個人事業主がマイクロ法人を設立するメリットとは?手続きや注意点を解説

個人事業主として事業が軌道に乗ってきた方の中で、このまま個人事業主を続けるべきか、それともマイクロ法人を設立すべきか、迷っている方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、個人事業主がマイクロ法人を設立すると、節税や社会保険料の軽減、信用度の向上など、さまざまなメリットがあります。

この記事では、個人事業主がマイクロ法人を設立するメリットについて詳しく解説します。マイクロ法人を設立する際の手続きの方法や、注意点なども解説するので、参考にしてみてください。

目次

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マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、従業員を雇わず、取締役となる代表者が1人で事業を行う会社を指します。
個人事業主の方の中には、税金や社会保険料を抑える目的で、マイクロ法人を設立するケースが見られます。

マイクロ法人と個人事業主の掛け持ちについて検討している人は、下記の記事も参考にしてみてください。
個人事業主は法人と掛け持ちはできる?メリットとデメリットを解説

一般的な会社との違い

マイクロ法人と一般的な会社の違いは、会社の規模です。マイクロ法人は、代表者1人で事業を行うのに対して、一般的な会社では、複数の従業員や役員などとともに事業を行います。

ただし、マイクロ法人と一般的な会社は、法律上では同じように扱われます。なぜなら、取締役が一人いれば法人として認められると、会社法の三百二十六条で定められているからです。

マイクロ法人と一般的な会社の特徴は下記の表の通りです。

  マイクロ法人の場合 一般的な会社の場合
人 員 代表者1人である。 複数名の従業員や役員、株主がいる。
事業範囲 代表者1人でする範囲の事業に限定される。 従業員の増加に伴って、事業規模を拡大できる。
設立の目的 節税や社会保険料の削減を行う。 事業拡大や株主への利益還元を行う。

個人事業主との違い

マイクロ法人と個人事業主の違いは、法人格があるかどうかです。マイクロ法人は、法人格を持つことで、節税や社会的信用などの面でメリットを受けることができます。

  マイクロ法人の場合 個人事業主の場合
課せられる税金 法人税 所得税
社会的信用 比較的高い 比較的低い
経理にできる範囲 比較的広い 比較的狭い
設立の手続き 複雑(定款作成、登記申請など) 簡単(開業届の提出のみ)


個人事業主がマイクロ法人を設立するメリットについては、次で詳しく説明します。

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個人事業主がマイクロ法人を設立するメリット

個人事業主がマイクロ法人を設立するメリットには、下記の3つが挙げられます。

  • 節税につながる
  • 社会保険料の負担を減らせる
  • 取引先からの信用を得やすくなる

それぞれ詳しく解説します。

節税につながる

個人事業主がマイクロ法人を設立するとのメリットとして、節税につながることが挙げられます。
マイクロ法人になると節税ができる主な理由には、下記の3つがあります。

経費にできる項目が増えるため

マイクロ法人を設立すると節税ができる理由の一つとして、経費にできる項目が増えることが挙げられます。計上できる経費が増えると、所得額が減り、所得税を減らすことにつながるためです。

マイクロ法人では、個人事業主が計上できる経費のほかにも、下記の項目を計上することができます。

  • 退職金
  • 賞与
  • 役員報酬
  • 生命保険料(生命保険の種類や契約内容によっては全額計上できる)

個人事業主が経費に計上できるものは、下記の記事でまとめているので、ご確認ください。
個人事業主が経費に計上できるもの一覧!上限や裏技的な方法も紹介

法人税率が適用されるため

マイクロ法人を設立すると節税ができる理由には、法人税率が適用されることも挙げられます。

個人事業主の場合、所得が多くなるほど税率が高くなる「所得税」が課されます。一方で、マイクロ法人の場合は、所得税よりも税率の上がり幅がゆるやかである「法人税」が課されるのです。
また、税率の上限は、所得税だと45%ですが、法人税では23.4%であり、倍近くの差があります。

そのため、一定以上の所得がある場合、マイクロ法人を設立した方が、税負担を減らせる可能性があります

法人税の税率について詳しく知りたい方は、国税庁のホームページをご確認ください。
No.5759 法人税の税率|国税庁

社会保険料の負担を減らせる可能性がある

個人事業主がマイクロ法人を設立するメリットには、社会保険料の負担を減らせる可能性があることが挙げられます。

個人事業主では、国民健康保険と国民年金に加入するのに対して、マイクロ法人では、会社が定めた健康保険や厚生年金(社会保険)への加入が必要です。

個人事業主の場合、国民年金保険料は毎月一定の額ですが、国民健康保険料は、所得が増えれば増えるほど増加します。法人が支払う社会保険料も、似たような仕組みで、報酬額に応じて負担が増えますが、マイクロ法人であれば、自分の役員報酬額を調整することができるため、社会保険料の負担をおさえられる可能性があります。

個人事業主から法人になった場合の小規模企業共済の引き継ぎについては、下記の記事を参考にしてみてください。
小規模企業共済は法人成りした場合も引き継げる?

取引先からの信用を得やすくなる

個人事業主からマイクロ法人になるメリットとして、取引先からの信用を得やすくなることもあります。マイクロ法人は、設立する際に登記する必要があり、公的な存在として認識されるためです。

実際に、金融業界で働くファイナンシャルプランナーの方には、「金融機関からの依頼が多い業界ですので、個人では取引をできない(継続してくれない)と言った声も耳にすることがあります。」と話している方もいます。そのため、ビジネスを行う際に、特に信用度が重視される場合は、法人の設立を検討するのがおすすめです。

また、法人は、決算書の作成や税務申告が義務付けられているため、会社の業績やお金の流れがクリアになることも、取引先からの信頼を得やすくなる要因の一つと言えるでしょう。

引用元:法人化・法人成りとは?個人事業主から法人になる意味は

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個人事業主がマイクロ法人を設立するデメリット

個人事業主がマイクロ法人を設立するのにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。下記で詳しく紹介します。

手続きに費用がかかる

個人事業主がマイクロ法人を設立するデメリットには、手続きに費用がかかることが挙げられます。法人登記を行う際に必要な登録免許税は、会社形態によって下記のように異なります。

  • 株式会社:最低15万円(資本金の額の1,000分の7)
  • 合同会社:6万円
  • 合同会社:最低6万円(資本金の額の1,000分の7)

また、登録免許税のほかにも、下記の費用がかかる場合があります。

  • 定款認証の手数料:5万円(謄本代として2,000円程度が必要)
  • 定款の収入印紙代:4万円(電子定款を利用する場合は不要)
  • 会社印の作成費用:5千〜20万円ほど

マイクロ法人の場合、最小限の資本金で設立する場合が多いため、一般的な法人と比較すると費用を抑えて設立できますが、それでもある程度のまとまったお金が必要になるので注意しましょう。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

税務申告の手続きが難しくなる

個人事業主がマイクロ法人になるデメリットには、税務申告の手続きが難しくなることもあります。法人税が税務申告を行うために必要な書類には、法人事業概況説明書や勘定科目内訳書など、作成に専門的な知識が必要なものもあるためです。

税務申告の手続きを税理士に依頼することもできるため、税務申告にかかる時間や費用を考慮したうえで、自分で行うか、専門家に依頼するかを検討しましょう。

レバテックフリーランスでは、税理士を無料で紹介するサービスを行っています。税務申告のほかにも、節税対策の相談もすることができるので、ぜひ登録をご検討ください。

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個人事業主が法人になるメリット・デメリットについては、下記の記事でファイナンシャルプランナーが詳しく解説しています。
法人化(法人成り)のメリット・デメリットをFPが解説

赤字でも法人住民税が発生する

個人事業主がマイクロ法人を設立するデメリットには、赤字でも法人住民税が発生することも挙げられます。

そもそも法人住民税は、法人税割と均等割の2つで構成されています。法人税割は法人の利益に応じて課税されますが、均等割は法人の存在自体に対して課税されるのです。そのため、均等割は、事業が赤字であっても、毎年一定の額が課税されます。

均等割の税額は下記の表の通りです。該当する「都道府県民税均等割」と「市町村民税均等割」を合わせた額が課税されます。

資本金の額 都道府県民税均等割 従業員数が50人以上の場合の市区町村税均等割 従業員数が50人以下の場合の市区町村税均等割
1千万円以下 2万円 12万円 5万円
1千万円超1億円以下 5万円 15万円 13万円
1億円超10億円以下 13万円 40万円 16万円
10億円超50億円以下 54万円 175万円 41万円
50億円超 80万円 300万円

設立したばかりや事業が軌道に乗るまでの時期は、赤字になりやすい傾向があるので、資金計画を立てる際は注意しましょう。

法人税割の税額の計算方法については、総務省のホームページを参照してください。
法人住民税|総務省

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【わかりやすく解説】マイクロ法人設立の手続き6ステップ

マイクロ法人の設立を検討している方の中には、「手続きが複雑そうで、何から始めたら良いか分からない」という方もいるのではないでしょうか。

ここでは、マイクロ法人設立の手続きを6つのステップに分けて解説します。

①会社の基本情報を決める

マイクロ法人を設立する際は、まず始めに会社に関する基本情報を決めましょう。具体的には、下記の項目が挙げられます。

会社形態 株式会社・合同会社・合名会社などを指します。
商号 会社の名前のことを指します。
事業目的 会社の事業範囲を定めたものです。
資本金 事業を始めるために必要な資金です。法律上は資本金1円から会社を設立できます。
本店の所在地 会社の拠点となる住所を指します。
会社の設立日 会社の設立日は、法務局に会社設立の登記申請をした日となります。


これらの基本情報は、その後の手続きや事業運営にも影響する可能性があるため、時間をかけて慎重に検討しましょう。

商号と屋号の違いについては、下記の記事を参照してください。
屋号と商号の違いは?それぞれの意味やルール・手続きを解説

②法人用の印鑑を作成する

マイクロ法人を設立する際には、法人用の印鑑が必要となります。法人用の印鑑には、実印、銀行印、角印、ゴム印の4種類があり、それぞれ用途が異なります。

  • 実印:会社の重要な契約書や書類に押印する際に使用する
  • 銀行印:法人用の銀行口座を開設する際や、銀行取引をする際に使用する
  • 角印:請求書や領収書などの社内文書に使用する
  • ゴム印:社名や代表者名、住所などの記載が必要な書類に使用する

法人登記を行う際には、実印を使用します。登記所に提出する印鑑届書に押印する必要があるので、法務局に持参しましょう。ただし、令和3年2月15日に商業登記規則等の一部が改正され、オンラインによる申請では印鑑の提出は必須ではなくなりました

参考:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)|法務省

③定款の作成と認証を行う

定款とは、会社の基本規則を定めた、いわば会社のルールブックです。定款は、会社設立時に作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
認証を受ける手順は下記の通りです。

  • 公証役場に予約を入れる
  • 必要書類を準備する(定款3部、印鑑登録証明書、実印など)
  • 公証人の面前で定款に署名・押印する
  • 公証人による定款の内容の確認を行う
  • 認証文言の記載と公証人の署名・押印を行う
  • 手数料を支払う

電子定款認証を行う場合は、下記の法務省のホームページをご覧ください。
オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました|法務省

④資本金を払い払込証明書を取得する

定款の認証が完了したら、資本金の払い込みを行います。資本金は、会社設立時に出資者が拠出するお金であり、会社の事業資金として使用されます。

資本金の払い込みは、一般的に、発起人の個人名義の銀行口座に振り込む形で行います。振り込みが完了したら、通帳のコピーを取得しましょう。コピーをとる箇所は以下の通りです。

  • 通帳の表紙
  • 支店名・支店番号、銀行印などが記載されているページ
  • 振り込み内容が記帳されているページ

インターネットバンキングを利用している場合は、取引履歴をプリントアウトし、「銀行名」「支店名」「口座名義人」「振り込み内容」が確認できるようにしましょう。

⑤登記申請を行う

登記申請は、窓口・郵送・オンラインの3つの方法で行うことができます。申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。申請に必要な書類は下記の通りです。

必要書類 説明
登記申請書 法務局に提出する申請書類
登録免許税納付用台紙 収入印紙を貼付した用紙
定款 会社の運営に関するルールを定めた書類
発起人の決定書 本店所在地が発起人の同意をもって決定されたことを証明する書類
取締役の就任承諾書 会社設立時に取締役に就任することを承諾した旨が記載された証明書
代表取締役の就任承諾書 会社設立時に代表取締役に就任することを承諾した旨が記載された書類
設立時取締役の印鑑証明書 会社設立時の取締役の印鑑登録証明書
資本金の払込証明書 会社設立時に、資本金が実際に払い込まれたことを証明する書類
印鑑届出書 会社で使用する印鑑を法務局に届け出るための書類
「登記すべき事項」を記載した書面 会社設立時に登記簿に記載する内容をまとめた書類(PDFなどの電子データとして保存したものも可)


窓口で申請する場合は、管轄の法務局に行き、直接必要書類を提出します。提出した書類に不備があった場合、その場で修正できるのがメリットです。

法務局に郵送で申請する場合、郵送方法に決まりはありませんが、大切な書類のため、配達状況を確認できる簡易書留などで送るのがおすすめです。

オンラインでの申請は、下記の法務局のホームページから行えますので、確認してみてください。
商業・法人登記申請手続|法務省

⑥各種行政の手続きを行う

登記申請を終えたら、会社設立の手続きは完了ですが、設立後は、各種行政への手続きが必要になります。

手続きを行う行政 手続きの内容
税務署 法人を設立したことを知らせるために、法人設立届出書を提出する。(そのほか、必要に応じて、青色申告の承認申請書や的確請求書発行事業者の登録申請書などを提出する。)
都道府県税事務所・市区町村役場 法人を設立したことを知らせるために、法人設立届出書を提出する。
金融機関 法人用の口座を開設する。
年金事務所 健康保険・厚生年金保険の加入手続きを行う。


手続きを行う期限はそれぞれ異なるため、各行政のホームページなどで確認しましょう。万が一、期限を過ぎてしまっても、登記申請が差し戻されることはありませんが、罰則がある場合があるため、期限内に手続きを完了させるのが大切です。

たとえば、社会保険の加入手続きを行わないと、健康保険法第208条により、6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が課される可能性があります。

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個人事業主がマイクロ法人を設立する際の注意点

最後に、マイクロ法人を設立する際の注意点を解説します。

ペーパーカンパニーと誤解されないようにする

ペーパーカンパニーとは、実態のない会社を設立し、違法な目的で利用することを指します。マイクロ法人は、小規模な事業を行うことが多いため、事業実態が乏しいと、ペーパーカンパニーと誤解されてしまう可能性があります

このような誤解を防ぎ、健全に事業を運営するためには、Webサイトを開設する、事業計画書を作成する、といった対策をするのがおすすめです。

適切な税務処理と帳簿管理を行う

マイクロ法人であっても、法人になる以上、適切な税務処理と帳簿管理は欠かせません。これらの処理を怠ると、税務調査の際に指摘を受ける可能性があります

税務処理をスムーズに行うために、会計ソフトの導入や税理士への相談を検討してみても良いでしょう。

※本記事は2024年6月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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