個人事業主向け退職金制度|おすすめや経費になるか、積み立て方法

この記事でわかること
  • 個人事業主が加入できる退職金制度
  • 退職金制度のメリット・デメリット
  • 退職金と生涯年収による老後の備え

個人事業主は、小規模企業共済制度やiDeCoに加入すれば、退職金を積み立てられます。退職時や老後の資金を備えたい人は、加入を検討すべきです。

本記事では、個人事業主が加入できる退職金制度を解説。掛金や積立方法、税金面などのメリット・デメリットも参考にしてください。なお、再就職手当については「個人事業主は再就職手当をもらえる?|受給条件と必要な証明書類」の記事で詳しく紹介しています。

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個人事業主の退職金の選択肢3つ

個人事業主が退職金を積み立てる選択肢は、主に以下の3つです。

  • 小規模企業共済制度
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)の一時金
  • 特定退職金共済

それぞれの概要を解説します。

小規模企業共済制度

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主が廃業や退職時の生活資金を積み立てる制度です。国の中小機構が運営しています。

毎月一定額を積み立てて、廃業時や65歳になった際に共済金を受け取る仕組みです。掛金は、月額1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。

小規模企業共済制度の加入を検討するなら、後述「小規模企業共済制度のメリット・デメリット」も参考にしてください。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の一時金

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、拠出した掛金の運用方法を自分で選択し、資産を形成する年金制度です。

掛金は、月額5,000円から1,000円単位で自由に設定できます。加入区分に応じて、拠出できる上限は異なります。受け取り開始は、原則60歳です。掛金とその運用益の合計額を給付として受け取れます。

iDeCoの加入を検討する場合、後述する「個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット・デメリット」も参考にしてください。

特定退職金共済

特定退職金共済は、雇用している従業員に、退職金を用意したい場合の共済制度です。各地の商工会議所などで運営している退職金制度で、加入者の対象は、雇用されている従業員です。代表取締役や副社長といった、役員は加入できません。

特定退職金共済を検討する場合、後述する「特定退職金共済のメリット・デメリット」も参考にしてください。

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小規模企業共済制度のメリット・デメリット

小規模企業共済制度は、掛金が所得控除の対象になり、低金利の貸付制度が利用できるメリットがあります。一方で、全額受け取れない可能性や、受取時に課税されるデメリットには注意すべきです。メリット・デメリットをそれぞれ具体的に解説していきます。

小規模企業共済制度のメリット

以下は、小規模企業共済制度のメリットです。

  • 掛金が所得控除の対象となる
  • 低金利の貸付制度が利用可能

それぞれ、解説します。

掛金が所得控除の対象となる

小規模企業共済制度の掛金は、確定申告の際に、全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります

たとえば掛金月額7万円の場合、1年で84万円の所得控除を受けられます。仮に、課税所得600万円の場合、84万円の所得控除を受けると、節税額は255,600円です。

低金利の貸付制度が利用可能

小規模企業共済制度に加入していると、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日貸付も可能です。具体的な貸付の種類は以下のとおりです。

  • 一般貸付(事業資金)
  • 緊急経営安定貸付
  • 傷病災害時貸付(病気の時など)
  • 福祉対応貸付
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付
  • 事業承継貸付
  • 廃業準備貸付

一般貸付制度は、もしものとき迅速に事業資金を借入できる制度です。経済環境の変化に起因した売上減少の場合は、緊急経営安定貸付を利用すると低金利で事業資金を借入できます。

小規模企業共済制度のデメリット

以下は、小規模企業共済制度のデメリットです。

  • 全額を受け取れない可能性がある
  • 受取時には課税される

それぞれ、詳しく解説します。

全額を受け取れない可能性がある

20年未満で任意解約した場合、元本割れを起こすケースもあります。ただし、個人事業主を廃業しての任意解約は問題ありません。

実際、個人事業主から会社員に戻る場合、解約ではなく廃業をすれば、元本割れを防げます。「個人事業主を続けるかわからないから、元本割れするかも」という心配は不要です。

受取時には課税される

積立時の掛金は全額控除できますが、受取時に課税されるため、課税は先送りしていることになります。受取時の年齢や、一括または分割などの受取方法で、税法上の取り扱いは異なります。

たとえば65歳以上で任意解約する場合は、税制上は退職所得の扱いです。共済金を一括で受け取る場合も退職所得、共済金を分割で受け取る場合は、公的年金等の雑所得の扱いです。

なお、小規模企業共済制度のメリット・デメリットについて、より詳しくは以下をご覧ください。
小規模企業共済のメリット・デメリットとは?

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個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット・デメリット

iDeCoは、積立掛金が全額控除になる、運用益が非課税などのメリットがあります。一方、運用状況によって資産が増減するなどの、デメリットにも注意すべきです。メリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット

以下は、個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリットです。

  • 積み立てた掛金が全額所得控除
  • 運用益が非課税
  • 受け取り時に一定額が非課税になる

それぞれ解説します。

積み立てた掛金が全額所得控除

iDeCoで積み立てる掛金は、全額が所得控除の対象です。拠出した掛金の年間の総額を所得から差し引き、所得税と住民税が軽減されるメリットがあります。

節税額は、年収や掛金によって異なりますが、積立期間中は控除の恩恵を受けられ、大きな節税効果が得られます。

運用益が非課税

iDeCoは、得られた運用益に対して税金が一切かかりません。本来は税金として差し引かれる運用益をさらに運用に充てられます。

より有利な運用ができる点が、メリットといえるでしょう。

受け取り時に一定額が非課税になる

iDeCoを年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。控除から所得を差し引くことで、税負担を軽減できます

また、iDeCoで築いた資産は60〜75歳の間に、自分で希望するパターンで受取できます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリット

以下は、個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリットです。

  • 運用状況により資産が増減する
  • 原則60歳まで引き出せない
  • 手数料が発生する

デメリットは、iDeCoの注意すべき点として、参考にしてください。

運用状況により資産が増減する

iDeCoは運用実績によって、資産が増減します。iDeCoは、株や債券、投資信託を含む金融商品のため、元本割れするリスクがあるからです。リスクのない元本保証の商品もありますが、利益は少なくなります。

資産形成初心者は、投資の勉強をしたり、セミナーに参加したりするなど、事前に知識を身に着けておくべきです。

原則60歳まで引き出せない

iDeCoは、原則60歳まで資産を換金して引き出すことが認められていません。iDeCoは、老後のために、資産を築くことが目的の制度として国が税制上の優遇を設けているからです。

また、60歳で引き出す場合も、10年以上加入していることが条件です。仮に、60歳の時点で加入期間が10年未満の場合は、最高65歳まで引き出しが順延されます。

急にまとまったお金が必要になった場合も、60歳までは積み立てたお金には頼れないと認識しておくべきです。

手数料が発生する

以下は、iDeCoで手数料が発生する場面です。

  • 加入時・移換時手数料
  • 口座管理手数料
  • 給付事務手数料
  • 還付事務手数料
  • 投資信託を選んだ場合は、信託報酬

iDeCoは、どの金融機関でも必ず加入時に、2,829円の手数料が発生します。また、国民年金基金連合に月額105円、信託銀行に月額66円の手数料もかかります。

他にも、加入する金融機関により0円〜500円程度の管理手数料が発生します。

元本確保型の安全な金融商品だけを運用する場合、手数料が運用利益を上回ることもあるので注意が必要です。

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特定退職金共済のメリット・デメリット

特定退職金共済は、申し込み手続きや管理が簡単で、福利厚生をうたえるメリットがあります。一方で、加入には条件があるほか、元本割れのリスクもあるので注意すべきです。

特定退職金共済の、メリット・デメリットを参考にしてください。

特定退職金共済のメリット

以下は、特定退職金共済のメリットです。

  • 申し込み手続きや管理が簡単
  • 福利厚生になる
  • 節税効果がある

それぞれ解説します。

申し込み手続きや管理が簡単

特定退職金共済を導入する際は、保険会社経由で管轄内の商工会議所や商工会などに申込書を提出するだけで手続きは完了します。独自で退職金制度を構築する手間がかからない点は、メリットといえるでしょう。

掛金の積み立ても、事業主体から委託された保険会社が代行するため、管理の手間がかかりません。

福利厚生になる

退職金制度を導入すれば、福利厚生が充実します。従業員にとって退職金は、長期的に同じ企業へ在籍する理由の1つとなります。人材の確保と定着化といった、メリットも得られるでしょう。

節税効果がある

特定退職金共済は、退職金制度の補助だけでなく、節税対策にもなります。特定退職金共済の掛金は、全額を課税対象外となる損金または経費として計上できるからです。

掛金が高額であるほど、節税効果も大きくなるといえます。

特定退職金共済のデメリット

以下は、特定退職金共済のデメリットです。

  • 役員は加入対象外
  • 元本割れする可能性がある
  • 退職理由によって退職金の増減はできない

それぞれ、解説します。

役員は加入対象外

特定退職金共済は、従業員向けの退職金制度なので、代表取締役や副社長といった役員は加入できません。常時職務に従事している部長、課長などの使用人兼役員は加入できます。

加入できるかは、役職や肩書き、持ち株、報酬などの面から総合的に判断されます。

加入期間が短いと元本割れする

特定退職金共済に加入した期間が短いと、元本割れする可能性があります東京商工会議所の場合、10口10,000円で加入した場合、11年未満で退職すると、退職金一時金が掛金を下回ります。

経営が困難になっても容易に掛金を減額できない

掛金の減額には従業員からの同意を得る必要があるため、経営が困難になっても容易に掛金は減額できません。加えて、掛金を減額しないと積立継続が著しく困難であると、特定退職金共済団体に認可してもらう必要があります。

経営に影響が出ないように、掛金は余裕を持って設定すべきです。

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退職金だけでなく年収も気にしないと個人事業主は老後が不安

個人事業主は、老後の不安を解消するには、現在の収入も気にしておくべきです。厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、1世帯あたりの平均所得額は約564万円です。

たとえば年収700万円の場合、手取りは約550万円なので平均的な生活は送れます。しかし、ゆとりある老後を目指すなら、年収800万円、900万円とより高収入を目指すのが賢明です。

老後資金について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
フリーランスの老後資金はいくら必要かを解説!対策で不安を解消

レバテックフリーランス利用者の平均年収は876万円です。収入アップを目指す手段として活用してください。

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個人事業主の退職金に関するよくある質問

個人事業主の退職金について、よくある質問に答えます。退職金の積立方法やメリットについて、参考にしてください。

Q.個人事業主が退職金を積み立てるにはどういった方法がありますか?

個人事業主は、小規模企業共済制度や個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用して退職金を積立できます。また、個人事業主が契約者となって、従業員の退職金を積み立てる特定退職金共済もあります。

Q.個人事業主の退職金は経費になりますか?

小規模企業共済制度の場合、個人事業主が個人的に加入する退職金制度なので経費になりません。 積立時の掛金は全額控除できますが、受取時は課税されます。iDeCoの掛金も経費ではなく、確定申告で全額所得控除として処理します。

Q. 個人事業主が小規模企業共済制度に加入するメリットは何ですか?

小規模企業共済制度の掛金は、確定申告の際に、全額を課税対象所得から控除できるため、節税効果があります。また、小規模企業共済制度に加入していると、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日貸付も可能です。

※本記事は2023年10月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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