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個人事業主が納める税金
所得税
1年間の事業売上の合計が「総収入」ということになりますが、これにすべて税金がかかるわけではありません。事業を行う際には、さまざまな「経費(必要経費とも)」がかかってきます。経費の内容については後述するとして、総収入から必要経費を引いたものが「事業所得」です。この事業所得から後述する「青色申告特別控除」と「所得控除」と呼ばれる費用を差し引いた金額を「課税所得」といいます。
確定申告の際には、ここまでの計算がきちんとできていれば、あとは正確に記入していくことで、所得に応じた税率と税額控除額が自動的に適用され、納める税金が算出されます。税率と税額控除額は以下の通りです
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超~1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超~4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超~ | 45% | 479万6000円 |
※平成25年~平成49年の間は、復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を納付する必要があります。
参考:No.2260 所得税の税率(国税庁)
例えば、課税所得が300万円なら税率10%で30万円、そこから9万7500円が控除されて20万2500円が税金ということになります。
なお、受け取る報酬の種類によっては、支払いを受ける際にあらかじめ源泉徴収されていることもあります。その場合、源泉徴収された総額と納付する税額と比べ、源泉徴収された額の方が多ければ差額が「還付金」として戻ってきますし、源泉徴収された額の方が少なければ追加で納税することになります。
ここまでをまとめておきましょう。
①「総収入」から「経費」を引いた金額が「事業所得」
②「事業所得」から「青色申告特別控除」「所得控除」を引いたものが課税対象の「課税所得」
③「課税所得」に応じた税率と上記の表にある「控除額」が適用されたものが納める「税金」
その他の税金(住民税、個人事業税、消費税)
住民税は自分が住んでいる市区町村に納める税金で、個人事業税は事業所得を得ている人に納付義務がある税金です。この2つについては行政から税額の通知があるので、自分で計算する必要はありません。
なお、請負契約ではなく、企業に常駐して作業をするような準委任契約の場合、原則的に個人事業税がかからないというケースが多いです。
個人事業税の対象となるかどうかは、都税事務所や区役所などから届く「お尋ね」への回答で判断されます。「お尋ね」が届いても回答しなかった場合、本来ならば個人事業税の対象でなかったとしても個人事業税が課されることもありますので、きちんと回答するようにしましょう。
また、ものを買う場合だけでなく、個人事業主が得た所得にも8%の消費税はかかってきます(正確には、2年前の事業売上が1000万円を超えた場合)。個人事業主になっていきなり1000万円を超える売上があるケースはまれでしょうから、売上が伸びるにしたがって意識していくといいでしょう。
・住民税
住民税は、自分が住んでいる都道府県、市区町村に納める税金です。道府県民税(東京都の場合「都民税」)と市町村民税(23区は「特別区民税」)を合わせたものを住民税と呼び、市区町村に一括で納税します。
住民税は、住民・会社が平等に納める金額(均等割)と前年の所得に応じて納付する額(所得割)を合計になります。行政から税額の通知があるので、自分で計算する必要はありません。
・個人事業税
個人事業税は、個人で営む事業のうち、地方税法で定める業種(法定業種)にかかる税金です。法定業種は現在70種類あるため、多くの事業が該当することになります。
所得税の確定申告や住民税の申告をした方は、個人事業税の申告は必要ありません。このとき、申告書の「事業税に関する事項」の欄に必要事項を記入しましょう。個人事業税の算出方法は、下記のとおりです。
(総収入金額-必要経費-繰越控除額等-事業主控除額)×税率=個人事業税額
事業主控除額は、年間で290万円です。ただし、営業期間が1年に満たないときは月割額となります。
事業ごとの税率は下記のとおりです。
区分 | 事業の種類 | 税率 |
---|---|---|
第1種事業 | 物品販売業や料理店業など | 5% |
第2種事業 | 畜産業や水産業など | 4% |
第3種事業 | 医業やコンサルタント業など | 5% |
あん摩、マッサージなどその他の医業に類する事業 | 3% |
なお、請負契約ではなく、企業に常駐して作業をするような準委任契約の場合、原則的に個人事業税がかからないというケースが多いようです。
個人事業税の対象となるかどうかは、都税事務所や区役所などから届く「お尋ね」への回答で判断されます。「お尋ね」が届いても回答しなかった場合、本来ならば対象でなかったとしても個人事業税が課されることがありますので、きちんと回答するようにしましょう。
・消費税
事業者で課税期間(個人事業者の場合は暦年、法人は事業年度)における基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるときは、「消費税の納税義務者(課税事業者)」になります。1,000万円以下であったとしても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた際等は課税事業者です。
特定期間ですが、個人事業者はその年の前年の1月1日から6月30日まで、法人は原則その年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間を指します。
関連記事 : フリーランス(個人事業主)の税金と計算方法について
経費における節税のポイント
前項でも紹介したように、総収入から経費を引いたものが事業所得で、そこから青色申告特別控除(青色申告時)と所得控除を差し引いたものが課税対象の所得です。
所得を低く抑えることができれば、税率も低くなりますし、住民税や国民健康保険などの公的保険料なども安くなります。そのため、節税のポイントのひとつは、経費を上手に計上し、使える控除をしっかり利用して所得を「下げる」ことです。
そこで、まずは経費の基本を紹介いたします。
経費として認められる費用とは?
必要経費として認められるものと認められないものの違いですが、端的にいってしまえば「仕事に関係があるかないか」ということです。ただ、個人事業主になりたてのころは迷いがあるかもしれません。
そこでひとつの目安になるのが、確定申告で使う「所得税青色申告決算書」です。ここに記入する欄があるということは、当然ながら経費として認められるということ。決算書は国税庁のホームページからダウンロードできます。
・所得税青色申告決算書(PDF)
これを見ると、旅費交通費や接待交際費、消耗品費などのほか、外注工賃や水道光熱費なども必要経費として計上できることがわかります。
個別の項目については、以前にレバテックで取り上げたことがありますので、以下の記事をチェックしてみてください。
「これも経費に?個人事業主(フリーランス)が知っておきたい経費になるもの・ならないもの」
家賃や水道光熱費を経費とする上で欠かせない「家事按分」
先ほど、水道光熱費も経費として認められるという話が出てきましたが、電気代や水道代がすべて対象になるわけではありません。ここで知っておきたいのが「家事按分」という考え方です。上記のレバテック記事でも少しだけ触れているのですが、あらためてここで触れておきましょう。
個人事業主が自宅で仕事をするケースでは、家賃や光熱費などが仕事とプライベートで混在しています。このとき、事業に使用したぶんを家計から区分することを按分といいます。
按分を水道光熱費全体の何%くらいにするかは決まりがあるわけではなく、判断は各自に委ねられています。家賃なら広さで仕事部屋の割合を適用したり、電気料金なら仕事をしている時間で分けたりするといいでしょう。
難しいのは、ガスや水道です。エンジニアの場合、ガスも水道も事業そのものには関係ないので、按分するのは諦めるか、するとしても少なめにしておくほうが無難です。
いずれにせよ、家事按分で欲張ると、いざ税務署から調査された場合に不利になってしまいます。必要経費は多いほうがいいとはいえ、やはり常識の範囲内で判断することをおすすめします
関連記事 : これも経費に?個人事業主(フリーランス)が知っておきたい経費になるもの・ならないもの
領収書・レシートと経費
必要経費と深く関連する要素として、領収書やレシートについても見ておきましょう。
収入から必要経費を引いたものが事業所得になるのですから、正しく確定申告するには、正しく経費を計算する必要があります。そのために必要なのが領収書やレシート。いわば、自分の所得を申告する際の根拠になるものだと位置づけることができます。
そんな領収書やレシートについての注意点やポイントを以下にいくつか挙げておきます。
領収証orレシートどちらがいいの?
まずは、「領収書とレシートはどちらがいいの?」という点からです。近年はレシートでも問題はないという解釈が多くなっているようですが、必要経費の根拠と考えると、やはり領収書をもらえるときにはもらっておくほうが無難だといえます。
その際、宛名書きが「上様」であったり、宛名がない領収証であっても、経費の証明として使えますが、きちんと名前や屋号名が入った領収証の方が好ましいです。
領収証やレシートの保管期間は5or7年間
次に、整理と保管についてです。領収書やレシートは、確定申告時には提出義務がないので、整理がずさんになりがちですが、税務署の調査が入った場合はすみやかに提出する必要があります。白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は7年間の保存義務があるので、年度ごとにまとめておくなど、きちんと整理しておきましょう。
領収証やレシートをもらいにくいケースでは出金伝票という手段も
領収証やレシートは、必要経費を計算する際に必要なものですが、ときには領収証を発行してもらうことが困難な状況もあります。例えば、仕事関係の冠婚葬祭の費用であったり、勉強会やセミナーのあとに催されるラフな懇親会の費用であったり。こういったケースで覚えておきたいのが「出金伝票」です。
出金伝票とは、事業に関連する出費を記録しておくもので、書式の決まりはありませんが、①支払日、②相手の名称、③金額、④支払いの目的や品物などの内容の4つが記載されている必要があります。
出金伝票は、いってみればメモのようなものなので、冠婚葬祭なら案内状、勉強会やセミナーのあとの懇親会なら参加申し込みのメールなど、裏付けになるものとセットで保管するとなおいいでしょう。
高額な領収証には印紙が必要?
領収証について調べていくなかで、「5万円以上(税抜)の領収証には印紙の貼付が必要」といった内容を目にしたことはないでしょうか?こういった記述を見て、「高額の領収証があるけれど、印紙がないから経費には入れられないのか…」と思う方もいるかもしれません。
ですが、「印紙の貼付が必要」なのは領収証を発行する側の話で、領収証を受け取る側としては印紙の有無は関係なく出費の証明として使えますのでご安心を。
関連記事 : 個人事業主の領収書について
控除における節税のポイント
経費と並び、節税に欠かせないもうひとつのポイントが控除です。先述したとおり、事業所得から差し引く費用として「青色申告特別控除」と「所得控除」があります。
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、要件を満たすと最大65万円または10万円の特別控除を受けられる制度です。65万円の特別控除を受けるための条件は、下記のとおりです。
・不動産所得または事業所得を生む事業を営んでいる
・所得にかかる取引を正規の簿記のルールに従って記帳している
・貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し法定申告期限内に提出している
上記をすべて満たしていない青色申告者の場合は、10万円の青色申告特別控除が適用されます。
所得控除
所得控除は各々の事情を考慮して税負担を軽くするためのもの。所得控除には合計14種類のカテゴリがあり、それぞれ控除額、計算方法などが異なります。
【所得控除の種類】
・雑損控除
・小規模企業共済等掛金控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄附金控除
・障害者控除
・寡婦(寡夫)控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除
ここでは、個人事業主にとって魅力のある制度であり、節税効果にも期待できる小規模企業共済金控除を紹介します。
小規模企業共済は、個人事業主の退職金代わりになる共済制度です。掛け金は月額1000円から7万円の間で自由に設定でき、あとからの変更も可能です。所得控除のひとつである「小規模企業共済等掛金控除」の適用を受けることで、この掛け金が全額控除されるため、将来に向けた積み立てをしつつ、節税効果も期待できるというわけです。
小規模企業共済等掛金控除以外にも、個人事業主が利用できる主な控除については、別記事でも取り上げていますので、ぜひ参考にしてみてください。
「最大◯◯円の控除が受けられる!フリーランス(個人事業主)のための、お得で賢い節税対策入門」
関連記事 : フリーランス(個人事業主)のための賢い節税対策入門
税金で困ったとき
今回の記事は、納税の全体像が俯瞰でわかるよう、なるべく基本的なことに絞ってみましたが、細かいところを見ていけばきりがありませんし、青色申告を選択するなら帳簿の書き方を覚えるなど、知識をつける必要も出てくるでしょう。
そんなときに便利なサービスを以下にまとめました。
相談先 | 概要 |
---|---|
税務署/電話相談センター | 全国の所轄税務署が確定申告に関する相談や問い合わせに対応 |
税理士会/無料相談会 | 全国の税理士会で、税理士による無料相談会を実施。URLは日本税理士連合会と連携した日本税務研究センターのもの。Webサイトから予約も可 |
全国青色申告会総連合 | 小規模事業者で構成される全国納税団体。会費はかかるが、入会するとさまざまなサポートが受けられる(会費は地域による) |
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