個人成りとは?手続きやおすすめのタイミング・メリットを解説 | レバテックフリーランス
個人成りとは?手続きやおすすめのタイミング・メリットを解説
- 個人成りがおすすめのタイミング
- 個人成りのメリット・デメリット
- 会社の解散・清算や休眠に必要な手続き
法人から個人事業主に戻る個人成り。決断のタイミングとしては、「社会保険の負担が大きい」「事業縮小したい」などが代表的です。
この記事では、個人成りを考えるタイミングやメリット・デメリットを解説します。節税や事業縮小の観点から、法人と個人のどちらが得か判断できるようになります。
また、必要な手続きもあわせて紹介し、次にやるべきことが明確になるのでぜひご覧ください。
目次
個人事業主への転換を考えるタイミング3つ
法人には、個人事業主と比べて社会的な信用度が高いといったメリットがあります。しかし、売上が一定以下になると、個人事業主になった方が節税できる可能性が出てきます。
社会保険料が経営を圧迫する場合も、個人事業主になれば保険料の負担を減らせる可能性があります。とはいえ、一度法人化した後で個人事業主に戻る「個人成り」は大きな決断で、迷う人も多いです。
そこで、個人成りを考える代表的なタイミングを3つ解説します。自社の状況と照らし合わせ、個人成りすべきかどうか決める参考にしてください。
なお、法人成りについては、以下の記事で詳しく確認できます。
法人化・法人成りとは?個人事業主から法人になる意味は
法人税が所得税より高い状況が続いている
法人としての売上が減少し、個人事業主の方が税額を抑えられる状況は、個人成りを検討する代表的なタイミングです。
そもそも、法人化する理由として多いのが「節税」です。個人事業主が納める所得税は、所得が増えるほど税率が上がります。そのため、所得が一定以上になった際、税率が一律の法人税に切り替えるために、法人化するパターンがよくあります。
逆にいえば、所得が減少して法人税が所得税額を超えた場合、税金面では法人として活動するメリットがなくなります。節税を重視するなら、税負担が抑えられる個人成りを検討しましょう。
社会保険料の負担が大きくなっている
法人は社長一人の会社でも、厚生年金や健康保険など社会保険への加入が義務です。従業員を雇用する場合は、労働時間などの条件を満たす全員を社会保険に加入させなければいけません。
個人事業主の場合、条件によっては社会保険の加入義務がありません。社会保険料の負担がなくなるのは、経営者にとって大きな利点となるでしょう。
事業の縮小を計画している
後継者がいないといった理由から将来的な事業の撤退を想定している場合、個人成りすれば段階的に事業を縮小できます。たとえば、個人成りして除々に取引量を減らし、将来的に廃業しやすくできます。
法人から個人事業主になって規模を縮小することで、精神的に楽になる場合もあるでしょう。
個人成りのメリット
法人は税務関係の手続きが複雑で、財務諸表や決算書の作成などやるべきことが多くあります。
一方、個人事業主は法人と比べて税務手続きが簡単で、経理書類の負担を軽減できます。さらに、個人成りから2年間は消費税が免除される仕組みがあり、節税できます。
個人成りで得られる具体的なメリット6つをまとめて解説するので、自分にとって個人成りのメリットがどれほどか確認しましょう。
税務手続きが簡単になる
法人の税務処理は複雑で、会計の知識や経験が必要です。簿記の知識がない場合は税理士に依頼しますが、顧問料がかかります。経理専門の社員を雇う場合も、人件費がかかります。
個人事業主も確定申告を行いますが、法人と比べると手続きはシンプルです。簿記の知識がなくても、会計ソフトを使えば税理士に依頼せずに確定申告を行えます。
社会保険への加入義務がなくなる
法人では、社長一人でも社会保険への加入が義務となっています。しかし、個人事業主の場合、従業員4名以下であれば、厚生年金や健康保険への加入は義務ではありません。社会保険料が経営を圧迫している場合、個人成りによって大幅に負担を減らせます。
ただし、個人事業主でも従業員5名以上だと社会保険への加入義務が生じるので、その点は注意しましょう。
2年間は消費税が免除される
消費税は、2年前の課税売上が1,000円を超えると納税義務が生じます。個人事業主から法人になる場合、法人としての過去の売上はないので最初の2年は消費税が免除されます。
個人成りする場合も同様で、個人成りした後は個人事業主としての過去の売上はないので、2年間は消費税が免除されます。2年という限定された期間ですが、税負担を減らせるのはメリットです。
ただし、消費税の免税を目的に、法人成りと個人成りを2年ごとに繰り返すのは脱税と見なされる可能性が高いです。消費税の免税は個人成りの副次的なメリットと考えましょう。
年7万円の法人住民税均等割がかからない
法人住民税は「均等割」と「法人税割」の2つで構成されています。法人税割は黒字の法人のみが対象ですが、均等割は赤字の法人も納めなくてはなりません。
たとえば、資本金1千万円以下・従業員数50名以下の法人であれば、赤字でも均等割として年7万円を納付する必要があります。個人事業主の場合、赤字なら住民税を納める義務はありません。
事業を畳みやすい
個人事業主は法人と比べて、廃業の手間がかかりません。手続きとしては、税務署に廃業届などの書類を提出するだけです。
一方、法人の廃止には、会社の解散・清算などの手続きが必要で、手間やお金がかかります。体力があるうちに個人成りしておけば、その後は個人事業主としていつでも廃業できます。
法人と比べて税務調査の割合が低い
個人事業主は、法人と比べて税務調査が入る確率が低い傾向にあります。国税庁のデータによると、税務調査の実調率の割合は次の通りです。
- 法人:3.2%
- 個人事業主:1.1%
個人事業主は法人と比べて調査の割合が低く、きちんと確定申告を行えば税務調査の対象になる可能性は低いといえます。もちろん、間違った申告や不正な申告をすれば税務署の目にとまるので、個人成りしても正しい申告を意識しましょう。
個人成りのデメリット
個人成りには、「経費に計上できる範囲が狭まる」「社会的な信用度が下がる」といったデメリットもあります。
個人成りの後悔するのを防ぐには、あらかじめ個人成りによるデメリットを知っておくのが重要です。代表的な個人成りのデメリットを5つ解説していきます。
役員報酬の支払いによる節税ができない
法人の場合、自分自身の役員報酬を経費として扱えます。しかし、個人事業主になるとそもそも役員という役職がなく、役員報酬を支払えません。そのため、役員報酬の経費計上による節税はできないことになります。
加えて、個人事業主は自分自身の給与や退職金も経費にできません。退職金に関しては、掛け金の全額を控除できる「小規模企業共済」を活用するなど、経費計上以外の部分で節税の工夫をする必要があります。
小規模企業共済の詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
小規模企業共済のメリット・デメリットとは?
会社解散の手間と費用がかかる
会社を解散する場合、日常の業務に加えて精算事務などの手続きを行わなければなりません。従業員を雇っている場合、事前に話し合って理解を得る必要もあるでしょう。会社を解散する際は、登記などの費用もかかります。
また、事業の種類によっては、個人成りしてから改めて許認可を得る手間もかかります。個人事業主になったことで許可が降りない可能性もあるので、事前に十分な確認が必要です。
経費として認められる範囲が狭まる
一般的に、法人の方が所得から差し引ける経費の幅が広く、個人事業主になると経費計上の条件が厳しくなります。個人事業主の場合、事業に直接かかわる支出でなければ、経費に認められません。
たとえば、法人であれば会社が借りた建物を丸々「社宅」として扱えます。一方、自宅を仕事場とする個人事業主は、事業使用分を按分し、家賃や光熱費の一部だけを経費に計上します。住居のプライベート部分に関しては、経費にはできません。
無限責任になる
法人は有限責任ですが、個人事業主になると無限責任になります。法人の出資者は、もし仮に事業を精算することになっても、出資額以上の責任を負いません。つまり、出資額を超える債務については、弁済しなくて良いことになっています。
しかし、個人事業主は無限責任なので、債務があればその全額を弁済しなければなりません。
社会的な信用度が下がる
法人は、「登記簿で会社の情報を確認できる」「決算の透明性が高い」という理由から、社会的な信用を得やすいです。
一方、個人事業主は法人と比べると社会的な信用度は下がります。そのため、「金融機関からの融資を受けづらい」「ローンを組みづらい」という問題が起こりがちです。
企業によっては「法人でなければ取引しない」という方針をとっていることもあります。取引先の方針によりますが、場合によっては個人成りで取引が打ち切られる可能性が出てくるでしょう。
法人から個人事業に戻す際に必要な2つの手続き
個人成りをするには、まずは法人としての事業を停止しなければなりません。やり方は、「会社の解散・清算」もしくは「休眠」のいずれかです。
また、個人事業主として活動するにあたって、税務署への開業届の提出が必要です。
法人を辞める手続きと、個人事業主を開始する対応をまとめて紹介するので、全体の流れを把握しスムーズに手続きを進めましょう。
1.会社の解散・精算もしくは休眠の手続き
「会社の解散・清算」は、事業活動を完全にストップさせる手続きです。もう一つの「休眠」は、会社自体は存続させたまま休業状態にする手続きです。
休眠の場合、将来的に法人としての事業を再開できるのがメリットです。費用面でも解散・清算よりもコストを抑えられる特徴があります。それぞれのやり方を確認していきましょう。
解散・精算の流れ
会社を解散する際は、まず株主総会で解散決議を行います。オーナー社長であれば、自分一人で解散を決められます。
解散を決議したら、解散および清算人の選任登記を行い、会社の財産や債権・債務に関する清算手続きを行います。清算手続きが終わり、清算結了登記が完了すると会社が消滅します。
会社の解散には、「解散登記」「清算人選任登記」「清算結了登記」が必要です。これらには、合わせて4万1,000円の登録免許税がかかり、官報公告費用として3~4万円がかかります。
司法書士などの専門家に手続きを依頼する場合、会社の規模によりますが合計10万円から数十万円程度がかかります。
休眠の流れ
休眠する際は、税務署・都道府県税事務書・市町村役場に「異動届出書」を提出します。従業員がいる場合は、「給与支払事務所の廃止届出書」も提出しましょう。
休眠は再び事業を再開できるのがメリットです。ただ、休眠中も年7万円の法人住民税(均等割)が発生します。また休眠中も税務手続きが必要な点に注意しましょう。
事業を再開したい場合は、休眠時と同様、税務署・都道府県税事務書・市町村役場に「異動届出書」を提出します。
2.個人事業主になるため開業届を提出する手続き
会社の解散や清算、休眠手続きが完了したら、税務署に個人事業主になるための「開業届」を提出しましょう。確定申告を青色申告で行う場合は、同時に「青色申告承認申請書」も提出します。従業員を雇う場合は、以下の書類も提出してください。
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
個人事業主になった際に忘れずやるべきこと
開業届を出して個人事業主になったら、次のような手続きを行いましょう。
- 個人事業主としての事業用口座を開設
- 法人名義の不動産などの名義変更
- 健康保険や年金の切り替え
法人としての銀行口座は廃止し、個人事業用の口座を開設しましょう。法人名義の不動産や車両は買い取り、名義変更を行います。社会保険に関しては、国民健康保険や国民年金への切り替え手続きが必要です。
法人を辞めた人が個人事業を軌道に乗せる方法
事業がうまくいかず個人成りした人は、「個人事業主として今度こそ成功したい」と思うのではないでしょうか。
個人事業を成功させるには、顧客にとって何がメリットになるのか考え、事業の魅力をアピールする営業活動が欠かせません。最近は、WebやSNSを活用し、顧客に製品やサービスを知ってもらう方法もあります。
ここでは、個人成りした後に事業を成功させるコツを紹介します。個人事業主として早期に結果を出すために、基本的なポイントを押さえましょう。
営業力を高める
個人事業主が成功するには、事業や扱う製品・サービスの魅力を伝える営業が重要です。すでに取引先や人脈がある場合も、新規顧客に事業の魅力を伝える必要があります。
営業の手間を省いて案件を探したい場合は、フリーランス向けのエージェントを活用しましょう。エージェントで希望条件に合った案件を紹介してもらえば、営業や交渉の負担を減らせます。
たとえばレバテックフリーランスは、ITエンジニア案件を継続提案しています。利用者の中には、会社設立を経験したのち、レバテック経由で案件を受注し個人事業主として活躍する人もいます。実際のインタビューは以下からご覧ください。
40歳フロントエンドエンジニア。会社設立を2社経験後、会社員ではなくフリーランスとしての道を選択
コスト管理を意識する
事業を円滑に運営するには、売上とともにコストにも着目しましょう。収益を増やすにはコストダウンも鍵となります。ただし、コストダウンを優先して売上向上のための予算を削減するのは得策ではありません。
次のように、事業にとって不要な部分でコスト削減を図りましょう。
- 売上見込みがないのに従業員を大量に採用する
- オフィス家具や設備を必要以上に豪華にする
リスクに備える
個人事業主として安心して事業を営むには、リスクへの備えが欠かせません。具体的には、事業に合わせて保険に加入する方法があります。その一つとして「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」を紹介します。
経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合に貸付を受けられる制度です。無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借り入れができ、掛金は経費にできるので節税にもなります。
自分の事業経営がうまくいっていたとしても、取引先の倒産はいつ起こるか分かりません。不足の事態に備えるためにも、経営セーフティ共済をはじめとする何らかの対策を講じておきましょう。
個人成りに関するよくある質問
個人成りを視野に入れている方に向けて、個人成りに適したタイミングや法人と比べたメリット・デメリットを紹介します。個人成りでよくあるのは、法人税より所得税の方が税額を抑えられる場合に、個人事業主になるパターンです。
個人成りに必要な手続きも紹介するので、基本的な知識を身につけ、どう動くべきか検討しましょう。
Q. 個人成りを検討すべきタイミングは?
売上が減少し法人税より所得税の方が税額が減る場合、個人成りする価値があります。社会保険料の負担が大きいときも、条件によっては個人成りで社会保険の加入義務が免除されます。いずれ廃業したい際は、個人成りで段階的に事業を縮小できるでしょう。
Q. 個人成りのメリットは何?
個人成りのメリットは、売上によっては税金の負担が軽くなること、決算の手間が軽減できることです。ほかに、従業員4名以下であれば社会保険の加入義務がなくなる、個人成りして最初の2年間は消費税が免除されるのも利点です。
Q. 個人成りのデメリットは何?
会社を解散・清算する手続きの手間がかかること、経費として認められる範囲が狭まることがデメリットです。法人よりも社会的信用度が低く、融資を受けづらかったり、法人のみと取引する顧客から契約を打ち切られたりする恐れもあります。
Q. 個人成りにはどのような手続きが必要?
会社を解散・清算もしくは休眠させる手続きが必要です。解散・清算にあたっては、「解散登記」「清算人選任登記」「清算結了登記」が必要です。休眠の場合は、「異動届出書」を提出します。その後、税務署に開業届を提出すれば個人事業主として活動できます。
※本記事は2023年11月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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