個人事業主は労災保険に入れる?万一や将来に備える保険・年金の知識 | レバテックフリーランス
個人事業主は労災保険に入れる?万一や将来に備える保険・年金の知識
「個人事業主で病気や怪我で収入が減るのが不安だけど、労災保険には入れる?」と疑問に思う方がいるのではないでしょうか。
結論からいうと、個人事業主は一定の条件を満たす場合に労災保険に加入できます。この記事では、加入手続きの方法や補償内容、保険料の計算方法を紹介するのでぜひ参考にしてください。
また、労災保険以外にも、万一の際や将来に備える制度を紹介します。個人事業主として安心して活動するためにも、ぜひチェックしておきましょう。
個人事業主(フリーランス)は労災保険に入れる場合がある
労災保険は会社員のための制度と思われがちですが、「特別加入制度」を利用すれば個人事業主も条件によって加入が可能です。特別加入制度では、以下の範囲で個人事業主の加入が認められています。
- 中小事業主等
- 一人親方等
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
- 特定受託業者
特定受託事業者とは、いわゆるBtoB事業を行っていて、従業員を使用していない個人事業主(フリーランス)を指しています。特別加入制度においては、特定受託事業者が消費者から依頼を受けて同種の事業を行う場合も労災保険に加入できます。たとえば、企業の委託を受けて宣伝写真の撮影を行うカメラマンが、消費者向けの家族写真を行っている最中に負った怪我は補償の対象となる仕組みです。
ただし、企業から委託を受けている業務とは異なる業務で消費者向けの事業を営んでいる場合、消費者向けの事業に関しては補償の対象にならないので注意が必要です。また、消費者のみから委託を受けている場合は特別加入の対象にはなりません。
これから個人事業主を目指す方は、健康保険や年金に関する知識も持っておくと良いでしょう。以下の記事では、独立する人が持っておくと良い知識をまとめているのでぜひ参考にしてください。
個人事業主とは?フリーランスとの違いや手続き・メリットを解説
参考:令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました|厚生労働省
個人事業主が労災保険に加入するメリット
個人事業主が労災保険に加入するメリットを紹介します。
- 手厚い補償を受けられる
- 倒産のリスクがなく安心して加入できる
労災保険のメリットは、業務上の怪我や病気に対する補償を受けられることです。詳しい補償内容は後述しますが、労災保険指定医療機関で無料で治療を受けることもできます。さらに、療養のために仕事を休んで無収入になった際には給付を受けたり、仕事が原因で死亡した際は遺族が年金もしくは一時金を受け取ったりすることも可能です。
加えて、労災保険は政府が運営しているため、民間の保険会社と違って倒産といったリスクがなく安心して加入できます。
個人事業主が労災保険に加入する手続き方法
個人事業主が労災保険に加入するには以下2つの方法があります。
- 既存の特別加入団体を通じて加入する
- 新たに特別加入団体を立ち上げる
それぞれの加入方法について確認していきましょう。
特別加入団体経由で加入する
特別加入団体とは、労災保険の特別加入の窓口となる組合や団体のことです。すでに特別加入団体として認められている団体で申し込みを行うことで、団体が労働基準監督署での加入手続きを行ってくれます。個人事業主にとっては、簡単に労災保険に加入できる方法といえるでしょう。
加入後に事業内容に変更があった場合や、脱退を希望する場合も、団体に連絡することで手続きを行ってもらえます。
新たに特別加入団体を立ち上げる
新たに特別加入団体を立ち上げ特別加入の申請を行う方法もあります。
ただ、特別加入団体の立ち上げにあたっては、「団体の組織や運営方法を整備する」「労働保険事務を確実に処理する能力を備える」などの条件を満たさなければいけません。そのうえで都道府県労働局長の承認を受ける必要があり、手続きには一定のハードルがあるといえるでしょう。
事務的な知識がないと手続きに手間取る可能性も高いため、自信がない場合は既存の団体経由で加入するのがおすすめです。
労災保険の保険料の計算方法
特別加入者の年間保険料は次のように計算します。
年間保険料=給付基礎日額×365×保険料率
計算式を見ると分かるように、労災保険料は「給付基礎日額」と「保険料率」に基づいて計算します。
給付基礎日額とは、給付額を算定するための基準となる金額のことで、3,500円から25,000円までの16段階に分かれています。会社員の場合は賃金をもとに給付基礎日額が決定しますが、特別加入者は自分で給付基礎日額を選択します。自分の年間所得を参考に1日あたりの平均的な収入を計算し、それに近い給付基礎日額を選ぶのが一般的な方法です。
保険料率は業種によって異なり、危険度の高い業種ほど高く設定されています。たとえば、林業の一人親方は5.2%、歯科技工士は0.3%です。
個人事業主が労災保険で受けられる補償内容
労災保険に加入した個人事業主は、業務上の怪我や病気に対して以下の補償を受けられます。
| 給付の種類 | 支給される状況 |
|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 仕事や通勤による怪我や 病気で療養する場合 |
| 休業(補償)等給付 | 仕事や通勤による怪我や病気で 働けず収入が得られない場合 |
| 障害(補償)等給付 | 仕事や通勤による怪我や病気の状態が安定し 治療してもそれ以上改善せず、障害等級 第1級~第7級に該当する障害が残ったとき |
| 傷病(補償)等年金 | 仕事や通勤による怪我や病気が療養開始後 1年6ヶ月を経過した日または同日後において、 次のいずれにも該当する場合 (1)傷病が治ゆ(症状固定)していない (2)傷病による障害の程度が傷病等級に該当する |
| 遺族(補償)等給付 | 仕事や通勤により死亡した場合 |
| 葬祭料等(葬祭給付) | 仕事や通勤により死亡 した方の葬祭を行う場合 |
参考:フリーランス※の皆さまも、特別加入により労災保険の補償を受けられます!|厚生労働省
労災保険以外にも!将来や万一の際に役立つ制度3選
個人事業主が安心して働くために、労災保険のほかにも活用できる制度があります。ここでは、業務外のリスクや将来の備えに役立つ制度を紹介するので、労災保険も含めて自分のライフプランに合った組み合わせを検討しましょう。

1.所得補償保険
所得補償保険は、病気やケガで働けなくなった際に収入を補填できる民間の保険です。労災保険が仕事中の怪我や病気しかカバーしないのに対し、所得補償保険は業務外の病気やケガも対象となります。
たとえば、休暇中の怪我で働けなくなった場合に、一定期間の所得を保障してくれます。長期療養が必要な状況になっても、補償によって事務所の賃料を賄うことができれば廃業のリスクを軽減できるでしょう。
2.小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人の経営者のための制度です。毎月1,000円から70,000円までの範囲で掛金を積み立て、廃業や退職時に共済金として受け取ることができます。
個人事業主には会社員のような退職金制度がありませんが、小規模企業共済を活用すれば老後資金を用意することが可能です。労災保険や所得補償保険が現役時代のリスクに備えるものなら、小規模企業共済は将来のための備えといえるでしょう。また、契約者は低金利の貸付制度を利用できるといった特典もあります。
参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
3.iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、個人事業主が自分で拠出した掛金を運用しながら資産を形成する私的年金制度です。自分で選んだ金融商品で運用でき、運用益は非課税となるため、効率的に老後資金を形成できます。
個人事業主の場合、月額68,000円(年間816,000円)まで掛金を拠出でき、全額が所得控除の対象となります。
注意点は、原則として60歳まで引き出せないことです。また、自分で運用商品を選ぶ必要があり、運用結果によっては元本を割り込む可能性もあるため、長期的な視点での資産形成として捉えることが大切です。小規模企業共済と同じく、将来に備えるための制度として活用しましょう。
老後に必要な資金について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
【要対策】個人事業主の年金|支給額や老後の資産対策をまとめて解説
参考:iDeCo(イデコ)の特徴|国民年金基金連合会
※本記事は2025年9月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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