青色事業専従者給与は、一般の従業員に支払う給与と同様に、源泉徴収の対象となります。そのため、1ヶ月あたりの給与が88,000円以上になると、源泉徴収をする必要が出てくるので注意しましょう。

柴田 充輝

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社会保険労務士ファイナンシャルプランナー

青色事業専従者の給与額を設定する際は、第三者に説明できる根拠のある金額を示せることが重要です。まず同業種・同地域のパート・アルバイト賃金の相場を調べ、仕事内容と勤務時間を掛け合わせて概算の基準額を作りましょう。

専門性の高い業務を任せる場合は市場水準を上乗せし、逆に単純作業が中心なら相場の範囲内に収めます。また、事業規模と利益水準とのバランスも必須で、売上に対して給与比率が不自然に高いと「税負担を下げるための過大支給」と判断されやすくなります。

税務調査に備えて、「業務内容を示す記録」「勤務時間のメモ」「支給根拠となる相場資料」などを日頃から残しておくと安心です。さらに、毎月一定額で安定して支給することも重要で、年度途中に急に金額を増やすと不自然と判断されることがあります。

家族への給与であっても、あくまで通常の従業員に支払う感覚を持つことが大切です。税務リスクを避けるためにも、根拠・継続性・合理性の三点を満たしましょう。


源泉徴収のやり方については、下記の記事を参照してください。
個人事業主も源泉徴収が必要?源泉徴収税額の計算方法や注意点も解説

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青色事業専従者給与額を経費にする際に必要な手続き

青色事業専従者給与として認められるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。青色事業専従者給与に関する届出書には、専従者である家族の氏名や続柄、仕事内容、給料などを記載します。

提出期限は、計上する年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日以降に、家族を雇った場合や事業を始めた場合は、雇用日や開業日から2ヶ月以内が期限となります。

柴田 充輝

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社会保険労務士ファイナンシャルプランナー

青色事業専従者給与の届出書を期限内に提出しなかった場合、その年については青色事業専従者給与として家族への給与を経費に計上できません。届出書の提出は税法上「必須の前提条件」とされており、後から理由を付けて遡及適用することは原則認められません。

そのため、実際に家族へ給与を支払っていても、提出漏れがある年は全額が事業主本人の「事業主貸」扱いになり、経費化できない点に注意が必要です。つまり、税負担を重く感じてしまう可能性があります。

また、給与として経費にならないだけでなく、専従者側にも不利益が生じます。専従者が受け取った金額は給与として扱われず、扶養控除の判定や社会保険料の扱いにも影響する可能性があります。

さらに、税務調査では「意図的に提出しなかったのではないか」「給与支給の実態が不明瞭ではないか」と疑われることがあり、帳簿や業務実態の確認が厳格に行われるケースもあります。

もし提出漏れに気づいた場合は、早めに税務署へ相談し、翌年以降は期限を守って届出書を提出することが大切です。なお、届出書は一度提出すれば、原則として毎年提出する必要はありません。


青色事業専従者給与に関する届出書の提出方法について、詳しく知りたい方は国税庁のホームページを参照してください。
A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁

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個人事業主におすすめの節税対策4選

家族の給与を経費にする以外にも、個人事業主ができる節税対策には下記があります。

  • 家賃や光熱費を経費にする
  • 所得控除を受ける
  • 青色申告の特別控除を受ける
  • 赤字を繰り越す

それぞれ詳しく解説します。

家賃や光熱費を経費にする

自宅を事務所として利用している場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上することができます。これは「家事按分」と呼ばれるものです。

家事按分では、自宅全体にかかった費用を、事業に使用した割合に応じて按分し、経費として計上します。たとえば、家賃10万円の物件に住んでいて、部屋の30%を仕事場として使用している場合、家賃の30%にあたる3万円を経費として計上できます。

家賃や光熱費以外にも、通信費や自動車関連費用なども、家事按分の対象となる可能性があるので、詳しくは下記の記事を参照してください。
【副業の確定申告】家賃や光熱費を経費にする家事按分とは?【図解付き】

所得控除を受ける

個人事業主も、会社員と同じように所得控除を受けることができます。所得控除とは、個人の事情に応じて所得から一定額を差し引くことができる制度です。

主な所得控除には、以下のようなものがあります。

控除名 内容 適用例
医療費控除 1年間の医療費が一定額を超えた場合に適用 医師の処方箋に基づく医薬品の購入費用、通院にかかった交通費など
社会保険料控除 国民健康保険や国民年金などの社会保険料を支払った場合に適用 国民年金保険料、国民健康保険税など
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済や個人型年金に加入している際に適用 小規模企業共済の掛金など
生命保険料控除 生命保険料や介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に適用 生命保険料、個人年金保険料など
地震保険料控除 地震保険の保険料を支払った際に適用 地震保険料
寄付金控除 国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄付を行った際に適用 ふるさと納税、認定NPO法人への寄付など
雑損控除 災害や盗難により資産に損害を受けた際に適用 台風で自宅が損壊した場合の修理費用など


そのほかの所得控除の種類については、下記の記事を参照してください。
所得控除は15種類!あなたはどれを受けられる?

青色申告の特別控除を受ける

青色申告者にはさまざまな特典があり、その一つとして、最大65万円の控除を受けられる「青色申告特別控除」があります

確定申告における、控除額ごとの要件は下記のとおりです。

控除額 複式簿記で記帳する 貸借対照表と損益計算書を添付する 期限内に申告する e-Taxで申告または優良な電子帳簿保存をする
65万円
55万円
10万円 簡易な記帳 ‐(損益計算書は必要)


電子帳簿の保存方法については、国税庁のホームページをご覧ください。
優良な電子帳簿の要件|国税庁

参考:はじめてみませんか?青色申告|国税庁

赤字を繰り越す

事業で赤字が発生した青色申告者は、最長で3年間にわたって赤字を繰り越し、翌年以降の黒字と相殺することができます

事業が軌道に乗る前、あるいは予期せぬ事態で赤字になってしまうケースもあるでしょう。たとえば、事業開始1年目で20万円の赤字、翌年は50万円の黒字だった場合、赤字を翌年に繰り越せば、50万円の黒字から20万円の赤字が差し引かれ、所得税の対象となる額が30万円になります。つまり、課税所得を減らすことで納税額を減らせるのです。

※本記事は2025年11月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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※相場算出に個人情報の取得はおこないません。

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