目次
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開業届とは?開業時に必要な書類を解説
開業届とは、新たに事業を開始したことを税務署に届け出る書類の通称を指します。正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」で、提出期限は開業した日から1ヵ月以内です。
「個人事業税の事業開始等申告書」も事業を開始したことを申告する書類です。各都道府県、自治体によって提出先や提出期限に違いがあり、名称や手続き方法も異なります。提出する場合は、事前にお住まいの都道府県名に問い合わせて詳細を確認してくとよいでしょう。
開業届を出すメリット
開業届を出すことにどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、開業届を提出するメリットを詳しく解説します。
青色申告で最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
開業届と「青色申告承認申請書」を提出すれば青色申告ができます。青色申告をすれば、最大65万円の特別控除が受けられるほか、以下のようなメリットを得ることが可能です。
- 生計を同一にする青色事業専従者への給与を全額必要経費にできる
- 赤字を3年間繰り越すことができる
- 少額減価償却資産の特例を受けられる
青色申告承認申請書は、その年の3月15日までに提出すれば青色申告ができます。なお、後々準備する手間を省いたり、出し忘れを防いだりするためにも開業届と一緒に提出しておくのがおすすめです。
参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済とは、廃業や退職などに備え、生活資金を積立できる経営者向けの退職金制度です。個人事業主の場合、加入するためには、確定申告書か開業届の控えの提出が必要になります。
小規模企業共済については、「小規模企業共済のメリット・デメリットとは?」の記事で紹介しているため、メリット・デメリットについて比較したうえで加入を検討してみてください。
屋号名の銀行口座が作れる
屋号は開業届の提出により設定でき、それにより屋号名の口座を作ることが可能になります。屋号名の銀行口座は個人名の銀行口座と比較し、社会的にも信用を得やすいのがメリットといえるでしょう。
事業用のクレジットカードに申し込める
開業届を提出することで事業用クレジットカードの作成に申し込めます。事業用クレジットカードがあれば、経費とプライベートの支出を明確に分けられるので、帳簿付けの手間も減るのがメリットです。
助成金や補助金がもらえる
助成金や補助金のなかには、個人事業主が対象のものがあります。詳しくは、「フリーランスが使える給付金の種類|月30万円稼いで生活を安定させるには?」の記事で紹介しているため、あわせてチェックしてみてください。
職業の証明に使える
開業届を出せば、それが個人事業主としての公的な証明になります。
会社員の場合は、社員証や在職証明書などで自分が仕事に就いていることを証明できますが、個人事業主の場合にはそれがありません。賃貸契約や融資の申込み、保育園や学童などの申込みの際に職業の証明を求められたとき、開業届の控えを使うことができます。
開業届を出すデメリット
開業届を出す前にデメリットも確認しておきましょう。
配偶者の扶養から外れる場合がある
健康保険の扶養に該当するかは加入している組合によって異なります。そのため、開業届を提出している個人事業主の場合、扶養から外れる可能性があるので注意が必要です。配偶者の扶養に入っている場合は事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
失業手当を受給できない
開業届を提出している個人事業主は失業状態にあるといえないため、収入がなくても失業手当を受け取れません。会社員から個人事業主に転身した場合も、支給対象にならないといえます。
副業収入の青色申告を受けるために開業届を出す人もいますが、失業手当を受けられなくなる点には注意しておきましょう。
開業届の書き方を具体例つきで解説
開業届を出すときに使用するのは、「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類です。税務署に備えられているほか、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。個人事業の開業・廃業等届出書の記入方法や注意点を、項目ごとに紹介していきます。
画像:国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」をもとに作成
税務署名の書き方
納税地を管轄する税務署を記入します。基本的に個人事業主の納税地は住所地ですが、特例の適用を受けて居所や事業所を納税地にすることも可能です。納税地を管轄する税務署は国税庁のホームページで調べられます。
参照:国税局・税務署を調べる|国税庁
提出日の書き方
税務署に提出する日を記入します。
納税地の書き方
「住所地」「居所地」「事業所等」のいずれかを選択して、住所と電話番号を記入します。
氏名の書き方
氏名を書き入れ、押印します。個人印のほか屋号印も使用可能です。
生年月日の書き方
元号を選択して生年月日を記入します。
個人番号の書き方
マイナンバーカードや通知カードに記載のあるマイナンバーを記入します。
職業の書き方
自分の職業を一般的に用いられている呼称で記入します。総務省による日本標準職業分類を参考にする方法もあります。ただし、業種によって個人事業税の税率が異なる点には注意が必要です。職業欄は分かりやすい名称で書くことを心がけましょう。
参照:日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定)分類項目名|総務省
屋号の書き方
屋号がある場合は記入します。
届出の区分の書き方
開業を選択します。事業を引き継いだケースでは住所と氏名を記入する必要があります。
所得の種類の書き方
フリーランスが個人事業主になる場合は、基本的に「事業(農業)所得」を選択します。
開業・廃業等日の書き方
個人事業主として事業を開始する日付を記入します。
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無の書き方
「青色申告承認申請書」や消費税に関する「課税事業者選択届出書」を開業届とともに提出する場合は「有」、提出しない場合は「無」を選択します。
給与等の支払いの状況の書き方
家族の専従者や従業員を雇用する予定がある場合のみ記入しましょう。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」「給与支払を開始する年月日」の欄も同様です。
開業届を出すときにあわせて必要なもの
個人事業主が開業届を出すとき、なりすましを防ぐため、書類のほかに下記の本人確認書類が必要になります。
- マイナンバー通知カードのコピー、またはマイナンバーカード裏面のコピー
- 身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)
また、開業届は口座開設の手続きや補助金を申請する際に使うことがあるので、「控え」も必ず保管しておきましょう。
開業届はどこに出す?
開業届の提出方法は3通り。それぞれ詳しく見ていきましょう。
税務署の窓口に直接持っていく
開業届の提出先は、原則として住所地を管轄する税務署です。管轄の税務署は国税庁のWebサイトから、住所地の郵便番号や住所から検索して調べられます。
税務署の受付時間は、祝日を除く月~金曜日までの8時30分~17時です。ただし、土日祝日や平日の受付時間外に提出したい場合は、税務署の時間外収受箱に投函して提出することができます。
参照:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁
税務署宛に郵送する
開業届は管轄の税務署宛に郵送で提出することもできます。直接窓口へ持っていくよりも手間がかかりにくいといえるでしょう。なお、郵送の場合も本人確認書類が必要なので、写しを入れるのを忘れないようにしてください。
また、控えをもらうためには開業届をコピーしたもの、切手を貼った返信用封筒を同封します。重要な書類を送付するので、レターパックや簡易書留など、追跡ができる方法を選択するのがおすすめです。
e-Taxを使ってネットで提出する
開業届は国税庁が運営する「e-Tax」を使って、ネットで提出することも可能です。e-Taxの利用にあたっては事前の準備が必要ですが、オンラインでも完結できます。本人確認のための電子証明書を取得した後、電子申告・納税等開始届出書を提出して、利用者識別番号や暗証番号の発行を受けると利用できるようになります。
「e-Tax」で開業届を提出する際には、届出書の中から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択して、提出先の税務署名や氏名、住所といった基本情報を入力後、記入例と同様に届出の内容を入力します。そして、電子署名をした後、送信する流れです。
参照:e-Taxとはどのようなものですか。|国税庁
e-Taxで開業届を出す方法
パソコンでe-Taxで開業届を提出する手順は以下のとおりです。
1. e-Taxソフトをダウンロードし、e-Taxソフトの共通プログラムをインストールする
2. 共通プログラムを起動させて「追加インストール」を選択する
3. 「申請」の「+」をクリックする
4. 下の項目の中から「所得税」にチェックを入れる
5. e-Taxソフトの税目ソフトをインストールする
6. e-Taxソフトの「作成」タブの「申告・申請等」の中から「新規作成」を選択する
7. 「申請・届出」にチェックを入れて、税目は「所得税」を選択する
8. 「個人事業の開業・廃業等届出書」を選ぶ
9. 「申告・申請者等名」には「任意の名称」を入力する
10. 「基本情報」入力フォームの必須項目などを入力し、「任意の名称」をクリックする
11. 開業届の入力フォームが出てくる
12. 必要な項目に入力した後は電子署名を行い、「送信」タブから「個人事業の開業・廃業等届出書」を選んで提出する
e-Taxを利用するには、利用者識別番号と電子証明書を取得し、マイナンバーカードやICカードリーダーなどの用意をしておく必要があります。
開業届と一緒に出しておきたい書類
開業届と一緒に出しておきたい書類も確認しておきましょう。税額控除を受けるために必要なものもあるので、要チェックです。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、青色申告で確定申告をするために提出が必要な書類です。前述のとおり、最大65万円の控除を受けるために提出が必要になります。
参照:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色事業専従者に対する給与を必要経費に算入したい方は、その年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を税務署へ持参または送付します。
その年の1月16日以降に開業した人や新たに専従者がいることになった際は、その日から2ヶ月以内(期日が土日・祝日のときは翌日)が期限です。
参照:[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
給与の支給対象者が常時10人未満の源泉徴収義務者で、納期の特例を受けたい方は税務署に提出(持参または送付)しましょう。源泉徴収税の納期限は原則として徴収日の翌月10日ですが、手続きによって年2回の納付に変更できます。
提出期限はありませんが、提出日の翌月の給与から適用されるという点に注意してください。
参照:[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁
個人事業主の開業届提出に関するよくある質問
最後に、個人事業主の開業届提出に関するよくある質問にお答えします。
開業届を出していないとどうなる?
開業届も個人事業税の事業開始等申告書も提出しないことによるペナルティはありませんが、社会的信用を高められない、給付金がもらえないなどのデメリットが生じる可能性があります。フリーランスとして仕事をしている人は基本的に出しておくのがよいでしょう。
開業届の提出に費用はかかる?
開業届を提出するにあたって、手数料などの費用は必要ありません。開業届は税務署に置いてあるほか、国税庁のWebサイトから無料でダウンロードできます。
参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
※本記事は2022年11月時点の情報を基に執筆しております。
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