収入より経費が多い赤字決算!確定申告はどうする?

事業の収支が赤字に転じた場合、果たして確定申告は必要なのでしょうか。「所得がマイナスだから不要なのでは?」と思われる方も多いかもしれません。

この記事では、収入より支出が多い場合の確定申告の必要性について解説します。参考のうえ、赤字決算においても適切な税務申告を行いましょう。

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収入より経費が多い「赤字」の場合でも確定申告は必要?

確定申告は収入より経費が多い「赤字」の場合、原則として確定申告の義務はありません。そもそも所得がマイナス、すなわち納付すべき所得税がないため、基本的に確定申告を行う必要がないというわけです。

ただし、法律上の義務はなくとも赤字決算における確定申告には、多くのメリットがあります。この点についての詳細は後述します。

参考:確定申告|国税庁

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赤字でも確定申告することの4つのメリット

赤字決算でも確定申告をすることで、個人事業主にはさまざまな恩恵がもたらされます。続いて、赤字であっても確定申告をおすすめする理由を4つ解説します。

赤字でも確定申告することの4つのメリット

1.損益通算が可能になる

赤字でも確定申告をすることのメリットの一つに、損益通算が可能になる点が挙げられます。

損益通算とは課税対象となる所得がマイナスに転じた場合に、不動産所得など利益が出ている他の所得と相殺(通算)することで、所得を控除できる制度のことです。損益通算により、所得税の負担を軽減することが可能になります。

当該の事業所得が赤字であっても、他に黒字化している所得がある場合は確定申告を行うことで税負担の軽減というメリットを享受できるのです。

2.過去の赤字の繰越控除ができる

確定申告をしておくと、その年に生じた赤字を翌年以降に繰り越すことも可能になります。個人事業主の事業所得で生じた赤字は、最長3年間繰り越すことが可能ですが、これは確定申告を行った場合にのみ適用される制度です。赤字を繰越すことで、結果的に翌年以降の税負担の軽減を図ることができます。

ただし、赤字の繰り越しができるのは青色申告のみであり、白色申告は適用外となる点には注意が必要です。

以下の記事では、フリーランスの青色申告の手続き方法について詳しく解説しています。併せてお読みください。
【2025年最新】フリーランスの青色申告のやり方をかみ砕いて解説!初めてでも自力でできる?

3.所得証明書・非課税証明書を発行できる

赤字でも確定申告をすることで、所得証明書や非課税証明書といった公的な証明書を発行できるようになります。これらの証明書は、各種補助金の申請や公営住宅の入居審査など、さまざまな場面で必要です。

これらの証明書がないと、所得がないことを証明できず行政サービスの利用に支障をきたすおそれがあります。

4.国民健康保険料の軽減措置を受けられる

事業が赤字決算となった場合は、国民健康保険料の軽減措置を受けられる場合があります

国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、赤字申告をすることで翌年の保険料負担が減少します。これにより、翌年の支出を削ることが可能になるというわけです。

以下の記事では、フリーランスの社会保険について詳しく解説しています。併せてお読みください。
個人事業主が加入する社会保険とは?保険料を安くする方法も解説

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赤字で確定申告しないことのデメリット

収入より経費が多い赤字の状態で確定申告をしないと、さまざまなデメリットが生じます。先述のメリットとセットで確認しておきましょう。

所得を証明できなくなる

確定申告をしないと、自分の所得を公的に証明することができなくなります。これは赤字の場合でも同様で、「所得がマイナスである」ということを証明できなくなるのです。

確定申告により入手できる所得証明書は、住宅ローンの申し込みやクレジットカードの審査、賃貸契約など、多くの場面で必要となります。

しかし、確定申告を行わないとこの証明書がもらえずに、過去の所得を証明できないため、各種審査に通らない可能性が高くなってしまうのです。

国民健康保険料が適切に算定されなくなる

確定申告をしないと、国民健康保険料が適切に算定されなくなるというデメリットもあります。国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、確定申告をしないと所得が正確に把握されず、本来より高い保険料が設定される可能性があります

保険料の減免措置の対象となるにもかかわらず、確定申告を行っていないばかりに本来納める必要のない保険料を支払う事態ともなりかねません。

公的サービスに影響が出る場合がある

確定申告をしないことで、公的サービスの利用に影響が出るという弊害もあります。

たとえば認可保育所の利用料や児童手当、各種医療費助成制度など、多くの公的サービスは所得に応じて金額や適用条件が変わります。これらのサービスを利用する可能性がある場合は、きちんと確定申告の手続きを行っておきましょう。

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赤字の場合の確定申告で押さえておきたいポイント

前述のとおり、青色申告を選択すると赤字の繰越が可能になるため、手続きの煩雑さはあるものの、事業が赤字の場合は特に青色申告で確定申告を行うことがおすすめです。なお、青色申告は白色申告と異なり、手続きがやや複雑になるほか、事前の申請が必要になるということを覚えておいてください。

また、赤字の場合に限ったことではありませんが、事業用の経費と私的な支出はしっかり区別する必要があります。特にPC機器などプライベートでも使用するものは按分が必要です。

下記の記事では青色申告を選択する際に必要な事前申請について解説しています。併せてお読みください。
青色申告は事前の申請が必要

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収入より経費が多い個人事業主が確定申告で注意すべきこと

収入より支出が多い個人事業主が確定申告をする際には、いくつかの注意点があります。最後に確定申告における注意点を紹介するので、ご参考のうえ、トラブルのない手続きを行ってください。

意図的な赤字計上は税務調査の対象となる

確定申告で意図的に赤字を計上すると、税務調査の対象となる可能性があります。継続的な赤字申告や不自然な経費計上が見られると、税務署による調査の対象となりかねません。

個人的な支出を事業経費として計上する「経費の水増し」や、収入の一部を申告しない「売上除外」などは脱税行為であり、罰則の対象となります。

税務調査が入った場合は、すべての取引について証拠書類の提示を求められます。このような場合に備えて、契約書や請求書、振込明細、経費の領収書などは保管しておきましょう。領収書の保存期間は原則7年間と定められています。電子データでの保存も認められているため、スキャンして保存するのも一つの方法です。

参考:税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)|国税庁

連続した赤字は融資審査に影響する可能性がある

収入より経費が多い状態が複数年続くと、融資審査に悪影響を及ぼす可能性があります。銀行やその他の金融機関は、融資の判断にあたって事業の収益性や返済能力を重視します。連続して赤字が続いている場合、これらの点に疑問を持たれかねません

将来的に事業拡大や法人化を目指す場合、この点を知っておく必要があるでしょう。

※本記事は2025年10月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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