会社員がダブルワークするにあたっては、副業を「個人事業主」として行う方法があります。本記事では副業を検討中の方に向け、開業届を出して個人事業主になるメリット・デメリット、社会保険や雇用保険の扱いなどを解説。個人事業主として副業することに関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を行う人のことを指します。税法上は開業届を提出していることが条件になるため、副業収入があれば個人事業主、というわけではありません。
開業届を出すことで個人事業主になることはできますが、個人事業主になるべきか迷っている人もいるのではないでしょうか。個人事業主になるかを判断するポイントは、20万円以上の副業収入があるかです。
20万円以上の副業収入がある場合は確定申告が必要になり、その際個人事業主であることで節税メリットを受けることができます。20万円以上の副業収入がある人は、メリットデメリットを比較して個人事業主になることを検討してみてください。
開業届の出し方については、「フリーランスに開業届の提出は必要?開業届の書き方や提出タイミング、メリットを解説」を参考にしてください。
ここでは、開業届を出して、個人事業主になるメリットをご紹介します。
副業による事業所得を得ている場合は、確定申告を青色申告で行うことが可能です。青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除の適用を受けられる、最長3年間にわたって赤字を繰り越せる、生計を一にする家族等への給与を必要経費にできるといったさまざまな税制上のメリットがあります。
参照 :No.2070 青色申告制度|国税庁
将来フリーランスになりたい人にとっては、独立の予行練習になることがメリットです。開業届を出して個人事業主になることで、確定申告時に税額控除を受けることができます。副業時に帳簿への記帳や確定申告の手続きを体験しておくことで、本業として独立した後も困りづらいでしょう。
個人事業主として副業すれば、事業に必要な費用(パソコン代や書籍代など)は経費に計上可能です。所得税は収入から経費を差し引いた分にかかるため、経費にできるものが多いほど節税効果が高くなります。
参照 : 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
青色申告すれば、損失や赤字を繰り越せるのもポイント。3年以内に黒字が出れば、相殺もできます。青色申告者に適用される制度なので、白色申告をする場合は一部しか繰り越せない点に注意が必要です。
本業で得た給与と副業で出たマイナス分を相殺できるのもメリットです。この処理を「損益通算」といいます。事業が軌道に乗るまでは赤字になることも多いため、副業が駆け出しの人にとっては嬉しい制度だといえるでしょう。
参照 : 国税庁「No.2250 損益通算」
開業届に屋号名を書けば、屋号名で銀行口座が作れるようになります。口座振り込みをしてもらうときの信用度が上がる点がメリットです。
給付金をはじめとする支援を受けるときにも、開業届が役立つ可能性があります。
2020年ごろに流行した新型コロナウイルスの感染拡大時は、事業に影響があった個人事業主に対し、「持続化給付金」として最大100万円が支給されました。給付金については、「 フリーランス・個人事業主の新型コロナウイルスに関連する支援(給付金・補助金・助成金など)」も参考にしてください。
参照 :
持続化給付金申請要領(個人事業者等向け)|経済産業省
持続化給付金申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け)|経済産業省
副業収入のある人が開業届を出して個人事業主になると、失業保険が適用されなくなってしまいます。個人事業主として開業すると、本業を失っても無職状態とみなされないのが理由です。個人事業主が失業保険を受け取りたい場合は、廃業届を出さなければなりません。
サラリーマンが副業する場合、本業の会社の社会保険に加入したまま活動できます。副業で事業所得や雑所得を得たとしても、支払う社会保険料は増減しません。
ただし、副業でアルバイトをする方は注意が必要です。下記の条件をすべて満たすと、アルバイト先の会社でも社会保険に加入します。本業と副業の会社の2ヶ所で社会保険に加入することになり、副業しないときより社会保険料は高くなるということです。
(1)1週間あたりの労働時間が20時間以上であること
(2)1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上
(3)雇用期間の見込みが1年以上であること
(4)学生でないこと
(5)以下のいずれかに該当すること
・従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)で働いている
・従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
なお、2ヶ所の企業で社会保険に加入しても、受け取る健康保険証はどちらか一方の会社からのみ(1枚だけ)です。選択した会社を管轄する年金事務所に、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。提出期限は、2ヶ所以上の会社で社会保険に加入することになった日から10日以内です。
参照:
平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)|厚生労働省
複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構
「サラリーマンが副業する場合、雇用保険はどうなるのか」が気になる方は多いでしょう。結論から述べると、「個人事業主として副業する場合」は雇用保険には加入できません。雇用保険は、雇用された労働者が対象の制度だからです。
厚生労働省は、以下を雇用保険の適用要件としています。
1週間の所定労働時間が20時間以上であること
引用元: 厚生労働省
31日以上の雇用見込みがあること
上記を満たせば、本業・副業問わず(アルバイトやパートの人も)雇用保険に加入することになります。ただし、雇用保険は給与が高い1社でしか加入できない点には注意が必要です。
ここでは、確定申告に着目し、サラリーマンが副業する際に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
確定申告とは、所得税・復興特別所得税(以下、所得税)の過不足を精算する手続きです。
1年間の所得金額とそれに対する所得税の金額を計算し、期日までに確定申告書の提出と不足分の所得税の納付をします。
サラリーマンは会社が年末調整でこの過不足分を精算するため、基本的には確定申告の必要はありません。ただし、副業による所得金額(給与所得・退職所得以外の所得)が1年間で20万円を超える場合は、本業の会社で年末調整を受けたうえで、副業分を自分で確定申告します。
ほかにも、医療費控除を受けたいときや年間収入金額が2,000万円を超える場合なども、確定申告の対象です。なお、確定申告の時期は原則として2月16日から3月15日まで。この日が土・日・祝日にあたるときは後ろにずれることもあります。
給与を受けとる場合や個人で受けた案件の報酬をもらう際は、「源泉徴収」によってあらかじめ所得税が差し引かれます。しかし、これは概算のため、本来支払うべき税額が異なることも。所得税は1年間の所得に対してかかる税金なので、所得金額が確定したタイミングで計算し、確定申告によって差額を調整します。
確定申告で所得税を算出した際、あらかじめ源泉徴収で支払った金額に不足があれば、確定申告期間中に不足分を納税します。反対に、支払いすぎていたことが分かった人は、確定申告することで超過分が戻ってくる仕組みです。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。白色申告には特別控除はないものの、申請が不要で帳簿付けが簡単な点はメリットです。青色申告は帳簿付けが複雑で簿記の知識を要しますが、最大65万円の特別控除が受けられます。
税務署に確定申告書を持って行くほか、e-Taxを利用して電子申告する方法もあります。
e-Taxは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを使って確定申告ができるシステムです。事前の手続きが必要ですが、活用すれば税務署に行かずに確定申告書を提出できます。税金の納付もインターネットバンキングなどで行えるのがポイントです。
確定申告期間中であればe-Taxは24時間利用可能なため、時間や場所を問わず確定申告できるのも嬉しい点だといえます。
参照:e-Tax|国税庁
以下のケースでは、確定申告は不要です。
事業などの所得額とは、収入全体から経費を差し引いた金額です。また、副業などの所得額は、「給与所得と退職所得を除いた所得」の額を指します。
確定申告に不安がある方は、会計ソフトを使うのも手です。そのほか、確定申告期間中の相談会場で直接質問をしたり、行くのが難しい場合は電話で問い合わせたりすると良いでしょう。
「個人事業主の確定申告とは?基礎を解説します」でも確定申告の基本事項を紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
サラリーマンが副業する場合、まずは就業規則を確認する必要があります。企業によっては、副業を禁止しているところがあるからです。
禁止されている会社で副業が見つかった場合、減給や解雇といった処分が下されることも。簡単にはバレないと思う人もいるかもしれませんが、バレないとは言い切ることができません。その理由を詳しく見ていきましょう。
住民税算出時のベースとなるのは、収入から経費と控除を差し引いた課税所得のため、副業で収入が増えれば住民税も高くなります。
サラリーマンは「特別徴収」という方法で会社を介して住民税を納付しており、給与から天引きされるのが一般的です。住民税の変動から「本業以外に収入を得ているのでは?」と察知することができます。
副業のことを地元の友人だけに話したつもりでも、コミュニティやSNSを通じて同僚に伝わるケースも。誰にも話さなかったとしても、副業している様子をどこかで見られる、本業と副業の両立がうまくいかずに体調を崩す、といったことがきっかけで発覚する場合もあります。
※本記事は2022年11月時点の情報を基に執筆しております。
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