個人事業主と法人、どちらがおすすめ?12の違いをもとに解説 | レバテックフリーランス
個人事業主と法人、どちらがおすすめ?12の違いをもとに解説
「そろそろ法人化すべきかどうか迷っている…」とお悩みの個人事業主の方も多いのではないでしょうか。個人事業と法人には多くの違いがあり、メリット・デメリットも異なります。
この記事では個人事業主と法人の12の違いを紹介します。個人事業主が法人化を検討したほうが良いケースも紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。
個人事業主と法人はどちらがおすすめ?
個人事業主と法人のどちらがおすすめかは、一概にいえません。両者は開業または法人設立の手続きから税金面、責任範囲、事業継承の手続きに至るまでさまざまな点で違いがあり、事業の現状や今後の展望によって適した形態は異なります。
後述する個人事業主と法人の違いおよび、それぞれのメリット・デメリットを参考に、適した形態を選びましょう。
個人事業主と法人の12の違い
個人事業主と法人は、さまざまな点で違いがあります。
ここでは個人事業主と法人の12の違いを紹介します。

1.開業手続き
個人事業主と法人では、事業を始める際の手続きが異なります。
個人事業主であれば、開業届を税務署に提出するだけで問題ありません。一方、法人の設立には定款の作成や登記申請など多くの工数がかかります。
下記の記事では、法人を設立する際の手続きおよび必要書類を紹介しています。併せてお読みください。
フリーランスの法人化ガイド!メリットやタイミング・手続きを解説
参考:国税庁|個人事業の開業届出・廃業届出等手続
2.事業を始めるにあたってかかる費用
個人事業主と法人では、事業をスタートする際に必要な費用の額も異なります。
個人事業主の場合、基本的に費用は発生しません。
対して、法人を設立する場合には法定費用がかかります。法人の形態により法定費用は異なり、株式会社の場合は約22万円、合同会社の場合は約10万円が必要です。加えて会社印の作成や社会保険への加入、また資本金も必要になるため費用はさらに膨らみます。
3.税金
税金面でも大きな違いがあります。
個人事業主にかかる税金は、所得税、住民税、消費税、個人事業税です。一方の法人には、法人税、法人住民税、消費税、法人事業税が課せられます。
4.社会保険
社会保険への加入のルールにも、個人事業主と法人で違いがあります。
従業員が5人未満の個人事業を営む場合、社会保険への加入義務は発生しません。しかし、法人の場合は従業員が1名であっても社会保険への加入が義務付けられており、かつ従業員の社会保険料の半額を支払う必要があります。
4.経費計上の範囲
個人事業主と法人とでは経費計上できる項目にも違いがあります。
個人事業主と法人のいずれの場合も、備品購入費や事業所の家賃など事業にかかった費用は経費として計上することができます。
一方、給与については個人事業主の場合、経費計上が認められていません。これは、個人事業主には“給与”という概念がないことによります。個人事業主の場合、売上から経費を引いた事業所得が自身の利益となるのです。
法人であれば給与の経費計上が可能であり、これにより節税効果も得られます。
下記の記事では、個人事業主が計上できる経費を紹介しています。併せてお読みください。
個人事業主が経費に計上できるもの一覧!上限や節税のテクニック
6.社会的信用
社会的信用度という観点では、法人の方が個人事業主より信頼を得やすい傾向にあります。
なぜなら、法人は会社法にもとづき登記がなされているほか、決算書の公開も義務付けられているため、その透明性の高さから信用を得やすいのです。実際、大企業や官公庁は、法人との取引を求める傾向にあります。
7.資金調達の手段
資金調達の選択肢や難易度も、個人事業主と法人とで異なります。
個人事業主であれば、基本的に金融機関からの融資や各種補助金・助成金の活用、あるいはクラウドファンディングが資金調達の選択肢として挙げられます。法人の場合は、上記に加えて、株式ないし社債の発行という手段も利用可能です。
法人のほうが、資金調達の選択肢が広がるうえ、先述の社会的信用度も高いため、個人事業主に比べて資金調達のハードルも低くなる傾向にあります。
8.事業廃止の手続
事業を廃止する際の手続きにかかる工数にも違いがあります。
個人事業主の場合、廃業届を税務署に提出するだけで完了します。一方、従業員を雇用している法人の場合、同様に廃業届の提出のほか、「異動届出書」の提出や決算書類の作成などが義務付けられています。
参考:事業廃止届出手続|国税庁
9.事業承継
事業廃止とは反対に、事業を承継する場合の手続きは個人事業主のほうが複雑になります。
個人事業主が事業承継を行う場合、事業を承継する側が廃業届を、承継される側が開業届をそれぞれ作成の上、税務署に提出しなければなりません。
一方で法人の場合は、廃業届ならびに開業届の提出は不要です。ただし、事業譲渡契約書の作成・締結をはじめとした各種調整が必要になる点には留意しておきましょう。
10.責任範囲
個人事業主と法人を比較した場合、法的に負う責任は個人事業主のほうが大きくなります。
個人事業主は事業経営に際して「無限責任」の対象となり、万が一事業で損失を出した場合、すべての責任を負わなければなりません。一方、法人の場合は「有限責任」となり、出資額の範囲で損失を弁済すれば問題ありません。
11.決算・納税手続き
個人事業主と法人は、納税手続きに関する違いもあります。
個人事業主の場合、毎年2月16日〜3月15日までの間に確定申告を行い所得税額の計算および納付を進めますが、法人の場合は法人決算を行う決まりです。この法人決算は税額の計算のほか、株主への財務状況ならびに経営状態の報告を目的としています。
12.赤字繰越
事業で赤字が生じた場合、その損失を翌年以降に繰越すことで税負担の軽減を図れる「赤字の繰越期間」にも、個人事業主と法人で違いがあります。繰越した赤字は、期間内であればその年の利益と相殺できるため、税負担の軽減に役立ちます。
個人事業主は最大3年間にわたって繰り越せる一方、法人の場合は原則として10年間繰り越すことが可能です。
個人事業主が法人化を検討すべき4つのケース
続いては、個人事業主が法人化を検討したほうが良い4つのケースを紹介します。適した経営形態を選ぶ際の参考にしてみてください。
1.年間売上が1,000万円以上になる場合
年間売上が1,000万円を超えたときは、個人事業主が法人化を検討すべきタイミングの一つです。
年間売り上げが1,000万円を超えると消費税の課税事業者となるため、消費税を納付しなければならなくなりますが、法人化することで2年間の納税猶予期間を得られます。消費税の税額は前々年の課税売上高を基準に算出されますが、法人の設立から2年間はこの基準期間が存在しないため、消費税の納付義務が発生しないのです。
下記の記事では、フリーランスが法人化を検討すべきタイミングについて解説しています。併せてご覧ください。
フリーランスの法人化ガイド|メリットやタイミング、手続き
2.課税所得が800万円~900万円にさしかかった場合
課税所得が800万円~900万円のラインにさしかかった場合も、法人化を検討しましょう。
個人事業主が事業で得た所得に対してかかる所得税には、所得が増えるほど税率も上がる累進課税制度が採用されています。一方、法人が得た所得に課せられる法人税には比例課税方式が採用されており、こちらは税率の上昇幅が少ないのが特徴です。
課税所得が800万円の場合で見ると、個人事業主に課せられる税率は23%である一方、法人税率は15%となります。さらに所得税率は、課税所得が900万円以上になると33%へと跳ね上がります。この所得帯を境に所得税率と法人税率が逆転するため、法人化することにより節税を図れるというわけです。
3.事業拡大を視野に入れている場合
今後の展望として事業の拡大を視野に入れている場合は、法人化するのが得策です。
個人事業主では信用力や資金調達力が低いという理由から、法人と比べるとどうしても事業拡大に限界があります。
一方、法人は登記情報が公開されているという透明性の高さから、社会的信用を得やすいという利点があります。そして、この信用力の高さは、資金調達の際にも有利に働きます。個人事業主よりも信用力の高い法人のほうが融資の審査に通りやすく、また、法人向けの融資やビジネスローンなど資金調達の選択肢を広げることも可能です。
以上の理由から、信用力や資金調達力の面でより優れた法人のほうが、事業を拡大するうえで適しているといえます。
4.従業員を雇用する場合
従業員の雇用を検討しているのであれば、法人化を検討しましょう。
法人は個人事業主と比べて、求職者からの信頼を得やすいため、採用活動をスムーズに進めやすくなります。
今後、継続的な人材採用を視野に入れているのであれば、法人化するのが賢明といえるでしょう。
個人事業主が法人化を急がない方が良いケース
経営状態や目的によっては法人化を急がないほうが良い場合もあります。ここでは法人化をおすすめできないケースを2つ紹介します。
1.売上・利益が安定していない場合
売上や利益が安定していない場合は、法人化を急がずに様子を見るのが賢明でしょう。
法人設立に際しては、資本金の準備をはじめ登記や各種保険への加入時にコストが発生します。また、法人化したのちは法人税が課されますが、この法人税は赤字の場合でも支払いが免除されません。最低でも7万円の納税が義務付けられており、赤字決算下では特に経営に負担をかけかねないのです。
このような理由から、事業が安定しないうちから法人化を急ぐのは避けましょう。
2.事業拡大を視野に入れていない場合
将来的な事業拡大を視野に入れていないのであれば、法人化しないほうが良いかもしれません。
先述の通り、法人化に際しては各種費用が発生するほか、事業所得の額面によっては支払う税金の負担が経営に重くのしかかることもあります。法人化をすれば資金調達力や信用力の向上などのリターンを期待できますが、それらの優先度が低い場合は個人事業主として経営を継続するのが得策といえるでしょう。
個人事業主から法人化するメリット
個人事業主から法人へと事業形態を変更すると、下記のようなメリットがもたらされます。
- 社会的信用を得やすくなる
- 資金を調達しやすくなる
- 事業所得の額によっては節税を図れる
- 経費計上の幅が広がる
- 倒産時に「有限責任」が適用される
- 人材を採用しやすくなる
法人化により社会的信用力や資金調達力を強化できるため、事業を拡大を視野に入れている場合は大きなメリットがあります。また事業所得が800万円~900万円を超えてくると法人化による節税効果が大きくなります。
個人事業主から法人化することのデメリット
多くのメリットを持つ法人化ですが、デメリットとなるケースもあります。詳しくは下記をご覧ください。
- 設立に費用がかかる
- 赤字でも法人税を支払わなければならない
- 社会保険料の負担が発生する
- 事務処理の工数が増加する
利益が出ていない場合や事業拡大を予定していない場合などでは法人化によるデメリットが、メリットを上回ってしまうケースもあります。
個人事業主と法人それぞれのメリット・デメリットに関して詳しくは以下をご覧ください。
個人事業主のメリットは?会社員・法人との比較や開業に必要な提出書類
法人化(法人成り)のメリット・デメリットをFPが解説
※本記事は2025年10月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
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