個人事業主と法人の違いやどっちが得か、メリット・デメリットを解説 | レバテックフリーランス
個人事業主と法人の違いやどっちが得か、メリット・デメリットを解説
- 個人事業主と法人どちらか得か
- 個人事業主・法人の選び方
- 法人化をおすすめする人・しない人
「個人事業主と法人のどちらが得か」「何をポイントに選ぶべきか」悩む人は多くいます。そこで、個人事業主・法人の選び方や、法人をおすすめする人・しない人を解説します。
手続きや費用、税金などのメリット・デメリットを把握して、自分にはどちらがあっているか参考にしてください。
また、全5回に分けてフリーランスの法人化について知るべきことを解説しています。あわせてご覧ください。
第1回 : 法人化・法人成りとは?個人事業主から法人になる意味は
第2回 : 法人化(法人成り)のメリット・デメリットをFPが解説
第3回 : 法人化する目安・タイミングは?法人化・法人成りの費用までFPが解説
第4回 : 法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは?
第5回 : 個人成りとは?法人化の前に知っておきたい注意点
レバテックフリーランスはITエンジニア専門の
フリーランスエージェントですまずは相談してみる
目次
個人事業主・法人とは?特徴を簡単に解説
まず個人事業主・法人の特徴を解説します。あいまいに理解していると、間違った選択につながるからです。個人事業主か法人か選ぶ前に、定義や特徴をきちんと知っておきましょう。
個人事業主の定義と特徴
個人事業主とは、個人で設立した事業で、独立して仕事を行い事業所得を得ている人を指します。飲食店の経営者、税理士、エンジニアなど職種はさまざまです。
開業の手続きは比較的簡単で、費用もかかりません。事業に関わる費用のみで開業できます。一方で、節税効果に制限があったり、生命保険料を経費にできないデメリットもあります。
個人事業主について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
個人事業主とは?法人との違いやメリット・デメリット、確定申告を解説
法人の定義と特徴
法人とは、法律上で人と同じ義務や権利を認められた組織を指します。主な法人の種類は以下のとおりです。
- 株式会社
- 合同会社
- 社団法人
- 学校法人
どの法人にも規定の法律が存在します。また、設立費用や資本金が必要で、個人事業主よりもハードルは高いです。一方で、法人税は税率の上がり方が緩やかで、社会的信用度が高いといったメリットもあります。
個人事業主と法人の違い
個人事業主・法人の手続きや費用、税金、経費などの違いを解説します。どちらで事業をするか、決める要素にもなります。
それぞれの違いを下の表にまとめたので参考にしてください。
会社員 | 法人 | |
---|---|---|
開業/設立の手続き | 開業届を提出/ 青色申告を希望する人は「青色申告承認申請書」も提出 |
登記手続きの書類、会社印の準備が必要 |
開業/設立の費用 | 0円 | 資本金(1円から設立できるが、多いほど信頼度が上がる)/ 法人費用(株式会社:約25万円~、合同会社:約10万円~) |
税金 | 所得税/個人住民税/ 消費税/個人事業税 |
法人税/法人住民税/ 法人事業税/消費税など |
経費 | 事業に行う上で必要な費用全て/ 保険、税金、個人事業主本人への福利厚生は経費にできない |
事業に行う上で必要な費用全て/ 自分への給料、家族従業員の給料、生命保険、自宅を社宅として扱えるなど経費にできる範囲が広がる |
生命保険 | 所得控除 | 保険契約者が法人、受取人が法人または役員などの遺族かつ掛け捨ての場合は原則全額経費にできる |
社会保険(従業員分も含む) | 所得控除 | 会社負担あり |
会計/経理 | 個人の確定申告 | 法人決算書、申告 (税理士が必要な場合が多い) |
赤字の繰り越し | 3年 (青色申告の場合) |
10年 |
社会的信用度 | 法人に比べて低い | 個人事業主に比べて高い/ 新規の契約や融資にも有利 |
事業の廃止 | 届け出を出す | 解散登記、公告が必要 (数万円かかる) |
各項目の詳細を解説していきます。
開業/設立の手続きと費用
開業・設立で個人事業主と法人の大きな違いは、手続きと費用です。個人事業主は事業に関わる費用のみで開業できます。法人は、事業にかかわる費用に加えて、法人費用や資本金などが必要になります。
個人事業主になるためには、税務署で開業届を提出します。開業届提出に費用はかかりません。特別控除などの特典を受けたい場合は、青色申告承認申請書も同時に提出しましょう。
青色申告について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
青色申告とは?やり方や白色申告との違いを解説
法人は、登記手続きに必要な書類と会社印を用意します。法人費用や資本金も必要になります。法人の種類によって、手続き方法や登記完了までの時間は異なります。
経費にできる費用の範囲
個人事業主に比べ、法人は経費にできる範囲が広いです。たとえば個人事業主は自分への報酬を経費にできませんが、法人は経営者本人の給与や退職金を経費にできます。
賃貸の自宅も、法人は賃貸契約を会社名義とし、社宅として社長に貸せます。個人事業主の自宅兼仕事場の賃貸は、業務に必要な部分のみを面積比率で算出して経費にします。
税金の種類
納税する種類も異なり、個人事業主には所得税、法人には法人税がかかります。所得税、法人税には、以下の特徴があります。
税金の種類 | 特徴 |
---|---|
所得税 | 所得金額が増えるほど税率が高まり、 控除も少なくなる |
法人税(法人) | 所得税に比べて税率が緩やかで、 最大税率は23.4% |
また、個人事業主は赤字の場合、所得税や住民税の負担はありません。一方で、法人は赤字でも、法人住民税が発生します。
社会的信用度
法人は個人事業主より、社会的信用度が高いといえます。法人は会社法などの法律に基づいて、厳格に運営されるからです。
社会的信用度が高いと、銀行からの融資を受けられたり、取引先と新規契約しやすいです。
どちらが得?それぞれのメリット・デメリット
以下は、個人事業主と法人のメリット・デメリットです。どちらか迷ったときは、それぞれ比較しましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
個人事業主 | 簡単に開業、廃業できる/税金関連の手続きが簡単/ 素早く意思決定できる/所得額によって税金が少なくなる |
社会的な信用度が低い/ 赤字の繰越可能年数が3年まで |
法人 | 社会的な信用が得やすい/社会保険に入れる/決算日が自由に決められる/ 赤字繰越が最大で10年/節税面で有利/経費にできる範囲が多い |
会社設立にコストがかかる/ 赤字でも税金を払わなければいけない/事務負担が大きい |
デメリットに関しては、次の「後悔しないための注意点」で詳しく解説します。
個人事業主と法人それぞれのメリット・デメリットに関して詳しくは以下をご覧ください。
個人事業主のメリット・デメリット|法人化や会社員との比較
法人化(法人成り)のメリット・デメリットをFPが解説
後悔しないための注意点
個人事業主・法人のデメリットに関して、注意点を詳しく解説します。デメリットは、後悔するポイントにもなるからです。後悔しないために、それぞれの注意点を知っておきましょう。
個人事業主の注意点
個人事業主は、社会的信用度の低さや赤字繰越可能年数が3年という点に注意すべきです。個人事業主の注意点については、以下の記事もあわせてご確認ください。
個人事業主のメリット・デメリット|法人化や会社員との比較
社会的な信用度が低い
個人事業主は受注する案件次第で収入が増減するため、社会的な信用度が低いです。以下は、社会的信用度が低いために受ける影響です。
- 金融機関などから融資を受けるのが難しい
- 従業員を雇用しにくい
- クレジットカードやローン審査に不利
経験や実績を証明できるようになれば、このデメリットは解消されます。納期を厳守して、丁寧な対応を心掛けるなど、クライアントからの信頼も得られるように努力すべきです。
また、クレジットカードや住宅ローンの審査は、会社員のうちに済ませるのが無難です。
赤字の繰越可能年数が3年まで
個人事業主(青色申告の場合)は、赤字を3年までしか繰越せません。赤字の繰越とは、赤字を出した翌年以降に黒字化して所得が発生した際に、その額から赤字分を差し引く仕組みです。
たとえば、起業1年目に100万円の損失を出して、翌年に150万円の利益が出たとします。翌年は利益の150万円から損失分の100万円を引いた50万円にのみ課税され、赤字分を節税できます。
法人の注意点
法人を設立するときの注意点を解説します。後悔しないために、コストや税金について、確認しておきましょう。
フリーランスの法人化について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
フリーランスの法人化ガイド|メリットやタイミング、手続き
会社設立のコストがかかる
法人を設立するには定款の作成・登記申請などが必要です。また、設立にあたっては以下の費用がかかります。
- 定款認証手数料
- 登記簿謄本
- 登録免許税
資本金の額や取得方法、株式会社か合同会社かによっても費用は異なります。法人を選ぶ場合は、会社設立の費用を細かく把握したうえで手続きを行いましょう。
赤字でも税金を払わなければならない
法人住民税の均等割は、赤字でも必ず納付しなければなりません。会社があるだけで自動的に課税されるのが、法人住民税の均等割の特徴です。
規模が小さい法人でも最低7万円ほどかかるため、負担に感じる人もいるでしょう。
事務負担が大きい
法人は個人事業主に比べて、事務負担が増大します。厳しいルールにそった会計処理を、行わなければいけないからです。
社会保険や労働保険の手続きのほか、企業によっては株主総会の手続きも必要です。費用はかかりますが、専門家に相談したり委託も検討すべきです。詳しくは後述の「法人になるときの相談・委託先」をご覧ください。
個人事業主・法人のどちらを選ぶかのポイント
個人事業主と法人のどちらを選ぶかは、取引先の契約条件と開業資金を調達する方法の2点を考えると決めやすくなります。それぞれ詳しく解説していきます。
取引先の契約条件で決める
個人事業主とは取引しないクライアントであれば、当然ながら法人設立が必須です。今後取引したいと考えているクライアントがいるなら、事前に条件を確認するとよいでしょう。
開業資金を調達する方法で決める
開業資金の調達方法に応じて、個人事業主か法人かを決めるのも手です。金融機関の融資を受ける場合は、個人事業主でも可能かどうか確認する必要があります。
他者からの資金提供を受けるなら、出資が受けられる法人で事業を起こす必要があります。
従業員を雇用するかで決める
従業員を雇用するかどうかも、個人事業主か法人を選ぶ判断材料になります。給与を経費にすることを念頭に、利益が高くなる方を選びましょう。
個人事業主の場合は、青色申告により家族への給与は事業専従者控除として経費にできます。複数の従業員を雇用する場合は、法人を設立して給与を経費として計上したほうが利益が高くなります。
法人をおすすめする人・しない人
法人をおすすめする人・しない人を解説します。個人事業主の人は今後のビジネスプランや現在の利益によって、法人にしたほうがいい場合もあります。法人にするかどうかの判断材料にしてください。
法人をおすすめする人
以下は、法人をおすすめする人の特徴です。
- 法人向け事業を主軸にしたい
- 大規模な資金調達を目指す
- 優秀な従業員を雇いたい
- 年間利益が1,000万円を超えている
- 年間利益が800万円を超えそう
すでに個人事業主で年間利益が800万円を超えそうな人は、法人を検討してみましょう。各特徴の詳細を解説します。
法人向け事業を主軸にしたい
法人向けのビジネス、BtoB、BtoBtoCの場合は、法人設立がおすすめです。法人向けのビジネスの場合、自分も法人を設立して、信頼度を高める必要があるからです。
飲食店や美容サロンなど、一般消費者向けのビジネスしか行わない場合は、個人事業主でも問題ない場合が多いです。個人事業主か法人かで、店やサービスを選ぶ一般消費者はほとんどいないからです。
大規模な資金調達を目指す
大規模な資金調達をしてビジネスを展開したい人は、法人がおすすめです。金融機関から融資を受けるには、法人を設立して信頼度を高める必要があるからです。
法人で株式会社を設立すると、当然ながら株式を発行できます。金融機関やベンチャーキャピタルなどから出資を受けやすくなります。
優秀な従業員を雇いたい
優秀な従業員を雇って事業を拡大させたい人は、法人設立がおすすめです。個人事業主に比べ、法人は信頼度が高く人材を集めやすいからです。
個人事業主は、転職や求人サイトに求人募集を載せられない場合がほとんどです。優秀な従業員を雇いたい人は、法人を選ぶ必要があるでしょう。
年間利益が1,000万円を超えている
個人事業主で年間利益が1,000万円を超えている人は、法人をおすすめします。消費税が免除される場合があるからです。
個人事業主・法人は1,000万円を超えた2年後から消費税を納める義務が発生します。しかし、消費税が発生するタイミングで法人化すると、さらに2年間は消費税が免除されます(資本金1,000万円未満の場合)。
年間利益が1,000万円を超えたら、免税されるメリットを考慮して、法人設立を検討してみましょう。
年間利益が800万円を超えそう
年間利益が800万円を超える場合も、法人設立を検討するタイミングです。個人事業主のままでは、所得税率が高くなるからです。
個人事業主が払う所得税は、所得が900万円以上になると33%になります。一方で、法人税率は最大でも23.4%です。
所得税の負担を考え、年間利益が800万円を超えるタイミングで法人設立を検討してみましょう。
法人をおすすめしない人
以下は、法人をおすすめしない人の特徴です。
- 事業拡大の予定がない
- 利益が伸びていない
ビジネスプランや利益を考慮して、当てはまる場合は無理に法人を設立する必要はありません。
事業拡大の予定がない
事業拡大の予定がなく、自分の手の届く範囲で小規模に事業を行っていきたい人は、法人化する必要はありません。
特に飲食店や美容院、コンサルタントなど、一般消費者向けのビジネスの場合は、個人事業主のままでも特に問題ありません。法人化しなければと、あせる必要はないでしょう。
利益が伸びていない
利益が伸びていない場合、法人化をおすすめしません。法人設立には、初期費用が発生して負担になるからです。
法人は個人事業主に比べて、必要な手続きも多く、社会保険への加入など負担が増えます。利益が増えてから法人化を検討すべきです。
法人になるときの相談・委託先
法人の設立は、手続きの委託を検討しましょう。必要な手続きが多く、本業に集中できなくなってしまう場合があるからです。
会社設立の相談・委託先や資金繰りの相談を解説するので、参考にしてみてください。なお、法人化の手続きに関して、詳しくは以下の記事をご覧ください。
法人化・法人成りの手続きの流れを解説!会社設立後にやることとは?
会社設立の相談・委託先
下の表は、会社設立の相談・委託ができる先です。
相談/委託先会社員 | 対応してくれる内容 | 相談料 |
---|---|---|
法務局 | 登記手続きの相談(書類作成の代行はしない) | 無料 |
公証役場 | 定款認証の相談(書類作成の代行はしない) | 無料 |
商工会議所/商工会 | 起業支援/経営相談 | 無料 |
司法書士 | 設立書類作成/登記申請代行 | 有料 |
行政書士 | 設立書類作成/許認可の手続き代行 | 有料 |
弁護士 | 法律相談/登記申請代行が可能な場合がある | 有料 |
税理士 | 税務関係の手続き代行/ 融資関係書類作成/節税の相談 |
有料 |
社会保険労務士 | 保険、労働関係手続き代行 | 有料 |
会社設立の登記手続きができるのは、基本的に司法書士だけです。司法書士以外は、司法書士と提携し、すべてをまとめてやってもらう仕組みになっています。
代行してもらえる手続きや内容を確認して、適切な委託先を選びましょう。
資金繰りの相談先
開業資金などの資金繰りは、金融機関のほかに、日本政策金融公庫でも相談できます。事業への融資が必要な人は、一度問い合わせをしてみましょう。
また、レバテックフリーランスでは案件参画者向けに、ファイナンシャルプランナーへの無料相談サービスを提供しています。相談は無料なのでご検討ください。
個人事業主・法人のどちらが良いかに関するよくある質問
個人事業主・法人に関するよくある質問をまとめました。それぞれの違いや、法人化のタイミングを解説します。個人事業主か法人か迷っている人は、参考にしてみてください。
Q. 個人事業主と法人は何が違いますか?
個人事業主と法人は、手続きや費用、税金の種類、経費の範囲などに違いがあります。個人事業主は税務署に開業届を提出すれば手続きは完了します。法人を設立するには、登記手続きの書類・会社印の準備が必要になり、法人費用や資本金も必要になります。
Q. 個人事業主と法人はどちらが得ですか?
年間利益や事業規模、今後のビジネスプランによって損か得か分かれます。たとえば個人事業主で年間利益が800万円を超えたときは、法人化した方が税金の負担が減ります。一方、利益が伸びていない、事業拡大の予定がないなら法人になる必要はないといえます。
Q. 法人化したほうがいい人とタイミングは?
以下の項目にあてはまる場合は、法人化を検討してみましょう。
- 法人向けの事業を主軸にしている
- 大規模な資金調達を目指す
- 優秀な従業員を雇いたい
- 年間利益が1,000万円を超えている
- 年間利益が800万円を超えそう
※本記事は2023年9月時点の情報を基に執筆しております。
最後に
簡単4ステップ!スキルや経験年数をポチポチ選ぶだけで、あなたのフリーランスとしての単価相場を算出します!
※相場算出に個人情報の取得はおこないません。
役に立った/参考になったと思ったら、シェアをお願いします。