フリーランスの収入見込みをチェック
個人事業主の意味
個人事業主は、会社と雇用契約を結んで働く会社員とは異なり、個人で事業を営んでいる人のことを指します。代表的な業種でいえば、個人経営の小売店や飲食店などがイメージしやすいところでしょう。
フリーランスは個人事業主の働き方の一つ
近い概念としては、近年注目が集まるフリーランスという働き方も、個人事業主の業種のひとつに含まれます。フリーランスは組織や団体に所属することなく、案件ごとにクライアントと業務委託契約(後述)を結ぶ働き方です。場合によっては、フリーランスとして働く人のことをフリーランサーと区別することもあります。
何を以てフリーランスの定義とするかは人によって解釈がわかれますが、フリーランスの特徴として、自らの持つスキルや経験を提供することで報酬を得るという点が特徴の一つとして挙げられます。
小売店や飲食店が商品やサービスを提供することを事業とするのと同様に、フリーエンジニア、フリーデザイナーのような「フリー○○」と呼ばれる方々は、依頼された案件を専門家
として遂行することを事業としているわけです。
なお、個人事業主というのは税制上の区分です。事業を行う場合には、個人事業主の他にも、株式会社や合同会社といった法人を設立するという選択肢もあります。税金面だけでなく、個人事業主と法人とでは必要な手続きや費用、社会保険、事業主の責任、対外的な信用など、さまざまな面で違いが存在します。
フリーランスと呼ばれる人は個人事業主であることが多いですが、中には法人を設立しつつ、実質的な働き方はフリーランスというケースもあるようです。
業務委託契約って?
正社員や派遣社員は企業と雇用契約を結びますが、フリーランスが案件を受注する際に結ぶのは業務委託契約です。
業務委託契約は、請負契約と委任・準委任契約に分けられます。
請負契約
請負契約では業務の完成を約束し、成果物の納品をもって報酬が支払われます。フリーランスエンジニアの場合、請負案件の例はWebサイトやアプリケーション開発などです。
請負契約の場合、フリーランス側には完成責任があるため、契約時に定めた仕様で完成・納品しないと報酬を得られないことになります。
委任契約
委任契約は、法律行為の事務処理の委託に際して結ぶ契約。たとえば裁判の代理人を弁護士に依頼するときは、委任契約を締結することになります。
委任契約や後述する準委任契約の場合、成果物ではなく業務の遂行に対して報酬が支払われるのが特徴。
請負契約では成果物が求められますが、委任・準委任契約では依頼者の期待する結果(先述した裁判の例では「勝訴」)にならなかったとしても、「善管注意義務」(専門家としての注意義務)を果たしたのであれば報酬を得られます。
準委任契約
法律行為以外の事務処理の委託に際して結ぶ契約です。委任契約と同様に、成果物に対してではなく業務の遂行に対して報酬が支払われます。
準委任契約におけるフリーランスエンジニアは、エンジニアとしての注意義務をもって最善を尽くすことが求められます。
フリーランスは在宅型と常駐型に分けられる
ここでは、在宅型と常駐型の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
在宅型
その名のとおり自宅で作業を進める働き方で、通勤する必要がない、業務時間に融通が利くといった特徴があります。
納期を厳守するためのスケジュール管理が必須となりますが、自分のペースに合わせて業務を進められることや、プライベートの時間を考慮して作業できることは大きなメリットとなるでしょう。
常駐型
案件の参画先企業に常駐して業務を進める働き方です。常駐型の場合、業務とプライベートのメリハリをつけられる、プロジェクトメンバーに相談しながら作業を進められるといったメリットがあります。そのほか常駐型案件では、基本的に契約時に決めた期間ごとに報酬が支払われるため、在宅型に比べると収入の見通しが立てやすいのもメリットです。
なお、フリーランスエンジニアの場合、企業側はセキュリティ面などの事情から在宅型よりも常駐型を求める傾向があります。「在宅型フリーランスを考えていた」という方も、自分に合う案件を見つけられるよう、選択の幅が広がる常駐型を検討してみてはいかがでしょうか。
関連記事:個人事業主になるには?必要な知識と手続き
派遣社員の定義
派遣社員(派遣労働者)は、人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の企業で働くという就業形態です。働く企業に直接雇用されるのではなく、人材派遣会社の所属になるのが通常の正社員や契約社員、アルバイト、パートなどと異なる点であるといえます。
派遣先は派遣社員に対して業務上の命令や指示を出しますが、勤怠管理や給与の支払いなどは人材派遣会社が責任を持つのが特徴です。職場で困ったことがあれば、派遣社員は人材派遣会社、派遣先企業のどちらにも相談をすることができます。
関連記事:フリーランスと会社員 メリット・デメリット比較
個人事業主と派遣社員の違い
個人事業主と派遣社員では、契約、収入、社会保険、年末調整・確定申告といった面で違いがあります。
契約
個人事業主は雇用契約を結ぶことなく独立して事業運営を行い、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んだ上で業務に従事するというのが主な違いです。エンジニアの場合、フリーランスは請負契約あるいは準委任契約、派遣社員は雇用契約を結びます。
しかし契約形態に違いがあることはわかっても、「実際に働く上でどんな違いが生まれるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
雇用契約を結ぶ場合は労働基準法における「労働者」に該当し、法律に則って有給休暇が付与されたり、厚生年金・健康保険に加入(一定の条件あり)したりします。
労働者は業務について指揮監督を受けたり、勤務場所・時間に制約が生じたりしますが、業務委託契約を結ぶフリーランスの場合、案件の受注先から指揮命令を受けないという性質を持たせられるのが特徴です。
フリーランスとして働く際は偽装請負に注意
偽装請負は、書面上の契約では請負契約になっているにも関わらず、実際には労働者派遣に該当するものを指します。
請負契約では、原則として案件の受注先から業務についての指揮命令は受けないことになります。しかし請負契約であるにも関わらず、作業時間・場所や進め方について細かい指示を出される(労働者派遣の性質を持つ)という偽装請負が起こる場合があります。
トラブルに巻き込まれて不利益を被ることがないよう、まずは契約の際に契約形態や業務内容などを細かく確認することが大切です。
収入
フリーランスの場合、受注する案件数や単価によって収入が変わります。取り組んだ分だけ報酬を得られるため、高単価の案件を受注したり、一つひとつの案件をスムーズに進めたりすることで収入アップを図れるでしょう。
時給制の派遣社員の場合、短期間での大幅な収入アップは難しいと考えられます。また、時給制の場合は勤務日数・時間によって収入が変わるという点に注意が必要です。
社会保険
フリーランスの場合、国民年金と国民健康保険(会社員時代の健康保険を任意継続しない場合)に加入します。
「派遣社員は厚生年金・健康保険に加入できるの?」と疑問に思う方は多いかもしれませんが、下記の条件を満たすことで加入できます。
(1)1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
(2)1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
(3)雇用期間の見込みが1年以上であること
(4)学生でないこと
(5)以下のいずれかに該当すること
①従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)で働いている
②従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
引用元:厚生労働省のWebサイト「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」
上記の条件に「雇用期間の見込みが1年以上であること」とありますが、就業規則や雇用契約書などに契約を更新する旨が記載されている場合は、雇用期間が1年未満であっても適用されます。
年末調整・確定申告
年末調整や確定申告は、納める所得税を精算するための手続きです。
フリーランスの場合、年度末に確定申告をする必要があります。確定申告のための主な作業は、下記のとおりです。
・1年間の所得を計算する
・その所得に対する所得税、復興特別所得税を算出する
・源泉徴収された金額(あらかじめ報酬から差し引かれた所得税)との過不足を計算する
・確定申告期間中に確定申告書を提出する(不足分の所得税があるときは納める)
確定申告の期間は、原則として毎年2月16日~3月15日となっています。
確定申告書は税務署に持参するほか、郵送で提出することも可能です。また、e-Taxによる電子申告(事前の登録手続きが必要)では、インターネット上で確定申告書を提出することができます。
なお、派遣社員の場合は派遣元の会社が年末調整を行うため、原則として確定申告する必要はありません。
関連記事:フリーランスと派遣の違い
個人事業主と派遣社員を両立するメリット
フリーランスとして働くことを検討している人の中には、スムーズに案件を受注できなかった場合のことを考えて「ブランク期間が長くならないか心配」「経済的に困らないか不安」と思う方もいるかもしれません。
その場合、まずは個人事業主(フリーランス)と派遣社員を両立するのも一つの方法です。これからの働き方を考えるために、まずは個人事業主と派遣社員を掛け持ちするメリットを見ていきましょう。
なお、派遣社員の場合、派遣元の就業規則に副業禁止の規定があることも。副業禁止と知らずに副業を行うとトラブルになるおそれもあるため、個人事業主と派遣社員を掛け持ちする場合は就業規則を事前に確認しておきましょう。
安定した収入を確保できる
個人事業主やフリーランスは、毎月一定の収入を得ることが難しい働き方であると考える人もいます。参画する案件の契約内容やクライアント数などにより、報酬額が変化しやすい傾向にあるからです。
その点派遣社員なら、向こう数ヶ月分の仕事を確保することができるため、より収入の目処が立ちやすいといえます。派遣の仕事を掛け持ちすることで、安定した収入を得ることができるでしょう。派遣先での勤務日数が週に2~3日なら個人事業主としての活動を行う時間もしっかり取れ、一石二鳥です。
スキルアップできる
個人事業主として活動をしていると、収入アップのためつい目の前の作業をこなすことに集中しがちです。その結果、自らのスキルを向上させる機会を逃してしまう可能性があります。
派遣社員を掛け持ちすれば、派遣先の業務を通じて知識や技能を身に付けることができます。自分1人で動いていては習得が難しいスキルを、お金をもらって仕事をしながら磨くことができるのが両立のメリットです。
人脈の拡大に繋がる
個人事業主はスキルアップと同様の理由で、人脈を広げる機会が少なくなるのがデメリットになると考えられるでしょう。
派遣社員の仕事は、そのデメリットを解消することに繋がります。派遣先では、個人事業主の活動単体では出会えなかった人達と関わる機会が持てるからです。派遣社員として働くことで、個人事業主の自由を享受しつつ、組織に所属する安心感を持つこともできます。
働きすぎの抑制につながる
個人事業主は自分1人での活動も多いため、作業量の管理が上手くできなくなる場合があります。案件をたくさんこなせばこなすほど収入は増えますが、作業量過多による心身への影響も心配です。
派遣の仕事では、派遣先企業と派遣社員の間を人材派遣会社が取り持つことになります。仲介者がいることで、仕事量の調整をより適確に行いやすくなるでしょう。
関連記事:会社員がフリーランスとして副業をすることはできるか?
個人事業主と派遣社員を両立する際の注意点
個人事業主と派遣社員を両立することになったら、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。以下に、注意点をいくつか挙げていきます。
掛け持ちする理由を明確にする
両立をするにあたっては、2つの仕事を掛け持ちする理由を明確にしておくことが大切です。収入を増やすため、スキルアップのためなど、はっきりとした目的があることで、モチベーションを維持しやすくなります。
掛け持ちすることを関係者に伝える
派遣社員になる際は、個人事業主との兼業であることは正直に話した方が良いでしょう。掛け持ちする目的がはっきりしていれば、派遣で働く意欲も相手に伝わりやすくなります。事後報告によるトラブルも回避することができそうです。
派遣の関係者に留まらず、家族に対しても兼業することを伝えるようにします。掛け持ちする理由はもちろん、掛け持ちをしたらどのようなメリットがあるかをあらかじめ説明しておけば、家族の理解と協力を得られやすくなるでしょう。
自己管理を徹底する
個人事業主の場合、作業量は基本的に本人の裁量次第であるため、働きすぎになる恐れがあります。体調を崩せば、個人事業・派遣業務の双方に悪影響が出ることになってしまうでしょう。
掛け持ちを始めたら、意識して休息を取ることが大切です。計画的に休んで無理をしないように気を付けましょう。
フリーランスの所得が20万円を超えるなら確定申告をする
前の項目で「派遣社員は原則として確定申告する必要はない」とお伝えしましたが、フリーランスとして得た所得が20万円を超える場合は、年末調整を受けずに確定申告をする必要があります。
先述のとおり確定申告は指定された期間中に行わなければならないため、フリーランスとして得た報酬をその都度記録し、確定申告に備えることが大切です。
※本記事は2019年7月の情報を基に執筆しております。
関連記事:収入アップやスキル向上は可能?フリーランスがアルバイトを掛け持ちするメリット・デメリット
最後に
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※相場算出に個人情報の取得はおこないません。