個人成りとは?手続きやおすすめのタイミング・メリットを解説

「業績の変動に合わせて、法人から個人事業主に戻りたい」と考えているものの、手続きの煩雑さや税金面への影響が分からず悩む方は多いでしょう。

売上の減少や社会保険料の負担に直面している場合、個人成りによって毎年の固定費や決算コストを抑えられる可能性があります。

この記事では、個人成りを検討するタイミングについて解説します。個人事業主へ移行するメリット・デメリットや、手続き方法をまとめました。車やPCなどの資産・借入金の正しい引き継ぎ方や、移行後に事業を軌道に乗せるためのコツについても紹介します。

無理のない事業運営を再スタートさせるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

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個人成りを考えるタイミング3つ

個人成りを考えるタイミング3つ

ここでは、個人成りを考える主なタイミングを3つ解説します。自社の状況と照らし合わせ、個人成りすべきかどうか決める参考にしてください。

法人化について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは?

1.法人の実効税率が個人の税負担を上回っている

法人の実効税率の負担が、個人の所得税といった負担よりも重い状況が続いている場合、個人成りを検討すると良いでしょう。会社の年間所得が800万円以下にまで下がっている場合、個人事業主に代わった方がトータルの税負担を軽減できる可能性が高くなるからです。

中小法人の場合、年間所得800万円以下の部分には法人税の軽減税率が適用されますが、各種地方税を合わせた法人の実効税率は約23〜25%となります。一方で、個人の所得税は「所得が低いほど税率も低くなる」という超過累進課税制度を採用しているため、所得が下がるほど負担が軽くなる仕組みです。

たとえば年間課税所得が400万円の場合、法人のままであれば約23〜25%の実効税率をベースに課税されます。しかし、個人事業主の所得税であれば法定ランクの税率は20%となり、超過累進課税の計算式を適用した実際の実質的な所得税負担率は約9.3%にまで下がります。

個人事業主になると所得税だけでなく住民税もかかってくるため、最終的な判断を下す前に、総合的な税負担をしっかりと比較検討しましょう。

2.社会保険料の負担が大きくなっている

個人成りを考えるタイミングとして、社会保険料の負担が重くなっている場合が挙げられます。法人では厚生年金や健康保険への加入が法律で義務付けられており、これらは会社と個人の「労使折半」で負担するため、経営への圧迫感が強くなりやすいからです。

従業員のいない一人社長の場合、会社負担分も元を正せばすべて自社の売上から支払うため、実質的には全額を一人で負担している状態と変わりません。役員報酬に対して社会保険料が会社と個人の双方から差し引かれると、業績が下がっている状況においては重い負担となるでしょう。

個人事業主であれば、加入先が国民健康保険と国民年金に切り替わります。国民年金は一律の定額で、国民健康保険は前年の所得に応じて計算されるため、法人時代よりも保険料を抑えられる可能性が高いです。

ただし、将来受け取れる年金額が減るといった側面もあるため、目先の支出を減らす効果と将来のライフプランのバランスを慎重に見極める必要があります。

3.事業の縮小を計画している

個人成りを考えるタイミングとして、事業の縮小を計画している場合が挙げられます。事業規模が小さくなれば、法人として維持するメリットが薄れ、むしろ維持コストが負担になるためです。

法人では毎年法人住民税均等割が発生し、売上がゼロでも支払い義務があります。さらに、法人税の申告書作成や決算業務など、税務手続きも複雑になります。事業規模が小さい場合は、こうした負担が収益性を悪化させる要因となるでしょう。

後継者不足による事業縮小や、定年を見据えた段階的な事業整理を考えている場合は、個人成りを検討するタイミングといえます。

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個人成りを選ぶメリット6選

個人成りを選ぶメリット6選

ここでは個人成りで得られるメリット6つをまとめました。法人から個人事業主に戻るとどの程度負担を軽減できるか確認しましょう。

1.税務手続きが簡単になる

法人から個人事業主になれば、毎年の税務処理にかかる労力やコストを削減できます。

法人の決算書や申告書の作成は複雑であり、専門的な簿記の知識が欠かせないため、税理士への依頼や経理社員の雇用といった高額なコストが発生しがちです。

一方で個人事業主の確定申告は、法人と比べると提出すべき書類の数が少なく、手続き自体もシンプルです。個人でも日々の帳簿付けは必要ですが、最近では初心者向けの会計ソフトといった補助的なツールが普及しているため、自力で申告を終えるハードルは決して高くありません。

毎月の税理士顧問料や決算ごとの報酬といった固定費を浮かせられるだけでなく、経営者自身が日々の経理処理に忙殺される時間からも解放される点はメリットといえます。

2.社会保険への加入義務がなくなる

社会保険への加入義務がなくなるという点も、個人成りのメリットです。

法人ではどれだけ売上が落ち込んでも厚生年金と健康保険への加入が義務付けられており、その保険料は個人負担分と同額を会社側も負担する労使折半が原則となっています。従業員のいない一人社長の場合、会社が支払う分も元を正せば自社の売上から捻出するため、実質的にはすべての保険料を一人で背負っている状態と変わりません。

一方で個人事業主になると、加入先は国民健康保険と国民年金に切り替わります。国民年金は所得に関わらず一律で月額17,920円(2026年7月時点)の定額となっており、国民健康保険料は前年の所得ベースで計算されます。法人の重い法定福利費の仕組みに悩まされるリスクが減り、毎月の支出を抑えられるでしょう。

参考:国民年金保険料|日本年金機構

3.2年間は消費税が免除される

個人成りすると、2年間は消費税が免除されるというメリットもあります。個人事業主として新たに事業を開始する場合は基準期間がないため、消費税の納税義務が免除されるからです。

消費税の納税義務は、前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合に発生します。個人成りした年とその翌年は基準期間が存在しないため、売上高にかかわらず消費税の納税義務が免除されます。

1月1日から6月30日までの特定期間の課税売上高が1,000万円を超え、給与等支払額が1,000万円を超えると、翌年から納税義務が発生する点には注意が必要です。

個人事業主としてインボイス制度(適格請求書発行事業者)の登録を行う場合は、売上高にかかわらず登録日から消費税の納税義務が発生します。取引先との関係でインボイス登録が必要かどうかも合わせて検討しましょう。

参考:納税義務の免除|国税庁

4.法人住民税均等割がかからない

個人成りのメリットとして、法人住民税均等割がかからない点が挙げられます。法人住民税均等割は赤字であっても支払い義務があるため、売上が少ない場合は負担が重くなってしまうでしょう。

法人住民税均等割は、資本金額や従業員数によって金額が決まります。たとえば東京都23区内の場合、資本金1,000万円以下で従業員50人以下の法人であれば、年間7万円の均等割が発生します。この金額は売上や利益に関係なく課税されるため、事業が不調な時期でも固定費として負担しなければなりません。

個人事業主にも住民税の均等割は存在しますが、所得が一定以下の場合は非課税となり、支払いが免除されます。所得がない場合や少額の場合は、住民税も軽減されるため、負担を抑えられるでしょう。

5.廃業手続きの手間を減らせる

個人成りのメリットとして、廃業手続きの手間を減らせる点が挙げられます。個人事業主の廃業は税務署への届出だけで完了するため、法人の解散・清算手続きと比較して簡素化されているからです。

法人の解散・清算には以下の手続きが必要になります。

  • 株主総会での解散決議
  • 解散・清算人選任登記
  • 官報への公告
  • 債権者への個別通知
  • 財産の換価と債務の弁済
  • 残余財産の分配
  • 清算結了登記

会社の解散・清算手続きは、2ヶ月以上の官報公告期間が義務付けられているため、結了まで数ヶ月かかってしまいます。将来的に事業の終了を視野に入れているのであれば、廃業届の提出だけで手続きが完了する個人事業主に今のうちから戻しておくと良いでしょう。

参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

6.法人と比べて税務調査の割合が低い

個人事業主は、法人と比べて税務調査が入る確率が低い傾向にあります。

国税庁のデータによると、2024年の法人の税務調査の割合が約1.7%であるのに対し、所得税の申告納税がある個人事業主の割合は約0.9%です。

法人は組織の規模が大きく動く金額も多いため、税務署から厳しくチェックされやすい傾向があります。一方で個人事業主は事業規模が比較的コンパクトであるため、全体の調査割合が低くなっています。

きちんと日々の帳簿をつけ、正しい確定申告を行っていれば、税務調査を過度におそれる必要はありません。ただし、売上の除外や架空経費の計上といった不正・ミスがあれば、個人であっても税務署の目に留まります。個人成りしたあとも、引き続き透明性の高い正しい申告を意識しましょう。

参考:

令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要|国税庁

令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要|国税庁

令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について|国税庁

令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|国税庁

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個人成りのデメリット5選

個人成りのデメリット5選

個人成りはメリットだけでなく、「経費に計上できる範囲が狭まる」「社会的な信用度が下がる」といったデメリットもあります。

ここでは、個人成りの主なデメリットを5つ解説していきます。

1.役員報酬の支払いによる節税ができない

法人の場合、自分自身の役員報酬を経費として扱えます。しかし、個人事業主になるとそもそも役員という役職がなく、役員報酬を支払えません。そのため、役員報酬の経費計上による節税はできないことになります。

加えて、個人事業主は自分自身の給与や退職金も経費にできません。退職金に関しては、掛け金の全額を控除できる「小規模企業共済」を活用するといった、経費計上以外の部分で節税の工夫をする必要があります。

小規模企業共済については、下記の記事を参照してください。

小規模企業共済のデメリットとは?加入を検討する際のポイントも解説

2.会社解散の手間と費用がかかる

会社を解散する場合、日常の業務に加えて清算事務といった手続きを行わなければなりません。従業員を雇っている場合、事前に話し合って理解を得る必要もあるでしょう。会社を解散する際は、登記の費用もかかります。

事業の種類によっては、個人成りしてから改めて許認可を得る手間もかかります。個人事業主になると許可が降りない可能性もあるので、注意しましょう。

3.経費として認められる範囲が狭まる

個人事業主になると、法人よりも経費計上の条件が厳しくなる可能性があります。個人事業主の場合、事業に直接かかわる支出でなければ、経費に認められません。

たとえば、法人であれば会社が借りた建物を丸々「社宅」として扱えます。一方、自宅を仕事場とする個人事業主は、事業使用分を按分し、家賃や光熱費の一部だけを経費に計上します。住居のプライベート部分に関しては、経費にはできません。

4.無限責任になる

法人は有限責任ですが、個人事業主になると無限責任に変わるというデメリットがあります。

法人の場合、もし経営が行き詰まって事業を清算することになっても、出資者は原則として出資額以上の責任を負いません。会社の資産をすべて処分しても返せない債務が残ったとしても、経営者個人が自分のポケットマネーからその借金を肩代わりして弁済する義務はない仕組みになっています。

しかし、個人事業主は事業主本人がすべての責任を背負う無限責任となるため、事業で発生した負債はすべて個人の借金と同じ扱いになります。もし事業が破綻して取引先への未払金や借入金が残ってしまった場合、それらの全額を自力で弁済しなければなりません。

仕入れや機材投資で高額な債務を抱える可能性のあるビジネスを行っている場合は、この責任の重さの違いを慎重に考慮しましょう。

5.社会的な信用度が下がる

法人と比べて社会的な信用度が下がりやすい点も、個人成りのデメリットといえます。

法人は国に登記され、資本金や役員、本店の所在地といった情報が誰でも閲覧できるよう開示されているほか、税務申告の際にも厳密な決算書の提出が義務付けられています。法的な透明性があるからこそ、世間一般において高い信用を獲得しやすいです。

一方で個人事業主は、個人のプライバシーが守られている半面、外部から事業の実態や財務状況を把握するのが困難です。そのため、金融機関からの融資の審査が厳しくなったり、経営者個人の住宅ローンを組むといった場面でハードルが上がったりする問題が起こりがちになります。

ビジネスの現場では、コンプライアンスやリスク管理の観点から「取引先は法人に限定する」という厳格なルールを設けている企業も少なくありません。既存の顧客との関係性や、将来的な新規開拓の難易度も含めて、個人成りすべきか検討する必要があります。

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個人成りで注意すべきポイント3選

予想以上の負担や損失を被るリスクを回避するために、以下の注意点を事前に把握し、個人成りすべきか慎重に検討しましょう。

  • 法人の赤字は引き継げない
  • 許認可の再取得が必要になる
  • 従業員の合意と手続きが必要

それぞれのポイントについて解説します。

1.法人の赤字は引き継げない

個人成りで注意すべきポイントとして、法人の赤字は引き継げない点が挙げられます。法人と個人事業主は税法上別の事業体として扱われるため、繰越欠損金を移転できないからです。

法人では10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の繰越欠損金制度があり、過去の赤字を将来の黒字と相殺できます。しかし、個人成りした場合、この繰越欠損金は消滅してしまいます。

繰越欠損金がある場合は、その活用期間と個人成りのメリットを慎重に比較検討しましょう。

2.許認可の再取得が必要になる

個人成りすると、許認可の再取得が必要になる点にも注意しましょう。法人名義で取得していた各種の許認可は、個人事業主として事業を継続するにあたり、原則として改めて取得し直さなければならないためです。

建設業許可や運送業許可、飲食店営業許可といったものは、あくまで事業者ごとに発行されます。そのため、法人から個人事業主への切り替えはまったく別の事業者に変わる扱いとなり、通常は新規申込みと同じ煩雑な手続きを求められます。

許認可が必要な事業を営んでいるのであれば、事前に所管の官庁へ相談し、再取得の条件や段取りをあらかじめ確認しておきましょう。

3.従業員の合意と手続きが必要

個人成りするためには、従業員の合意と手続きが必要になる点にも注意しましょう。

法人から個人事業主への変更は、法的には事業譲渡にあたります。従業員の雇用契約は自動的に承継されないため、改めて個人事業主として雇用契約を結び直さなければなりません。

さらに、厚生年金から国民年金への変更により、従業員の社会保険給付が減少する場合があります。給与水準の調整や退職金の支払いなど、従業員への対応を慎重に行わないとトラブルになる可能性があるでしょう。

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法人から個人事業に戻す際に必要な2つの手続き

法人から個人事業主に戻るためには、法的な手続きが必要になります。

個人成りに必要な手続きは、主に以下の2つです。

  • 会社の解散・清算もしくは休眠の手続き
  • 個人事業主になるため開業届を提出する手続き

それぞれの流れを説明します。

1.会社の解散・清算もしくは休眠の手続き

個人成りの際には、既存の法人について解散・清算もしくは休眠の手続きを行う必要があります。どちらの方法を選択するかは、将来的な事業展開や費用負担を考慮して決定しましょう。

解散・清算は法人を完全に消滅させる手続きで、休眠は事業活動を停止しながら法人格を維持する手続きです。以下では、それぞれの手続きの流れを解説します。

解散・清算の流れ

会社を解散する際は、まず株主総会で解散決議を行います。オーナー社長であれば、自分一人で解散を決められます。

解散を決議したら、解散および清算人の選任登記を行い、会社の財産や債権・債務に関する清算手続きを進める流れです。清算手続きが終わり、清算結了登記が完了すると会社が消滅します。

なお、会社の解散には「解散登記」「清算人選任登記」「清算結了登記」のそれぞれに法律で定められた登録免許税がかかるほか、国への官報公告費用も発生します。

さらに司法書士といったプロに手続きを依頼する場合、会社の規模に応じた代行報酬が別途必要になるため、トータルでかかる費用を事前に確認しておきましょう。

休眠の流れ

法人の休眠手続きの際は、税務署や都道府県税事務所、市町村役場に「異動届出書」を提出します。従業員を雇っている場合は、税務署に「給与支払事務所の廃止届出書」も合わせて提出しましょう。

休眠のメリットは、将来的にいつでも法人としての事業を再開できる点です。ただし、休眠中であっても自治体によっては毎年「法人住民税の均等割」が発生する可能性があります。

さらに、営業活動をしていなくても、税務署への毎年の確定申告は原則として必要です。もし2期連続で申告を怠ると、青色申告の承認が取り消されてしまうリスクがあるため、放置してしまわないよう注意しましょう。

事業を再開したくなった場合は、休眠時と同様に各行政機関へ異動届出書を提出すれば、元の状態に戻せます。

参考:

異動事項に関する届出|国税庁

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

2.個人事業主になるため開業届を提出する手続き

法人の休眠や解散の手続きを進めると同時に、個人事業主としての活動を始めるための準備を行います。

まずは、新しく納税地となる税務署へ「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出しましょう。提出期限は原則として開業日から1ヶ月以内です。開業届はe-Tax(電子申告)や、税務署の窓口への持参、または郵送で提出できます。

確定申告で最大65万円の控除が受けられる青色申告を選択する場合は、「青色申告承認申請書」も合わせて提出しましょう。提出期限は、1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで、1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内と定められています。

個人事業主として従業員や家族(青色事業専従者)を雇って給与を支払う予定がある場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出も必要です。その際、毎月の源泉所得税の納付を年2回にまとめられる「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も同時に提出しておくと、今後の事務負担を軽減できます。

参考:

個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

開業時の名義変更の流れ

開業届を出して個人事業主になったら、法人から個人事業への引き継ぎや名義変更の手続きを行います。

法人名義になっている不動産や車両、賃貸借契約や公共料金といった各種契約は、個人事業主の名義へと変更手続きを行いましょう。法人名義の不動産や車両を個人事業主が引き継ぐ場合は、個人が法人から買い取る手続きも必要になります。買い取り手続きの際は、適した価格での取引を行わないと税務上のトラブルになる可能性があるため、注意が必要です。

口座開設・保険切り替えの流れ

個人事業主として再スタートを切るにあたり、資金管理の準備や社会保険の切り替えを速やかに進めていきましょう。

まず必要なのは、個人事業用となる銀行口座の準備です。プライベートの生活費と事業資金の混同を防ぐために専用口座は欠かせません。

銀行によっては屋号付きの口座を開設できる場合があります。取引先が代金を振り込む際、振込先が個人名だけよりも、事業名が入っている方が実体のあるビジネスとして認識されやすいため、取引先からの信用度向上につながります。

同時に、法人の社会保険から個人の国民健康保険や、国民年金への切り替え手続きも忘れてはなりません。これらは法人の社会保険の資格を喪失した日から原則14日以内に、市区町村の窓口へ「加入の届け出」をしなければならないと定められています。提出が遅れないよう、最寄りの市区町村役場へ足を運び、手続きを完了させましょう。

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個人成りで資産や負債を引き継ぐ方法

個人成りをする際には、法人が所有していた資産や負債を引き継がなければなりません。正しい手続きを行わないと、のちに税務上の問題が生じたり、事業の継続自体に支障をきたしたりするリスクがあります。

ここでは、資産と負債の引き継ぎ手順についてまとめました。

法人の資産を適正な価格で引き取る

法人が所有しているパソコンや機械装置、車両、在庫商品、あるいは敷金や保証金などの資産を個人事業へ移すには、個人が法人からこれらを買い取る手続きをとります。

このとき重要なのが、帳簿価額ではなく適正な時価で取引を行う点です。もし時価よりも著しく低い価格、あるいは無償で引き取った場合、税務署から「法人から個人への利益供与(役員賞与)」とみなされる可能性があります。個人側に重い所得税が課されるといった税務トラブルに発展しかねません。

手順としては、まず売買対象となる資産をリストアップし、中古市場の相場を参考に適した時価を評価します。そのうえで、法人と個人の間で売買契約を締結して代金を決済し、名義変更手続きを進めていきましょう。時価と帳簿価額に差額がある場合は、法人側に譲渡損益が発生するため、あらかじめ税理士といったプロに相談しながら進めるのがおすすめです。

金融機関の承諾を得て借入金を移す

法人名義の借入金がある場合、それらは自動的に個人へ引き継がれるわけではありません。法人の負債を個人事業にスライドさせるためには、金融機関の承諾を得るというステップを踏みましょう。

まず融資を受けている金融機関へ個人成りする旨を早期に相談し、借入金の債務者を個人へと変更する交渉を行います。審査の段階では、個人事業主としての今後の事業計画書や、法人時代の決算書の提出を求められるケースが多いです。

なお、個人事業主への移行に伴い、法人の時よりも信用力が低く見積もられ、金利の上昇や追加の担保を提示される可能性があります。もし金融機関からの承諾が得られない場合は、法人の解散・清算手続きの中で、個人が手元資金から借入金を一括返済して肩代わりするといった対応が必要となるでしょう。

ただし、社長が個人の資産で法人の債務を肩代わりしてそのまま会社を解散する場合、法人側に「債務免除益」が立ち、税務上の処理が必要になるケースがあります。のちに税務トラブルへ発展させないためにも、負債の処理については必ず税理士と連携しながら慎重に協議を進めてください。

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個人成りしたあとに事業を軌道に乗せるコツ

個人成りしたあと、事業を軌道に乗せるためのコツは以下の通りです。

  • エージェントを活用して案件を安定獲得する
  • コスト管理を徹底して不要な経費を削減する
  • 各種共済や保険を活用してリスクに備える

それぞれ説明します。

エージェントを活用して案件を安定獲得する

個人成りしたあとに事業を軌道に乗せるコツとして、エージェントを活用した案件獲得が挙げられます。プロに案件探しを代行してもらえば、営業の負担を減らしつつ実務に集中できるでしょう。

エージェントを選ぶ際は、自身のスキルに合う案件の多さはもちろん、サポート体制や手数料の妥当性、柔軟な働き方が選べるかといった点を重視するのがおすすめです。選択肢を広げるために、複数のエージェントサービスに登録すると良いでしょう。

IT・Web系の職種で個人成りを目指す場合、業界トップクラスの案件数を保有するレバテックフリーランスであれば、希望に沿った案件の提案ができます。アドバイザーによる単価交渉や、税理士紹介・優待サービスが受けられる福利厚生パッケージなど、独立直後の不安を解消するサポートも充実している点が特徴です。

まだフリーランスとしての一歩を踏み出すか迷っている方でも、非公開案件の情報収集やキャリアアドバイザーとの相談が可能なため、ぜひお気軽にお問い合わせください。

コスト管理を徹底して不要な経費を削減する

事業を軌道に乗せるためには、コスト管理を徹底して不要な経費を削る意識が欠かせません。固定費を低く抑えておくと、売上の変動に対する耐性を高められるからです。

見直すべき主な経費項目としては、以下のものが挙げられます。

  • オフィス賃料
  • 通信費
  • 交通費
  • 接待交際費
  • 各種システム利用料

一方で、売上に直結する投資に関しては積極的に行うバランス感覚も必要になるでしょう。スキルアップのための研修費や、作業効率化に直結する有料ツールの導入などは、将来の収益を増やすための必要経費として位置づけるのがおすすめです。

クラウド会計ソフトといったツールを活用して毎月のコストを可視化し、無駄がないかを定期的にチェックしていくと良いでしょう。

各種共済や保険を活用してリスクに備える

万が一の事態に備えて、各種共済や保険を活用したリスクマネジメントを行いましょう。個人事業主には会社員のように労災保険や雇用保険がないため、予期せぬトラブルや病気への対策をすべて自分自身で講じる必要があるためです。

フリーランスが活用できる制度の1つに「小規模企業共済」があります。これは支払った掛金の全額が所得控除になるため、高い節税効果を得ながら将来の退職金を積み立てられる心強い制度です。小規模企業共済に加え、取引先の不測の事態に備えつつ掛金を経費に算入できる「経営セーフティ共済」を組み合わせて活用するケースも少なくありません。

病気やケガで働けなくなった際の収入減少をカバーするために、民間の所得補償保険や各種団体の共済に加入して備える方法もあります。

個人事業主の保険について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

フリーランスが備えるべき保険とは?種類や安く抑えるコツも解説

参考:

小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

経営セーフティ共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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個人成りに関するよくある質問

ここでは、個人成りに関するよくある質問に答えます。

Q. 個人成りを検討すべきタイミングは?

会社の年間所得が800万円以下に下がり、超過累進課税である所得税の方が税負担を抑えられる状況が続いている場合は個人成りを検討するタイミングといえます。従業員のいない一人社長で、会社負担分も含めた重い社会保険料が経営を圧迫している時期にも適しています。後継者不足や定年を見据えて段階的に事業規模を縮小し、法人を維持するコストや複雑な決算の手間を減らしたいと考えた段階でも、個人成りを検討すると良いでしょう。

Q. 個人成りのメリットは何?

個人成りのメリットは、複雑な法人決算から解放され、毎年の申告労力や税理士報酬などのコストを削減できる点です。さらに、法人に義務付けられていた社会保険の加入義務がなくなるため、国民健康保険や国民年金への切り替えによって毎月の固定支出を抑えられます。毎年発生する法人住民税均等割の負担がなくなるほか、個人事業主として独立してから最初の2年間は原則として消費税が免除される点もメリットといえます。

Q. 個人成りのデメリットは何?

役員報酬や社宅制度、退職金といった法人ならではの幅広い節税メリットを活用できなくなり、自宅家賃といった経費に認められる範囲が狭まる点がデメリットです。さらに、万が一の際の責任が有限責任から無限責任へと変わるため、事業で発生した負債はすべて個人で弁済しなければなりません。法的な透明性が下がれば社会的な信用度が低下しやすく、融資の審査が厳しくなるリスクにも注意しましょう。

Q. 個人成りにはどのような手続きが必要?

まずは既存の法人を消滅させる解散・清算、もしくは法人格を維持したまま眠らせる休眠のどちらかの手続きを行います。並行して、税務署へe-Taxを利用して個人の開業届を速やかに提出しましょう。車やPCなどの法人資産を適正な時価で個人へ買い取る名義変更や、金融機関の承諾を得て借入金を個人へ移す交渉も必要になります。さらに、資格喪失から14日以内に行う国民年金・国民健康保険への切り替えといった、一連の引き継ぎ手続きも同時に進めていきましょう。

※本記事は2026年7月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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