個人成りとは?手続きやおすすめのタイミング・メリットを解説

「個人成り」とは、法人を解散・休眠させて個人事業主へ戻る手続きのことです。売上の減少や社会保険料・固定費の負担から「法人を維持するメリットが薄れた」と感じた際の有効な選択肢となります。

この記事では、個人成りについて詳しく解説します。法人成りとの違いから、個人成りを検討するタイミング、メリット・デメリット、具体的な手続き手順まで、分かりやすくまとめました。個人事業を軌道に乗せるコツも紹介していますので、個人成りを検討している方はぜひ参考にしてください。

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個人成りとは法人から個人事業主に戻ること

個人成りとは、設立した法人を休業や解散などの形でたたんで、個人事業主へと事業形態を戻す手続きを指します。法人の維持コスト削減やビジネス規模の適正化を目的に、近年注目を集めている選択肢の一つです。

以下、個人成りの概要や法人成りとの違いについて詳しく解説します。

個人成りと法人成りの違い

法人成りが個人事業主から法人へ事業形態を変更する手続きであるのに対し、個人成りは法人から個人へと事業形態を戻す手続きです。つまり、両者は事業の組織形態を変更する方向性が真逆の関係にあります。

事業拡大や信用力の向上、利益増大に伴う節税を目指すのが法人成りです。一方の個人成りは、法人特有の固定コストや管理の手間を抑え、事業規模を最適化することを目指して行われます。

自身が置かれている事業環境や資金状況に合わせて、最適な事業形態を選択することが重要です。

個人成りを行う主な理由

個人成りを選択する主な理由は、法人であるメリットが薄れ、個人事業主に戻した方がさまざまな面で有利だと判断するからです。

よくあるケースとして、売上が一定以上低下すると、所得税率が個人の方が低くなることがあり、法人税による節税効果が得られなくなることがあります。また、利益の有無に関わらず発生する社会保険料の会社負担分や、赤字でも課される法人住民税均等割、煩雑な決算作業も経営の大きな重荷となりがちです。

このような場合、無理に法人を維持するよりも、事業の実態に合わせて個人事業主へ戻す方が固定費や手間を削減できます。

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個人成りを考えるタイミング3つ

個人成りは財務状況や事業戦略の変化に応じて適切なタイミングで検討することが大切です。検討すべきタイミングは以下の3つです。

個人成りを考えるタイミング3つ

それぞれ確認していきましょう。

1.法人の実効税率が個人の税負担を上回っている

法人の実効税率が個人の税負担より重い状況が続くなら、個人成りの検討をおすすめします。会社の年間所得が800万円(法人税の軽減税率が適用される上限)を下回る水準で推移している場合は、個人に戻した方が全体の税負担を軽減できる可能性があるためです。

中小法人の法人税率は原則19%であり、年間所得800万円以下の部分には軽減税率が適用されます。ただし、自治体へ納める地方税なども加わるため、実際のトータルな税負担(実効税率)は約21〜25%となります。

一方で個人の所得税は超過累進課税制度を採用しているため、所得が低いほど税率も下がる仕組みです。

たとえば課税所得が400万円の場合、法人の実効税率は約21〜23%です。一方、個人事業主の所得税率は20%ですが、超過累進課税の控除額を考慮した所得税の実質的な負担率は約9.3%です。

ただし、これに住民税(約10%)と個人事業税(業種により3〜5%)が加わるため、実際の総負担率は20%前後となり、法人と大きな差はありません。このように、有利不利は所得水準や役員報酬、社会保険料の負担なども含めて変わるため、判断の際は税理士のような専門家に相談し、総合的な税負担を慎重に試算しましょう。

参考:

法人税の税率|国税庁

中小法人に対する課税に関する資料|財務省

所得税の税率|国税庁

2.社会保険料の負担が大きくなっている

社会保険料の支払いが経営を圧迫している場合も、個人成りを検討するタイミングの一つです。法人では厚生年金と健康保険への加入が義務であり、会社と個人の労使折半で負担する必要があるためです。

一人社長の場合、会社負担分も自社の売上から支払うため実質的には全額を一人で負担する状態といえます。業績が落ち込んでいる局面では、役員報酬に対する社会保険料が資金繰りを苦しめる要因となります。

個人事業主へ移行すれば、加入先は国民年金と国民健康保険に切り替わるのが一般的です。国民年金は一律の定額であり、前年所得に応じた国民健康保険料と合わせても負担を抑えられるケースがあります。

ただし、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、個人成りした初年度は法人時代の役員報酬や事業所得の水準によっては想定より高額になる場合があります。加えて、将来受給できる年金額が減る側面もあるため、手元の資金繰りと将来の蓄えのバランスを見極めながら総合的に判断しましょう。

参考:

国民年金保険料|日本年金機構

健康保険の保険料・保険税について|厚生労働省

3.事業の縮小を計画している

事業規模の縮小を計画している局面も、個人成りを検討すべきタイミングです。事業が小さくなると法人維持のメリットが薄れ、固定コストの重さが目立つようになるからです。

法人化していると赤字であっても毎年必ず法人住民税の均等割が発生します。さらに複雑な決算業務や確定申告を毎年行う必要があり、手間や外注コストが負担となりがちです。

後継者不在による規模縮小やリタイアを見据えた段階的な整理を行う際は、個人成りによって経営をスリム化できます。

参考:法人住民税|総務省

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個人成りを選ぶメリット5選

個人成りへ切り替えることで、以下のような恩恵を受けられます。

個人成りを選ぶメリット5選

詳しく解説していきます。

1. 税務手続き(決算・確定申告)が簡単になる

個人事業主へ移行すると、毎年の税務手続きや確定申告の手間が大幅に軽減されます。法人の決算書作成や確定申告の作業は複雑であり、税理士へ委託する場合は費用もかかるためです。

個人事業主の確定申告であれば市販の会計ソフトを使って自力で対応しやすく、税理士への外注費用を削減できます。事務作業にかける時間や労力も削れるため、本業の作業や自身のプライベートに専念しやすくなる点も大きな利点です。

参考:所得税の確定申告|国税庁

2. 厚生年金・健康保険の加入義務がなくなる

法人で義務付けられていた社会保険の加入義務がなくなり、保険料負担を抑えやすくなります。法人ではどれだけ売上が落ち込んでも厚生年金と健康保険への加入が必須で、保険料は個人と会社で折半して負担するルールとなっているからです。

特に従業員のいない一人社長の場合、会社が支払う分も自社の売上から捻出するため、実質的にはすべての保険料を一人で背負っている状態と変わりません。

一方で個人事業主になると、加入先は国民健康保険と国民年金に切り替わるのが一般的です。国民年金は所得に関わらず一律で月額17,920円(令和8年度)の定額となっており、国民健康保険料は前年の所得ベースで計算されます。法人の重い法定福利費の仕組みに悩まされるリスクが減り、毎月の支出を抑えられるでしょう。

なお、国民年金・国民健康保険も加入と保険料の納付が義務付けられた公的制度であり、支払い義務そのものがなくなるわけではない点には留意が必要です。

参考:国民年金保険料|日本年金機構

3. 2年間は消費税が免除されることがある

個人成りすると、最大2年間の消費税免除を活用できることがあります。個人事業主として新たに事業を開始する年とその翌年は基準期間が存在せず、原則として消費税の納税義務が免除されるためです。

個人事業主の消費税の納税義務は、その年の前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合に発生します。ただし、特定期間(前年の1月1日から6月30日まで)における課税売上高が1,000万円を超えた場合、その年から課税事業者となります。

なお、特定期間の判定は給与支払額で判定することも可能です。このため、売上高が1,000万円を超えていても、給与支払額が1,000万円以下であれば免税事業者のままでいられます。

また、個人事業主としてインボイス制度(適格請求書発行事業者)の登録を行う場合は、売上高にかかわらず登録日から消費税の納税義務が発生します。取引先との関係でインボイス登録が必要かどうかも併せて検討しましょう。

インボイス制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

フリーランスは消費税の納税が義務?インボイス制度の影響を解説

参考:

納税義務の免除|国税庁

インボイス制度|国税庁

4.法人住民税均等割がかからない

個人成りすれば、法人住民税均等割がかからない点もメリットといえます。法人住民税均等割は赤字であっても支払い義務があるため、売上が少ない場合は負担が重くなってしまうからです。

法人住民税均等割は、資本金額や従業員数によって金額が決まります。たとえば、東京都23区内の場合、資本金1,000万円以下で従業員50人以下の法人であれば、年間7万円の均等割が発生します。この金額は売上や利益に関係なく課税されるため、事業が不調な時期でも固定費として負担しなければなりません。

個人事業主にも住民税の均等割は存在しますが、所得が一定以下の場合は自治体の基準により非課税となり、支払いが免除されることがあります。所得がない場合や少額の場合は、住民税も軽減されるため、負担を抑えられるでしょう。

参考:

法人住民税|総務省

個人住民税|総務省

5.廃業手続きが法人と比べて簡単になる

廃業手続きの手間を減らせる点もメリットに挙げられます。個人事業主の廃業は税務署や都道府県税事務所への届出だけで完了するため、法人の解散・清算手続きと比較して簡素化されているからです。

法人の解散・清算には以下の手続きが必要になります。

  • 株主総会での解散決議
  • 解散・清算人選任登記
  • 官報への公告
  • 債権者への個別通知
  • 財産の換価と債務の弁済
  • 残余財産の分配
  • 清算結了登記

会社の解散・清算手続きは、2ヶ月以上の官報公告期間が義務付けられているため、結了まで数ヶ月かかってしまいます。将来的に事業の終了を視野に入れているのであれば、廃業時の手続きの違いも踏まえたうえで、個人成りを検討すると良いでしょう。

参考:

会社の解散について手順を教えてください|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

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個人成りを選ぶデメリット7選

個人成りはメリットだけでなく、次のようなデメリットもあります。

個人成りを選ぶのデメリット7選

それぞれのデメリットを把握したうえで、慎重に判断を進めましょう。

1. 役員報酬の支払いによる節税ができない

個人事業主になれば、役員報酬の経費計上による節税はできません。法人の場合、自分自身の役員報酬を経費として扱えますが、個人事業主になるとそもそも役員という役職がなく、役員報酬を支払えないためです。

加えて、個人事業主は自分自身の給与や退職金も経費にできないため、経費計上以外の部分で節税の工夫をする必要があります。退職金に関しては、掛け金の全額を控除できる「小規模企業共済」の活用も検討してみると良いでしょう。

小規模企業共済について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

小規模企業共済のデメリットとは?加入を検討する際のポイントも解説

参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

2. 経費として認められる範囲が狭まる

個人事業主になると、法人よりも経費計上の条件が厳しくなる可能性があります。

たとえば法人なら、会社が借りた建物を、役員から一定の賃料相当額を受け取ることを条件に「社宅」として経費計上できます。

一方、自宅を仕事場とする個人事業主の場合は、事業使用分を按分し、家賃や光熱費の一部だけを経費に計上しなければなりません。住居のプライベート部分に関しては、経費にはできないためです。

個人事業主は事業とプライベートの切り分けが厳密に求められるため、事前に何が経費にできるか整理しておくことが大切です。

3. 事業の責任はすべて個人で負う(無限責任)

法人は有限責任ですが、個人事業主になると無限責任に変わるというデメリットがあります。

法人の場合、もし経営が行き詰まって事業を清算することになっても、出資者は原則として出資額以上の責任を負いません。会社の資産をすべて処分しても返せない債務が残ったとしても、経営者個人が自身の口座からその借金を肩代わりして弁済する義務はない仕組みになっています。ただし、代表者が会社の借入金について個人保証(連帯保証)をしている場合は、法人であっても保証人として返済義務を負います。

一方、個人事業主は法人格による責任の切り替えがなく、事業で発生した負債はすべて個人の借金と同じ扱いになります。もし事業が破綻して取引先への未払金や借入金が残ってしまった場合、それらの全額を自力で弁済しなければなりません。

仕入れや機材投資で高額な債務を抱える可能性のあるビジネスを行っている場合は、この責任の重さの違いを慎重に考慮しましょう。

4. 社会的な信用度が下がることがある

法人と比べて社会的な信用度が下がりやすい点も、個人成りのデメリットといえます。

法人は国に登記され、資本金や役員、本店の所在地といった情報が誰でも閲覧できるよう開示されているほか、税務申告の際にも厳密な決算書の提出が義務付けられています。法的な透明性があるからこそ、世間一般において高い信用を獲得しやすいです。

一方で個人事業主は、個人のプライバシーが守られている半面、外部から事業の実態や財務状況を把握するのが困難です。そのため、金融機関からの融資の審査が厳しくなったり、経営者個人の住宅ローンを組むといった場面でハードルが上がったりする可能性があります。

ビジネスの現場では、コンプライアンスやリスク管理の観点から「取引先は法人に限定する」という厳格なルールを設けている企業も見られます。既存の顧客との関係性や、将来的な新規開拓の難易度も含めて、個人成りすべきか検討することが大切です。

5. 法人時代の赤字(繰越欠損金)を引き継げない

法人時代に発生した赤字である繰越欠損金は、個人事業主の所得へ引き継ぐことができません。法人と個人事業主は法律上まったく別の主体として扱われるため、税金計算上の損失を通算できないルールになっているからです。

法人時代に大きな赤字が残っていたとしても、個人成りした後の所得と相殺して節税することは不可能となります。

6. 赤字の繰越期間が10年から3年に短縮される

個人事業主で青色申告を行う場合、発生した赤字を翌年以降に繰り越せる期間は最長3年間までとなります。

法人の場合は最長10年間にわたって赤字を繰り越し、将来の利益と相殺して税負担を減らすことが可能でした。

繰越期間が大幅に短縮されるため、利益の波が大きい事業では節税のコントロールが難しくなるおそれがあります。

参考:青色申告制度|国税庁

7. 許認可の再取得が必要になる

許認可が必要な業種で事業を行っている場合、業種によっては個人成り後に再取得が必要になる場合があります。法人名義で取得していた許認可は、個人へ自動的に引き継がれず、一度失効扱いとなることがあるためです。

申請手数料の再支払いや審査待ちの期間が生じるため、個人成りを行う前に必要な許認可の制度を再度確認しておきましょう。

また、業種によっては法人から個人事業主へ変わることで要件を満たせなくなり、許認可が下りないケースもあります。個人成りを進める前に、個人事業主の形態でも同じ許認可を確実に取得・維持できるか、管轄の官庁や専門家に必ず確認しておきましょう。

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個人成りを行う際の手続き2ステップ

法人から個人事業主に戻るためには、法的な手続きが必要になります。個人成りに必要な手続きは、主に以下の2つです。

  • 会社の解散・清算もしくは休眠の手続き
  • 個人事業主になるため開業届を提出する手続き

それぞれの具体的な流れを解説します。

1.会社の解散・清算もしくは休眠の手続き

個人成りの際には、既存の法人について解散・清算もしくは休眠の手続きを行う必要があります。

解散・清算は法人を完全に消滅させる手続きで、休眠は事業活動を停止しながら法人格を維持する手続きです。どちらの方法を選択するかは、将来的な事業展開や費用負担を考慮して決定しましょう。

以下では、それぞれの詳しい手順について解説します。

解散・清算の流れ

会社を解散する際は、まず株主総会で解散決議を行います。オーナー社長が解散決議に必要な議決権を保有している場合は、実質的に一人で解散を決断できます。

解散を決議したら、解散および清算人の選任登記を行い、会社の財産や債権・債務に関する清算手続きを進める流れです。清算手続きが終わり、清算結了登記が完了すると会社が消滅します。

なお、会社の解散には「解散登記」「清算人選任登記」「清算結了登記」のそれぞれに法律で定められた登録免許税がかかるほか、国への官報公告費用も発生します。

さらに司法書士といった専門家に手続きを依頼する場合、会社の規模に応じた代行報酬が別途必要になるため、トータルでかかる費用を事前に確認しておきましょう。

参考:

会社の解散について手順を教えてください|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

休眠の流れ

法人の休眠手続きの際は、税務署や都道府県税事務所、市町村役場に「異動届出書」を提出します。従業員を雇っている場合は、税務署に「給与支払事務所の廃止届出書」も併せて提出しましょう。

休眠のメリットは、将来的にいつでも法人としての事業を再開できる点です。ただし、休眠中であっても自治体によっては毎年「法人住民税の均等割」が発生する可能性があります。

さらに、営業活動をしていなくても、税務署への毎年の確定申告は原則として必要です。もし2期連続で申告を怠ると、青色申告の承認が取り消されてしまうことがあるため、放置しないよう注意しましょう。

また、株式会社の場合、最後の登記から12年が経過すると、法務局の休眠会社整理作業の対象となる点にも注意が必要です。通知後2ヶ月以内に登記や届出を行わないと「解散したものとみなされる(みなし解散)」からです。このため、休眠中も役員の任期満了に伴う役員変更登記は必要になります。

なお、事業を再開したくなった場合は、休眠時と同様に各行政機関へ異動届出書を提出すれば、元の状態に戻せます。

参考:

異動事項に関する届出|国税庁

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

2.個人事業主へ移行するための手続き

会社の解散もしくは休眠の手続きを進めたうえで、個人事業主として活動を始めるための各種手続きを行います。売上や経費の混同を防ぐため、基準日を明確に定めて順番に進めると良いでしょう。

開業届・青色申告承認申請書を提出する

個人事業主として開業する際は、税務署へ「開業届」を提出します。

節税効果の高い青色申告を希望する場合は、「青色申告承認申請書」も一緒に提出しましょう。青色申告を適用すれば最大で65万円の控除を受けられます(2027年分以降は控除区分が見直され、最大75万円の控除が新設される予定です)。

従業員や家族(青色事業専従者)を雇って給与を支払う予定がある場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出も必要です。その際、毎月の源泉所得税の納付を年2回にまとめられる「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も同時に提出しておくと、事務負担を軽減できます。

参考:

個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

青色申告制度|国税庁

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

開業に伴い各種契約の名義変更を行う

開業届を出して個人事業主になったら、各種契約の名義変更の手続きを行いましょう。

法人名義になっている不動産や車両、賃貸借契約や公共料金といった各種契約は、個人事業主の名義へと変更手続きが必要です。名義が混ざると個人事業の経費として認められないおそれがあるため、迅速に手続きを済ませましょう。

また、不動産や車両など、法人名義の資産を個人事業主が引き継ぐ場合は、個人が法人から買い取る手続きも必要になります。こちらは後述で詳しく解説します。

健康保険・年金の切り替え手続きを行う

会社の解散や休眠に伴い社会保険(健康保険・厚生年金)の資格を喪失した場合は、個人の「国民健康保険」と「国民年金」への切り替えが必要です。

退職(資格喪失)の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村役場の窓口で手続きを行いましょう。その前提として、法人側では年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届」および「被保険者資格喪失届」を、事実発生から5日以内に提出する必要があります。

未加入期間(保険料の未払い・無保険状態)を生じさせないよう、解散や休眠の日に合わせてすみやかに手続きを整えましょう。

参考:

国民健康保険制度|厚生労働省

国民年金に加入するための手続き|日本年金機構

事業用の銀行口座を開設する

個人事業としての活動を始めるにあたり、プライベート用とは分けて専用の銀行口座を開設しておくと良いでしょう。事業用と個人用の口座を分離することで、確定申告時の帳簿付けや収支管理の手間を大幅に削減できます。

また、屋号付きの口座を作成しておけば、取引先からの振込時に信頼を得やすいといったメリットもあります。

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個人成りで資産や負債を引き継ぐ方法

法人から個人事業主へ戻る際は、会社が所有していた車や設備などの「資産」や、銀行からの「借入金(負債)」を個人へ引き継ぐ手続きが必要です。

以下、具体的なポイントを解説します。

事業で使う資産は適正な価格で買い取る

法人が所有していた車や備品、在庫などの資産を個人事業で引き続き使う場合は、個人が法人から「適正な価格(時価)」で買い取るのが一般的です。

時価より著しく低い価格で買い取ると、差額が役員賞与や給与として課税されるおそれがあるからです。加えて、法人が消費税の課税事業者であれば、資産の売却に消費税が課される点にも注意が必要です。

具体的には、経営者個人が適正な価格で法人から資産を買い取り、その対価を会社へ支払います。会社側はその売却資金を借入金の返済や清算に必要な諸費用へと充当し、最終的に残ったお金があれば株主である自分へ返還される仕組みです。

このプロセスを踏めば、個人事業に必要な資産を円滑に移管しながら、法人側の財産整理も適正に完了させられます。

借入金は金融機関の承諾を得てから引き継ぐ

会社名義の借入金を個人事業主へ引き継ぐには、あらかじめ金融機関からの承諾を得る必要があります。

法人の清算時に一括返済するのか、あるいは個人が債務を引き受けて毎月返済を続けていくのかなど、事前に返済計画を検討しておく必要があるからです。

税務上のリスクも考慮しなければならないため、個人成りを行うと決めた段階で早めに融資元の担当者へ連絡しましょう。

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個人成りしたあとに事業を軌道に乗せるコツ

個人成りしたあとに事業を軌道に乗せるためには、以下の3つのコツを押さえておきましょう。

  • エージェントを活用して案件を安定獲得する
  • コスト管理を徹底して不要な経費を削減する
  • 各種共済や保険を活用してリスクに備える

それぞれ詳しく説明していきます。

エージェントを活用して案件を安定獲得する

個人成りして案件を効率的に獲得したいなら、フリーランス向けのエージェントサービスを活用すると良いでしょう。エージェントは自身のスキルや実績、希望条件などにマッチした案件を紹介してくれるため、自分で営業をかける手間を減らせます。

エージェントを選ぶ際は、自身のスキルに合う案件の多さはもちろん、サポート体制や手数料の妥当性、柔軟な働き方が選べるかといった点を重視するのがおすすめです。選択肢を広げるために、複数のエージェントサービスに登録すると良いでしょう。

IT・Web系の職種で個人成りを目指すなら、レバテックフリーランスがおすすめです。豊富な案件数を保有しており、希望に沿った案件や非公開案件の提案が可能です。

さらに、アドバイザーによる単価交渉や、税理士紹介・優待サービスが受けられる福利厚生パッケージなど、独立直後の不安を解消するためのサポートも充実しています。

個人事業主としてのキャリア相談も可能ですので、個人成り後に安定的に稼げるか不安な方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。

コスト管理を徹底して不要な経費を削減する

事業を軌道に乗せるためには、コスト管理を徹底して不要な経費を削る意識が欠かせません。固定費を低く抑えておくと、売上の変動に対する耐性を高められるからです。

見直すべき主な経費項目としては、以下が挙げられます。

  • オフィス賃料
  • 通信費
  • 交通費
  • 接待交際費
  • 各種システム利用料

一方で、売上に直結する投資に関しては積極的に行うバランス感覚も必要になるでしょう。スキルアップのための研修費や、作業効率化に直結する有料ツールの導入などは、将来の収益を増やすための必要経費として位置づけるのがおすすめです。

たとえば、クラウド会計ソフトといったツールを活用して毎月のコストを可視化し、無駄がないかを定期的にチェックしていくと良いでしょう。

各種共済や保険を活用してリスクに備える

万が一の事態に備えて、各種共済や保険を活用したリスクマネジメントを行いましょう。個人事業主は会社員のように労災保険や雇用保険といった保障が自動で適用されず、予期せぬトラブルや病気への対策をすべて自分自身で講じる必要があるためです(労災保険については、特別加入制度を利用して任意で加入することもできます)。

フリーランスが活用できる制度の1つに「小規模企業共済」があります。これは支払った掛金の全額が所得控除になるため、税負担を軽減しながら将来の退職金を積み立てられる心強い制度です。

さらに、取引先の不測の事態に備えつつ、掛金を経費に算入できる「経営セーフティ共済」を組み合わせて活用することも可能です。ただし、経営セーフティ共済は「継続して1年以上事業を行っている」ことが加入要件となるため、個人事業主として開業した直後は加入できない点に注意しましょう。

ほかにも、病気やケガで働けなくなった際の収入減少をカバーするために、民間の所得補償保険や各種団体の共済に加入して備える方法もあります。

個人事業主の保険について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

フリーランスが入れる保険とは?種類やリスクへの備えになる制度を解説

参考:

小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

経営セーフティ共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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個人成りに関するよくある質問

個人成りに関するよくある質問と回答をまとめました。個人成りを検討している方はぜひ参考にしてください。

Q. 個人成りで税金の扱いは法人時代とどう変わる?

納める税金の種類や計算方法が大きく変わります。

具体的には「法人税」がなくなり、事業で得た利益はすべて「所得税」「住民税」「個人事業税」の課税対象となります。なお、所得税は利益が増えるほど税率が高くなる「累進課税」のため、高所得の場合は法人時代より税率が高くなる場合もあります。

Q. 売上がいくらまで下がったら個人成りすべき?

明確な基準額はありませんが、一般的には「会社の年間所得が800万円を下回ったタイミング」がひとつの目安とされています。ただし、このラインを下回ればすぐに個人事業主が有利になるわけではなく、所得税・住民税・個人事業税と社会保険料を含めた総額で比較して判断する必要があります。

また、社会保険料の負担が重くて経営を圧迫している場合や、今後の事業縮小を予定している場合も、個人成りを検討すべきタイミングといえるでしょう。

Q. 一度個人成りしたあと、再度「法人成り」できる?

個人成りによって一度法人を解散・休眠させたとしても、再度「法人成り」することは可能です。

個人事業が再び拡大して利益が増えたり、大きな取引先との契約で法人格が必要になったりした場合は、新しく会社を設立して再法人化できます。

Q. 解散・清算せず「休眠」のまま個人成りしてもいい?

「休眠」のまま個人成りすることも可能です。解散・清算の手続き費用を抑えられるほか、将来的に事業を再開しやすいメリットがあります。

ただし、休眠中であっても自治体によっては毎年「法人住民税の均等割」が発生するケースがあるため注意しましょう。また、株式会社は最後の登記から12年が経過するとみなし解散の対象となるため、休眠中も役員変更登記などの法定手続きは継続して行う必要があります。

事業を再開したくなった場合は、各行政機関へ異動届出書等を提出すればスムーズに活動を再開できます。

※本記事は2026年8月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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