業務委託の税金を解説!計算方法や確定申告・源泉徴収について | レバテックフリーランス
業務委託の税金を解説!計算方法や確定申告・源泉徴収について
業務委託(※)で一定の金額を超える報酬を受け取っているフリーランスは、所得税、住民税、個人事業税、消費税などを払う必要があります。自分が払わないといけない税金はいくらなのかを知るために、それぞれの税金の仕組みや引かれる金額の計算方法を学んでおきましょう。
※後述のとおり業務委託契約は法律で明確に定義された契約形態ではありませんが、本記事では通用上の一般的な解釈にもとづき、業務委託契約を(準)委任契約、請負契約のいずれかに該当する契約として扱います。
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この記事の監修
あおば会計事務所 共同代表
税理士 小池 康晴(こいけ やすはる)氏
SESや受託開発を行うIT関連の企業やフリーランス(個人事業主)の顧客を多く持ち、それぞれのニーズを重視した税務アドバイスとコンサルティングを行う。IT業界の税務や新しいサービスの動向などにも精通している。中小企業庁による認定経営革新等支援機関の認定済み。
小池康晴氏プロフィールページ
目次
業務委託契約とは
業務委託に関わる税金
業務委託の税金はいくら引かれる?
業務委託と確定申告
業務委託の報酬は源泉徴収される?
業務委託の税金を払わないとどうなる?
業務委託で働くときの税金対策
業務委託契約とは
業務委託契約は、企業や個人などが特定の業務を第三者に委託するときに、どのような業務を委託するか、それに対する報酬はいくらか、成果物がある場合納品期限はいつまでかといった内容を取り決めて交わす契約です。
業務委託契約には法律上の定義はありませんが、一般的に業務委託契約の法的性質は「委任契約」と「請負契約」のいずれかに当てはまるケースがほとんどです。
委任契約とは
委任契約は、委託された仕事の遂行に対して報酬が支払われる契約です。委託される業務が法律行為でない場合は「準委任契約」に該当するため、フリーランスエンジニアやフリーライターなどが委任を受けるときには準委任契約を締結します。
請負契約とは
請負契約は、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約です。成果物が生じる業務であれば、原則として成果物の納品・検収が完了してから報酬を受け取れることになります。
雇用契約(アルバイト・パート)との違い
雇用契約とは、労働者が使用者に対して業務を行うことを約束し、使用者は業務の対価として労働者に報酬を支払うことを約束する契約です。雇われる側の雇用形態には正社員、契約社員、アルバイト・パートなどさまざまな形がありますが、どのような雇用形態でも労働基準法や労働契約法、最低賃金法などの労働法による保護を受けて業務に従事するため、定められた以上の時間働いたり、最低賃金を下回る賃金で働いたりすることはできません。
委任契約や請負契約では、業務を委託する側と受託する側が使用者・労働者の関係になることはなく、原則として対等な立場でビジネスを行います。そのため、受託者が労働法による保護を受けることはありません。また、業務を委託する側が受託する側に対して、業務の遂行に関する細かな指示を出してはならないとされています。
業務委託契約については「 業務委託契約とは|委任契約と請負契約の違いや契約書、税金について」もご確認ください。
業務委託に関わる税金
業務委託の報酬に関連する税金としては、主に以下の4つが挙げられます。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
それぞれについて解説していきます。
所得税
会社員の場合、所得税の計算は会社側が行いますが、業務委託契約者は自分で計算し、税務署へ申告する必要があります。所得税法が関連する所得の種類は10種類に分けられ、会社員には「給与所得」、業務委託契約者には「事業所得」が関係します。
住民税
地方税の一種です。確定申告の内容と各市区町村が定める規定から算出された金額を納付します。該当地方の行政機関から届く納付通知書の金額に従って納付するので、税額の計算を自ら行う必要はありません。
個人事業税
お住まいの地域で事業を行うために納める地方税です。住民税と同様、確定申告により納税額が指定されるので、こちらも自分で税額計算を行う必要のない税金です。
消費税
商品やサービスの購入・販売の際に関係する税金です。個人事業主の場合、2年前(または1年前の1月1日から6月30日までの期間)の年間売上高が1000万円を超えると納税義務が生まれます。ただし、従業員を雇っていない個人事業主の場合、1年前の上半期がたとえ売上高が1000万円を超えていても給与が0であれば、納税義務は免除されます。
業務委託の税金はいくら引かれる?
業務委託による収入が一定以上あれば、税金を納める必要があります。ぞれぞれの税金について、計算方法を交えて具体例を出し、いくらの税金が発生するのかを見てみましょう。
所得税の計算方法
所得税は、年間の所得にかかる税金です。所得とは収入から経費などが引かれた金額のことです。
業務委託で収入を得ていた個人事業主・フリーランスの所得税の計算方法は、以下の通りです。
- 所得金額 = 収入-必要経費-青色申告特別控除-所得控除
- 所得税額 = 所得金額×所得税率-税額控除
青色申告特別控除は、青色申告で確定申告を行うと受けられます。一定の条件を満たすと所得金額から最高65万円が控除されます。
参照 : 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
たとえば収入500万円、経費100万円、青色申告特別控除65万円、所得控除は基礎控除のみの48万円として所得税を計算してみましょう。所得は500万円-100万円-65万円-48万円=287万円です。
これを国税庁のWebサイトにある「所得税の速算表」(下記)に当てはめて所得税の金額を計算します。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超え~695万円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超~900万円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超~1,800万円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超 | 40% | 279万6,000円 |
参照 : 国税庁「No.2260 所得税の税率」
上記の表をもとに計算すると、所得税の金額は287万円×10%-9万7,500円で18万9,500円になります。
住民税の計算方法
住民税は、所得に税率をかけて算出する所得割と、一律の金額である均等割を合算した金額を納税します。
所得割の標準税率は市区町村民税率6%、都道府県民税率4%の合計10%、均等割の標準税額(2014年度から2023年度まで)は市区町村民税額3,500円、都道府県民税額1,500円の合計5,000円です。
住民税の計算方法は、以下の通りです。
- 所得割額=課税所得金額×住民税率(市区町村民税率+都道府県民税率)-税額控除
- 均等割額=市区町村民税額+都道府県民税額
- 住民税額 = 所得割額+均等割額
所得税の計算方法で紹介した例と同じ、収入500万円、経費100万円、青色申告特別控除65万円、所得控除は基礎控除のみの43万円(2021年度から)とした場合の住民税を計算してみましょう。所得割の税率、均等割の税額はいずれも標準税率・標準税額で、税額控除は省略するものとします。
課税所得金額は500万円-100万円-65万円-43万円=292万円になります。
住民税は、292万円×10%+5,000円=29万7,000円です。
住民税の納税方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2種類がありますが、業務委託の報酬を受け取っているだけで給与所得がない場合は「普通徴収」で納税することになります。確定申告をしていれば自治体から通知書が送られてくるので、通知書に従ってコンビニエンスストアや銀行の窓口などで支払いをします。
個人事業税の計算方法
業務委託で一定以上の報酬を受け取っている場合、営んでいる事業の種類によっては個人事業税が課税されます。課税対象となるのは70種類の法定業種です。たとえばITエンジニアは、請負契約で報酬を受け取っていた場合は業種が「請負業」にあたると見なされ、個人事業税の課税対象となるケースがありますが、準委任契約の報酬に関しては法定業種に該当するものがないため原則非課税になると考えられます。
法定業種は大きく3つに区分され、飲食店業や印刷業、請負業などの第1種事業は税率5%で、畜産業や水産業などの第2種事業は税率4%、デザイン業や士業などの第3種業種は税率5%(一部の業種は税率3%)と業種により税率が違います。
個人事業税の計算では、青色申告特別控除の適用がないこと、年間一律290万円の事業主控除があることがポイントになります。具体的な計算方法は下記の通りです。
- 個人事業税額=(所得金額+青色申告特別控除-各種控除)×個人事業税率
こちらも所得税・住民税の計算方法で紹介した例と同じく、収入500万円、経費100万円で、各種控除は事業主控除のみ、業種は請負業とすると、簡易的な計算式は(500万円-100万円-290万円)×5%=5万5,000円になります。青色申告特別控除は適用されないため、収入から引かずに計算します。
確定申告をすると、基本的には税務署が個人事業税を算出して8月に納税通知書を送付します。原則として納付は8月と11月の2回に分けられますが、税額が1万円以下の場合は8月の1回のみです。
消費税の計算方法
従業員を雇わず業務委託で収入を得ているフリーランスの場合、消費税は事業を開始して3年目以降から課税される可能性がある税金です。基準期間(課税期間の前々年)に課税売上高が1,000万円を超えた場合に課税事業者となります。逆にいえば、2年前の年間課税売上高が1,000万円を超えない限りは消費税を納める義務は生じません。
通常の消費税の計算方法である本則課税のほかに、年間の課税売上高が5,000万円以下の場合には事前に手続きすると簡易課税での計算が可能です。
参照 : 国税庁「消費税のしくみ」
本則課税、簡易課税の計算方法は次のようになります。
本則課税
本則課税の計算方法は下記の通りです。
- 消費税額=課税売上高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)-課税仕入高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)
課税売上高が500万円、課税仕入高が300万円の場合、税率が標準税率であるとすると、納付する消費税額は500万円×10%-300万円×10%=20万円です。
簡易課税
簡易課税の計算方法は下記の通りです。
- 消費税額=課税売上高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)-課税仕入高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)×みなし仕入率
みなし仕入率は、6種類の事業区分ごとに異なります。たとえばITエンジニアなら、基本的に第5種事業にあたる「サービス業」に区分され、みなし仕入率は50%となります。課税売上高が500万円、税率が標準税率の場合、納付する消費税額は500万円×10%-500万円×10%×50%=25万円です。
フリーランスの税金計算については「 フリーランスの税金計算|所得税・住民税・個人事業税・消費税」もご確認ください。
業務委託と確定申告
業務委託の場合は、収入から税金を計算し、自分で申告・納税を行う必要があります。赤字のときは確定申告の義務はありませんが、過去の赤字を繰り越せるため、赤字の場合でも行うこともあります。
また、故意でなくても申告・納付が遅れた場合はペナルティがありますので、確定申告は必ず期日を守って余裕を持って行いましょう。
青色申告と白色申告の違い
実際に確定申告を行う場合、「白色申告」と「青色申告」の2種類から選択します。それぞれの違いを把握し、方針に適したほうを選びましょう。
青色申告
まず、青色申告を行うには、税務署に青色申告承認申請書の提出と承認が必要です。青色申告は、帳簿の付け方や提出方法によって、控除額が10万円、55万円、65万円に分かれます。複式簿記で帳簿付けを行い、期日までにe-Taxを使用して提出することで65万円の控除が可能となり、事業の儲けの中から特別控除が適用されます。
さらに、赤字を3年間繰り越すことができる「純損失の繰越控除」や、事業に関わっている家族への給与を全て経費として計上できる「青色専従者給与」もメリットとして挙げられます。
そのほか、原則として10万円以上の備品は一度に経費にできず、毎年分割して経費にしていくところを、青色申告ならば30万円未満の備品を一度に経費にできる(合計300万円以内)など、節税メリットは数多く存在します。
参照 : 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
白色申告
青色申告の申請をしていない方は、白色申告を行うことになります。比較的簡単に行えるのが特長で、簿記や計算に自信がない方は白色申告をしているケースもあります。ただし、白色申告でも複式簿記での帳簿付けがいらないだけで、帳簿付けと帳簿等の保存は必要なため、それなりに手間がかかる点は把握しておきましょう。また、処理が簡単である一方で、特別控除などはありません。
レバテックフリーランスでは、個人事業主向けの無料相談会などを行い、税金や経費の相談にも対応しております。無料の税理士紹介もしておりますので、初めてフリーランスになる際にはぜひお気軽にご相談ください。
青色申告・白色申告の違いを含め、業務委託で得た収入の確定申告については以下の記事で解説しています。
業務委託契約者は確定申告が必要?|青色・白色の違いや書き方、提出方法を解説
業務委託の報酬は源泉徴収される?
業務委託の報酬は、源泉徴収の対象となる場合があります。個人で業務委託の報酬を受けている場合、源泉徴収されるのは以下のようなケースです。
- 原稿料や講演料など(1人に対して1回に支払う額が5万円以下の懸賞応募作品等の入選者への賞金などを除く)
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などに支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロスポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬
- 芸能人のメディア出演などに対する報酬や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
- 旅館、ホテルなどで行われる宴会で接客を行う個人に支払う報酬
- バー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬
- 広告宣伝のための賞金
- 馬主に支払う競馬の賞金
参照 : 国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
たとえば、原稿料を受け取ったときの源泉徴収で引かれる金額は、報酬が100万円以下であれば、報酬の金額に10.21%をかけて計算します。報酬の金額が10万円ならば、源泉徴収金額は10万円×10.21%=1万210円です。
参照 : 国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」
源泉徴収票の詳細については「源泉徴収票(支払調書)は発行義務がない?フリーランスが知っておきたい源泉徴収の仕組み」もご確認ください。
業務委託の税金を払わないとどうなる?
確定申告や納付の期限は、各税法で決められています。業務委託で一定以上の報酬を受け取り、税金を納める必要がある場合、税金を払わないと下記のようなペナルティを受ける可能性があります。
- 延滞税
- 無申告加算税・過少申告加算税
- 重加算税
税金を払わないままでいると、法律で定められた納期限の翌日から実際の納付日までの日数に応じて延滞税が課税されます。
参照 : 国税庁「No.9205 延滞税について」
また、納期限後に申告をした場合や、納期限後の申告について修正申告があった場合は、無申告加算税・過少申告加算税が課税されるケースがあります。さらに、本来払わないといけない税金を隠蔽、または偽装したときには重加算税が課税されます。
参照 : 財務省「加算税の概要」
適切に税金を払わないと、悪質な場合は脱税として刑事罰を受ける可能性もあります。払うべき税金はきちんと納めることを心がけましょう。
確定申告については「 遅延すればペナルティも?期間内に正しく確定申告をしよう!」もご確認ください。
業務委託で働くときの税金対策
業務委託で報酬を受け取っている個人事業主やフリーランスができる税金対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 確定申告は青色申告で行う
- 経費を適切に計上する
- 税理士に相談する
それぞれについて解説していきます。
確定申告は青色申告で行う
青色申告には、前述のとおりさまざまな節税メリットがあります。白色申告よりも帳簿付けの手間はかかりますが、税金対策を考えるのであれば確定申告は青色申告で行いましょう。
経費を適切に計上する
所得を計算するときには収入から経費を差し引くため、適切に経費を計上することが節税につながるケースもあります。計上できる経費の種類や、どんなものが経費になるのかなどをきちんと理解しておきましょう。
税理士に相談する
業務委託の税金について、ひとりで計算や手続きをするのが不安な方は、税理士などの専門家に相談してみましょう。自分では気がつかなかった節税のポイントや税金対策の方法が見つかるかもしれません。
節税については「 フリーランス(個人事業主)のための賢い節税対策入門」もご確認ください。
業務委託の税金に関するよくある質問
業務委託の税金に関するよくある質問と、その回答を以下にまとめました。
業務委託の報酬にはどのような税金がかかりますか?
業務委託の報酬に関わってくる税金としては、主に所得税、住民税、個人事業税、消費税があります。所得税は国税、住民税・個人事業税は地方税で、消費税は標準税率10%の場合で国税が7.8%・地方消費税が2.2%、軽減税率8%の場合で国税が6.24%・地方消費税が1.76%です。課税のされ方や計算方法は税金の種類によって異なります。
業務委託の報酬は源泉徴収の対象になりますか?
業務委託の報酬は源泉徴収の対象になるケースもあります。源泉徴収の対象となる範囲は、所得税法第204条に定められています。支払われる報酬の金額が100万円以下であれば、源泉徴収税額は報酬の金額×10.21%、100万円超の場合は(報酬の金額-100万円)×20.42%+10万2100円という計算式で算出できます。
業務委託の税金を払わないとどのようなペナルティがありますか?
各税法で定められている申告や納付の期限を守らず、税金を払わないと、延滞税・無申告加算税・過少申告加算税・重加算税といったペナルティが課される可能性があります。定められた期限までに税金を払わなかったときに課される延滞税は、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する税金が自動的に課されます。
最後に
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