法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは? | レバテックフリーランス
法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは?
- 法人の種類
- 法人成りに際してやることや必要な手続き
- 法人成りの利点と注意点
法人成り・法人化を検討中の人に向けて、手続きの流れや具体的にやることを解説します。会社設立後にも行うべき手続きがあるので、あわせて確認しておくとよいでしょう。法人化の具体的な検討や、アクションプランの作成に向け、ぜひお役立てください。
法人化とはそもそも何なのか?どんな意味があるのか?と疑問に思っている方は、以下の記事でおさらいしておきましょう。
法人化・法人成りとは?個人事業主から法人になる意味は
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目次
最初に法人の種類を決定
法人の種類として、株式会社と合同会社があり、違いを知っておくとよりよい結果につながります。それぞれ設立費用や向いていることが違うためです。設立後の種類変更も可能ですが、それぞれの特徴を簡単に解説するので、ぜひ初めての法人成りをよりよいものにしてください。
株式会社のメリットは、投資家から幅広い出資を募れることと、高い社会的信用が得られることです。資金調達のしやすさ、融資の受けやすさなどを重視する人に向きます。ただし、設立費用は25万円ほどと合同会社よりも高くなってしまいます。
合同会社のメリットは、設立費用が10万円ほどで維持にかかる費用が比較的安いことです。また、自由度の高い経営が可能です。コストをできるだけ抑えたい、事業展開や経営判断をスピーディーに行いたい人に適しています。
法人成りでやることの流れ
法人成りのためにやることは以下の6つです。
- 会社の基本事項の決定
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の用意
- 各種印鑑と印鑑証明の用意
- 定款の作成と認証
- 資本金を発起人の個人口座に振り込み払込証明書を作成
- 法務局へ登記申請
提出先や認証を受ける場所などに違いがあるため、それぞれ解説していきます。
会社の基本事項の決定
会社の基本事項が決まっていないと、申請に必要な書類が作成できません。決めるべき基本事項は以下のとおりです。
- 商号(会社名)
- 会社の所在地
- 会社・事業の目的
- 資本金・発起人・役員など
- 取締役会の設置
- 役員報酬額
- 決算日
- 発行済株式の総数、発行可能株式の総数
それぞれ詳しく解説していきます。
商号(会社名)
いわゆる会社名となる「商号」には、「会社法 第一編第二章 会社の商号」上の決まり事を守らなければいけません。手続き時に不備とならないよう、法を遵守した商号を考えてください。
例としては、「有名な会社の商号は使用しない」「株式会社/合同会社という名称を入れる」などのルールがあります。
参照:会社法|e-GOV法令検索
会社の所在地
会社は事務所を借りるか、自宅を所在地とするかを自分で決められます。事務所を借りれば家賃や光熱費などが発生するため、自宅のほうが費用を抑えられるでしょう。
ただし、自宅を所在地にすると、多くの人に住所を知られるリスクが高くなる点には要注意です。
会社・事業の目的
法人化後に行う予定のビジネス・業務の内容を記載します。事業目的を変更する場合は、定款の変更手続き、目的の変更登記が必要となり費用が掛かります。
なお、後述する「定款」に定めた会社の目的(事業目的)に 記載されていない内容は、法律上行ってはいけません。
資本金・発起人・役員など
資本金の金額は、定款に記載して登記する必要があります。発起人とは、定款に発起人として署名または記名押印した人のことです。資本金を出して設立する人が発起人、経営していく人が取締役といった役員に該当します。
取締役会の設置
取締役会の設置について、定款に記載して登記する必要があります。取締役会を設置する場合は、3人以上の取締役と監査役の選任も必要です。取締役会を設置しない場合は、自動的に取締役会非設置会社となります。
役員報酬額
役員が受け取る報酬の額も決めておきます。従業員への給与と異なり経費にならないため、会社設立後の負担を考慮して慎重に金額を決めるのがコツです。
決算日
決算日は、法人を設立した月の前月を期末にするのが基本。たとえば、4月に設立したら3月に決算日を設ける…という具合です。なお、決算日は設立後にも変更できます。
発行済株式の総数、発行可能株式の総数
設立時には、発起人に割り当てる株式の合計数を記載します。また、会社が発行できる株式の上限も定款に記載して登記しなければなりません。
登記事項証明書(登記簿謄本)を用意
融資の審査や補助金の申請で必要になる、「登記事項証明書(登記簿謄本)」という書類も用意します。登記事項証明書は、登記が定められている情報のすべて、または一部を証明するための書類です。法人関係者だけでなく、社外の人も閲覧できます。
各種印鑑と印鑑証明の用意
印鑑は、会社設立の手続きや設立後の業務で使用するので、早めに作っておくと良いでしょう。「会社実印」「会社銀行印」「角印(社印)」の3種類を用意しておくと、業務上で使い分けができて便利です。
印鑑を用意したら、書類提出に必要となる印鑑証明も取得してください。
定款の作成と認証
定款とは、会社の根幹となる規則のことで、会社設立時に必ず作成しなければなりません。会社の活動は、すべて定款の内容の範囲内に縛られるため、会社設立にあたり重要度の高い書類といえるでしょう。
定款には、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項があります。絶対的記載事項は必ず記載してください。また、相対的記載事項は記載しなければ有効となりません。
なお、合同会社を設立する場合は認証の必要がなく、定款を作った時点で効力が生じます。後述する登記申請も不要です。
参照 : 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」
資本金を発起人の個人口座に振り込み払込証明書を作成
資本金となる出資金を、発起人個人の銀行口座に振り込みます。会社名義の銀行口座は、会社を設立してからの開設となるためです。振り込み完了後は、口座名義や番号が分かるよう、通帳の表紙と表紙の裏面、出資金の入金が記帳されているページのコピーを取りましょう。その後、登記申請時に必要となる「払込証明書」を作成します。
法務局へ登記申請
登記とは、法律で定められた事項について登記簿に記載することです。登記することで法人として公的に認められます。法人の登記は法律で義務付けられており、手続きが完了しない限り会社としては認められません。
登記申請時には、次のような書類が必要です。
- 定款(謄本)
- 出資金の払込証明書
- 設立登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 発起人決定書
- 代表取締役/取締役/監査役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 印鑑届書
登記を行う際の注意点は「個人事業主の登記」で紹介していますので、手続き前にこちらもご確認ください。
法人成り後にやること
法人化手続きが終わった後もやるべきことがあり、具体的には以下のとおりです。
- 会社名義の口座開設
- 個人事業主廃業届の提出
- 資産・負債の移行手続き
- 契約・名義変更手続き
- 税金や社会保険に関する手続き
- 取引先への報告と再契約
- 廃業した年にも確定申告をする
法人化したらすぐに取り掛かったほうがよい手続きばかりのため、事前に確認しておくとよいでしょう。
会社名義の口座開設
これまで使用してきた個人の銀行口座に誤って入出金しないよう、会社名義の口座を開設します。会社名義の銀行口座は、開設までに数日~数週間かかる点に注意してください。
また、万が一、法人化後に個人事業主としての売上を会社名義の口座に入金した場合、該当する金額を個人名義の銀行へそのまま移してしまって問題ありません。
個人事業主廃業届の提出
税務署に、個人事業の開業・廃業等届出書を提出します。事業廃止の際、青色申告を取りやめる場合には「青色申告の取りやめ届出書」も必要です。廃止する事業のほかに課税売上に当たる所得がない方は、「事業廃止届出書」もあわせて提出します。
廃業手続きをするのは、業務内容が同じ場合、利益相反で会社法違反になる恐れがあるためです。
廃業届提出に関する内容は「個人事業主が廃業届を出す際の注意点」でもまとめていますので、参考にしてみてください。
参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
資産・負債の移行手続き
個人事業主時代に築いた資産や負債は、法人に移行しなければなりません。
資産を移す方法としては、法人への売却や現物出資、賃貸、贈与などが挙げられます。移行できるものは、棚卸資産や土地、建物、固定資産、売掛金などです。
負債は、借入金が金銭のままであればそのまま法人へ移行します。設備のように固定資産になっていれば、譲渡という形になるでしょう。重畳的債務引受、または免責的債務引受で負債を引き受けます。
契約・名義変更手続き
事業所の不動産や通信費、水道光熱費などで使用している名義を、個人名義から会社名義に変更します。クライアントとクレジットカードでのやり取りがある場合も、会社口座へ入金してもらえるよう変更する必要があるでしょう。
税金や社会保険に関する手続き
税金や社会保険に関して、各公的機関で手続きを行う必要があります。それぞれの機関別で必要な手続きをまとめました。
- 税務署・都道府県税務事務所・市町村役
- 都道府県税務事務所・市町村役場
- 年金事務所
- 労働基準監督署
- ハローワーク
1つずつ見ていきます。
税務署・都道府県税務事務所・市町村役場
税務署では、個人事業主開業・廃業届出書のほか、以下の書類を提出します。
提出書類 | 提出が必要な人 | 提出期限 |
---|---|---|
法人設立届出書 | 全員 | 会社設立日から2ヶ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払いが発生する場合 | 提出した日の翌月に支払う給与等から適用 (役員報酬含む) |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 源泉所得税の納期特例を受ける場合 | 特例を受ける月の前日まで |
青色申告の承認申請書 | 青色申告の承認を受ける場合 | 会社設立日から3ヶ月以内 |
消費税課税事業者選択届出書 | 消費税の課税事業者を選択する場合 | 会社の第1期が終了する日まで |
消費税簡易課税制度選択届出書 | 消費税の簡易課税を選択する場合 | 会社の第1期が終了する日まで |
都道府県税務事務所・市町村役場
都道府県の税務事務所や市町村役場には、以下を提出します。
提出書類 | 提出が必要な人 | 提出期限 |
---|---|---|
法人設立届出書 | 全員 | 都道府県による |
定款の写し | 全員 | 市町村による (東京23区は不要) |
上記のように、提出書類は個人の状況によって変わります。国税庁の「新設法人の届出書類」をはじめとする公的機関のWebサイトをご確認のうえ、準備を進めると良いでしょう。
参照:No.5100 新設法人の届出書類|国税庁
年金事務所
年金事務所では、厚生年金および健康保険の加入手続きを行います。
提出書類 | 提出する人 | 提出期限 |
---|---|---|
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 健康保険・厚生年金保険に加入する場合 | 加入要件を満たした日から5日以内 |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 健康保険・厚生年金保険に加入する場合 | 加入要件を満たした日から5日以内 |
健康保険被扶養者(異動)届 | 被保険者に扶養する者がいる場合 | 被保険者を取得した日から5日以内 |
詳しくは日本年金機構が示す「新規適用の手続き」をご参照ください。
労働基準監督署
労働基準監督署では、労働や保険に関する書類を提出します。
提出書類 | 提出する人 | 提出期限 |
---|---|---|
適用事業報告 | 従業員を雇用する場合 | 従業員雇用時に速やかに提出 |
時間外労働及び休日労働に関する協定届 (36協定書) |
従業員に時間外労働をさせる場合 | 時間外・休日労働を行う前まで |
労働保険関係成立届 | 従業員を雇用する場合 | 従業員の雇用日から10日以内 |
労働保険概算保険料申告書 | 従業員を雇用する場合 | 従業員の雇用日から50日以内 |
上記のとおり、従業員を雇わない場合、手続きは不要です。
参照:労働保険の成立手続|厚生労働省
ハローワーク
ハローワークでは、雇用保険に関する手続きを行います。
提出書類 | 提出する人 | 提出期限 |
---|---|---|
雇用保険適用事業所設置届 | 雇用保険に加入する従業員を雇用する場合 | 従業員の雇用日から10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険に加入する従業員を雇用する場合 | 従業員の雇用月の翌月10日まで |
労働基準監督署と同様、従業員を雇わない場合は関係がありません。
参照:雇用保険適用事業所設置届|ハローワークインターネットサービス
取引先への報告と再契約
法人成りしたら、個人事業主のときにお世話になった取引先に報告します。挨拶も兼ね、法人名義で再契約してもらいましょう。
廃業した年にも確定申告をする
個人事業を廃業した年は、確定申告する必要があります。基本的には、個人事業主のときと同じように手続きすれば問題ないでしょう。
会社設立までにかかる期間の目安
事前準備を含め会社設立にかかる期間は、株式会社であれば3週間程度、合同会社の場合2週間程度です。合同会社のほうが事前準備が少ないため、株式会社より手続きがスピーディーになります。
なお、登記の申請から完了までにかかる期間は株式会社、合同会社ともに約1週間です。
法人成りのメリットとデメリット
法人成りにはメリットばかりでなく、デメリットもあります。それぞれ詳しく解説していきます。
法人成りのメリット
法人成りのメリットは、節税対策ができること。役員報酬や役員の退職金を損金にできたり、消費税の納付が最大2年間免除されたりするためです。
法人は個人事業主と異なり、出資額の範囲内で責任を負う「有限責任」になるのもポイント。出資額を超えた支払い義務はないため、経営悪化・倒産時のリスクを軽減できるでしょう。
また、個人事業主と比べて社会的信用度が高まるのもメリットです。金融機関から融資を受けやすくなったり、取引先を法人のみとしているクライアントから受注できるようになったりします。
法人成りのデメリット
法人成りのデメリットとしては、設立時に費用が発生することが挙げられます。会社設立自体は、資本金1円から可能です。しかし、実際には、初期費用と運転資金を合わせた金額を用意しておくのが無難とされます。
法定福利費の増加を大変に感じる人もいるでしょう。法人成り後は社会保険に加入し、保険料を半分負担する必要があるためです。
加えて、法人は赤字が出ても法人住民税の均等割の支払い義務があります。経済的な負担が大きくなるのが法人のデメリットだといえそうです。
「法人化(法人成り)のメリット・デメリットをFPが解説」でも同様のテーマを扱っているので、あわせて参考にしてみてください。
法人成りに適したタイミング
法人成りに適したタイミングも確認しておきましょう。
可能であればインボイス制度の導入前に
2023年10月1日までに法人成りし、インボイス制度が始まるまで消費税の免税期間を活用する手があります。
インボイス制度(2023年10月1日開始)とは、「売り手がインボイス(適格請求書)を交付し、買い手は売り手から受けたインボイスを保存する」ルールです。
注意すべきは、免税事業者(基準期間の課税売上高が1000万円以下)はインボイスを交付できないことです。場合によっては、インボイス制度の導入後、消費税の免税期間がデメリットになってしまう事業者もいるでしょう。
消費税の免税期間を効果的に使いたい人は、インボイス制度が始まる前に法人成りするのが得策です。
参照 : インボイス制度の概要|国税庁
利益額が900万円を超えたとき
利益額が900万円以上になったタイミングが、法人成りする一つの目安となります。900万円の所得を得た場合、個人事業主の所得税率は33%ですが、普通法人の法人税率は23.2%です。個人の方が納税額が高くなるため、法人化のタイミングとして適しています。
参照 :
No.5759 法人税の税率|国税庁
No.2260 所得税の税率|国税庁
売上高が1,000万円を超えたとき
消費税の課税事業者になる個人事業主は、そのタイミングで法人成りすれば最大で2年間納税を免除されます。法人を設立して間もないときは、課税対象となる「2年前の売上」が存在しないためです。
なお、この仕組みを利用するには、資本金1000万円未満での法人成りが条件となります。
参照 : No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
法人成りのタイミングについては、「法人化する目安・タイミングは?法人化・法人成りの費用までFPが解説」もご確認ください。
会社設立の手続きは委託も検討すべき
法人成りの作業を代行してもらうことも検討するのがおすすめです。ここまで解説してきたように、会社設立には多くの手続きが必要です。手続きを自分で行えば費用は抑えられますが、本業に集中するために税理士や司法書士、行政書士などの士業の方に依頼する方も多い傾向にあります。
法人化では、税理士に相談される方が多いようです。ただし、税理士は税務・会計などの専門家。会社設立の登記手続きを「代行」できるのは、司法書士だけです。
司法書士以外の方は、司法書士と提携し、すべてをまとめてやってもらう仕組みになっています。代行を検討する場合は、事前にどういう方針で進めるか検討しておくと良いでしょう。
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法人成りでやることに関するよくある質問
ここでは、法人成りでやることに関するよくある質問に答えていきます。
Q. 法人成りにはどの程度の費用がかかりますか?
法人成りにかかる費用は、登記費用や顧問料などによって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度です。
Q. フリーランスの場合、どのような時に法人化することを考えると良いですか?
個人事業主であれば、収益が増加し、税金の負担が大きくなると考えた場合に、法人化を検討するのが良いです。また、複数の人手を必要とする場合や信用力の向上を図りたい場合なども法人化が有効です。
Q. 一人で会社設立をする場合、個人の口座に振り込むことは可能ですか?
可能ですが、会社と個人の資産が混同されてしまうため、後々問題が起こる可能性があります。
Q. 定款にはどのような事項を記載する必要がありますか?
資本金、取締役・監査役の選任、目的、業務内容、本店所在地などを記載する必要があります。
Q. 法人登記を完了するまでに必要な時間はどのくらいかかりますか?
概ね登記申請から1ヶ月程度の時間がかかります。
※本記事は2022年11月時点での内容を基に作成しております。
最後に
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