目次
フリーランスの経費の基本を正しく知ろう
フリーランスにとって、経費に関する知識を身につけることはとても大切です。経費計上をすることは節税にもつながります。ここでは、経費とは何なのか、その概要と、なぜ経費を把握しておく必要があるのかについて詳しく説明します。
経費とは
フリーランスにとっての経費とは、業務を行うにあたって購入したものやサービスに使用した費用を指します。簡単にいえば「事業にかかった費用」です。仕事をするうえで必要な支出なので「必要経費」とも呼ばれます。
ただし、仕事と直接の関わりのない支出でも経費になることがあります。たとえば、自宅で仕事をするというフリーランスであれば、家賃や光熱費なども条件付きで経費計上が可能です。
また、お菓子を買うにしても、自分用や家族へのお土産は経費になりませんが、得意先への贈答であれば経費として認められます。
なぜ経費を把握しておく必要があるのか
経費を把握する必要がある理由は、フリーランスは会社勤めとは違い、自分で確定申告を行わなくてはいけないためです。
確定申告では、年間の総収入を金額からかかった必要経費と控除を差し引いて事業所得の金額を算出します。この事業所得の金額に税金がかかるため、経費を把握しておく必要があるのです。
確定申告には、青色申告と白色申告があります。それぞれのメリット・デメリットや確定申告で行う作業について確認しておきたい方は、「フリーランスエンジニアの確定申告|必要な作業や節税対策について解説」の記事もチェックしてください。
開業前でも経費に計上できる
事業を始めるための準備には、お金がかかります。開業届を出す前の準備段階にかかった費用についても、しっかり帳簿を付けておくことで経費として扱うことができます。
開業した年は、まだ収入が少なく、開業準備の経費を差し引くとマイナスになってしまうこともあるでしょう。開業費用は償却費として必要経費に算入することができますが、通常の減価償却と異なり、償却費を必要経費に算入できなくなる期間は定められていません。
そのため、開業するために使ったと証明できれば、開業したあと収入の多かった年に持ち越して計上することもできます。支出した年に全額償却しても、まったく償却しなくても問題ありません。
フリーランスが経費計上できる項目については「個人事業主の経費と税金|どこまでOK?経費にできる範囲を具体的に解説」の記事でも紹介しているので、ぜひあわせてご確認ください。
フリーランスの経費として認められるもの
フリーランスは使用したお金のすべてが経費として認められるわけではありません。前述したとおり、経費として認められるかどうかは「事業に関係しているか」がポイントです。
- 青色申告決算書に指定されている経費項目
- 青色申告決算書に指定されていないが落とせる経費項目
経費として認められるものは、主に上記の2点にわけて考えられます。
ここでは、具体的な計上項目とともに解説します。
青色申告決算書に指定されている経費項目
まずは経費にどのようなものがあるかを見てみましょう。国税庁のホームページでは、所得税青色申告決算書をダウンロードすることができます。
参考 : 所得税青色申告決算書(PDF)
この決算書の経費項目の中からエンジニアに関係のあるものを抜粋しました。
- 水道光熱費
- 地代家賃
- 旅費交通費
- 通信費
- 広告宣伝費
- 接待交際費
- 消耗品費
- 減価償却費
- 外注工賃
- 雑費
上記について、経費として落とせるものについて見ていきます(経費の項目は白色申告の場合も同じです)。
水道光熱費
水道代、電気代、ガス代については、仕事に使っている分を経費として計上できます。
仕事とプライベートをどの程度に配分するかはケースバイケースですが、水道代やガス代が50%を超えるのは、普通に考えると不自然です。そのため、最初にそのパーセンテージを決めておき、機械的に計算できるようにしておくと良いでしょう。
なお、このように仕事に使った分を計算することを「按分」といい、水道光熱費は家賃の按分率にそろえることが一般的です。
地代家賃
自宅が賃貸物件の場合、家賃の中から按分して、経費にすることができます。
床面積で仕事部屋の割合を出す方式が一般的で、実態から大きくかけ離れないように計算しておけば間違いありません。
たとえば自宅が持ち家や分譲マンションの場合、減価償却費、管理費、借入利息、固定資産税などが経費の対象になります。
この場合も、按分して経費に計上するようにしましょう。
旅費交通費
打ち合わせ、客先での作業など、仕事に関する移動費は経費として計上できます。
公共交通機関では領収書を取っておくことが難しい場合もありますが、普段からICカードを使うようにすれば、チャージ時の領収書が印刷できて便利です。
ただし、ICカードの場合、電子マネーとしての機能が高まっているため、利用履歴を印字してコンビニなどで利用したプライベートな部分を除外するようにしてください。
なお、移動手段として車やバイクを使っており、ガソリン代や高速代、出先で有料駐車場を利用した場合は、その料金も経費として認められます。
通信費
インターネットにかかる費用、電話代、請求書を送付する際の郵送費などは、通信費として計上が可能です。エンジニアの場合は、自分用のサーバや有料のクラウドストレージを使っている人も多いと思いますが、これも経費になります。
ただし、水道光熱費同様、全額を計上できるわけではなく、仕事で使った分を按分する必要があります。
とくにインターネットやスマートフォンなどは、プライベートと仕事をどう分けるかが難しいのですが、おおまかでも使った時間を計算して比率を出しておくと良いでしょう。
広告宣伝費
フリーエンジニアが個人で仕事をする際、広告や宣伝をする機会はほとんどありませんが、フリーエンジニアにとっては名刺は広告宣伝に該当します。名刺は、自分のブランディングに必要なものなので、広告宣伝費として認められるのです。
また仕事用のポートフォリオサイトをつくるのにかかる費用や年賀状の費用なども、広告宣伝費として見なして良いでしょう。
接待交際費
フリーエンジニアとして仕事をしていると、仕事の打ち上げや忘年会など、仕事関係の飲み会に出席するケースもあるでしょう。こうしたケースで会費を支払った場合は、接待交際費として経費計上ができます。
ただし、接待交際費は不正が行われやすい項目のため、万一税務調査が入ったときにはチェックが厳しくなります。自分の食事、家族の食事、仕事と関係のない飲み会などは計上しないという自制が必要です。
また、念のために備えて、飲食した日付、利用した店名、出席者の名前や関係などは控えておくのが良いでしょう。
消耗品費
プリンターのトナーやコピー用紙、仕事用の文房具などは消耗品として経費計上ができます。インターネットで購入した場合は、領収書がないケースがありますが、その場合は、納品書、購入履歴、発注メールなどで領収書の代用が可能です。
減価償却費
減価償却費とは、一括ではなく耐用年数に応じて分割で申告する経費のことです。10万円を超える車やパソコンなどは、長期にわたって使用するものとして、この減価償却費に当たります。
耐用年数は、パソコンなら4年、車なら6年というように決められているので、購入価格をその年数で割って毎年申告していきます。
ちなみに、デジタルカメラも10万円以上なら減価償却となりますが、10万円未満の場合は消耗品として申告します。
なお、青色申告制度を利用している場合、30万円以下のものであれば、少額減価償却資産の適用を受けることで、購入年に全額を必要経費とすることができます(年度ごとに上限あり)。
外注工賃
外注を使った場合や仲間同士で仕事をシェアしている場合は、外注工賃を経費として計上できます。
ただし、仕事を外注に依頼する際、源泉徴収の扱いをどうするか、注意が必要です。源泉義務は発注側にあり、料金を税込にするか税抜にするかで支払い額が変わってくるので、事前に受注側と相談しておくと無難でしょう。
雑費
これまで上げてきたものに当てはまりませんが、事業を行う上で必要なものを計上するための項目として「雑費」があります。
現在の確定申告の仕組みとしては青色申告の決算書の項目の最後に「雑費」という項目があるので、同業者組合の諸会費など、分類がどこまでになるのかがわからないものは、ここに入れておくと良いでしょう。
ただし、雑費があまりに多すぎると「不適切な費用を経費として計上しているのでは?」と税務署に疑念を抱かれるおそれがあります。基本的には、新たな費用項目を起こすなどして「雑費」を使わないようにしましょう。
青色申告決算書に指定されていないが落とせる経費項目
青色申告決裁書には指定されている項目から雑費の間に、自分で項目を立てられるよう空欄があります。
雑費が分類されるものが多すぎると管理しにくいので、任意で項目を立てられるようになっているのが特徴です。
この空欄には、下記のような項目を立てることができます。
- 会議費
- 図書費
- 研修費
- 車両関連費
- 支払報酬
- リース料
ここでは、上記内容についてそれぞれ解説します。
会議費
会議費とは、大きな株主総会や役員会議、従業員会議などの会議から小さな打ち合わせまで、事業を進めるうえで必要な会議のために支出する費用のことです。
会議費としては、会議や打ち合わせの会場借館料や資料代、飲食代を計上することができます。会議としての実態があることが必要なので、議事録や打ち合わせメモを作成して保管しておくようにしましょう。
また、会議のあとに同会場で懇親会などを開いた場合、懇親会部分は接待交際費として分類することになるので注意が必要です。
図書費
図書費は新聞図書費とする場合もありますが、書籍だけでなく、事業に直接関連する新聞や雑誌の購入および、登録した有料サイトの会員料費用などを指します。
従業員の教育のために購入した専門書などの書籍や教育用DVD、待ち時間などにお客さんに見てもらうために購入した新聞、雑誌も対象です。
図書費はプライベートと混ざりやすい費用なので、仕事外の購入と仕事での購入をしっかり区別しておくようにしましょう。税務調査の際に回答できるように、書籍の購入目的や利用方法がわかるような書類などのデータを残しておくことが大切です。
研修費
研修費は、事業に関連したセミナーや研修、講座に参加した際にかかった費用を指します。仕事に必要だと判断できる内容であれば、イベントの参加なども対象です。研修の受講代、教材代、研修会場への交通費や、ランチョンセミナーなど研修の一部となっている食事代など、研修に伴う費用であれば計上することができます。
きちんと経費として認められるよう、研修があったということがわかるような案内や資料も保管しておくようにしましょう。
車両関連費
車両関連費は自動車の車両点検代や駐車場代などの維持管理費を計上します。
自動車税は租税公課の項目に計上し、自動車保険料は支払保険料の項目、ガソリンは旅費交通費に挙げても構いません。ただし、車輌に関する費用はまとめた方が管理しやすいでしょう。
車両をプライベートでも使う場合には、仕事で使っている割合を車両の使用時間や日数、走行距離などを基準として、合理的に経費を算出する「按分」を行います。
支払報酬
支払報酬とは、社外の専門家に業務を委託した費用を処理する項目です。
弁護士や税理士などに対する報酬や、講演を依頼したときの講演料、記事を依頼したときの原稿料、校正料のほか、イラスト料、デザイン料などの支払いも計上します。
この項目に計上したものは、源泉徴収を行わなければならないので注意が必要です。
リース料
リース料では賃貸借期間の定めがある、コピー機や複合機などの機械や車両のリース料を計上します。
ただし、事務所や土地などの不動産関係の賃貸契約は、地代家賃の項目に計上する仕組みです。
1台のコピー機や車両をプライベートでも使う場合には、仕事で使っている割合で経費を算出する「按分」を行います。
フリーランスの経費として認められないもの
経費として認められないものは、「事業に関係していないもの」です。
具体的には、下記のようなものが挙げられます。
- プライベートの支出
- 納税額
- 控除対象となるもの
それぞれについて解説していきます。
プライベートの支出
自分や家族の趣味に関するものの購入費用、友人との食事代や生活にかかってくる雑費など、プライベートで行った支出については経費として計上できません。
そのほか、家賃や水道光熱費、パソコンや携帯代などの通信費、車両費などは、仕事とプライベートで按分することができますが、食費などの雑費は基本的に按分できないことを把握しておきましょう。
なお、フリーランスで自宅を事務所として使用している場合、引っ越し費用の一部を経費とすることは可能です。
納税額
国や地方自治体に納める税金のうち、所得税や住民税は支出とは認められません。したがって経費にもならないので注意しておきましょう。
控除対象となるもの
国民健康保険や国民年金は社会保険料として、民間の生命保険や個人年金、損害保険などは生命保険料等として所得控除の対象となります。そのため、経費として事業所得からは差し引くことはできません。
なお、医療費は確定申告の際に医療費控除ができるため、経費になるものと同じく領収書は保管しておきましょう。予防接種や健康診断に関しては、医療費控除にならず、また経費として計上することもできません。
フリーランスが経費を計上する際の注意点
ここまで、経費になるもの、ならないものについて解説してきましたが、実際に経費を計上する際はどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。主な注意点としては、以下のとおりです。
- 経費の金額が不自然に高くならないようにする
- 不正があるとペナルティが課される
- こまめに経費の計上をする
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
経費の金額が不自然に高くならないようにする
経費が多ければ多いほど所得が少なくなるので、納める税金も少なくなるわけですが、収入に対する経費の額があまりに高すぎると税務署のチェックが入ることもあります。
- 収入金額 – 必要経費 = 事業所得(青色申告特別控除前)
具体的にいくらまでという基準はありませんが、上記の事業所得の計算式をもとに割り出した自分の給与が、妥当な水準にあるかどうかを目安に考えるようにしましょう。
不正があるとペナルティが課される
経費の計上に誤りがあり脱税とみなされてしまうと加算税が課されます。また、意図的に経費を不正に計上した場合は、より重い罰則を受けるため、当たり前ですが虚偽の申告はしないようにしましょう。
こまめに経費の計上をする
必要経費は確定申告に間に合うように計上すれば問題ありません。しかし、あまりにも経費の計上を溜め込みすぎると、いつ何のために使用した経費かわかりにくくなってしまいます。ミスを防ぐためにも、経費の計上はこまめに行うようにしましょう。
確定申告に領収書やレシートは必要?
フリーランスとして確定申告などについて調べていると、「領収書やレシートを整理して保管するべき」と目にすることがあるでしょう。
実際に確定申告をする際になぜ必要になるのか解説します。
7年間の保存義務はあるが提出は不要
経費を計上するには、領収書やレシートが必要になります。領収書やレシートは、いわば経費の「証拠」となるものなので大切に保管するのは当然ですが、それ以上に重要なのが整理です。
領収書やレシートは、確定申告時に提出する必要はありませんが、申告後も7年間の保管義務があり、万一税務調査が入った場合は税務署から提出を求められることもあります。
そんなときに、「どこにいったのかわからない」では通りません。経費を計算するだけならExcelやクラウドサービスでも十分ですが、領収書整理用のクリアファイルや収納ボックスなどを用意し、年度ごとにまとめておくと良いでしょう。
ちなみに、以前はレシートではなく領収書を書いてもらうことが一般的でしたが、最近では明細のわかるレシートでも十分な信憑性があるとされており、またその方が税務署に喜ばれることもあります。
経費で計上するはずの領収書やレシートをもし紛失したら?
慎重に保管していたつもりの領収書やレシートをもし紛失してしまったら、まずは店舗にて再発行ができないか相談してみましょう。しかし、店舗側に再発行の義務はないため、必ず再発行してもらえるとは限りません。支払証明書の発行はしてもらえる可能性がありますが、多くの場合発行にあたり数百円程度の手数料がかかることを把握しておきましょう。
なお、経費の支払いにクレジットカードを利用した場合は、クレジットカードの利用明細を領収書の代わりとして使用できます。
領収書をもらうのが難しい場合は出金伝票でもOK
領収書やレシートを発行してもらえない場合や紛失した場合には、経費を計上できないのでしょうか。そんなときは、現金が出て行ったことを記録するための出金伝票を起こすことで、支払いの証拠のひとつにすることができます。
ただし、出金伝票は自分自身で証明することになるので、支払った内容が分かるパンフレットや案内状、会葬礼状、スケジュール帳などがあれば、添付しておきましょう。
ほかにも、仕事上の打ち合わせとして参加した飲み会で、費用が割り勘となった場合なども出金伝票を作成し、経費として計上すると良いでしょう。
出金伝票の様式に決まりはありませんが、次の5つの項目が必要です。
- 支払年月日
- 支払った金額
- 支払先
- 支払内容
- 勘定科目
出金伝票を記録する際は、上記5点の項目の記載があるか、チェックしておくようにしましょう。
「フリーランス(個人事業主)がミス無く確定申告を終えるために押さえておくべき12のチェックリスト」では、確定申告のためのポイントを詳しく解説しています。確定申告に不安のある方は、こちらもあわせてご確認ください。
これも経費に?NG?よくあるQ&A
ここでは、経費計上に関する可否についてQ&A方式で解説します。
Q. ソーシャルゲームのガチャの課金は経費になりますか?
A. 趣味としてはもちろん認められませんが、フリーエンジニアの場合、「研究用」という名目で経費にすることが可能です。
同様に、ゲーム制作に関わっているならゲームソフト、LINEスタンプの開発に関わっているならLINEスタンプなども、研究用の購入ということで経費として認められます。
いずれの場合も、経費項目としては雑費や資料費、研究費として処理すると良いでしょう。
Q. オフィスの引っ越し費用は経費になりますか?
A. 完全に仕事用に借りているオフィスであれば、引っ越し費用も経費で落とせます。
ただし、自宅を仕事場と兼用している場合は、地代家賃と同じように按分が必要です。
礼金は経費になりますが、敷金は退去時に原状回復費が差し引かれる関係で経費に計上できないため注意しましょう。
ただし、原状回復費は経費として計上可能です。当然ながら自宅を仕事場と兼用している場合、礼金・原状回復費は按分して計上します。
礼金が10万円以上の場合は、契約期間で月数按分するようにしましょう。
Q. 家電製品、家具の費用は経費になりますか?
A. エアコン、テレビ、掃除機、ストーブ、テーブルなど、自宅で仕事をしている場合、どうしても仕事とプライベートの区分けが曖昧になりがちです。
これらを経費とするなら、仕事で使う分を時間や頻度で按分したうえで、消耗品費として処理します。
※本記事は2022年8月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
簡単4ステップ!スキルや経験年数をポチポチ選ぶだけで、あなたのフリーランスとしての単価相場を算出します!
※相場算出に個人情報の取得はおこないません。