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個人事業主と派遣社員の違い
個人事業主と派遣社員にはどのような違いがあるのでしょうか。契約・収入・社会保険・確定申告の面から比較してみましょう。
個人事業主とは
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を行っている人を指します。個人事業主として活動するためには開業届の提出が必要です。
開業届については、「個人事業主の開業届|フリーランスの開業に必要な手続きを解説」の記事で詳しく解説しているため、ぜひあわせてチェックしてみてください。
契約
独立して事業を営んでいる個人事業主は、雇用契約を結びません。エンジニアの場合、個人事業主であれば請負契約あるいは準委任契約を締結します。
労働者は業務について指揮監督を受けたり、勤務場所・時間に制約が生じたりしますが、業務委託契約を結ぶ場合、案件の受注先から指揮命令を受けないのが特徴です。
収入
個人事業主の場合、受注する案件数や単価によって収入が変わります。取り組んだ分だけ報酬を得られるため、高単価の案件を受注したり、一つひとつの案件をスムーズに進めたりすることで収入アップを図れるでしょう。
社会保険
個人事業主は、国民年金と国民健康保険(会社員時代の健康保険を任意継続しない場合)に加入します。
確定申告
個人事業主の場合、年度末に確定申告をする必要があります。確定申告のための主な作業は、下記のとおりです。
- 1年間の所得を計算する
- その所得に対する所得税、復興特別所得税を算出する
- 源泉徴収された金額(あらかじめ報酬から差し引かれた所得税)との過不足を計算する
- 確定申告期間中に確定申告書を提出する(不足分の所得税があるときは納める)
確定申告の期間は、原則として毎年2月16日~3月15日となっています。
確定申告書は税務署に持参するほか、郵送で提出することも可能です。また、e-Taxによる電子申告(事前の登録手続きが必要)では、インターネット上で確定申告書を提出することができます。
派遣社員とは
厚生労働省では、派遣社員を以下のように定義しています。
労働者派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものであり、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法において派遣労働者のための細かいルールを定めています。 労働者派遣では、法律上の雇い主はあくまで人材派遣会社になります。よって事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。
引用元: 厚生労働省
以上から、派遣社員の雇い主は派遣先でなく、人材派遣会社であることがわかります。
契約
派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んだうえで業務に従事します。そのため、労働基準法における「労働者」に該当し、有給休暇が付与されたり、厚生年金・健康保険に加入(一定の条件あり)ができたりするのが特徴です。
収入
時給制の派遣社員の場合、短期間での大幅な収入アップは難しいと考えられます。また、時給制の場合は勤務日数・時間によって収入が変わるという点に注意が必要です。
社会保険
「派遣社員は厚生年金・健康保険に加入できるの?」と疑問に思う方は多いかもしれませんが、下記の条件を満たすことで加入できます。
- (1)1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
- (2)1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
- (3)雇用期間の見込みが1年以上であること
- (4)学生でないこと
- (5)以下のいずれかに該当すること
- ①従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)で働いている
- ②従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
参照:厚生労働省のWebサイト「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」
上記の条件に「雇用期間の見込みが1年以上であること」とありますが、就業規則や雇用契約書などに契約を更新する旨が記載されている場合は、雇用期間が1年未満であっても適用されます。
確定申告
個人事業主は確定申告をしますが、派遣社員の場合は派遣元の会社が年末調整を行うため、原則として確定申告する必要はありません。
個人事業主と派遣社員の掛け持ちは違法にならない
個人事業主と派遣社員の掛け持ちを検討しているものの、「そもそも、掛け持ちは違法にならない?」と気になる方もいるでしょう。
結論、個人事業主と派遣社員の掛け持ちは違法になりません。個人事業主はどこにも雇用されず事業を運営しているので、派遣社員として雇用契約を結んだとしても、法律的に問題にならないためです。
なお、派遣会社が副業を禁止している可能性もあるため、トラブルにならないよう就業規則をしっかりと確認しておきましょう。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちするメリット
個人事業主と派遣社員を両立するメリットとしては、以下のとおりです。
- 安定した収入を確保できる
- 社会保険に加入できる
- スキルアップできる
- 人脈の拡大につながる
- 働きすぎの抑制につながる
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
安定した収入を確保できる
個人事業主は、毎月一定の収入を得ることが難しい働き方であると考える人もいます。参画する案件の契約内容やクライアント数などにより、報酬額が変化しやすい傾向にあるからです。
一方、派遣社員なら、数ヶ月分の仕事を確保することができるため、より収入の目処が立ちやすいといえます。そのため、個人事業主と派遣社員を掛け持ちすることで、安定した収入の確保が期待できるでしょう。
派遣先での勤務日数が週に2~3日なら個人事業主としての活動を行う時間もしっかり取れ、一石二鳥です。
社会保険に加入できる
派遣社員として前述した条件に当てはまる働き方をしていれば、個人事業主であっても社会保険に加入できます。国民健康保険と社会保険の保険料は大きく差がありませんが、社会保険の方が手当が充実しているといえるでしょう。
スキルアップできる
個人事業主として活動をしていると、収入アップのため目の前の作業をこなすことに集中してしまい、結果として自らのスキルを向上させる機会を逃してしまう可能性があります。
しかし、派遣社員と掛け持ちすることで、自分ひとりでは習得が難しいスキルも、働きながら身に付けられるチャンスがあるでしょう。
人脈の拡大に繋がる
派遣先では、個人事業主の活動単体では出会えない人達と知り合うチャンスがあります。派遣先で得た人脈を活かし、個人事業主として案件を受注できる可能性があるのは、掛け持ちをするメリットといえるでしょう。
働きすぎの抑制につながる
個人事業主は自分ひとりでの活動も多いため、作業量の管理が上手くできなくなる場合があります。案件を多くこなせば収入は増えますが、それによる心身への影響も心配です。
派遣の仕事では、派遣先企業と派遣社員の間を人材派遣会社が取り持つことになります。仲介者がいることで、仕事量の調整をより適確に行いやすくなるでしょう。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちするデメリット
個人事業主と派遣社員を掛け持ちするデメリットは、確定申告の準備や手続きにかかる手間が少し増えることです。個人事業主としての報酬は事業所得、派遣社員としての給与は給与所得となるため、しっかりと区別したうえで記録しなくてはいけません。
また、個人事業主と派遣社員を両立するには、高い自己管理能力が求められます。「派遣社員としての仕事が忙しすぎて本業に手が回らない…」となってしまっては本末転 倒なため、無理のない計画を立てたうえで、業務量を調整する力が必要です。
個人事業主と派遣社員をかけ持ちするためのコツ
個人事業主と派遣社員を両立するためには、いくつかコツがあります。
- 複数の派遣会社に登録する
- 派遣は本業の閑散期に働く
- 派遣は週◯日と決めて働く
それぞれのコツについて、詳しい内容を見ていきましょう。
複数の派遣会社に登録する
本業が個人事業主の場合、フルタイムで派遣社員として働くのは難しいといえます。そのため、派遣の仕事を探す際はある程度条件を絞って探す必要がありますが、条件によってはなかなか理想の案件が見つからない可能性もあるでしょう。
そこで、選択肢を増やすために、いくつかの派遣会社に登録しておくことをおすすめします。最初は登録の手間がかかってしまいますが、それ以降の仕事探しがしやすくなるのがメリットです。
なお、派遣会社は適当に登録するのではなく、「自分の強みが活かせそうな仕事があるか」「スキルアップにつながる仕事があるか」といった点を考えたうえで選択できると良いでしょう。
派遣は本業の閑散期に働く
本業に閑散期がある場合、その期間のみ派遣社員として働くのも一つの方法です。個人事業主として働く期間と派遣社員として働く期間が明確に分かれていると、メリハリをつけて仕事がしやすいと考えられます。
派遣は週◯日と決めて働く
派遣で働くのは週に◯日、と固定する方法もあります。この場合、安定した収入を得やすくなるのがメリットといえるでしょう。
また、スケジュール的に無理がなければ、土日に派遣社員として働くのもおすすめです。土日は人手が足りなくなりやすいため、一定の需要はあると考えられます。
なお、派遣社員は基本的に有期雇用のため、特に派遣社員としての収入を頼りにしている場合は先を見越して新しい仕事を見つけておけると安心です。
個人事業主と派遣社員の掛け持ちで確定申告が必要な場合
「派遣社員は原則として確定申告する必要はない」とお伝えしましたが、個人事業主として得た所得が20万円を超える場合は、年末調整を受けずに確定申告をする必要があります。
確定申告は指定された期間中に行わなければならないため、個人事業主として得た報酬をその都度記録し、確定申告に備えることが大切です。
参照:確定申告が必要な方|国税庁
確定申告については、「個人事業主の確定申告とは?基礎を解説します」の記事で解説しているため、ぜひあわせてご一読ください。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちする際の注意点
個人事業主と派遣社員を両立することになったら、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。注意点としては以下のとおりです。
- 掛け持ちする理由を明確にする
- 掛け持ちすることを関係者に伝える
- 自己管理を徹底する
それぞれの注意点について見ていきましょう。
掛け持ちする理由を明確にする
両立をするにあたっては、2つの仕事を掛け持ちする理由を明確にしておくことが大切です。収入を増やすため、スキルアップのためなど、はっきりとした目的があることで、モチベーションを維持しやすくなります。
掛け持ちすることを関係者に伝える
派遣社員になる際は、個人事業主との兼業であることは正直に話した方が良いでしょう。掛け持ちする目的がはっきりしていれば、派遣で働く意欲も相手に伝わりやすくなります。事後報告によるトラブルも回避することができそうです。
派遣の関係者に留まらず、家族に対しても兼業することを伝えるようにします。掛け持ちする理由はもちろん、掛け持ちをしたらどのようなメリットがあるかをあらかじめ説明しておけば、家族の理解と協力を得られやすくなるでしょう。
自己管理を徹底する
個人事業主の場合、作業量は基本的に本人の裁量次第であるため、働きすぎになる恐れがあります。体調を崩せば、個人事業・派遣業務の双方に悪影響が出ることになってしまうでしょう。
掛け持ちを始めたら、意識して休息を取ることが大切です。計画的に休んで無理をしないように気を付けましょう。
※本記事は2022年9月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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