フリーランスの年金切り替えと退職金について解説

定年退職やセカンドキャリアが現実味を帯びてきて、「公的年金だけで老後の生活は大丈夫だろうか?」「退職金や企業年金をお得に受け取る方法はあるのか?」と不安を感じていませんか?

この記事では、フリーランスの年金と退職金について解説します。年金と退職金の仕組みから、受給方法の選択まで、老後の資金計画に必要な知識をまとめました。

企業年金の種類や税制優遇を活用した受取方法、フリーランス向けの退職金制度についても紹介するので、老後資金をシミュレーションする際の参考にしてください。

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企業年金・厚生年金の仕組み

日本の年金制度は、加入者の職業や立場によって構造が異なります。

企業年金と厚生年金の違いについて確認しておきましょう

企業年金

企業年金は、公的年金に上乗せして会社が独自に実施する福利厚生制度です。国民年金と厚生年金に加えた「3階建て年金」の最上階として、退職後の生活をより手厚く守る役割を担います。

年金の三階建て構造の図解

企業年金はすべての会社にあるわけではなく、導入の有無や内容は勤務先ごとに異なります。たとえば、大手企業では手厚い給付が期待できる一方、中小企業では制度自体を設けていないというケースも珍しくありません。

退職の際は、それまでの積立金や受給権の扱いを事前に確かめておくと良いでしょう。転職先の制度によっては資産の移換が可能な場合もあります。

厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する公的年金制度を指します。加入期間や報酬額に応じて、将来受給できる金額が変動する仕組みです。

この制度の特徴は、会社が保険料の半分を負担する「労使折半」が採用されている点にあります。ただし、退職してフリーランスになる場合は、厚生年金の被保険者資格を喪失し、国民年金のみに加入する手続きを行わなければなりません。

老後に受給するためには、公的年金の加入期間が通算して10年以上ある点が条件となります。たとえば、転職や独立によって加入形態が変わったとしても、これまでの期間を合算して10年を超えていれば、将来的に給付を受ける権利を得られるでしょう。

会社員時代の加入実績を無駄にしないためにも、自身の加入状況をあらかじめ把握しておきましょう。

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企業年金と退職金の違い

企業年金と退職金は、いずれも従業員の退職後の生活を支える仕組みですが、受け取り方や本来の目的に明確な違いがあります。退職金は退職時にまとまった金額を受け取る「一時金」であるのに対し、企業年金は一定期間または生涯にわたって定期的に受け取る「年金」である点が大きな違いです。

退職金は長年の労働に対する「賃金の後払い」としての側面が強く、企業年金は現役時代に積み立てた資産を運用し、老後の生活を長期的に保障する点を主眼に置いています。

企業年金と退職金の主な相違点を以下の表にまとめました。

比較項目 企業年金 退職金
主な支給方法 分割で定期的に受け取り 一括で受け取り
主な支給時期 原則として60歳や65歳以降 退職したタイミング
適用される控除 公的年金等控除 退職所得控除
受給条件の基準 国が定める年金関連の法令 勤務先が定める退職金規定

近年は、従業員がより計画的な資産形成を行えるよう、従来の退職金制度から企業年金制度へシフトする企業が増えています。税制上の優遇措置を効率よく活用できるメリットもあり、受け取り方の選択は将来のキャッシュフローに大きな影響を与えるといえるでしょう。

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企業年金の種類

企業年金には、「確定給付企業年金(DB)」と「確定拠出年金(企業型DC)」の2種類が存在します。主な違いは、資産運用の結果に対する責任を誰が負うのかというリスクの所在です。

2つの企業年金の仕組みについて把握しておきましょう。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB)は、将来受け取る給付額があらかじめ約束されている制度を指します。給与水準や勤続年数といった一定の基準によって受給額が算出されるため、受け取る側にとっての安定性が高い点が魅力です。

この制度において運用リスクを負うのは会社側であり、運用の良し悪しに関わらず従業員は約束された金額を受け取れます。退職時に将来の収入見通しが立ちやすく、老後の資金計画を立てやすくなる点が大きなメリットです。

一方で、企業の経営状態が悪化した際には、給付水準の引き下げや制度自体の廃止が検討される可能性も否定できません。転職の際に資産を持ち運ぶ手続きが煩雑になる傾向があるため、離職時には規約の内容をしっかり確かめておくと良いでしょう。

確定拠出年金(企業型DC)

確定拠出年金(企業型DC)は、会社が拠出する掛金を加入者本人が自ら運用する仕組みです。将来の受給額は運用成績によって左右されるため、投資の成果を直接反映させた資産形成ができます。

企業が用意した選択肢の中から、預金や投資信託といった商品を従業員自身が選んで運用を行う点が特徴です。市場の状況次第では資産を増やせるチャンスがある反面、元本を割り込むリスクも本人が負わなければなりません。

一方で、転職先が企業型DCを導入していればそのまま継続でき、自営業になる場合もiDeCo(個人型確定拠出年金)に資産を移せるというメリットがあります。

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フリーランス向けの主な退職金制度

会社員と異なり、フリーランスには廃業時に勤務先から支払われる退職金が存在しません。そのため、自らの手で老後の生活資金を準備しておく必要があります。

ここでは、個人事業主が退職金代わりに活用できる公的な共済制度を紹介します。それぞれの制度が持つ目的や節税面でのメリットを整理しました。

個人事業主向けの退職金制度については、下記の記事でも詳しく解説しています。

個人事業主向け退職金制度|おすすめ制度や経費の有無・積み立て方法について解説

小規模企業共済

小規模企業共済とは、個人事業主や経営者のために国が用意した退職金積立制度を指します。廃業時だけでなく、65歳以上の受給要件を満たせば仕事を継続しながら共済金を受け取れる点が大きな特徴です。

この制度は、節税をしながら効率的に老後の蓄えを増やせる仕組みになっています。毎月の掛金は1,000円から7万円までの間で自由に設定でき、その全額が所得控除の対象となるためです。利益に応じて掛金を増減させるといった、収入の波に合わせた柔軟な運用が行えます。

ただし、受け取れる共済金の額や種類は、契約者の地位や請求の事由によって変動する点に注意しましょう。

参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済は、取引先の倒産という予期せぬ事態から事業を守るための共済制度です。本来は連鎖倒産を防止する目的の制度ですが、解約手当金を活用すれば、将来の資金準備にも役立てられます。

経営セーフティ共済のメリットは、一定期間加入すれば掛金の全額が戻ってくる点にあります。フリーランスの場合は支払った掛金を必要経費として算入できるため、高い節税効果を期待しながら手元資金を蓄積できる仕組みです。

さらに、無担保・無保証人で最大8,000万円までの借入れが受けられるといった、資金繰りの安全網としても機能します。節税とリスク管理を同時に実現できるため、事業の安定性を高められる選択肢といえるでしょう。

参考:経営セーフティ共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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退職金は「一時金受取」と「年金受取」どちらがお得?

退職金や企業年金を受給する際は、一括で受け取る「一時金」と、分割で受け取る「年金形式」のどちらかを選択できます。受取方法によって適用される税制が異なるため、自身の資産状況やライフプランを照らし合わせながら、慎重に検討しましょう。

ここでは、「一時金受取」と「年金受取」のどちらを選ぶべきか、状況別に解説します。

税負担を最小限に抑えたいなら「一時金受取」

支払う税金を最小限に留めたい場合は、一時金受取がおすすめです。

一時金受取のメリットは、税務上の退職所得として扱われ、多額の控除を適用できる点にあります。退職金は老後の生活を支える資金であるため、通常の給与所得と比べて税金が低くなるよう、特別な計算方法が認められているためです。

一時金受取の場合「退職所得控除」という制度を利用できます。その額は勤続年数によって変わり、勤続20年以下の場合は「40万円 × 勤続年数」で算出されます。勤続年数が20年を超える場合は、最初の20年分として計算される800万円をベースに、20年を超えた期間については1年につき70万円を加算する仕組みです。

退職金が退職所得控除額の範囲内であれば所得税がかからないケースが多いため、手元に資金を厚く残したい方にとって有利な選択肢といえるでしょう。

ただし、一括受取は手元に資金が残る反面、その後の生活設計に応じた資金管理をすべて自分で行う必要があります。将来の物価変動といったリスクを見据えたうえでの、計画的な活用が求められるでしょう。

参考:退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁

老後の安定収入を優先したいなら「年金受取」

毎月一定の収入を確保し、老後の家計を安定させたい場合は、年金形式での受取がおすすめです。公的年金と同様に「公的年金等控除」が適用され、一定の非課税枠を活かしながら受け取れるというメリットがあるためです。

受取時の税制優遇は、受給者の年齢によって控除額が変わります。公的年金等控除の最低保障額は、65歳未満であれば年間60万円、65歳以上であれば年間110万円です。

一方で、年金受取は将来的なインフレによって実質的な受給額の価値が下がる可能性も否定できません。年金形式での受け取りは「毎年の所得」としてカウントされるため、国民健康保険料や介護保険料が増えるというデメリットもあります。

受け取り時の税制優遇だけでなく、社会保険料の負担増も含めたトータルでの手残りをシミュレーションしておきましょう。

国民年金の切り替え手続き

会社を退職してフリーランスになる際は、厚生年金から国民年金へ種別を変更するための切り替え手続きが必要になります。

ここでは、国民年金の切り替え手続きについてまとめました。

個人事業主の国民年金について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

個人事業主の国民年金ガイド|もらえる額はいくら?手続きや節税方法も解説

なお、年金と同じく「健康保険」についても、退職後14日以内に切り替え手続きを行わなければなりません。手続きを忘れると未加入期間が発生してしまうため、あわせて確認しておきましょう。

健康保険の切り替えについては、下記の記事を参照してください。

フリーランスの健康保険とは?安くする方法や国保以外の選択肢も紹介!

第1号被保険者への変更手続き

国民年金の第1号被保険者へ切り替える際は、住所地の役所にある国民年金窓口、または郵送や電子申請にて速やかに届け出を行う必要があります。退職によって厚生年金の被保険者資格を失うため、公的年金の未納期間を作らないよう加入手続きを完了させなければなりません。

窓口へ足を運ぶ際は、以下の書類を準備しておくとスムーズに進められます。

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 離職票や退職証明書といった退職日が分かる書類
  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類

窓口での申請以外にも、マイナポータルを利用した電子申請を活用すれば、自宅から24時間いつでも手続きが可能です。退職後14日以内までに行うのが原則ですが、万が一遅れた場合は将来の年金受給に影響が出るおそれがあるため、早めに対応しましょう。

配偶者に関する手続き

会社を辞めてフリーランスになる際、もし配偶者を自身の扶養に入れていたのであれば、配偶者の年金種別を変更する手続きもセットで行う必要があります。

配偶者の年金切り替えは自動的には行われません。「第3号被保険者」から、「第1号被保険者」への変更手続きが必要になるため、自身の届出と併せて家族分も同時に申請を進めるとスムーズです。

手続きの際は、配偶者の分の書類もあらかじめ揃えておくようにしてください。必要書類は以下の通りです。

  • 本人の退職証明書(扶養から外れた日を証明する書類)
  • 配偶者の年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 配偶者の本人確認書類

これらを持参し、自身の手続きと同じく退職から14日以内までに届出を完了させる必要があります。

もし切り替えを忘れてしまうと、その期間の国民年金保険料は未納として扱われ、将来配偶者が受け取る年金額が減ってしまうおそれがあります。公的年金の加入手続きを進める際は、配偶者の種別変更も忘れずに行いましょう。

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国民年金基金・iDeCo・付加年金で老後に備える

フリーランスが活用できる主な保障の上乗せ制度として、「国民年金基金」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」、「付加年金」があります。いずれも税制上の優遇を受けながら、効率的に将来の備えを厚くできる点が特徴です。

ここでは、それぞれの制度の内容について確認しておきましょう。

個人事業主の年金について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

個人事業主の年金ガイド!受給額の目安から老後資金の作り方まで解説

国民年金基金

国民年金基金とは、第1号被保険者が厚生年金との受給額の差を埋めるために活用できる公的な年金上乗せ制度を指します。終身年金として生涯にわたり受け取れるため、基礎年金と合わせれば老後の生活基盤をより強固にできる仕組みです。

この制度は、ライフプランに合わせて掛金や給付の型を柔軟に選べるという点がメリットです。月々の掛金は全額が所得控除の対象となるため、将来の資金を蓄えながら毎年の所得税や住民税を軽減できます。

ただし、一度加入すると自己都合による任意脱退が原則として認められない点に注意しましょう。収入の状況を見据えながら、無理のない範囲でプランを組み立てるのがおすすめです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で決めた掛金を運用し、その成果を将来受け取る私的年金制度です。掛金の全額が所得控除の対象になるほか、運用益が非課税、受取時も税制優遇を受けられるなど、フリーランスにとって節税効果の高い制度といえます。

国民年金基金が「将来の受給額が決まっている」のに対し、iDeCoは「運用の結果によって受給額が変わる」点が大きな違いです。国民年金基金との併用も可能なため、組み合わせて活用するのも一つの手でしょう。

iDeCoについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

個人事業主向けiDeCoガイド|上限やデメリット・小規模企業共済と比較

付加年金

付加年金は、月々の国民年金保険料に少額の金額を上乗せして納めれば、将来の年金額を増額できる制度です。第1号被保険者と任意加入被保険者が対象であり、市区町村の窓口で申し込むだけで手軽に始められるというメリットがあります。

この制度は返還率が高く、毎月の付加保険料は400円と固定されており、将来受け取れる年金額は「200円 × 納付月数」で計算されます。受給開始からわずか2年で支払った保険料の元が取れる計算となり、公的年金制度の中でも効率良く受給額を増やせる仕組みといえるでしょう。

ただし、付加年金は以下のケースに該当していると加入できません。

  • 国民年金基金に加入している方(併用不可)
  • 国民年金保険料の免除・猶予を受けている方(学生納付特例を含む)

まずは少額から確実に受給額を増やしたい方におすすめの制度ですが、国民年金基金とのどちらを選ぶべきかは、自身の予算やライフプランに合わせて検討しましょう。

まずは少額から確実に受給額を増やしたい方におすすめの制度です。

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年金と退職金に関するよくある質問

ここでは、年金と退職金に関するよくある質問に答えていきます。

Q. 国民年金基金に加入するメリットは?

国民年金基金を活用する主なメリットは、老後の基礎収入を終身にわたって安定させられる点にあります。日本の公的年金制度において、第1号被保険者は厚生年金がないため、国民年金のみでは老後の生活費が不足するおそれがあります。基金はその上乗せ制度として機能し、掛金の全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税率が高いほど節税効果を得ながら備えられるのが特徴です。将来の受給額があらかじめ確定しているため、長期的な生活設計が立てやすくなるというメリットもあります。

Q. 小規模企業共済制度とはどんな制度?

小規模企業共済制度は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。掛金は月額1,000円から7万円まで設定でき、全額所得控除の対象となります。共済金の受取時には、退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、税制上のメリットが大きい制度です。契約者貸付制度もあり、掛金の範囲内であれば事業資金の低利での借り入れも可能です。

Q. 国民年金の前納制度のメリットは?

国民年金の前納制度は、保険料の割引によって支払総額を直接的に抑えられる点がメリットです。前納する期間が長いほど割引額が大きくなる仕組みで、口座振替での2年前納を利用した場合、毎月納付と比べて最大で17,370円(令和8年度・9年度)の割引を受けられます。中長期的な視点で家計の固定費を効率よく削減する手段となるでしょう。前納した保険料の全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税を軽減できる点も魅力です。

Q. 付加年金の受給額はどのように計算される?

付加年金の受給額は、「200円 × 付加保険料を納付した月数」というシンプルな計算式で決まります。たとえば、30年間納付を続けた場合、受給額は年間で72,000円増える計算です。支払う保険料の総額は144,000円のため、受給開始から約2年で納付額とほぼ同等の金額を受け取れます。ただし、国民年金基金との併用は認められていない点に注意しましょう。

Q. 小規模企業共済制度のメリットは?

小規模企業共済制度のメリットは、掛金の全額所得控除と共済金受取時の税制優遇です。掛金は年間最大84万円まで所得控除でき、所得税率が高い方ほど節税効果が期待できます。共済金の受取方法も選択でき、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。契約者貸付制度により、掛金の範囲内で低利での資金調達も可能です。事業資金の調達手段としても活用できるため、経営者にとって有用な制度といえるでしょう。

Q. 役員退職慰労金の算出方法は?

役員退職慰労金の算出は、多くの企業において「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」という計算式を用いる「功績倍率法」をベースに構築されています。「功績倍率」とは、役員の職責や企業への貢献度を数値化した係数です。算出した金額を税務上の損金として処理するには、社会通念上の妥当性が求められます。同規模の企業や同業他社の支給水準から乖離し、不相当に高額であると判断された場合は、損金不算入の対象となるため注意しましょう。

※本記事は2026年5月時点の情報を基に執筆しております。

最後に

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