個人事業主の手取り年収を計算するには?平均年収や税金の種類も解説 | レバテックフリーランス
個人事業主の手取り年収を計算するには?平均年収や税金の種類も解説
- 個人事業主の年収の定義
- 個人事業主が納めるべき税金について
- 個人事業主がt取り年収を上げる方法
国税庁の報告(令和2年)によると、個人事業主の平均年収は会社員よりもやや低くなっています。ただし、会社員と個人事業主の年収は定義が違うため、会社員の感覚で数字を見てしまうと実態とずれた理解になりがちです。
また、手取り年収は人によって異なります。個人事業主は節税の手段が会社員よりも多く、努力次第で手取りを上げられるためです。
そこでこの記事では、会社員との年収の違いや計算方法、税金について解説していきます。正しい年収の把握や手取り額のアップにつなげてください。
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目次
個人事業主と会社員の年収の違い
実は個人事業主と会社員の年収の定義は異なります。会社員の感覚で個人事業主の年収を理解しようとすると、実態と認識がずれる恐れがあるわけです。そこで、それぞれの年収の定義をわかりやすく解説していきます。
個人事業主の年収の定義
個人事業主の年収は、年間の売上から経費を引いたもので、確定申告の「所得金額等」の合計を見れば確認できます。売上がそのまま年収となるわけではないため、年収を確認する際は間違えないようにしましょう。
なお、個人事業主の手取りは、年収からさらに所得税や事業税、住民税などの税金を引いた金額となります。会社員の場合は給与から天引きされている税金が収入に含まれているので注意が必要です。
会社員の年収の定義
会社員の年収は、1月1日から12月31日までの1年間に支給された給与と賞与の額面金額の合計です。額面金額には、社会保険料や税金が含まれていますが、 非課税通勤費など所得税の課税対象になっていないものは含まれていません。
会社員の額面金額(年収)は、毎年年末に勤務先から発行される「源泉徴収票」の「支払金額」欄で確認できます。手取り金額は、支払金額から「社会保険料等の金額」と、翌年の5~6月ごろに勤務先が発行する「住民税決定通知書」もしくは給与明細の住民税額に12を掛けた金額を差し引くことで算出できます。
個人事業主として独立すると再就職手当をもらえるのか?と気になっている方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
個人事業主は再就職手当をもらえる?|受給条件と必要な証明書類
個人事業主の平均年収
令和2年に実施された国税庁の調査「平成30年申告所得税標本」によると、事業所得者の平均年収(厳密には所得)は420万円でした。もっとも、収入には個人差があり、計上する経費によって金額は大きく変わります。
所得は「売上から経費を引いた金額」であるため、たとえば自宅で仕事をしている場合、家賃や水道光熱費の一部を経費として計上すると所得が低くなるわけです。
さらに、個人事業主の場合、年収を12で割った金額が毎月入るのではなく、月収にはバラつきがある傾向にあります。たとえば、月ごとに受注する案件の件数や内容に違いはあるでしょう。したがって、特定の12ヶ月を対象にした調査では収入の実態とずれが生じている可能性があります。
また、業務委託契約のうち請負契約の場合は、成果物の完成の対価として報酬が発生します。そのため、契約内容によっては成果物の完成まではお金が入らず、数か月後の成果物完成時に入金があるといった場合もあるので注意が必要です。
※参考:申告所得税標本調査|国税庁
個人事業主と会社員の平均年収の差
令和2年に実施された国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、会社員の平均年収は433万円でした。個人事業主の平均年収が420万円のため差は13万円ですが、収入のボリュームゾーンが異なります。個人事業主と会社員の収入別の割合は以下のとおりです。
所得・年収階級 | 割合(個人事業主) | 割合(会社員) |
---|---|---|
100万円以下 | 0.056 | 0.081 |
100万円超200万円以下 | 0.217 | 0.133 |
200万円超300万円以下 | 0.2 | 0.148 |
300万円超500万円以下 | 0.22 | 0.324 |
500万円超1000万円以下 | 0.178 | 0.266 |
1,000万円超2,000万円以下 | 0.082 | 0.043 |
2,000万円超5,000万円以下 | 0.037 | 0.003 |
5,000万円超1億円以下 | 0.007 | 0.003 |
1億円超 | 0.003 | 0% |
上記は国税庁の「令和2年申告所得税標本」と「令和2年民間給与実態統計調査」をもとに、事業所得者と会社員の年収状況を算出した表です。
個人事業主と会社員の「500万円以下の所得者層の割合」を比較しても、個人事業主が69.3%で会社員が68.6%と大きな差はありません。一方、「1,000万円以上の所得者層の割合」を見ると個人事業主は12.9%、会社員は4.9%と、個人事業主のほうが高い傾向がありました。
ただし、会社員の場合これらの年収は税金を引かれる前の金額であるため、個人事業主の「経費を差し引いた所得」と比べると、手取り金額はもう少し下がると考えられるでしょう。
さらに、個人事業主の収入は副業か、専業かといった要素に左右されます。また、個人事業主になる動機は収入面だけとは限らず、やりがいを優先している人もいるでしょう。個人事業主になるか迷っている方は、収入以外の面からも独立したいかどうかを考えてみてください。
※参考:令和2年分民間給与実態統計調査|国税庁
※参考:令和2年申告所得税標本|国税庁
※参考:令和2年民間給与実態統計調査|国税庁
個人事業主の年収の計算方法
個人事業主の場合、会社員のように所属している会社から送られてくる源泉徴収票で年収を把握できないため、自身で計算できるようにしておきましょう。
税込年収の計算方法
個人事業主の税込み年収は先に少しお話したように、1年間の売上額から仕入や経費を引いた金額になります。差し引かれるのは以下のようなものになります。
- 仕入れた商品などの売上原価
- 棚卸高
- 1年間にかかった経費
ただし、青色申告特別控除や、事業に従事した配偶者・親族に支払った給与の額の控除などがあれば、そのぶんを差し引いて計算します。
手取り年収の計算方法
後の「個人事業主が納めるべき税金」の項目でも説明しますが、個人事業主は下記のような税金などを納める必要があるため、これらの金額を把握しなくてはいけません。
- 個人事業税
- 消費税
- 所得税
- 住民税
- 社会保険・国民健康保険料
先に計算した税込年収から、上記の税金・保険料を差し引いた金額が「手取り年収」となります。これらの金額は以下の方法で把握できます。
- 個人事業税:都道府県税事務所から届く通知
- 住民税:住民税納税通知書
- 社会保険料:日本年金機構や自治体から届く納付書
消費税に関しては、預かった消費税と支払った消費税を自分で計算しましょう。また、所得税に関しても「課税所得金額×税率-税額控除額」という計算式を用いて計算します。
税金の計算方法については、以下の記事でも解説しているので、詳細を知りたい方はこちらをチェックしてください。
関連記事:フリーランスが納付する税金の種類は?計算方法や節税対策についても解説
個人事業主は確定申告での年収を確認できる
個人事業主の年収額は、確定申告書で確認することが可能です。収入の証明になる書類ですので、大切に保管しておきましょう。さまざまな記載項目がありますが、「収入金額等」から経費と控除を差し引いた金額が「税込年収」となります。
個人事業主の年収は低いのか
事業所得者の平均所得が417万円と知って、「個人事業主の年収は低い」という印象を持った方もいるのではないでしょうか。ただし、事業所得者の中に副業として個人事業を行う会社員が含まれていると考えると、本業として個人事業を行う人の平均年収はこれより高い可能性があります。
加えて、まだ収入が低い駆け出しの個人事業主が全体の平均を下げている可能性もあり、平均所得だけで個人事業主の年収を判断することはできません。実際の個人事業主の収入は、働き方や経験値に左右される要素が大きいと考えられます。
【年収別】個人事業主の手取り額シミュレーション
売上から必要経費を除いた事業所得の収入別にいくら税金が発生するか、所得税と住民税、個人事業税をシミュレーションします。なお、売上によっては、このほかに消費税の申告と納税の義務が発生することをご認識ください。
「手取り年収」は先の「個人事業主と会社員の平均年収の差」で解説したように、経費や売上原価を差し引いた「税込年収」から、各種税金・保険料を差し引いた額になります。
ここでは、<30歳・単身・東京都台東区在住・第三種事業・青色申告>のケースを例に、年収別の手取り額を見ていきましょう。
年収300万円の個人事業主の手取り額と税金額
年収300万円の個人事業主の手取り額は238万3,700円です。各種税金の内訳は、以下をご確認ください。
国民年金 19万8,480円
国民健康保険 24万2,386円
所得税 7万6,411円
住民税 16万2,823円
個人事業税 5000円
年収から引かれる年金、保険料、税金の総額は61万6,300円です。
年収500万円の個人事業主の手取り額と税金額
年収500万円の個人事業主の手取り額は368万0,875円です。各種税金の内訳は、以下をご確認ください。
国民年金 19万8,480円
国民健康保険 43万0,986円
所得税 24万0,606円
住民税 34万4,053円
個人事業税 10万5,000円
年収から引かれる年金、保険料、税金の総額は131万9,125円です。
年収800万円の個人事業主の手取り額と税金額
年収800万円の個人事業主の手取り額は543万2,775円です。各種税金の内訳は、以下をご確認ください。
国民年金 19万8,480円
国民健康保険 71万3,886円
所得税 78万4,026円
住民税 61万5,863円
個人事業税 25万5,000円
年収から引かれる年金、保険料、税金の総額は256万7,225円です。
年収1000万円の個人事業主の手取り額と税金額
年収1000万円の個人事業主の手取り額は662万8,519円です。各種税金の内訳は、以下をご確認ください。
国民年金 19万8,480円
国民健康保険 82万円
所得税 119万2,849円
住民税 80万5,152円
個人事業税 35万5,000円
年収から引かれる年金、保険料、税金の総額は337万1,481円です。
個人事業主が年収を申告する必要のある状況とは
個人事業主は、以下のような状況で年収の申告が必要になります。
- 住宅ローン審査時
- 入居審査時
- クレジットカード申し込み時
- 奨学金や児童手当の申請時
それぞれ詳しく解説していきます。
住宅ローン審査時
住宅ローンの融資額は、収入額をもとに決定される傾向があります。また、返済能力があるのかを判断するためにも、所得を証明できる書類の提出が求められます。個人事業主は会社員と違って、収入が安定しないことが多いため、直近2〜3年分の所得の証明が必要になることも多いようです。
所得の証明として提出を求められる書類は、主に「確定申告書」と「納税証明書」です。ただし、実際にどのような書類が有効なのかは提出先によっても違うため、その都度確認するようにしましょう。
入居審査時
アパートやマンションなど賃貸契約の入居審査時にも、家賃を支払い続けられるかどうかを判断するために所得の証明が必要になります。個人事業主の場合、納税証明書だけでなく確定申告書の写しも用意しておくとよいでしょう。
クレジットカード申し込み時
クレジットカードの申し込みの際も、返済能力の有無の判断のために所得の証明となる書類の提出が求められます。ただし、必要となるのはキャッシング枠を利用する場合のみで、ショッピング枠のみの利用の場合は一般的に必要となることはありません。
奨学金や児童手当の申請時
奨学金や児童手当を申請する際にも、所得を証明する書類を提出することがあります。場合によっては、証明書ではなく、マイナンバーカードの提出を求められることもあるようです。
個人事業主が納めるべき税金
個人事業主が納税義務のある税金には、以下の4種類があります。
- 個人事業税
- 消費税
- 所得税
- 住民税
各税金の区分や納税義務のある人や申告方法などについて解説していきます。
個人事業税
個人事業税は都道府県に対して納める地方税です。個人事業税は、法定業種として定められた70業種を営む個人事業主に納税義務があります。
ただし、所得から290万円が控除されるため、所得が290万円以下の場合は課税されません。
個人事業税は毎年、都道府県への申告が必要ですが、所得税の確定申告で「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入することで、申告を済ませたことになります。
※参照:個人事業税|東京主税局
個人事業税の詳細については、「個人事業税とはどんなもの?納税対象者や計算方法をまとめました」の記事でもまとめているので、あわせてご確認ください。
消費税
消費税は、商品の購入やサービスの提供を受ける際に、消費者が負担する税金です。個人事業主を含む事業者は、消費者から預かった消費税の申告や納付を行う義務があります。
ただし、基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税の申告や納付が免除されます。
個人事業主の基準期間は前々年の1月1日〜12月31日までの期間です。開業から2年間は基準期間が存在しないことになりますが、特定期間に課税売上高が1000万円以上ある場合は消費税の納税の義務が発生します。
個人事業主の特定期間は前年の1月1日〜6月30日です。つまり、開業1年目のほか、特定期間と基準期間に課税売上高が1000万円を超えていない場合は、消費税の申告や納付が免除されることになります。
※参照:消費税|国税庁
所得税
所得税は毎年、1月1日から12月31日までの所得に対して課税される国税です。毎年、個人事業主は毎年3月15日までに確定申告を行い、所得を計算して所得税を納める義務があります。2013年〜2037年の期間は、所得税と併せて復興特別所得税の申告や納付を行う必要があります。
ただし、売上から必要経費を引いた事業所得から、基礎控除などの所得控除を引いて残額が発生しない場合は確定申告の義務はありません。
※参照:所得税のしくみ| 国税庁
住民税
住民税には都道府県民税と市区町村民税があり、いずれも市区町村に納めます。住民税は基本的に確定申告を行うと市区町村から納税通知書が届きます。
ただし、所得税と住民税では所得控除の金額が異なる場合もあるため、所得税は非課税であっても、住民税の申告が必要なケースもあります。
たとえば、所得税の基礎控除は38万円(令和2年以降は48万円)ですが、住民税の基礎控除は33万円(令和3年以降は43万円)です
個人事業主が手取り年収を上げる方法
個人事業主が年収を上げる主な方法として、経費を計上する、所得控除を活用する2つがあります。
経費を計上する
個人事業主が実質的な収入を上げるには、経費を計算することが大切です。所得税は売上から経費を引いた残りの金額に対してかかるため、経費を計上することで税額を抑えられます。
経費とは、事業を行うために使用したお金を指しており、具体的には以下のようなものがあてはまります。
- 消耗品費
- 交際費
- 飲食費
- 人件費
- 旅費交通費
- 通信費
- 宣伝広告費
- 水道光熱費
使ったお金が経費になるかどうか迷った際は、事業に関係があるかどうかで判断しましょう。たとえば、取引先との会食に使った飲食費は経費になります。一方で、客先に向かう途中でとったランチ代は、事業に直接関係しないため経費として計上するのは難しいでしょう。
経費として認められるものの詳細を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:フリーランスはいくらまで経費にできる?どこまで経費にできるかあわせて解説
所得控除を活用する
所得控除を活用すると、1年間の所得金額から一定額を差し引くことができます。所得控除の種類は以下の15種類です。
雑損控除 | 医療費控除 | 社会保険料控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 生命保険料控除 | 地震保険料控除 |
寄附金控除 | 障害者控除 | 寡婦控除 |
ひとり親控除 | 勤労学生控除 | 配偶者控除 |
配偶者特別控除 | 扶養控除 | 基礎控除 |
適用される要件や控除される金額については、国税庁が公表している「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」のページをご覧ください。
また、確定申告で青色申告を行うと「青色申告特別控除」を受けられます。青色申告特別控除では最高55万円が控除されるので、節税を考えるなら青色申告がおすすめです。
青色申告と白色申告では記帳方法に違いがあり、白色申告は簡易簿記で構いませんが、青色申告で55万円の控除を受けるには複式簿記で記帳する必要があります。そのほか、青色申告を行う際は「その年の3月15日までに申請書を提出する」などの条件があるので注意しましょう。詳しい要件については、国税庁の「青色申告制度」のページをご覧ください。
※参照:
所得控除のあらまし|国税庁
青色申告制度|国税庁
個人事業主の年収に関するよくある質問
個人事業主の年収に関するよくある質問と回答を以下にまとめました。
個人事業主の平均年収はいくらですか?
個人事業主の平均年収の目安として、国税庁が発表した令和2年分の「申告所得税標本調査結果」のデータを紹介すると、同年における事業所得者の平均所得金額は420万円です。事業所得者の所得金額別の割合などについては、国税庁のデータをご覧ください。
※参照元:申告所得税標本調査|国税庁
個人事業主の手取り年収はどのように計算できますか?
個人事業主の手取り年収を計算するには、年間の収入から国民年金保険料や国民健康保険料、所得税・復興特別所得税、住民税、個人事業税、消費税などを差し引きます。この中で所得税の金額は、基本的に年収から必要経費、青色申告特別控除、社会保険料控除、基礎控除などを引いて課税所得金額を計算し、それに税率を乗じて控除額を引くことで求められます。
個人事業主が年収を聞かれたらどこを確認したら良いですか?
クレジットカードの申込みなどで年収を証明する書類の提出を求められたら、個人事業主の場合は確定申告書の写しが役に立つでしょう。ただし、実際にどのような書類が有効なのかはケース・バイ・ケースなので、提出先に問い合わせるなどして事前に確認しておくのが無難です。
個人事業主が嘘の所得を申告するとどうなりますか?
虚偽の申告をした場合はペナルティの対象となります。申告する納税額が少ない場合は「過少申告加算税」、期限内に確定申告を行わなかった場合は「無申告加算税」、納付期限を過ぎて納付する場合は「不納付加算税」が課されるので気をつけてください。
個人事業主が節税したい場合、税理士に相談すべきでしょうか?
税金の知識が豊富な税理士に相談することで、正しい節税対策を行えます。また、経理業務を代行してもらえれば、本業に集中できるメリットもあるでしょう。ただし、税理士に依頼すると一定の費用がかかるため、年収が十分でないと負担が大きくなってしまいます。エンジニアとして年収アップを目指す方は、「フリーランスエンジニアの年収・収入|年収1000万円を目指すための働き方とは」の記事をご覧ください。
※本記事は2022年11月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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