フリーランスの収入見込みをチェック
フリーランスと国民年金
社会保険に加入していた企業を退職してフリーランスになると、国民年金や国民健康保険の切り替え手続きをして自分で保険料を納めることが必要です。ここでは、国民年金の切り替え手続きが必要なケースと、納付義務の有無、具体的な納付額、国民年金と厚生年金の違いについて知っていきましょう。
切り替え手続きが必要なケース
国内在住の20歳〜60歳未満の方は、国民年金に加入します。会社員の方は、国民年金の「第2号被保険者」に該当し、自動的に「国民年金+厚生年金」に加入した状態となり、会社の保険に加入している状態です。しかし、会社を辞めてフリーランスになった方は、退職に伴い、会社の保険から外れて国民年金の「第1号被保険者」に種別が変更されるので、改めて国民年金に切り替えなければなりません。ただし、世帯主や配偶者の扶養に入った場合は、ご本人の手続き・保険料の納付は不要です。
また、会社勤めの副業としてフリーランスをしている方の場合ですが、会社に籍を置いている以上、厚生年金の加入が継続しているので、国民年金への切り替え手続きは必要ありません。
フリーランスの国民年金納税義務と納税額
国民年金(基礎年金)は国内在住の20歳〜60歳未満の方全員が加入します。加入は「義務」であり、自分の意思で加入しないことはできません。世帯主や配偶者の扶養に入らない限り、自分で手続きして加入・納付義務が生じるので注意してください。
また、国民年金の納付額は収入とは無関係に、全員同額です。例えば、令和2年度(令和2年4月~令和3年3月)の月々の国民年金保険料は16,540円です。なお、国民年金保険料は毎年見直されます。
国民年金と厚生年金の違い
国民年金と厚生年金は、共に公的年金制度である点は共通です。ただし、国民年金が国内在住の20歳〜60歳未満の方全員が加入する制度であるのに対して、厚生年金の対象者は企業に所属する会社員(サラリーマンなどの給与所得者)と公務員などに限定されます。したがって、フリーランスの方は、厚生年金に加入することはできません。
なお、厚生労働省の調べによると、フリーランスの方とサラリーマンの方(給与所得者の方)の年金受給額は以下の表の通りです。
対象 | 年金受領額 |
---|---|
フリーランス (国民年金を40年間満額納付した場合の1年間の年金受給額) |
年間781,700円 (令和2年度の場合) |
サラリーマン (厚生年金保険・第1号受給権者の1年間の年金受給額) |
年間1,823,076円 (基礎または定額あり・平成30年度の場合) |
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国民年金切り替え手続き方法
国民年金の切り替えは、お住まいの市区町村役所で行ってください。なお、納付方法は下記で紹介する選択肢の中から自分で選ぶことができます。
国民年金の納付方法
国民年金は、口座振替、納付書(領収(納付受託)済通知書)、Pay-easy(ペイジー)、クレジットカードで納付することが可能です。それぞれの納付方法について、以下に紹介します。
口座振替での支払い
月末を振替日とする口座振替支払いです。年金事務所窓口、郵送、もしくは利用する口座のある金融機関で手続きできます。
納付書(領収(納付受託)済通知書)での支払い
送付される納付書(領収(納付受託)済通知書)を利用して現金で支払う方法です。納付期限内に、郵便局、各種金融機関、コンビニエンスストアなどで国民年金保険料を納付します。なお、コンビニエンスストアで支払い可能なのは保険料が30万円以下の場合です。1年分の納付書が4月の初めに送られてきます(一部免除の方については4月〜6月分まで)。
Pay-easy(ペイジー)経由での支払い
Pay-easy(ペイジー)とは、国民年金保険料をインターネットバンキングやATM経由で納付できる仕組みです。夜間休日関係なくパソコンやスマートフォンから納付することができます。なお、Pay-easyの利用そのものに手続きは必要ありませが、インターネットバンキングからPay-easy(ペイジー)を利用する場合には、事前に各金融機関でインターネットバンキングの契約利用登録を済ませておくことが必要です。
クレジットカードでの支払い
2年、1年、半年の前納も可能なクレジットカードでの支払いです。 年金事務所窓口、もしくは郵送で手続きできます。なお、クレジットカードでの支払いを選択した場合、辞退しない限り継続納付となります。
手続き期間
国民年金の切り替えは、退職した日より2週間(14日)以内に手続きをする必要があるので注意しましょう。なお、土日祝日、年末年始は市区町村役所が休みなので、早めに手続きするようにしてください。
手続きできる窓口
国民年金の切り替えは、市区町村役場の「国民年金担当窓口」で行うことができます。次にご紹介する「手続きに必要なもの」を忘れずに持参して手続きを行ってください。
手続きに必要なもの
国民年金の切り替え手続きには「年金手帳」に加え、「本人確認書類」「勤務先・退職年月日が確認できる書類」が必要です。具体的には、以下のものが必要となりますので、用意しましょう。
本人確認書類
本人確認書類には以下のものが該当します。
- 運転免許証
- マイナンバーカード(個人番号カード)または通知カード
- 日本国発行のパスポート
- 特別永住者証明書もしくは在留カード(外国人の方)
勤務先・退職年月日が確認できる書類
勤務先・退職年月日が確認できる書類には以下のものが該当します。
- 離職票(職業安定所に提出する前に)
- 社会保険資格喪失証明書(連絡票)
- 退職証明書
- 退職日の記載された源泉徴収票
- 退職辞令
など
書類の用意が難しい場合や、書類に同時に加入する人の記載がない場合は、退職した会社の名前と電話番号を用意すれば、年金担当窓口の職員が退職日などを電話で確認してくれます。
なお、年金保険料の納付を口座振替とする場合は銀行印と通帳、クレジットカード納付とする場合はクレジットカードを合わせて持参してください。
国民健康保険の切り替えも一緒に行うのがおすすめ
国民健康保険の切り替えも、国民年金の切り替えと同様に、市区町村役場の国民年金担当窓口で手続きできます。国民年金を切り替える際には、国民健康保険の切り替えも同時に行うと効率的です。なお手続きに必要なものは以下の2点となります。
- 本人確認書類
- 資格喪失が確認できる書類(健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書・離職票など)
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国民年金を免除できるケース
フリーランスとなって間もないなど所得が少ない場合、国民年金を納めることが難しいケースもあるでしょう。そのような場合には「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きによって国民年金保険料の支払いを免除してもらうことが可能です。免除にはいくつか種類があり、それぞれ承認基準があります。
次項から、未納と免除の違い、国民年金が払えないケースの手続きなどについてご紹介します。
未納と免除の違い
国民年金保険料が支払えない場合、手続きをしないと未納扱いとなり、将来的に損をする可能性が出てきます。未納と免除の違いは以下の通りとなります。
未納
国民年金保険料が未納の場合、障がい基礎年金・遺族基礎年金や老齢基礎年金が将来的に受けられなくなる可能性があります。それぞれの年金の受給資格期間・年金額の計算に全く反映されないからです。
免除
手続きを経て、国民年金保険料が免除となった場合、障がい基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間、そして老齢基礎年金の受給資格期間に反映されます。ただし、老齢基礎年金の年金額の計算については一部のみの反映です。なお、免除には以下表のように「全額免除」「一部納付」の2種類が存在します。
免除の割合 | 免除の基準となる所得の範囲 |
---|---|
全額免除 | 前年度の所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」以下 |
一部納付(3/4免除) | 前年度の所得が「78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」以下 |
一部納付(1/2免除) | 前年度の所得が「118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」以下 |
一部納付(1/4免除) | 前年度の所得が「158万円+扶養親族等控除額+しゃかい保険料控除額等」以下 |
なお、保険料免除と似た制度に「保険料納付猶予制度」「学生納付特例」が存在します。ただしこれらは、受給資格期間にカウントされるものの、老齢基礎年金の年金額の計算には反映されないためご注意ください。
免除のメリットとデメリット
納税免除のメリット・デメリットは以下の通りとなります。
国民年金保険料の免除のメリット
手続きを経て国民年金保険料が免除となった場合には、未納とは異なり、将来的に年金を受け取ることができます。老齢年金、障害年金や遺族年金も受け取ることができますが、未納の場合には受け取ることができません。
国民年金保険料の免除のデメリット
国民年金保険料が免除となった場合、保険料を前納したケースと比較して受給額が減ります。国民年金保険料が全額免除となった期間の老齢年金については、全額納付の場合の1/2しか受け取ることができません。
ただし、免除となった保険料を追納(後払い)することにより、年金受給額を増やすことも可能です。この場合、「追納が認められた月より前10年以内」が追納の期限となるのでご注意ください。
免除の手続方法
国民年金保険料の免除には、お住まいの市区町村役所の国民年金担当窓口へ申請書を提出します。インターネット経由で申請用紙をダウンロードして、郵送することも可能です。なお、申請書の提出には、以下の書類も必要となります。国民年金担当窓口へ出向く際に持参し、郵送の際には添付してください。
必ず必要となる書類
- 年金手帳
- 基礎年金番号通知書
どちらか一方が必要になります。
ケースに応じて必要となる書類
- 前年もしくは前々年の「所得証明書類」(原則的には不要)
- 所得税申告をしていない場合は「所得申立書」
- 雇用保険に入っていた方が失業した場合は「雇用保険受給資格者証・雇用保険被保険者離職票等の写し」
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フリーランスの年金対策
公的年金が国民年金のみであるフリーランスの方は、厚生年金の会社員の方と比較して、老齢年金の支給額に大きな差が生じます。そのため、老後資金が不足しないように、年金対策をすることが得策です。
ここでは、フリーランスの方の具体的な年金受給金額や、活用したい制度、年金が未納のままだとどのような恐れが生じるかをご紹介します。
フリーランスの年金受給金額
厚生労働省によると、国民年金を40年間満額納付した場合のフリーランスの方の年金受給額は、年間781,700円となります(令和2年度の場合)。
一方、総務省統計局が公表している「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年)平均結果の概要」によると、年金受給世代である60〜69歳の1か月の平均生活費(消費支出)は292,533円、70歳以上では241,262円となっています。年額ではそれぞれ、351万396円、289万5,144円です。フリーランスの方が老齢年金のみの受給を受ける場合、年間生活費が200万円以上不足する計算となります。
フリーランスの年金対策に役立つ制度
このような状況を見越して貯金をしておくなどの手立てもありますが、以下のような制度を活用することにより、老後資金を充実させることができます。
付加年金制度
付加年金制度は、従来の国民年金の定額保険料に、保険料を上乗せすることで、年金受給額を増額することができる制度です。具体的には毎月400円の付加保険料で「200円×付加保険料納付月数」の付加年金額を受け取ることができます。例えば、付加保険料を40年間納めると、将来的に毎年96,000円が支給されます。厚生年金に加入する方は付加年金制度を利用することはできません。
国民年金基金制度
国民年金基金制度は、老後における所得保障の充実を目的とする、国民年金の第1号被保険者を対象とする任意加入制度です。国民年金の第1号被保険者の全ての方が加入可能な「地域型国民年金基金」と、定められた事業業務の方が加入対象となる「職能型国民年金基金」の2種類があります。なお、国民年金基金制度は付加年金と重複して加入することはできません。
iDeCo(確定拠出年金・個人型)
iDeCoは運用方法を選択して、掛金の運用ができる私的年金制度です。掛金、運用益、給付の受け取りの際に、税制上の優遇が受けられる点も大きなメリットとなっています。
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主の方が廃業する時などに退職金をもらうことができる積立制度です。 掛金は月額1,000円〜70,000円まで設定でき、掛金を全て所得控除にできる点も大きなメリットと言えるでしょう。加入後の掛金の増減も可能です。
年金を払わないとどうなる?
国民年金保険料を未納のまま納めなかった場合、 以下のようなリスクがあります。
- 死亡・障害などの際も、障害基礎年金・遺族基礎年金が受け取れない恐れがある
- 将来、老齢基礎年金が受け取れない恐れがある
国民年金保険料を未納のまま放置すると、納付督励、特別催告状、最終催告状、納付督促、最終通告を経て、差し押さえを受けます。督促が届いた段階で延滞利息が発生するほか、配偶者やご家族などの連帯納付義務者にも督促状が送付され、それらの方々が差し押さえを受ける可能性もあるのです。
なお、国民年金保険料の未納対策は近年強化されています。年間所得300万円以上のケースに対する財産の差し押さえ基準は、2018年度より「13カ月以上の未納」から「7カ月以上の未納」へと見直されました。
国民年金保険料は確定申告の際に、全額を社会保険料控除とすることができるので、きちんと納付すれば節税効果も期待できます。「保険料がもったいない」「なんとなく払いたくない」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、せっかくの節税の機会を逃すだけでなく、受けるデメリットも大きいので得策とは言えません。
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国民年金切り替え続きを忘れていたら
国民年金保険料には納付期限が設けられています。具体的には、納付期限より2年以内は納付可能ですが、それ以前の国民年金保険料を納めることは出来ません。
国民年金保険料を未納のままにしておくと、将来的に老齢基礎年金や障害基礎年金・遺族基礎年金が受け取れない恐れがあります。切り替え手続きを忘れていた場合は、速やかにお住まいの市区町村役所の年金窓口に相談し、手続きをするようにしましょう。
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忘れずに早めの手続きを
会社を辞めてフリーランスとなった場合、自分で社会保険から国民年金・国民健康保険に切り替えなければなりません。切り替えをきちんと行わず未納扱いになると、様々な不利益を被ることとなるため、注意が必要です。国民年金・国民健康保険のいずれも、切り替えの期限は限られているので、退職したらできるだけ早く切り替え手続きを行いましょう。
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最後に
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