個人事業主が加入できる社会保険は?保険料を抑える方法も紹介! | レバテックフリーランス
個人事業主が加入できる社会保険は?保険料を抑える方法も紹介!
個人事業主と会社員とでは、加入できる社会保険の種類が異なります。個人事業主として新たなスタートを切るにあたり、加入できる保険についてしっかりと把握しておきましょう。
この記事では、個人事業主が加入できる社会保険を紹介します。加入方法や社会保険に上乗せできる年金制度、負担額を抑える方法についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも個人事業主は社会保険に加入できる?
個人事業主は、公的な社会保険制度へ問題なく加入できます。法律によって、日本国内に住所があるすべての人が何らかの公的医療保険や年金に加入する義務を負っているためです。
個人事業主の場合、勤務先を通じて手続きを行うのではなく、自身で国民健康保険や国民年金に加入する手続きを進めます。
会社員とは加入する保険の種類が一部異なるものの、社会保障の枠組みから外れる心配はありません。
個人事業主が加入できる社会保険
個人事業主が加入する社会保険には、主に以下の3つがあります。

それぞれの特徴や保険料について確認しましょう。
国民健康保険
個人事業主が加入する国民健康保険は、病気やけがをした際の医療費負担を原則3割に抑える公的医療保険です。住んでいる地域の自治体が運営を担っており、前年の所得や世帯の人数を基に保険料を算出します。
会社員の健康保険とは異なり、扶養という仕組みがないため、家族の人数が増えるほど世帯全体の負担額が大きくなるという特徴があります。
国民健康保険の場合、仕事を休んだ際の傷病手当金や出産手当金といった所得保障が原則として受けられない点に注意しましょう。
国民年金
個人事業主は、老後の生活を支える仕組みとして国民年金への加入義務を負います。
加入区分は「第1号被保険者」に該当し、給与額に応じた変動はなく、誰もが一律の金額を納める形態です。
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は、月額1万7,920円と定められています。仮に20歳から60歳に達するまでの40年間すべて保険料を納付して満額を受給する場合、受け取れる老齢基礎年金は月額7万408円です。給与から天引きされて自動的に2階建ての保障となる会社員の厚生年金と比較すると、将来の受給額が少なくなる傾向にあります。
支払いが困難な局面においては、申請により免除や猶予が認められる救済措置の利用が可能です。
個人事業主の国民年金について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
個人事業主の国民年金ガイド|もらえる額はいくら?手続きや節税方法も解説
参考:国民年金|日本年金機構
介護保険
介護保険は、40歳以上の国民全員に加入義務がある社会保険です。高齢化社会における介護ニーズを社会全体で支えるため、一定の年齢に達したすべての人が保険料を負担する仕組みとなっています。
加入にあたって個別の手続きは発生せず、自身が加入している医療保険と一括で徴収が行われます。40歳から64歳までの期間においては、毎月の国民健康保険料に介護保険分が上乗せされる形です。
一方で、65歳以降になると国民健康保険料とは切り離され、居住している市区町村から直接納付書が届きます。
年齢に応じて段階的に徴収方法が変わる点に留意しておきましょう。
個人事業主の社会保険への加入方法
個人事業主になったら、速やかに社会保険の加入手続きを行う必要があります。ここではそれぞれの社会保険への加入方法についてまとめました。
国民健康保険の加入手続き
国民健康保険への加入手続きは、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村役場で行います。手続きには、健康保険資格喪失証明書、身分証明書、マイナンバーが分かるものが必要です。
なお、多くの自治体では印鑑の持参は不要となっていますが、窓口で保険料の口座振替手続きを同時に行う場合、登録する金融機関の口座届出印が必要になる場合があります。自治体によって必要な持ち物が異なる場合があるため、事前の確認をおすすめします。
保険料は退職日の翌日から発生するため、無保険期間が生じないよう早めに手続きを済ませましょう。保険証は即日発行される場合が多く、その日から医療機関で使用できます。
保険料は前年の所得をもとに算出されるため、退職直後は会社員時代の収入が反映され、保険料が高額になる可能性があります。翌年以降は個人事業主としての所得に基づいて再計算される流れです。
国民年金の加入手続き
国民年金への加入手続きは、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村役場で行います。
手続きの際は、退職日が確認できる離職票や健康保険資格喪失証明書と、運転免許証などの身分証明書に加えて、年金番号かマイナンバーのいずれかが分かる書類が必要です。
基礎年金番号で手続きを行う場合は年金手帳や基礎年金番号通知書を持参します。マイナンバーで手続きを行う場合はマイナンバーカードや通知カード、またはマイナンバーの記載がある住民票の写しなどを持参しましょう。
なお、原則として印鑑の持参は不要ですが、口座振替の手続きを同時に行う場合や一部の自治体などでは必要になるケースもあります。
厚生年金から国民年金への切り替えは「種別変更」と呼ばれ、第2号被保険者から第1号被保険者への変更となります。窓口での手続きが完了したのち、自宅へ国民年金保険料の納付書が郵送されます。
健康保険の任意継続手続き
退職後も会社の健康保険を継続したい場合は、任意継続の手続きが可能です。手続きは退職日の翌日から20日以内に、加入している健康保険組合または全国健康保険協会で行う必要があります。
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額または加入者全体の平均標準報酬月額のいずれか低い方に保険料率を乗じて算出されます。在職中は会社が半額負担してくれましたが、任意継続では全額自己負担となる点に注意しましょう。
任意継続は最大2年間利用でき、期間中は傷病手当金と出産手当金を除き、在職中と同様の給付を受けられます。ただし、保険料の納付が遅れると資格を失ってしまいます。毎月遅れずに支払い続けられるかをよく確認しておきましょう。
個人事業主の健康保険については、下記の記事でも詳しく解説しています。
フリーランスの健康保険とは?安くする方法や国保以外の選択肢も紹介!
会社員と異なる個人事業主の社会保険の注意点
個人事業主の社会保険には、会社員時代とは異なる特徴があります。主な注意点は以下の3つです。
- 家族が増えても扶養の仕組みが適用されない
- 厚生年金へ加入できず年金の受給額に差が出る
- 自身は原則として雇用保険と労災保険の対象外となる
これらの違いを理解して対策を講じましょう。
家族が増えても扶養の仕組みが適用されない
個人事業主が加入する国民健康保険には扶養という概念が存在しないため、家族の人数分だけ保険料が増加します。会社員が加入する健康保険とは異なり、収入のない家族であっても1人の加入者としてカウントされてしまうためです。
会社員の健康保険であれば、年収130万円未満の家族を扶養に入れると、追加の保険料負担を伴わずに医療保険の恩恵を受けられます。しかし国民健康保険においては、世帯に属する全員分の保険料を合算して支払わなければなりません。
たとえば、夫婦と子ども2人の4人家族を想定した場合、世帯主は4人分の保険料を納める必要があります。国民健康保険料は所得に応じた金額と、世帯人数に応じて均等に加算される金額を組み合わせて算出される仕組みです。そのため、家族の人数が増えるほど世帯全体の負担が重くなる傾向が見られます。
厚生年金へ加入できず年金の受給額に差が出る
個人事業主は会社員と比べて、将来受け取れる年金の受給額が少なくなる傾向にあります。会社員は国民年金と厚生年金の双方を納める「2階建て」の恩恵を受けられますが、個人事業主は1階部分にあたる国民年金のみの加入に留まるためです。
会社員であれば、現役時代の収入や加入期間に応じた厚生年金が基礎年金に上乗せされる形になります。
一方の個人事業主は、仮に一定の期間すべて保険料を納付して満額を受給できたとしても、受け取れるのは基礎年金のみの枠組みです。そのため、会社員として長く勤めた人と比較した際に、将来の受給額において開きが生じやすくなります。
自身は原則として雇用保険と労災保険の対象外となる
個人事業主は会社員と異なり、雇用保険や労災保険の補償対象から原則として外れます。雇用保険や労災保険は法律上の労働者を守るための仕組みであり、自ら事業を営む経営者は対象者として想定されていないからです。そのため、失業時の給付金や業務中に負傷した際の治療費といった公的な補償を受けられません。
病気やけがで働けなくなった期間の収入が途絶えるリスクに備えて、民間の所得補償保険を活用するという手があります。
なお、労災保険に関しては、特定の業種を対象とした特別加入制度を利用すれば例外的に加入を認められるケースが存在します。自身の職種が対象に含まれるかを確認し、リスクに対する備えを準備しておくと良いでしょう。
個人事業主が社会保険にプラスできる保険・公的制度
個人事業主は公的社会保険だけでは保障が薄いため、追加の保険や制度を活用するのがおすすめです。主な選択肢は以下の通りです。
- 所得補償保険
- 小規模企業共済
- 労災保険の特別加入
それぞれの制度について解説します。
【民間保険】所得補償保険
働けなくなった際の不測の事態には、所得補償保険への加入で備えるのがおすすめです。個人事業主には雇用保険や傷病手当金の仕組みがなく、病気やけがによる休業が収入の途絶に直結するためです。
所得補償保険は民間企業が提供する商品であり、自身の職種や年齢に合わせて契約内容を選択できます。一定期間の生活費をカバーする設計が主流ですが、危険を伴う職種ほど保険料が高くなる傾向があるため注意しましょう。
さらに、精神疾患は補償の対象外となる契約も多いため、加入前に対象となる病気の範囲を確認しなければなりません。
自身の就業不能リスクに見合った商品を見極め、選択しましょう。
【公的制度】小規模企業共済
将来の廃業や退職に備える場合は、小規模企業共済への加入がおすすめです。個人事業主のための退職金制度として国が用意している仕組みであり、老後の生活資金を補強する目的で作られています。
加入後は自身の予算に合わせて毎月の掛金額を決定し、無理のない範囲で積み立てを行います。
支払った掛金の全額が所得控除の対象となるため、高い節税効果を同時に得られる点が特徴です。
さらに、受け取る際は一括か分割かを選択できる安心感もあります。経営を退いたあとの安定した生活を設計したい場合は、前向きに検討を重ねる価値があります。
参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
【公的制度】労災保険の特別加入
労災保険の特別加入制度は、通常は補償の対象外となる個人事業主が任意で労災保険に加入できる仕組みです。対象となる職種は限定されており、建設業や運送業をはじめとした特定の事業が含まれます。
加入手続きを進めるためには、国が認可した特別加入団体を経由して申請を行う必要があります。保険料は、自身が選択する日額の基準と業種ごとの料率によって決まる形です。
業務中や通勤中の事故によるけがに対して、療養や休業にかかる給付が支給されます。
個人事業主が社会保険に上乗せできる年金制度
個人事業主は国民年金だけでは老後資金が不足する可能性が高いため、追加の年金制度への加入をおすすめします。主な選択肢は以下の3つです。
- 国民年金基金
- 付加年金制度
- iDeCo(イデコ)
それぞれの特徴やメリットを見ていきましょう。
国民年金基金
国民年金基金は国民年金に上乗せして給付を受けられる公的な仕組みであり、個人事業主の老後保障を補強する目的で作られている制度です。
加入後は口数制で運用され、自身の予算に合わせて毎月の掛金額を決定します。年金の種類は複数ありますが、1口目は必ず一生涯にわたって受給できる「終身年金」を選ぶルールになっており、長い老後の生活に備えやすい設計が基本となっています。支払った掛金の全額が社会保険料控除の対象となるため、高い節税効果を同時に得られる点が特徴です。
ただし、毎月の掛金は私的年金制度であるiDeCoと合算して管理する決まりとなっています。そのため、両制度を組み合わせて利用する際は総額に注意しなければなりません。
途中の任意脱退は原則として認められない規約ですが、将来の給付額をあらかじめ確定させて安定した引退生活を設計したい場合は、前向きに検討すると良いでしょう。
付加年金制度
わずかな負担で確実に年金額を増やしたい場合は、付加年金制度の利用がおすすめです。毎月の国民年金保険料に少額の保険料を上乗せして納めれば、将来もらえる年金額を底上げできます。
手続きは住んでいる地域の市区町村役場で行うため、手軽に始められる点がメリットです。追加で支払う付加保険料は月額400円となっており、受給開始時には「200円×付加保険料を納めた月数」の金額が、老齢基礎年金へ生涯にわたって加算されます。
なお、国民年金基金との併用はできませんが、iDeCo(個人型確定拠出年金)との同時加入は可能です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分の裁量で資産を運用しながら老後に備える手段として、iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用が広く定着しています。現役時代に手厚い税制優遇を受けながら、自分で老後資金を積み立てられる私的年金制度です。
利用する際は金融機関に専用の口座を開設し、投資信託や定期預金といったラインナップから商品を選んで運用を行います。
個人事業主が拠出できる上限は月額6万8,000円です。ただし、この限度額は国民年金基金の掛金(または付加保険料)と合算した枠となるため、両方を併用する場合は全体の合計額が上限を超えないよう注意しなければなりません。
iDeCoのメリットは、掛金の全額が所得控除になる点です。運用で得られた利益は非課税で再投資されるほか、60歳以降に年金や一時金として受け取る際にも税負担を軽減する控除が適用されます。
一方で、原則として60歳に達するまで資金を引き出せないという制約があります。日々の資金繰りに影響が出ないよう、無理のない金額で長期的な計画を立てましょう。
個人事業主が従業員を雇用した場合の社会保険
個人事業主が従業員を雇用する場合は、従業員向けの社会保険手続きが必要になります。雇用する人数や労働条件によって加入すべき保険が異なるため、状況別に確認しましょう。
従業員を1人でも雇う場合に必須となる労働保険
労働保険は「労災保険」と「雇用保険」の総称であり、従業員を1人でも雇用する場合は原則として加入手続きを行わなければなりません。
まず労災保険は、業務中や通勤中のけが・病気に対して給付が行われる制度です。正社員だけでなくパートやアルバイトも含めた全員が対象となり、保険料は全額を事業主が負担します。
次に雇用保険は、従業員が失業した際の生活保障や再就職を支援するための制度です。「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」従業員を雇った場合に加入義務が生じます。保険料は事業主と従業員の双方が負担するルールです。
加入手続きは、労災保険が労働基準監督署、雇用保険がハローワークで行う形となっており、それぞれ期限が定められています。
毎年支払う保険料については、年度初めに1年分の概算保険料を納付し、年度末に確定した実際の給与総額をもとに精算する仕組みです。
常時5人以上の雇用で加入義務が生じる健康保険
個人事業主が常時5人以上の従業員を雇用する場合、農林水産業やサービス業などの一部の例外を除いて、健康保険への加入義務が生じます。基本的には全国健康保険協会へ加入しますが、業種によっては同業の健康保険組合を選択できるケースもあります。
毎月の保険料は従業員の給与額(標準報酬月額)をベースに算出され、事業主と従業員が折半して負担するルールです。全国健康保険協会の保険料率は都道府県ごとに設定されており、2026年度の全国平均は9.90%となっています。
加入のための手続きは、事業所を管轄する年金事務所で行います。新たに従員を雇い入れた際は、入社した日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出する必要があるため、速やかに準備を進めましょう。
パート・アルバイトが加入する厚生年金保険
厚生年金保険も健康保険と同様に、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所(一部の例外業種を除く)では加入が義務付けられます。正社員だけでなくパートやアルバイトであっても、週の労働時間および月の労働日数が一般社員の4分の3以上ある場合は、加入対象として手続きを行わなければなりません。
毎月の保険料は従業員の給与額(標準報酬月額)に18.3%の保険料率を乗じて算出し、事業主と従業員が折半して負担します。
事業主には毎月の保険料納付だけでなく、さまざまな事務負担が発生します。年1回実施する標準報酬月額の「定時決定」や、給与が変動した際の「随時改定」といった届出業務を行う必要があるため、実務の流れを事前に確認しておきましょう。
個人事業主が社会保険料の負担額を抑える方法
個人事業主の社会保険料は会社による半額負担(労使折半)がないため、全額を自己負担しなければなりません。ここでは、少しでも月々の出費を軽減するために保険料を抑える方法について解説します。
青色申告と経費計上で課税所得を減らす
国民健康保険料は前年の所得をベースに計算されるため、経費計上と青色申告を行って課税所得を低く抑える方法がおすすめです。確定申告の際に青色申告を選んで最大65万円の特別控除を適用すれば、税金だけでなく社会保険料の算定基準となる所得を圧縮する効果が期待できます。
なお、個人事業主が支払う国民年金保険料は所得の多寡にかかわらず一律定額となっています。そのため、青色申告特別控除によって負担を軽減できるのは、あくまで所得に応じて金額が変わる「国民健康保険料」のみである点に留意しておきましょう。
事業にかかった費用を経費として漏れなく計上するのも、課税所得を減らす方法の1つです。事務用品費や通信費、交通費だけでなく、自宅を仕事場にしている場合は家事按分を活用して水道光熱費や家賃の一部を経費に組み込めます。
ただし、あらゆる支出を自由に経費化できるわけではありません。税務調査で指摘を受けないよう、領収書や契約書といった証拠書類を保管し、事業との関連性をいつでも説明できるように準備しておきましょう。
国民健康保険の減免や免除制度を利用する
前年の所得が一定水準以下に下がってしまった場合や、災害・倒産といった特別な事情があるときは、国民健康保険料の減免制度を利用できるケースがあります。この仕組みには、法律で定められた「法定軽減」と、各自治体が独自に設けている「条例減免」の2種類が存在します。
まず法定軽減は、世帯全体の所得が国で定めた基準を下回っている場合に、保険料の均等割額が7割・5割・2割のいずれかで減額される仕組みです。確定申告といった所得申告を正しく済ませていれば、基本的には市区町村が自動的に計算して適用してくれます。
一方の条例減免は、災害に見舞われた際や、病気・廃業にともなって急激に収入が減少した場合に適用される制度です。こちらは自動での適用にはならず、基本的には自身で窓口へ足を運んで申請しなければなりません。
もし適用対象になるかもしれないと感じた場合は、未納のまま放置せず、まずは住民票がある市区町村役場の保険年金課へ早めに相談しましょう。
マイクロ法人を設立して社会保険料を最適化する
売上が一定水準以上に成長した個人事業主は、個人事業とは別の事業を営むマイクロ法人(小規模な法人)を別途立ち上げれば、社会保険料の負担を減らせるケースがあります。個人事業主としての活動を続けながら法人も運営し、2つの形態を併用する手法です。
まずマイクロ法人から自身へ支払う役員報酬を月額数万円程度の低額に設定し、法人の健康保険と厚生年金に加入します。こうすると、社会保険料の算出元となる役員報酬が極めて低いため、毎月の保険料を安い等級に抑え込むことが可能です。
さらに、法人の健康保険に加入すれば、これまで支払っていた個人事業主としての「国民健康保険料」や「国民年金保険料」を納める必要がなくなります。結果として、個人事業の所得が高くても、世帯全体の社会保険料をミニマムに抑えられる仕組みです。
ただし、法人の設立には登記費用が必要になるほか、法人住民税といった毎年の均等割や、決算申告の事務コストなども発生します。実際に検討を勧めるにあたっては、浮いた保険料の削減額と法人の維持費を天秤にかけ、総合的に手残りが多くなるかを見極めましょう。
同業種の国民健康保険組合へ加入する
特定の業種に就いている個人事業主であれば、市区町村が運営する国民健康保険ではなく、同業者で組織される国民健康保険組合に加入する方法があります。建設業や医師、税理士、美容師のほか、Webデザイナーやライターといったクリエイターが加入できる組合など、さまざまな職域保険が存在します。
メリットは、多くの組合で保険料が所得に関わらず一律の定額制を採用している点です。どれだけ事業の利益が増えても毎月の負担額が変わらないため、稼げば稼ぐほど市区町村の国民健康保険よりも大幅に負担を抑えられるケースが増えていきます。
さらに、組合によっては傷病手当金に似た独自の付加給付や、健康診断の補助といった手厚いサポートが用意されている点も魅力的です。
ただし、誰もが自由に加入できるわけではありません。それぞれの組合が指定する職能団体への入会が必須条件となっている場合が多く、別途その団体の年会費が生じる点には注意が必要です。自身の職種で加入できる組合があるかを調べ、現在の保険料や団体の維持費と比較しながら検討を進めましょう。
低所得期は家族の社会保険の扶養に入る
独立したばかりで売上が安定しない時期は、会社員として働く家族の社会保険の扶養に入り、一時的に固定費を抑えるという方法があります。家族が加入している健康保険の扶養条件を満たせば、自身の健康保険料の負担を軽減できるでしょう。
扶養に入れてくれる家族が配偶者である場合は、年金制度においてもメリットを享受できます。健康保険の扶養と同時に、国民年金の「第3号被保険者」としての手続きを行えば、毎月の国民年金保険料の支払いも免除される仕組みがあるためです。
ただし、個人事業主が扶養に入るためのハードルは年々高くなっている点に注意しなければなりません。通常は「年間の見込み収入130万円未満」が扶養の基準となります。しかし、の「収入」が売上そのものを指すのか、それとも経費を差し引いたあとの所得を指すのかは、加入している健康保険組合の裁量によって判断が分かれる部分です。
中には「開業届を提出して事業を行っている人は、収入額に関わらず一律で扶養に入れない」という厳格な規約を設けている組合も存在します。トラブルを未然に防ぐために、まずは家族の勤務先が加入している健康保険組合の要件を事前に確認しておきましょう。
個人事業主の社会保険料は全額控除の対象
個人事業主が1年間で支払った公的な社会保険料は、確定申告の際に「社会保険料控除」として所得から全額を差し引けます。対象となるのは、自身や生計を一にする家族の分として納めた国民健康保険料、国民年金保険料、そして介護保険料などです。
なお、老後資金の積み立てとして紹介した国民年金基金やiDeCoの掛金、小規模企業共済の掛金についても、支払った全額が所得控除の対象となります。ただし、これらは税法上「小規模企業共済等掛金控除」という別の項目に分類されるため、申告書に記入する際は間違えないよう注意しましょう。
いずれの控除も1年間の支払額に対する上限が設定されていないため、納めた金額が大きいほど高い節税効果を発揮します。
会社員と違い、年末調整がない個人事業主は、翌年の確定申告時に各種保険料や共済の掛金控除を自分自身で忘れずに申告しなければなりません。控除証明書や領収書などの必要書類は日頃から保管し、手続きを行いましょう。
個人事業主が法人化する際の社会保険の注意点
個人事業主が会社を設立して法人化すると、加入する社会保険が変わり、これまでの国民健康保険や国民年金から、健康保険や厚生年金への切り替えが必要になります。
たとえ社長一人の会社であっても、保険料は会社と個人で折半して負担するルールのため、法人化をした時点で健康保険と厚生年金への加入が法律で義務付けられます。しかし、一人社長の場合は会社負担分も自分の会社の売上から支払うため、実質的な負担が重くなるケースが多いです。
ただし、法人の社会保険に変われば、将来もらえる年金額が増えるというメリットがあります。さらに国民健康保険とは違い、病気やけがで働けなくなった際に傷病手当金が支給されるようになる点も心強いポイントです。
なお、社長自身は雇用保険や労災保険の対象には原則として含まれません。売上が少ない時期でも毎月一定の社会保険料が容赦なく発生するため、会社の利益とのバランスを見極めながら慎重に切り替えを進めるのが賢明でしょう。
個人事業主が法人化する際の流れについては、下記の記事を参照してください。
法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは?
個人事業主の社会保険の薄さを補う方法
個人事業主の社会保険は会社員に比べて保障が薄いため、自身の売上を伸ばして不足分をカバーする必要があります。万が一に備える所得補償保険への加入や、老後に向けた私的年金の積立などは、自前で資金を確保しなければなりません。
そのため、自助努力にかかる費用を上回る高単価な案件を継続して獲得し、手残りを増やしていく方針が求められます。
もし「手取りを増やして将来のリスクに備えたい」「案件を途切れさせずに安定した収入を得たい」と考えている場合は、フリーランス向けエージェントの活用がおすすめです。
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個人事業主の社会保険に関するよくある質問
ここでは、個人事業主の社会保険に関するよくある質問に答えます。
Q. 退職後に国民健康保険や国民年金への加入手続きを行わないリスクは?
退職後に加入手続きを怠ると、無保険および無年金の期間が生じてしまいます。国民健康保険の手続きが遅れた場合、医療費が一時的に全額自己負担になるだけでなく、過去の未納分をさかのぼって請求されます。さらに、国民年金の未納が続くと将来もらえる老齢基礎年金が減額されるほか、万が一の際の障害年金も受け取れなくなるおそれがあるでしょう。
Q. 個人事業主が国民年金基金やiDeCoに加入するメリットは?
個人事業主が国民年金基金やiDeCoを活用するメリットは、会社員に比べて薄くなりがちな老後保障を自前で手厚く補強できる点にあります。国民年金基金の掛金は社会保険料控除、iDeCoの拠出金は小規模企業共済等掛金控除として、それぞれ支払った全額が所得から差し引ける点も魅力です。課税所得を減らせるため、所得税や住民税に対する高い節税効果を同時に得られます。
Q. 個人事業主の社会保険料の目安は?
個人事業主が支払う社会保険料のうち、国民年金保険料は所得に関わらず全員一律で1ヶ月あたり1万7,920円と定められています(2026年7月時点)。一方で、国民健康保険料は前年の所得や世帯の人数、住んでいる市区町村の料率によって金額が決定される仕組みです。そのため、前年の売上が高かった人や扶養する家族が多い世帯ほど、翌年の国民健康保険料の負担は重くなる傾向にあります。自身の正確な国保料を知りたい場合は、所得が確定したあとに市区町村役場の窓口やWeb上のシミュレーターで試算をしてみましょう。
Q. 国民年金基金への加入条件は?
国民年金基金へ加入できるのは、国民年金の「第1号被保険者」である個人事業主やフリーランス、またはその家族に限定されています。ただし、第1号被保険者であっても、毎月の国民年金保険料を免除・猶予されている期間中の人は加入が認められません。わずかな負担で年金を増やせる「付加年金制度」との併用は禁止されているため、どちらか一方を選択する必要があります。なお、私的年金であるiDeCoとの同時加入は可能ですが、毎月の掛金は両制度を合算して月額最大6万8,000円の枠内に収めなければならないルールとなっています。
参考:iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのポイント|国民年金基金連合会
※本記事は2026年7月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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